どこがNo.1なのか?

 

 

2008年5月、日本映画専門チャンネルで放送した『顔役無用 (男性No.1より)』 を観ました。

<ストーリー>
 牧(三船敏郎) はヤクザの幹部。短気で荒っぽいが情にもろい。健(鶴田浩二) はダフ屋。三船の縄張りでコソコソやって捕まるが、口の上手い鶴田に上手く言いくるめられてしまう。健は口が上手いだけでなく女にもモテル。三船の情婦・タカ子(越路吹雪) とも関係していた。プレイガイドに勤める恋人・みち子(岡田茉莉子) からチケットを横流ししてもらって商売をしている。鶴田は母親の浦辺粂子に小料理屋を出させようとダフ屋商売に励んでいたようだが、稼いだ100万円を安全経済会(利殖商法) に預けて運用。ところが経済会は倒産。証券は紙くずに。金に困った鶴田。

 ダフ屋のボスからボクシングの八百長の手伝いをすれば金を貸してやると言われる。タイトル戦に挑戦するボクサー・島村(藤木悠) に連日夜遊びさせる。藤木のコンディションはガタガタ。前半は調子が良かったが、後半からスタミナ切れ。KO負けしてしまう。八百長の噂も流れる。藤木のスポンサーは三船。 激怒した三船は鶴田を探して今度こそヤキを入れる。そこへ浦辺が助けに入る。情にもろい三船は鶴田を許す。

 鶴田の話で、八百長の黒幕は自分の社長とダフ屋のボスである事を知って二人で殴りこむ。腕っ節が異常に強い三船が、用心棒その他殆んどを叩きのめしたところで警察に捕まる。三船は自分の社長を、鶴田はダフ屋の元締めを叩きのめしたのでもう元の世界には戻れない。鶴田の引取りには浦辺と岡田が迎えに来るが三船には誰も来ない。一人、橋の上に佇む三船が歩き出す姿にエンドマーク。

                            

 

三船敏郎と鶴田浩二の初共演作。人は良いが無骨な三船敏郎。鶴田浩二はナンパな野郎。硬派な三船と軟派な鶴田という図式。 この映画の鶴田浩二は嫌な野郎だ(笑) 。モテモテで口が上手くて機転が利く。こんな奴と付き合っていると、きっと騙されてヒドイ目にあうだろう。実際、鶴田浩二はワザと三船を怒らして暴力を振るわせる。警察に捕まった隙に縄張り荒らしをしてチケットをサバいたり、女は寝取るとやりたい放題。嫌な野郎だ。

 ボクサーの藤木悠は戦災孤児だったのを三船が面倒を見ている。三船の夢は藤木をチャンピオンにする事なのにぶち壊したのも鶴田浩二。疫病神のような男だ。 鶴田浩二は東宝では作品に恵まれなかった。人間関係とか人の縁とか色々あるのだろうが、戦争を背負った男には、東宝映画というどこか無機質な作品群は合わなかったのかな。
 ラストでは釈放された鶴田には母親と恋人が迎えに来ているのに、三船には誰も来ない。どこまで行っても三船敏郎には良い事がない。原因は全部鶴田なのに。

 釈放されるのは築地警察署。戦前からの建物のせいか、看板表記が右からになっている。グーグルマップで調べると、本物の築地署なら佇む橋は亀井橋ということになる。川は現在はない。首都高環状線になっている。橋の向こうにデカイ建物が建設中だが、これは現在のNTT東日本か。現在はビル街だが、この当時は平屋や倉庫のような建物が多い。

 タイトルだが、『男性No.1』 と表記されている文献が多いが、映画を観ると『顔役無用(男性No.1より)』 となっている。何がNO.1なのか。無骨な三船がNo.1なのか、ナンパ野郎の鶴田浩二なのかよー分からん。