♪今夜は死ぬほど酔い潰れ〜♪・・・イカスぜ、天知茂!!

 

NECOで放送、『女体渦巻島』やっと観ました。末期の新東宝には珍しい総天然色映画。フィルムの状態が悪いのか?それとも元からこんな色なのか?色のあせたピンボケ気味のカラー画像がイカス。舞台は対馬。日本というよりも韓国の方が近い。オープニングでは「東洋のカサブランカ」となっている。おいおいホントかよ。NHKの『家族に乾杯』に出てきそうな、淋しい漁港がチラリと映るものの、何故かここには派手なキャバレーがあって三原葉子がマダムをしている。こう書くと日活のアキラ映画を彷彿とさせるが、金の無い新東宝では日活ほど、手の混んだセットなど組めるわけも無く、どこかチャチイ感じ。照明を暗くしてゴマかしているものの、明らかに狭くて安っぽい作り。渡り鳥&流れ者シリーズなら地元の風景や祭り、行事などを絡めて地方ロケにスケール感を持たせるものだが、石井輝男監督にはそんな技量がないのか?面倒で手抜きしたのか?それとも予算も日程もなかったのかな?そんな絵も一切無い。おそらくこれ対馬ロケしないで、どこか近場で済ませたのかもしれない。でもそんなチープなところが新東宝らしくてス・・・テ・・・キ(笑)。
 この島にやって来た吉田輝男。かつては三原葉子の恋人だったらしい。三原葉子はタダのマダムではなく、組織の幹部。組織のボスは誰かと思ったら新東宝の怪優・天知茂。この作品ではチョビ髭生やしてる。クライマックスでは吉田輝男に崖っぷちに追い詰められた天知茂は何と!吉田輝男と壮絶な殴り合いを演じてみせる。天知茂のアクションって、初めて観た!!一説によると天知茂は運動オンチらしい。そういえばこの人はスターにしてはチビだし、胸板も薄い。ハッキリ言ってガリガリのモヤシ君だ。アクション映画に出ても立ち回りは殆んどやらなかった。それがハンサムタワーの吉田輝男と殴り合い。くすんだ画像なので細部はよく分からないのだが、吉田輝男のボディに右のミドルキックを叩き込む!更にダウンした吉田輝男にサッカーボールキックを数発。強い、強いぞ!!と思ったら、足をとられて形勢逆転。卑怯にも石をぶつけて逃走する天知茂。こういうナリ振り構わない所がまたイカス(笑)。洞窟へ逃げ込んだ天知茂は銃を取り、三原葉子を躊躇無く射ち殺す。この徹底した悪役ぶりには拍手!最後は吉田輝男に追い詰められ、パトカーのサイレンも聞こえ、逃げられないと観念したのか「地獄の底から、お前を呪ってやるぜ!」の捨て台詞を残し、崖から落ちて海へ真ッ逆さま!!
 この映画は75分の作品だが、天知茂が出てくるのは後半から。にもかかわらず、吉田輝男が完全に食われてしまっている。天知茂に比べると、吉田輝男は背が高いだけのでくの棒だ。三原葉子は相変わらず良いね。映画の中盤、チョイ役で出ている男の歌で踊ってみせるのだが、ヘンな踊り(失礼!)。歌も♪今夜は死ぬほど酔い潰れ〜♪ヘンな唄〜!!どこかユーモラスな踊り。オールディーズっぽい踊り。こういうのを何と言うのか知らないけれど、当時はこんなのが流行っていたのかな??
 この『女体渦巻島』、チープでくだらないし、薄暗くて色落ちした画像は観にくいけれど、“女体”の中には万里昌代や星照美、等もお約束でいるのも良い。しかしオープニングで対馬の事を『かつては大陸侵略の基地であったこの島は、戦後は密輸密航の基地と化し、悪徳と汚濁にまみれていた』って、そんな事書いて良いのか??これ対馬の人が観たら、どう思うんだろ?