驚いたのは『異常性愛…』 。有名作品らしく扱っているサイトやブログは多い。しかし今回は予備知識を入れないようにして臨んだので、知っていたのはスゴイ! という噂だけ。何がどうスゴイのかも知らなかったけど、いやもうこれ何と言うか、形容しようがないくらいの異常な作品なんだよ〜ん(笑) 。
タイトルからもう秀逸。“異常” “性愛” 。おまけに“ハレンチ” 。この頃『ハレンチ学園』 流行っていたからそこから取ったのかなぁ(安易だ) 。 タイトルバックは画面を9分割して若杉英二の目や鼻、口のドアップ!! 真っ白な羽根? が積もった部屋。血が飛び散り、獣の叫び声が流れると羽毛の中に埋もれた人間(顔は見えない) がむっくり立ち上がる、というシーンも数回ある。ワケが分からん。
ストーリーは京都木屋町のバーのママ・典子(橘ますみ)。恋人でデザイナーの吉岡(吉田輝雄) と結婚を考えている。しかし初めての男である深畑(若杉英二) との関係が切れない。若杉英二はDVストーカー野郎。女だけではなく男もオッケーの変態野郎。別れたいますみたん。雷雨の中、逆上して刃物持参で襲ってくる若杉VS吉田輝雄。格闘の際、若杉は雷に打たれてマンション廊下から転落死。抱擁する二人の姿にエンドマーク。
全編、若杉英二の変態ぶりが凄まじい。どう凄まじいのかは後述するとして、この映画はどうして? と疑問符の付いてしまう話だ。若杉はこの映画の時、43〜44歳。歳相応に顔も浮腫んで、弛んだ横っ腹も醜悪(失礼!) な中年男。そんなのがどうしてますみたんのような美女と??
ますみたんもますみたんである。嫌なら嫌で警察に届けるとかすれば良いのだ。この頃はDVやストーカーに対する規制はなかった。殺されない限り警察もノータッチだったろう。それでも弁護士に相談するとか方策はなかったのだろうか。吉田輝雄だけでなく、店の常連・小池朝雄まで心配して力になろうと言ってくれるのに、ますみたんは断ってしまうのだ。何で〜??
ますみたんの部屋の合鍵を持っているらしく、部屋に上がりこんでいるシーンもあった。鍵を替えろよ。何で替えないんだ? 疑問符だらけのこの作品。分からん。ストーリーや設定が破綻していると言えなくもないが、この映画はそんなチッチャイ事などどーでも良いのだ。
とにかく若杉英二の変態プレイが圧巻!!(笑) 。周知のように、この人は松竹や新東宝を経て東映で仕事をするようになった。若い頃は二枚目をやっていた。明智小五郎もやっているのだ。芸名も天城竜太郎とか若杉恵之助と名乗っていたこともある。体もデカイ。ハンサムタワーの吉田輝雄がミドル級なら若杉英二は立派なヘビー級。顔もデカイから時代劇が多かったのも分かる。カツラや着物が似合いそう。
前田通子の『海女の戦慄』 ではマドロス役。『死刑囚の勝利』 では無実の罪を晴らすために脱走するヒーローを演じている。この頃は現代劇でも妙に強烈な目張りを入れていた。時代劇の流れかねぇ?
とはいえそれも昔の話。大正15年生まれなので、もう二枚目の出来る年齢ではない。前述したとおり、顔も浮腫んで横っ腹も弛んでいる。千秋実や長門勇みたいになっている(ご両人失礼) 。
橘ますみはキレイだね。こんな人があんな役。いや失礼。こういう可憐な感じの人だからこそ、こういうのが似合うのだろう。吉田輝雄氏は相変わらずの2枚目ぶり。しかしストーリーとこの二人はどーでも良い。この映画の見どころは何と言っても若杉英二だから。
ストーカーにDV。おまけに女装者とのSMプレイまでオッケーッ!! 変態豚野郎だ。
橘ますみの部屋に上がりこむ。恐怖で引きつるますみたんに焦点の定まらない目つき。両手をアッパラパーと揚げて「しあわせ〜 しあわせ〜」 襲い掛かる。拒否するますみたんに「サビシイだよ〜ん。愛してるんだよ〜ん。」 お前は“だよ〜ん” のオジサンか!(赤塚先生ゴメンなさい) 。これも当時流行っていたのだろう。水の張った浴槽に押し込めたり、トイレに連れ込んだり、挙げ句はますみたんの足指までペロペロ。「うひゃひゃひゃひゃ」 と気色の悪い笑い声を発して襲い掛かる。他人がいてもおかまいなし。嫌がるますみたんの耳元で「きっと結婚するから。」 (しかし驚くことにこいつは既婚者) 。どう考えてもますみたんのような美人が、こんな変態豚中年と結婚したいとは思えないのだが、いつも最後は押し切られるように犯られてしまう。ますみたんの最初の男らしいが、何でこんなのと??
これはホラーなのか? コメディなのか?
でもますみたんもこういうプレイに濡れちゃってたんじゃないの? と下卑た想像をしてしまうオイラも変態豚野郎だ!
