第7話
夜の勲章

 

万年ペケ社会人のオイラでもたまには真面目に仕事をする時もある。しかしオイラには勤労意欲も愛社精神のかけらも無いゾ、エッヘン。(って、イバル事ではないな。)
あれはいつ頃のことだろう・・・月末の金曜日だった。さすがにこの日は忙しかった。仕事が終わったのはPM9時を回っていた。あ〜、チカれた・・・・花金(死語!)だってのに残業とはツイてないぜ。とは言っても他にする事無いから別に構わないのだが、オイラは怠け者だからネ。嫌になるよ。さっさと帰ろう。早く部屋に引きこもって、カップラーメン啜ってオタクライフを満喫だ!
 エレベータで隣りの部署のレイコさんと乗り合せた。レイコさんは35歳、独身。長身で年の割にはスラッとしたプロポーションをしたキャリアウーマン、やり手の美人である。「お疲れ様です。」とオイラが言うと、レイコさんは髪の毛をかき揚げながら「GUTSクン、終ったの?ヒマだったら、ちょっと付き合わない?」と言った。おぉ、やらせてくれるのか!!・・・・・そんな事、あるわけないな。食事のお誘いだった。腹もへったし、レイコさんみたいな美人と飯が食えるとは残業した甲斐があったってもんだゼ!
 レイコさんと新宿に出た。さすがは金曜の夜である。街は楽しそうな若者達であふれていた。道に座り込んで、カップラーメンすすっている女の子たちがいる。お前らそれじゃ、ホームレスと同じだぞ!!地べたに座り込んでタバコをふかしているグループもいる。あいつら、どう見ても10代だよ。ストリートミュージシャンの一団が何だか訳の分からない歌を絶叫している。それに声援を送っている若い連中。不健康で退廃した世界だ。不謹慎な発言だが、こういう光景を見る度に日本は戦争をした方が良いのではないかと思う。いや、これでは戦争しても勝てないよ。北朝鮮あたりが攻めてきたら、日本は負けちまうぞ。
青春よ、武器を取れ!!
 オイラたちはホモで有名な二丁目に行った。そこにはレイコさんの知っているタイ料理のお店があるそうだ。30席ほどある、居酒屋風の店内には客が7〜8人いた。窓際の席について、タイ人の店員にシンハービールと料理を注文した。オイラはタイ料理は好きだ。特にグリーンカレーが良い、ここのカレーは特別辛かった。口の中が火傷しそうだ。シンハービールを喉に流し込んで辛さを鎮めた。酒も入り、レイコさんと話をした。レイコさん、結構いろんな男と遊んでいるみたいだ。まぁ、歳の割に派手な美人だから、当然といえば当然だろう。週に1度はクラブへ踊りに行くそうだ。おまけに妙にイタ飯屋やフランス料理の店とかにも詳しい。ホテルオークラのフランス料理の店に行ったとか、恵比寿のタイユバンでディナーを食べたこともあるそうだ。タイユバンでディナーなんて、良いワインも頼めば下手すりゃ1人10万円くらい取られるんじゃないの。高かかったでしょ?と尋ねたら、「そうだったかもね。」だって。やっぱり自分で金、出したんじゃないのね。どうでも良いけどさ、それ奢らせた男に何かさせてやったの?まさか奢らせて「ゴチソウサマ。」の一言で終わりかい?
「当たり前でしょ。食事代で体は売らないわよ。」
ヒデェなぁ・・・・35歳だとバブルの頃、相当良い思いをしたのだろう。レイコさん、おそらくその頃の感覚のままなのだろうな。男の金で良い服を着て、美味いモノを食べる。これは女にとって勲章なのだろうか。男にとってはイイ女を連れて歩く事が勲章なのかなぁ。たいていの男は自分の彼女や奥さんよりも美人を連れている男には、一瞬「負けた。」と思うのだそうだ。そういや美人の奥さんを持っている男は周囲から一目置かれる事が多い。しかし美人はそれなりのステータスのある男にしかくっつかないから、オタクのオイラには関係の無いことだネ。

 でもレイコさん、そろそろ考えなよ。あんたも、もう35歳。若くはないんだよ。貢いでくれる男だって段々と少なくなっているだろうし、クラブへ行ったって周りは若いコばかりだろ。若いコに「オバさん。」って呼ばれないと分からないんだろな、合掌。
あっ、そうだ!レイコさん、今日はワリカンだよ!