第21話

明日のオイラは・・・

 

戦うATG映画と、勝手に命名『シルバー仮面』。中でも第5話『明日のひとみは…』は特撮オタクにとって外せない作品だ。貧乏でダサダサの言語学者・東野孝彦が春日兄妹の長女・ひとみ(夏純子)を宇宙人と誤解、誘拐する。小汚い四畳半での二人のやりとりは切なく、哀しい。誘拐はしたものの、小心でヌケている東野。夏純子を縛っても、簡単に縄抜けされてしまう。東野が悪人ではない事を悟った夏は、縄抜けしても逃げようともしない。朝、東野が目を覚ますと、新妻のように台所に立つ夏。今では見かけなくなった卓袱台に配膳、茶碗にご飯をよそってくれる。美味そうに味噌汁を飲む夏に東野は、「宇宙人も味噌汁飲むのか?」警戒していたものの、一口啜ると、「美味い!」。一杯の味噌汁で誤解が解けてしまう。感激した東野は、協力を誓う。その時の台詞が泣かせる。

 「オフクロ以外の女の人が作った味噌汁、飲んだの初めてなんです。味噌汁のお礼です。」

 最後は夏純子を救おうとして、惨めに殺されてしまう。あまりに高すぎる味噌汁の代償だ。おそらく東野は、今まで女に優しくされた事の無い男だったのだろう。彼が本当に飲みたかったのは、味噌汁ではなく、本当は夏純子のような美しく優しい女性の愛情だったのかもしれない。ドジでダサい東野に、自分の姿を投影したオタクは絶対にいたはず!現在はDVDで鑑賞できるから、今日もこれを観て、涙しているオタクはいるのかもしれない。

しかし納得が出来ないのはシリーズ終盤。何の脈絡も無く、いきなり夏に婚約者が登場する。演じたのは円谷プロ『帰ってきたウルトラマン』でMATチームの南隊員や東映『キカイダー01』で主役を演じた池田駿介だ。何だよ、こんな彼氏がいたのかよ。どこで知り合って、いつ婚約なんかしたんだよ。あまりに唐突過ぎる。男女の関係って、簡単に婚約まで行ってしまうものなのか??王者のオイラはデートどころか、女と会話をすることすら至難の業なのに・・・納得できん。恋愛モノでも、こういう男女のプロセスに関してキチンと描いたものが少ない。オイラのような人間関係に自信のないオタクは、ドラマや映画でしか擬似恋愛できないのだから、もう少し考えて欲しい。ああ・・・でも『シルバー仮面』は子供向けの怪獣モノ、恋愛ドラマではありません。それに自分がモテナイのをTVのせいにするな!!(ってそれを言っちゃあオシマイよ)。
 婚約者が登場してハッピーな夏純子の姿を見ると、5話で死んだ東野は犬死に・・・いや無駄死にだったような気がするのはオイラだけだろうか??いやそんなセコイ考えは止めよう。人の良い東野は、夏純子の幸せを草葉の陰で祈っているはずだからだ。

 

 

シルバー仮面
1971年11月28日〜1972年5月21日放送 全26話
TBS系 毎週日曜日19:00〜19:30
第5話『明日のひとみは・・・』(71年12月26日放送)
脚本・市川森一
監督・樋口弘美