平日真っ昼間から・・・笑

 

27日天気の良い真っ昼間から、お馴染みラピュタ阿佐ヶ谷に出撃! 、『孤高のニッポンモダニスト映画監督中平康』

 15時からの『その壁を砕け』 鑑賞。14時20分にチケット購入。平日昼間なのに整理番号15番。あんたら仕事はどうした? (お前が言うな!) 。年配者は自分の青春時代の映画が観たくてやって来た映画ファンか? 、一人で来たお婆さんもいた。スーツ姿の中年男もいたけどサボり? 、残りはオイラのようなオタク者か? 。

 この作品を観るのは今日で2度目。手帳を見ると、ファーストコンタクトは1979年7月21日土曜日。19時から千葉テレビの放送だったと思う。その後、再見する機会がなかった。数年前の渋谷ユーロスペースの上映は用事があって行けなかった。フィルムセンターでの上映もタイミングが合わずに断念。今日は30年ぶりの再見である。当時観たのはCMでカットされたものだったので、完全版を観たのは今日が初めて。

 この作品は『誘惑』 と同様に鑑賞の機会の少ない作品である。そのためかマニアの間では『誘惑』 と同様に名作と奉られている。初めて観たとき、この作品はオイラに鮮烈な印象を残した。冤罪の恐怖や田舎のドロドロした人間関係が要領よく描かれていた。30年前に一度だけTVで観ただけなのに、結構記憶に残っているシーンが多かった。

 例えば、最初の方で看護婦の芦川いづみが同僚たちに送別会をしてもらう。彼氏の小高雄二とのなれそめを尋ねられて「ウフッ!」 と思い出し笑いをする姿・・・メンコイ。芦川いづみは現場検証にも立ち会う。地元民から豆腐を投げつけられるシーン・・・これ憶えているよ。丁寧な検証シーンも印象に残る。

 刑事になった長門裕之が上司の西村晃に結婚を勧められて「洗濯物が溜まって困ります。」 、だから結婚したい、ということなのだろうが、今なら絶対に婚活に失敗するだろう(笑) 。

 冤罪が晴れて芦川いづみと車で町を出て行くとき。長門裕之が小高雄二に握手を求める。爽やかに二人は握手をするのだが、納得できないものを感じた。小高にとって警察は敵じゃないか。危うく殺人犯にされるトコだったんだぜ。しかし最初に長門が疑問を持たなければ冤罪は晴れなかったのだから、この処理は妥当なのか。気の弱いオイラなら仕方なく握手するけど、絶対に根に持つね(笑) 。

 30年前はこれ傑作と思ったけど、今日観なおしたら傑作扱いするのには? マークが付いた。手際は良いし展開も分かりやすいのだが、真犯人の沢井杏介が橋の袂に隠した15万円を取りに来たところを長門が目撃するのは偶然。尾行したら愚連隊に殺されてしまうのはご都合主義的な感じ。この辺がマイナスなのだ。

 まぁでも良く出来ているのは確か。新藤兼人の脚本は登場人物の描き分けがしっかりしていた。母親の三崎千恵子にせっつかれて婚活しなきゃ、という長門の姿はユーモラス。

 長男の嫁として来たのだが、旦那が死んで居づらくなった渡辺美佐子。まだまだ若くてキレイ、貞淑な感じなので長門は惚れていた。実家に帰された渡辺を追って行ったら人夫で働きに来ていた神山繁と再婚していた。ここから疑問を持つのが発端なのだが、頼る人間が欲しかった、と吐露する渡辺美佐子の姿には年増女の屈折した感じが良く出ていた。

 ヒロイン・芦川いづみの出番は思ったよりも少なかったけど、容疑者とされた恋人を一途に信じる姿は美しかった。容疑者の情婦と迫害されても暗いところを見せない。こんな天使のような女性はいないよ、と言いたいトコだが、演じているのが芦川いづみさんなら納得してしまう。この人は聖女なのだから!! 。芦田伸介の弁護士もその姿を賞賛していた。

 そういや最初は菅井一郎を予定していたのを、台詞回しがトロすぎる、と芦田伸介に替えてしまったのは有名なエピソード。まぁでもこれは替えて正解だったと思う。ドロドロした地方の村を舞台にした話なのだから、芦田伸介がスパスパ切ってくれないと場が持たない。

 30年前に一度しかTVで観ていないのに結構記憶に残っているのだから、やはりこの作品は傑作という事になるのだろうか?

 映画は16時40分終了。バーAにでも行こうかと思ったけど金も無いしね。まっすぐ帰宅。

 そういや鑑賞の機会の少ない『誘惑』 なんか、30年前には関東UHF局をたらい回しのように放送していた。当時カセットテープに録音したオープニングは今でも持っています。