エロは儚い 5

 

11日夜はまたまたラピュタ阿佐ヶ谷『60年代幻の官能女優たち』 に出撃! この夜は『暴行少女日記♀』 終了後はこの作品に出演していた久保新二氏トークショー。

                

 
映画の冒頭、海岸で若い女に襲いかかる外人をミヤコ(一星ケミ)が包丁で刺し殺す。警察での取調べで自らの過去を語り始める姿にタイトル。

 大阪阿倍野のドヤ街で育った17歳のミヤコ。母親が再婚した男に強姦されかかる。ドヤ街の住人の3国人に3000円で売春。母親に激しく叱責されるが、どぶ川に落ちても3000円を握り締め「自分の体で稼いだんや!」
 これで弾みがついたミヤコは家出して街娼を始める。他の売春婦たちにリンチされかかるが「自分のもの(体) で稼いで何が悪い!」 激しく抵抗。そこで知り合った男(佐東洋一?) と組んでブルーフィルム出演、お座敷ストリップ、まな板ショーで稼ぎまくる。男が金を溜めて店をやろう、と言い出す。300万円を目標に売春。更に客の財布から札を失敬。
 稼ぎまくったミヤコは飲み屋を始める。バーテンと女の子を雇うが、金に厳しく従業員たちの反感を買う。母親の再婚相手を掃除夫に雇ったりする。羽振りのいい噂を聞いて母親が訪ねてくるが冷たくあたる。しばらくして会いにいくと首を吊って死んでいた。
 男はホステスの一人と浮気。二人を叩きだすが、店の権利は男のものになっていた。店は売却されミヤコの着物や財産は男に持ち去られている。文無しになったミヤコに従業員たちは冷たい。自殺しようと踏み切りに飛び込もうとするのを救ったのは久保新二。
 久保は病弱で妹が面倒を見ていた。ミヤコは再び街娼になって久保兄妹を援助する。しかし性病になって体も売れなくなる。深夜の公園で50円で陰部を見せて小金を稼ぐ。一人公園のブランコで ♪バラ〜が咲いたぁ♪ 力の無い声で口ずさみながら金を数えていると、かつての飲み屋の従業員たちが現れバカにされるのは幻? 。夜道を歩いていると冒頭の外人男に体を売る妹と出会う。止めようとするミヤコ。そして冒頭の殺人に繋がる。

                

 
何とも救いようの無い話だが、一星ケミの体当たり演技にはシビれた。ドブ川に突っ込んだり、そこで汚れた紙幣を握り締め、「自分のモノ(体) を使って稼いだんだ!」 。熱演していた。低予算のピンク映画だから短期間で撮影したのだろうが、街娼からバーのママさん。落ちぶれて陰部を見せて稼ぐ姿など顔が全く違って見えた。この人はスゴイ女優だ! 。劇場のチラシには“独立プロ黄金期の佳作” と書かれているが、佳作どころか、これは傑作だよ。面白かった!!

 元々はパートカラー作品だったが、退色してしまってカラー部はセピア色っぽくなっていた。おそらく序盤の海岸シーンなどはカラーだったのだろう。もう区別が付かないくらい色が落ちていた。

 ミヤコの経営する飲み屋が小さなバー。これセットではなくて、実際の店を借りて撮影したのだろう。そのせいか狭くて、ホステス2人、バーテンを二人も雇うような規模の店には見えなかった。そこがまたピンク映画という、アウトサイダーとしての雰囲気にマッチしていたと思う。

                

 
終了後は、久保新二氏のトークショー。一応司会者がいて段取りとかあったのかもしれないが、久保氏はその司会者の意図を全く無視(笑) しての独演会。これがまたサイコ〜に面白かった。

 久保氏はこの映画に出た事を憶えていなかったらしい。最後の方に出てくるだけだから仕方ないか。ロケは西成と高田馬場で行ったらしい。そういや踏み切りに飛び込もうとするシーンは西武線のような気がする。

 一星ケミは六本木の野獣会出身。向井監督がフーテンから育てたらしい。『淫紋』 の時にも書いたが、久保氏は一星ケミと3年半同棲していた。ケミは出入りしていたクラブで覚えた酒と薬でセックスが下手だったらしい。リストカット癖もあったそうだ。久保氏が留守の時、近所に住んでいた向井監督が助けに行った事もあった。監督は濡れ場の雰囲気作りの上手い人で、撮影の際口笛を吹いたりして気分を盛り上げてくれたそうだ。濡れ場シーンを撮影する前日、「これで二人でホテルに行って来い。」 金をくれた事もある。途中でたこ八郎と3人で暮らしていた。ある日、久保氏が帰ると部屋にはケミと知らない男がいる。男と喧嘩になって久保氏が殴られると、ケミがたこ八郎を呼んだのだが、男にぶっ飛ばされたそうだ。元日本フライ級王者なのに役に立たなかったらしい。

 ケミとの最後はリストカットするので「それなら死ね!」 と風呂場に連れて行く。浴槽に腕を浸けたら水が真っ赤になったのを見て出て行った。それがケミとの最後だったらしい。郷里の佐賀から親が出てきてケミを連れ帰った。その際、たこ八郎のトロフィーやベルトは一緒に持っていってしまったらしい。だから後のドラマ『たこ八郎物語』 では出てこなかった。

 久保氏は喋りだすと止まらない。ケミとの一件は立ち上がっての一人芝居状態。他には白川和子は向井プロの電話番だったとか、小川欽也監督はギャラの払いが悪かったとか脱線し放題。「俺は映画のことは良く分からないんだ。出来上がった作品も観ていない。」 と言い放つ。「ケミに会いたい。」 としみじみ語っていた。
 更には降板した『20世紀少年』 の話まで発展。終了予定時刻が23時だったのだろう。10分ほどオーバー。それでも止まる気配が無いので観客の女性が出て行こうとする。「ちょっと! どこ行くの?」 客に突っ込む久保氏。女性は「電車がなくなるので・・・」 司会がそこで強制終了していた。
 この女性客は23時を過ぎた辺りから、時計ばかり見ていた。オイラは近くに座っていたので妙に気になった。女性には悪いけどもう少しトークを聞きたかった。最後に次回のトークショーゲストの野上正義さんが登場。二人の雑談が少しあってこの夜のトークショーは終了した。

 遅くはなったがこれまた電車の乗り継ぎも良く、待ち時間も殆んどなくスムーズに帰れた。バイクで行った時よりも早かったのではないか。止せば良いのにパン食ってシャワー浴びてバタンキュー。

 久保氏は歌舞伎町で飲み屋さんをやっているらしい。どこにあるんだろ?