『危険な英雄』やっと観ました

 

 先月NECOで放送された東宝『危険な英雄』を観た。誘拐事件をスクープする冷徹な新聞記者・石原慎太郎の物語。映画が製作された57年当時はまだ誘拐事件の報道協定がなかった頃。新聞の売れ行き至上主義の慎太郎は誘拐された子供の命を顧みず、掴んだネタを平気で記事にしてしまう。おまけに刑事の志村喬の机から犯人のモンタージュ写真を盗み撮りして紙面に載せてしまう。結局、これが犯人・宮口精二を追い詰める結果となってしまい、子供は殺されてしまう。特ダネをスクープしたものの、非情なやり口が新聞協会からバッシングされ慎太郎はラスト、栃木の支局へ飛ばされてしまう。
 この非情な記者の役って、殆んど慎太郎は地でやってたんじゃないの?現在の慎太郎都知事の原型がこの映画にある!なんて突っ込みたくなるけれど、政治ネタは疎いので止めておきます(赤旗じゃないしネ)。
 映画を観る限り、当時はまだおおらかな時代だった事が分かる。誘拐事件があった事、身代金の受け渡しがある等、実況中継のように新聞に書かれたら、犯人は身動きが取れなくなるではないか。子供が殺されてしまうのも当然だ。こんな事は素人でも分かる。刑事の志村喬は慎太郎のライバル記者・仲代達矢に情報を流したりするのも変。大体、モンタージュ写真を勝手に盗み撮りなんて、現実にそんな事が出来るのか?刑事部屋に慎太郎が平気で出入りしているのはもっと変。マスコミ報道のあり方という視点で観るとイマイチの出来。
 それでも仲代達矢、志村喬、宮口精二が出ていると、何となく格調高い作品に観えてしまうのだから、この人たちはやっぱり名優ですな。ギターを使った『第3の男』風の芥川也寸志の音楽は秀逸。三船敏郎が犯人に呼びかけるプロ野球選手役で出演しているのはご愛嬌。そうそう・・・誘拐された子供の姉の司葉子には思わず、じょんじょろりん!!デス(結局これかい!)。