拳闘野郎JOA

 

今夜のNECOは『星よ嘆くな 勝利の男』。日活スター登竜門のボクシング映画。裕次郎が57年に撮った名作『勝利者』 のリメイク。ボクシング映画は過去全ての日活スターが主演している。50〜60年代はボクシング黄金時代だった。日活以外でも多くのスターがボクシング映画を撮っている。
 この作品はボクシング物といってもストレートなスポ根物ではない。『勝利者』 と違いクライマックスのタイトル戦では八百長話に脱線してしまう。そこが最大の欠点。第1ヒロインは番付からいってルリ子しゃんなのだが、渡哲也が密かに思いを寄せる恩師の娘・橘和子(あまりパッとしなかった)も出番が多い。太田雅子(梶芽衣子)も出ているが、顔見世程度で台詞らしい台詞もない。この頃は添え物だが主演映画もあるのに、どうしてこんな扱いなの?

 二谷英明の役は元ウェルター級ランカー。現役時代は王者に挑戦したもののKO負け。目を傷めて引退。それでも王者の夢が捨てられなくて渡哲也に託す。この手の作品としては特に新味のない話だが、舛田利雄の職人芸はさすが。98分の作品だが一気に観られる。

 話は変わるが、ボクシングには命の爆発がある(岡本太郎か!?) 格闘術としては組み技に比べると効率は悪い。しかし麻薬みたいな魅力があるのだ。もちろん生理的な好みは人それぞれ。それでもボクシングに取り憑かれた人は多い。自分ではやらない(やらなかった)けど、後楽園ホールに行くといつも観戦に来ている人は多い。タイトル戦のみならず、選手の知り合いでもないのに4回戦だけのヤングファイト戦にも来ている人とかいる。中にはパンフレットに結果やスコアを書き込んだり、ノートに試合内容を記録している使い手もいる。最近はノートPCでやっている人までいる。おそらく自分のサイトか、常連になっているボクシングサイトに速報を送っているのだろう。高橋直人の本で『ボクシングジャンキー』なんてのがあったけど、その通りだ。今日の映画ではトレーナー役の二谷英明がこのジャンキーなのだろう。

 閑話休題、ボクシングの試合にはホントに爆発があるのだ。勿論全ての試合にあるわけではないが、爆発を感じる試合はたしかにある。観る側やる側問わず、ジャンキーになった人はそれを感じてしまった人なのだろう。