四十八歳の抵抗

 

14日はフィルムセンター『四十八歳の抵抗』 鑑賞。平日13時からの上映にもかかわらずほぼ満席。客の大半は年金暮らしと思われる世代の人々。おそらくは自分の青春時代の作品なのだろう。上映終了後、年輩の夫婦が「あれ小野道子でしょ」 なんて会話をしていた。

 これ以前から観たかった作品。オイラも四十八歳だからね(涙) 。世間で四十八歳といえば分別のあるナイスミドル。はたまたチョイ悪系か。そこまでは行かなくても、ある程度人生経験を積んだ大人というイメージ。オイラはナイスミドルには程遠いな。生活力もないし頭の中身は中学生だ。
 金なしコネなし女なし。扶養家族もいない。しかしこのご時世だ。地震や原発の恐怖を考えると1人の方が良い。奥さんや子供がいたらとてもじゃないが逃げ切る自信がない。ツルむ仲間もいない。オイラは対人関係に自信がないから、集団の中で生き残る術を知らない。何かあったら人の顔色ばかり伺って間違いなく死んでしまうだろう。だから独りの方が良い。独りで考えて独りで行動する。その方が生き残れる可能性がある(どーかなぁ?)。

                     

さて肝心の映画だが、主人公は山村聡。オイラの世代だと『非常のライセンス』 の特捜部長や『ハングマン』 のゴッドでお馴染み。他にも弁護士、記者、医者等、正義派の大人の男を演じる事が多い。この作品では迷える48歳である。仕事は保険会社の次長さん。課長よりは上だが部長よりは下という中途半端な役職(全国の次長さん、ゴメンなさい) 。昔勤めていた会社にもいたなぁ、次長さん。
 この頃は結婚も早かったから、48歳だと大きな子供がいる。山村には23歳の若尾文子という娘がいる。奥さんは杉村春子。どこにである平凡な家庭である。若尾には年下の大学生の恋人・川口浩がいる。川口は若尾の友人で山村の部下・小野道子の弟。
 山村は社員旅行に行くことになる。本当は面倒なので行きたくはないが、部長が行かないので仕方なく。途中床屋に行き身だしなみを整えて、本屋で『文藝春秋』と『ファウスト』 を買う。電車の中で読んでいると、やってきたのが部下の一人・船越英二。こいつは山村聡を言葉巧みに誘惑。夜の世界へ案内するメフィスト的な男。実際映画の中で悪魔の扮装しているシーンがあった(笑) 。最初は旅行先の盛り場で一杯やる程度だったが、東京に戻ると夜な夜な怪しい店に案内しだす。真面目なだけの男の冒険が始まる。
 支払いは全て会社のツケである。船越曰く、「会社の金で飲み食いするのは、優秀な社員か、会社を食い物にする不良社員のどちらか」 らしい。ホイホイと夜の街に出るのは不自然な気もするのだが、真面目なだけの自分の人生に疑問を持っていたのだろう。船越の誘いに乗ってしまう。案内されたバーのママさんは山村聡の元部下の村田知英子。数年前に寿退社したのだが、離婚して今は水商売。
 ここで知り合ったのがホステス・雪村いづみ演じるユカちゃんである。19歳にもなって自分を「ユカちゃん」 と言うキモイ娘(笑) 。しかし屈託のない姿にオジサマ山村聡はメロメロ。ユカちゃんに溺れていく。自分にはなくなった若さに惹かれたのかもしれない。

 自分では若いつもりになっていろいろと奮闘する姿は、滑稽であると同時に痛々しさを感じる。それは自分も女の子にアタックする時は、こういう見苦しいことをしているのを思い知らされるから。山村聡ほどの中年紳士でもそうなのだから、オイラなどは思いっきりカッコ悪いんだろうなぁ。どうせ玉砕なのに、あの時はどうしてこんなに必死になったのだろう。いろいろと思い出しちゃうよ(涙) 。

 世間一般の48歳はいろいろと忙しい。19歳の娘に下心を持ちながらも、家庭では威厳ある父親を演じなければならない。貧乏学生の川口との交際に反対の山村。家に呼び出して交際はしないように言うのだが、努めて大人な対応をしたつもりが、頭の良い川口に逆にやり込められてしまう。こういう弁が立つ野郎は憎たらしいネ。
 仕事もしなくてはいけない。そしてもちろん夜遊びも(笑) 。 社員旅行に行った際に紹介された旅館が、火災保険に入っていたのだが焼失。保険金詐欺の疑いがあるので調べに行くのだが、なんとユカちゃん同伴である。 これだって何度かデートを重ねてやっとお泊りにこぎつけるのだ。仕事は適当に済ませて、夜オオカミになった山村聡はユカちゃんに襲い掛かる。ところがユカちゃんは「お嫁に行けなくなる」 と拒否。ユカちゃんよぉ、それはないだろう。その気もないのに何でお泊りに来るの? 

 金や手間を使っても何もさせない女は多い。オイラが知り合った女はみんなそんなのばかりだった。甘く見られていたのかねぇ。まさかホントに何もないと思って来たのだろうか。しかしここまで来て、このアマ最低(笑) 。涙を浮かべて拒否るユカちゃんを前に萎えてしまった山村聡。オオカミの仮面は捨てて、元のオジサマ山村に戻る。虚しいネェ。
 翌日東京に戻って出社すると、船越英二は退職していた。どうやら大会社の御曹司だったらしい。とはいえ、こいつはやっぱり悪魔だったのかねぇ。山村聡の行動を常に熟知していた。不気味な笑い声が響いて船越の机が映る。

 ユカちゃんに拒否られて、船越英二もいなくなって、またいつもの日常に戻るのだろう。川口との仲も認めるようだ。冒険は止めて、定年まで平々凡々に過ごすのを暗示してエンド。

                     

若い時分に結婚した人は男も女もそれほど遊んではいないと思う。相手がすぐに見つかったワケだから、男女関係でのドキドキの経験も少ないはず。金持ちなら幾つになってもそれなりに楽しめるだろうが、堅気の勤め人ではそんな余裕はないだろう。 この時代はサラリーマンの定年は55歳。もうゴールも見えてくる。余程の事がない限り、出世もない。迫り来る“老い” への恐怖。サラリーマンとしては無理でも、男としてはもう一花咲かせたい。
 遊んだ経験が少ないからこそ、そんな煩悩が涌き起こる。気持ちも不安定になる。そこをメフィスト・船越英二に囁かれて、あやうく転落しかかった。もしユカちゃんが拒否らなければ、行く所まで行ってしまったかもしれない。会社の金使い込んで転落していたかもしれない。そう考えると拒否られて良かった。予定調和的に終わった感じもなくはないけど、この結末は妥当だったのかな。
 このユカちゃんもなぁ。どういうつもりでオッサン山村と付き合っていたんだ? 肝心のトコで拒否るとは、チョイとばかりヒドイんじゃないの。
 しかし若い娘などは一緒にいてもツマランと思う。話合わないもんなぁ。入れ込む気持ちは理解できん。これはオイラがオバコンだからかなぁ(恥笑) 。他人の悪あがきって、自分を見ているようで、何だか木っ恥ずかしくなる。映画の山村聡に「もうその辺で止めておけ。」 心の中で何度も声をかけてしまった。歯がゆさばかり残った。

 四十八歳、微妙な年齢だね。オイラもこの先どうすっかなぁ。どうせ首都圏直下型地震が起これば死んじまうのだから、どーでもイイか。
映画は14時50分終了。まっすぐ帰宅。