深畑と言う役名もイイ。この名前からして変態っぽい(全国の深畑さんゴメンなさい) 。京都の線香屋さんを営んでいる設定。家族構成は奥さん(何でこんな奴が結婚できるんだ?) 。どんなセックスで作ったのか子供までいるのだ。病弱な妹。年老いた母もいる。
お前がしっかりしないとマズイんじゃないの? と思うが、仕事もしないでストーカー&変態プレイ。奥さんがよほどしっかり店を切り盛りしているのだろう。真っ昼間から仕事もしないで、ますみたんにベッタリ。留守だと勝手に部屋に上がりこんでいたり、マンション周辺をウロウロ。この壊れっぷり。何だか自分を見ているようだ(ホントか?) 。
セックスしまくるのでますみたんは妊娠してしまう。中絶したいが若杉の同意が必要。母親が若杉に電話をするが「ええ…ええ」 と生返事が気味悪い。こいつは都合の悪い話をされるとフリーズ。「きっと結婚するから。」 の極め台詞でますみたんに迫る鬼畜ぶりなのだ。
極め付きは女装者とのホモ&SMプレイ。爆笑というか気持ちワリー(笑) 。手足を縛られ化粧させられブラジャーまで付けて、「もっと苛めて!」 興奮したオカマが鞭でビシバシ!! ベッドで絡み合う。その際、若杉英二はオカマと派手に接吻するので口紅がオカマの口の周りにベチャベチャと付くのが生々しい。更にハイヒールに注いだ酒を飲まされてまたまた興奮!! ヒールでペニスをふんず蹴られて恍惚の表情。仕事とはいえ凄いゾ、若杉!! かつての二枚目がここまでやるとは。これこそが本物の役者根性だ!!(オイオイ)
更にスゴイのは相手を物色するために、オカマばかりのゴーゴークラブにやって来る。「サビシイんだよ〜ん。」 「カワイイ子が欲しいんだよ〜ん。」 人を介してオカマを物色するシーンはこれまた爆笑。オカマの皆さんと一列に並んでゴーゴーを踊るのだが、画面が異常に激しいフラッシュ点滅。その中で踊りまくる。深畑の目つき顔つきが異常だ。その後物色したオカマたちと3Pやりまくるのだが、もうグロだね。何だかイケナイものを見せられた気分(笑) 。
出演しているオカマの皆さんは本物らしい。クレジットに東京ゲイ・ガールズとあった。六本木吉野、錦糸町マサ子、銀座青江、名古屋ゲート、銀座ケニー、名古屋舟、新宿ジュン、名古屋赤い月。これは店の名前っぽいけれど、源氏名かね。気になったのは、銀座ケニーさん。この人もしかして、日活59年『暗黒の旅券』 に出ていたゲイボーイ・ケニー青木さん? 同一人物でもおかしくはないとは思うが、確証はない。この映画は40年前の映画。既に故人になられた方もいると思うけど、この人たちはこの後、どんな人生を歩んだのだろう。映画とは関係ないけど、チョッと気になった。
ラストは雷雨の中で刃物を持って吉田輝雄に迫る若杉。「ハレンチよ!」 クライマックスでタイトルを叫ぶますみたん。格闘になるのだが、体重差もあって吉田ピンチ! しかし雷がナイフを持った若月に直撃! 屋外にあるマンション廊下から転落。真っ黒焦げになった若杉の死体。「もう離さないよ。」 ガッチリ抱擁する二人の姿にいきなりのエンドマーク。
無茶な設定。強引な展開。若杉英二の鬼気迫る演技で一気に魅せます89分。だけどねぇ、この深畑さんの気持ちも分からないではない。オイラにも金と女があれば、こういうことするかもしれない。いやきっとするだろう。オカマや女装野郎は認めないが、変態プレイはやってみたいな(こらっ!) 。
こんな変態映画なのに、女性客が意外に多いのに驚き。アラサー風の女性が数人いた。アベック(死語) もいたよ。この後周辺のホテルにしけこんで、映画のようなプレイをするのかな? グヘヘ(猥褻笑ひ) 。
終了後、駅途中の博多風龍でラーメン&替え玉。これだからメタボが止まらない。時刻は20時。金曜じゃなくてもこの街は楽しそうな連中でいっぱいだ。不愉快なのでさっさと帰ろう(笑) 。人ごみをかき分けるようにしてまっすぐ帰りましたとさ。
帰宅後ネットで調べたらDVDが出ていることが判明。次の日に中野ブロードウェイ3Fのフジヤエービック覘いたらあったよ。石井輝男作品はやはり強いね。この人の作品は結構置いてあった。さすがやね。中古で3300円(端数忘れた) 。買ってしまった。ハレンチをもう一度。気持ちワリー。
DVDには予告編が付いているのだが、これもまたスゴイ。ブラジャー&パンティ姿。後姿にカメラが足元からスッーと上っていく。クルリとこちらを向くとそいつは女ではなく、口紅にメイク。化粧をした若杉英二。「これが男か? これが人間か?」 の字幕。女王様ルックのオカマと絡み合う姿に「淫獣」 の字幕。そして「若杉英二のセックス100態!」 どーしたんだ、若杉? 最後は素っ裸の橘ますみが秘部をカーテンで隠しながらカメラ目線でニッコリ。「この続きは劇場でご覧ください。」 この予告編もサイコーだ(笑)。
いやしかし、橘ますみでじょんじょろりん!! だ。
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