第6帖
ろくでなし稼業

 

70年代、テレビ東京、毎週土曜日PM10時〜11時40分まで『日本映画名作劇場』という番組があった。土曜の夜に邦画の旧作を解説付きで放送するという、現在の地上波では考えられない貴重な番組であった。不定期ではあるが、日活映画も放送してくれた有り難い番組だった。解説を担当していたのが元キネマ旬報編集長の映画評論家・白井佳夫氏である。
「皆さん、日本映画の本当の面白さは何でしょうか?」
番組の冒頭で白井氏は毎週この決まり台詞を言っていた。日本映画の面白さって何だろう?
 当時、邦画に目覚め始めたオイラはこの番組の・・・いや日活映画の無償の宣伝マンとなっていた。中学〜高校生くらいだったから日活映画が放送される時はクラスメートに番組の宣伝をして廻っていた。殆んどの奴は観てくれなかった。まぁ当然だよね。自分が生まれる前に製作された映画・・・・しかも邦画なんか観てくれやしない。
観ない連中は決まってこう言う。
「邦画?観ないよ。だってチャチじゃん。」
「邦画ってさぁ、何か暗いんだよね。」
「邦画・・・貧乏臭いヨ。」
どいつもこいつも分かっちゃいねぇよ。大体、邦画をバカにする連中はバカに出来るくらい観ているのか?ロクに観てもいないくせにイッチョ前の事、言うな!当時はそう思っていた。しかし今は、彼らの言う事も一理ある、と思うようになった。確かに日本映画はツマラナイものが多い。「もうちょっとマトモなものが出来ないのか!」そう言いたくなるような作品が多いのだ。わずかな予算、劣悪な製作環境。その他諸々の事情や制約があってそうなってしまうのだろう。オイラは日本の作家たちが必ずしも外国の連中より劣っているとは思っていない。様々な事情が絡み合って最初意図したものと違うものが出来てしまう。日本映画って面白いのは10本に1本じゃないかと思う。1本観ただけで評価出来ないのが日本映画だと思うんだよなぁ。当たり外れが激しいから同じジャンルの作品を大量に観ないと面白さが分からない。マニア(おたく)なら少しくらいつまらないものに当たっても辛抱?してまた次を観るけど、一般?の人はそんな事はしない。一本観て面白いかどうかだよ。
 日本で公開されている洋画が面白いのは当たり前。配給会社は製作国でそれなりにヒットした売れセンの作品を選んで持ってきているんだもん。例えばハリウッド映画なんかはアメリカ予選を勝ち抜いたスポーツ選手が日本でプレーしているようなモノ。これじゃ敵わないよ。しかも日本人は戦争に負けたトラウマの教育を受けたためか、洋物をありがたがる体質になってしまっている。映画の都ハリウッドでは年間何本の映画が作られているのかは知らないが、中にはクソみたいな作品も絶対にあるはずだ。全部が全部面白いとは考えにくい。しかし日本映画で『スターウォーズ』や『タイタニック』が撮れるかと言ったら・・・・無理だろうな。『スターウォーズ』は東映特撮モノのパクリ(これはルーカス自身も認めている。)ではあるが、映画会社にあれだけの物量を賭けられるだけの体力はないし、『タイタニック』のような作品を撮れるだけの余裕もないだろう。仮に撮れたとしても邦画である以上、日本人は観ない。どんなに良い映画を作っても、日本人ほど自国の映画を観ない人種はいないからだ。
 また邦画には「こんな作品、誰が観るの?」と言いたくなるようなものも多い。客は高い入場料払って観るのだから見せ場の多い派手な作品を観たい、と考えて当然だ。映画の出来に係わらず、地味な文芸物やチープな2時間ドラマみたいなものを作っても誰も観に来ないよ。普通、映画なんてのは彼女とか家族連れで観る事が多い。(オイラはいつも独りだが・・・)デートで映画観るのなら、非日常的な世界を見せてくれる派手な大作を選ぶ事が多いだろう。その方が女の子を誘いやすいし・・・食事だって高級フランス料理やイタ飯は食べても、お茶漬けや立ち食いソバは食べないよ・・・これと同じ。映画会社のエライさんはこの辺のところが分かっているのだろうか?
 ではどうすれば良いのだろう。オイラだったら子供や若い女向けのモノを量産するな。子供向けのものは家族で観に来るし、女向けのモノならカップルで来る。家族連れとカップルはお金を落としてくれるぜい!!(まぁ・・・・払いはみんな男だろうが。)とりあえずアニメや怪獣モノ、あとはTVで人気の俳優さんを主役にした作品で勝負だ!近年、邦画でヒットしたのは宮崎アニメかゴジラ、あとは『踊る大捜査線』や『ホワイトアウト』のような織田裕二モノばかりだもんね。地味な文芸モノは作らんゾ!!
 話しがずいぶんと脱線してしまった。日本映画の本当の面白さとは何だろう・・・・・?? それは金の鉱脈を探し当てるようなモノ。一本の傑作にめぐり合うには最低でも10本の映画を観なければダメ。時間はかかるが、めぐり合った時の喜びは大きい。

日本映画はオタクのものなのだ。一般人には用は無い、帰れ帰れ!!
(ああ・・・これでは日本映画に明日はないよ。)