エロは儚い 3

 

またまた行って来ました。ラピュタ阿佐ヶ谷の『60年代まぼろしの官能女優たち』 。昨夜は若松孝二監督の『歪んだ関係』(65年白黒)。 忘れないうちに内容記入。


                    

 
婦人科の院長夫人(城山路子) が自室で絞殺される。犯行時刻は深夜1時。旦那は外出していたと主張。警察の事情聴取、どこに行っていたかと問われると黙秘。疑いがかかる。被害者の膣内に残された精液はO型。旦那はAB型。足の悪い看護婦(新高恵子) が「自分と不倫関係で昨夜も一緒にいた。」 と証言。アパートの大家が深夜一時に呼び出し電話がかかってきて呼び出しに言ったら、中からセックスの喘ぎ声が聞こえていたと証言。アリバイが成立したことで、取りあえず疑いは晴れる。

 旦那の話では奥さんは大学生と浮気をしていた。ある日探偵と名乗る男・高梨がやって来る。毎週月曜、金曜の午後に連れ込み宿で会っているらしい。誘われるままに連れ込み宿に行く。何故か押入れの壁がマジックミラーになっていて隣の部屋が丸見え。濃厚なプレイを見せつけられる。探偵に情報量8万円を支払う。金をくれれば大学生を締め上げると言うが、旦那は何も出来ない。旦那は探偵と大学生がグルではないかと疑う。しかし探偵と名乗るこの男は詐欺師。既に別件で逮捕されていた。

 警察はこの大学生を調べる。大学生の血液はO型。膣内の精液と一致。犯人は大学生なのか?

 帰宅した旦那は看護婦に“何故自分と一緒だった。” と証言したのか尋ねる。看護婦は奥さんが大学生と浮気していた事を知っていた。しかも旦那が犯行当時、医師会の理事長の娘と不倫中だった事まで知っていた。そこまで知っていながら、自分と一緒になって欲しいとまで言う。

 犯人は看護婦の新高。精液は血液銀行に血を売っていたホームレスから採取したもの。睡眠薬で眠らせて絞殺。精液を注入して偽装した。1時に大学生がやって来る事を知っている新高はその時間に合わせて決行。大学生が入っていくのを確認した新高は自分で大家のところに電話してアリバイ工作したのだ。

 新高はホームレスを殺して口封じしようとするが尾行していた刑事に捕まる。取調べで否認するが、アパートから喘ぎ声の入ったテープが発見される。喘ぎ声はタイムスイッチで動くようになっていた。本人は消去したつもりだったが、消したのは片面だけ。別のチャンネルに残っていた。

 証拠を突きつけられ自白するが、旦那に命令されたと証言。この先どうなるのか提示されずにホームレスが街なかで、「危ない危ない」 と腕をさするトボけた姿にエンド。

                    


 
上映終了後に行われた若松孝二監督のトークショー。監督自身が、火曜サスペンスみたい、と語っていた。オイラもそう思った。2時間ドラマのようなまともな出来。どこがピンク映画? 

 しかしながら犯行動機が弱い。旦那はどう見ても冴えない中年男にしか見えない。こんなオッサンのために殺人まで犯してしまうのはどうして?? ホームレスの精液を採取するにしてもタクシーで乗りつけて待たせているのは不自然。大学生がやって来るまでに殺して偽装工作まで済ませなければならないのは分かるが、運転手に見られちゃマズイでしょう。綱渡りのような犯行シーンには息を呑むような緊迫感があったが、この辺は興醒め。

 この映画の頃はDNA鑑定なんてないから、血液型だけで犯人を特定。何とも乱暴な捜査だが、この時代は仕方が無い。精液や血液型がキーポイントに使われると言えば、中平康監督の傑作『猟人日記』 がある。あれも精液を採取して犯行に使われていた。犯行動機の説明も時間をかけてキッチリと表現していたのだが、この作品では予算も時間もなかったのだろう。『猟人日記』 と比べると数段劣るのは否めない。何より土台となる犯行動機が弱すぎる。新高恵子の足が悪いのは事件とは全く関係の無い設定。こういう身体ハンデを犯行にかきたてた描写があれば良かったとも思う。

 旦那に命令されたとシラっーと自白するが、この先の展開がないので寸止めされた気分(オイオイ)。

 他にもホームレスから採取するのも、セックスシーンを入れるべきだったのでは。エロ本にありがちな設定だが、ホームレスや労務者のような汚れた男と美人看護婦がバラックのような汚い小屋で・・・・興奮する観客は多いと思うのだが。

 貞淑な院長夫人と大学生、昼下がりの情事というのももっと出して欲しかったし、それを観て怒鳴り込む事が出来ない旦那。逆に盗み観る事でエクスタシーを感じたと言う設定にしても良かった気がする。

ホームレスだって殺す必要はないと思うのだが。75分では消化し切れていない部分が多すぎた作品。真面目な作りだっただけに残念。

                    


 
旦那の経営する医院は高円寺2丁目近辺。電柱に住所が書いてあった。

 犯人役の新高恵子さん、恥ずかしながら初めて観た。オイラ好みのキレイなお姉さん系美人なので驚く。

 トークショーで監督自身が語っていたが、ホームレスの小屋は当時新宿西口にあった貯水池で撮影したらしい。オイラは小学生の頃、社会科見学に行った記憶がある。キャスティングは若松監督が自分で決めたらしいが、もう憶えていないらしい(笑)

 監督の作品は色々なところに出回っているらしい。「無断で商売するな!」 インタビュアーに「フィルムセンターに結構ある」 と言われて「文化庁なんかに預けない!」 憤慨していたのに場内爆笑。70代の若松監督だが、まだまだ精力旺盛。次回作は江戸川乱歩の『芋虫』、その次の作品も決まっているらしい。


 オイラは朝10時半に窓口でチケットをゲット。2番だったが、トークショーがあるせいか満員だった。客の多くは業界人か、この世界の“使い手” たちなのだろう。若松映画って語れるほど観ていない。周囲の人たちがA級、B級ボクサークラスなら、オイラはまだまだ練習生。修行あるのみっ! デス。

 終了したのは23時。監督はまだまだ語り足りないのか? 

「もっと早い時間からやれよ(笑)」

いやいや楽しいイベントでした。帰りは電車の乗り継ぎも良くすんなり帰れた。シャワー浴びて就寝したが、今日もダルイ。