女子大学生 私は勝負する

 

19日土曜は19時20分からラピュタ阿佐ヶ谷で『女子大学生 私は勝負する』 鑑賞。『夢工房 東京映画 七色の日々』 と題した特集で上映された一本。

 当初この作品はノーマークだった。観るつもりは無かったし、作品の存在すら知らなかった。家のトイレで用足ししながらチラシを見ていたら(って汚ねぇなぁ) 、妙に気になってきたのだ。JOA出撃せよ!

 当時のプレスシートがラピュタ館内の壁に貼られていた。若者(大学生!) たちの風俗を描いた作品と書かれていた。この頃流行りの太陽族映画かな。サタデーナイトだというのに、共に過ごす友も彼女もいないオイラには、こういうヤサグレ映画はピッタリだ(涙笑) 。

 原作は門倉純子。主人公と同姓同名だから、自伝的小説だったのかもしれない。ネット検索してもこれ以外の作品が出てこないから、世に言う一発屋かな。

                           

原知佐子扮する建築科の女子大生・門倉純子が、学内で川合伸旺に誘われて金持ち学生たちのパーティに出る。川合はガタイも良くジャズバーでトランペットを吹いていたりする人生強気に生きている嫌な奴(笑) 。ジャズバー帰りに川合の車に乗ったら、川合は送り狼になって、強姦紛いに関係してしまう。原はこの時処女だったのかな? (もーよく憶えていない) これをきっかけに享楽的に生きている学生グループと行動を共にするようになる。

 グループの一人、露口茂は大企業の御曹司。車にモーターボート。豪邸の実家とは別にマンション住まいをしている。原はもともと親戚の家に下宿していたのだが、露口と同棲を始める。自堕落な生活で親からの仕送りがなくなり、建築事務所でバイトをはじめる。

 ここの社長? 設計士だったかな? が三橋達也。人生を「二倍稼いで二倍楽しむ」 がモットー。仕事が出来て、マイカー持ち。学生時代は拳闘選手で、豪華なマンション暮らしの三橋に大人の魅力を感じたのか、原は露口との同棲を解消。自立して三橋と付き合い始める。金持ちボンボンでプライドの高い露口は、自分からフルのならともかく、フラレたことに納得ができない。偶然遭った喫茶店でカラんだら、三橋の右フックでぶっ飛ばされてしまう。荒れた露口はグループの遊びでも暴れて川合にのされる始末。

 三橋の誘いで新型のモーターボートに乗る原の姿を目撃した露口は、自分のボートで三橋のボートを追う。追突するつもりだったようだが、三橋にスカされて岩に激突。露口は死んでしまう。

 三橋はさらなるステップを目指して海外(どこだか忘れた) に行くことになる。原も誘われるが、お互い別々の道を歩くことを決めてエンド。

                           

金持ち学生の無軌道な遊び(コーラ瓶をルーレットのように回して相手を決めてキスをしたり、高級車に当たり屋のようなことをして金を巻き上げたり、等) を描いたり、オープンカーにボート、豪邸でパーティとお気楽な生活ぶり。若者風俗を描くといっても、当時本当にこんな生活していた大学生なんていたの? いたとしてもひと握りでしょう。

 出演している若者たちも、これ東宝の若手なの? どこかの劇団から引っ張ってきたのか、見かけない人が多い。そのせいかこの辺の太陽族的な生活ぶりは観ていてしっくりこない。非常に薄っぺらなものに感じた。

 そんな程度の描写だからか、三橋を知ってからの原は、自堕落な生活を否定して自活への道を選ぶ。原作を読んでいないから分からないが、タイトルの「私は勝負する」 というのはこの辺のことを表していたのかもしれない。

 若者グループで目立っていたのは、川合伸旺の他は、春川ますみ、米倉斉加年くらい。ジャズバーのシーンで川合伸旺の後ろで蜷川幸雄が楽器弾いていたらしいけど、オイラには分かりませんでした。

 あくまで想像だが、この作品にはいろいろな人たちの思いが乗っかっていたのだと思う。原作者は自分の作品が映像化されたのはこれが初めて(おそらく) 。この先、作家としてやっていこうという野心を持っていたかもしれない。

 主演の原知佐子は新東宝から移ってきたばかり。これもしかして初主演? 春川ますみはストリッパーから女優に転身して間もない、米倉斉加年も映画に出始めた頃。露口茂も映画デビューして間もない。この作品をきっかけにスターに! なんて夢を描いていたのかもしれない。

 春川ますみはやたらと画面の隅をウロウロ。この人は若い頃からポッチャリだったのね(笑) 。良く言えばグラマーな肢体をアピール。米倉斉加年も負けてはいない。オカマっぽい喋りの学生役を熱演(笑) 。スターを目指して、皆少しでも目立とうと必死な感じがした。

 露口茂のボンボンぶりだが、これどーみてもミスキャスト。この人ネットで調べたら昭和7年生まれ。この映画の時は26歳くらいか。ただでさえ老け顔なのに、大学生役ってのもなぁ。オイラの世代だと『太陽にほえろ』 の山村刑事(山さん) なんだよな。山さんが大企業社長の父親から女との手切れ金20万円せしめるシーンがあるのだが、「山さん、止めてくれ!!」 画面に向かって突っ込んでしまった(ウソ!) 。

 エキストラで出ていた若者の中にも、スターになりたい! という思いの者もいただろう。この手の若者映画にはそんな夢や期待が詰まっている。

 プレスシートには露口茂の妹役を演じた柏木優子の他、野川美子、檜麻子を加えた3人を『コメットスターズ』 と書いてあった。東宝は3人娘で売り出そうとしていたのかもしれない。しかしあまりパッとしなかったらしく、以後は3人ともバラバラに活動。自然消滅してしまった。

 この作品に関わった人たちの思いの多くは不発に終わったようだ。

 監督の板谷紀之もあまり作品を撮っていない。共産党員だったらしいが、撮っていないのはそのためなのかな。東宝って、よく分からない監督が多い気がするけど、普段はどんな仕事していたんだろ。TVドラマデータベースで検索したら60年代は『コメットさん』 とか『俺とシャム猫』 、他TVドラマを撮っていたようだが、84年58歳で逝去。

 勝負する、と勇ましいタイトルだったが、すべてが不発に終わった作品、学生たちのバカ騒ぎが妙に虚しいものに感じられた。それでも今では爺さん婆さんの人たちが皆若い。そんな若者たちの空回りぶりが楽しかった作品。

                           

 
そういや三橋達也のマンションだが、結構高い建物で部屋も豪華なのにエレベータなし。原が階段をヒイヒイ言いながら登っていた。これ引越しなんて言ったら、業者は大変だろうな。

 ラストで三橋と原が工事現場で話をするのだが、裏には国会議事堂が見えていた。ググると国会図書館辺りではないかと書いているサイトがあった。こういうシーンは今となっては貴重な資料映像。スカパーあたりでやってくれれば検証したい。

ラピュタでの上映だが、オイラを含めて10数人。サタデーナイトなのに客の入りは悪かった。これもまた虚しい。