第8話   オシャレな街になりました。

川崎銀星座

川崎である。60〜70年代の現代ヤクザ映画では広島と並んでよく舞台になった街である。神戸や横浜のような異国情緒はなく、浅草のような下町情緒もない(六区は川崎っぽいけれど・・・)。どこか殺伐として、街のあちこちでチンピラがとぐろを巻いていたり、繁華街にはゲロがぶちまけられていて饐えた匂いが漂ってきそうな無法地帯、東京と横浜の中間辺りに位置する中途半端な場所。そんな印象があった。(実際は違うけどね。)だからこそ現代ヤクザ物や実録物のヤクザ映画の舞台に頻繁に登場したのだろう。現在の川崎駅周辺は再開発されていて、70年代の面影はほとんど無くなっている。チネチッタのような複合型の映画館があったり、クラブチッタのようなイベント会場があったりと、なかなかオシャレな街に生まれ変わっている。川崎銀星座は川崎駅東口を出て、正面の通りを第一京浜方向に歩く。7〜8分歩くと右側にある

銀映会(暴力団みたいな名前!)商店街を入って20メートルくらい歩いて左側にあった。分かりやすく言うと、チネチッタ川崎の正面である。現在は下の写真のようにパチンコ屋になっている。しかしこのパチンコ屋も再開発のために2000年8月いっぱいで閉鎖になるそうだ。この街は更なる変化を遂げるようである。
 ここには2度来ている。正確な日にちは不明だが、1度目は1978年の春頃に、『男の掟』(68年作品、脚本・山崎厳 江崎実生 監督・江崎実生、主演・渡哲也)

 

 

2度目は同じく1978年秋頃、東映『隠密剣士』(64年作品、脚本・伊上勝 監督・船床定男、主演・大瀬康一)を観ている。
 1度目は電車だったが、2度目は都内の自宅から 川崎まで自転車で行ったのよ。日曜日、第一京浜をただただ走ったのを憶えている。行きは道も良く分からなかったし向かい風だったこともあり何と、3時間かかった。帰りは追い風だった為か早かった。と、言っても2時間くらいかかったけどね。しかし今、こんなエネルギーないよ。映画観るために、計5時間も自転車に乗るなんてもう考えられない。今もそうだが、オイラは働くのがキライだからバイトをしていなかった。だから、当時はホントに金が無かった。どこへ行くのも自転車だったよ。

さて川崎に来たのは良いが、例のごとく場所を憶えていない。再開発もされて街の風景も一変しているので、どこにあったのか見当がつかない。銀映会商店街入り口左側に靴屋があった。中には年配の店主の姿が見えた。早速、聞きこみである。で、教えてもらったのが2枚目の写真である(ちょっと暗いけど・・・)。いつ無くなったのかは不明。おそらくは90年前後だと思う。80年代後半くらいまでは『ぴあ』に載っていたような気がするからだ。小さくて、座席も内装も汚い場末の映画館だった。客席が階段状になっていた気がする。名画座なんて気の利いたものではなかった。お客さんも労務者や邦画オタクみたいなのばかり。邦画ヤクザ映画主体のプログラムが多かったので女性客は皆無であった。その辺は浅草的である。

   

川崎銀星座 詳細データ不明
1990年前後廃館?