すぐに書かなきゃダメだね・・・『黒と赤の花びら』

 

61年新東宝倒産後に出来た配給会社・大宝映画。僅か3ヶ月しか持たなかったらしい。その間に6本の映画を配給したようだ。そのうちの1本は大島渚監督の『飼育』 。これは有名作なのでフィルムの存在もハッキリしていてDVD化もされている。

 倒産後、フィルムの所在も不明で鑑賞は不可能と思われていたが、3本のフィルムが発見された。そのうちの一本 佐川プロ製作の『黒と赤の花びら』 上映が行われるというのをネットで知って出撃してきました。

 7月19日日曜日、13時。場所は新橋TCC試写室。JR線のガード地下。まるで新東宝『地帯シリーズ』 に出てきそうな迷路。こんなトコに上映施設があるとは知らなかった。 既に鑑賞から1ヶ月。もう細部も忘れている。すぐに書かなきゃダメだね。

<ストーリー>

 嵐の海。船内を物色する西条(安井昌二) は船長・沖竜二に見つかり航海長の蛭間(細川俊夫) の銃口にさらされる。銃が火を吹いたところでタイトル。

 船は沈没。安井は生死不明。この船会社は沈没事故が相次ぎ、安井昌二は調査のために潜入していたのだ。保険会社社長の二本柳寛は安井の同僚で親友の天知茂に調査を命じる。

 港にやって来た天知は“OKの松” と呼ばれる情報屋(大友純) から百円札で情報を買う。夜の街を走る観光バスで飲む“ドライブバー極楽” を経て百瀬という男にたどり着く。キクスイホテル201号室に行くと百瀬は殺されており、現場に立ち尽くす女・アキ子(上月佐知子) がいた。
 上月は安井の婚約者で単身、安井の死の謎を追っていた。一度は上月とその場を離れるが、上月が安井の形見のシガレットケースを落としてしまったので再び現場に行く。そこにはあるはずの百瀬の死体が消えていた。翌日、百瀬の死体は轢死体として発見される。

 大友の話では、百瀬は怪しげなヌードスタジオのカメラマン花田(丹波哲郎) から金を借りていたらしい。大友の案内でやって来た賭場で丹波と対面。丹波の情報から“キャバレー宇宙人” に行く。キャバレーでは松尾和子が歌っていた。ここのダンサーがガガーリン(三原葉子) 。店には細川俊夫が出入りしていた。細川に殺されかかるが脱出。

 丹波から力道山のプロレスチケットを貰った天知。会場で出会った女がナイフで殺される。 丹波も事件に関わっているようだが、丹波の正体が今ひとつ分からないうちに話が進む。そのうちに殺されたという設定で出なくなる(笑)

 事件には麻薬の密輸組織が絡んでいるらしい。運び屋をしているのがドレッセルクラブと呼ばれるデートクラブ(売春組織?) 。上月はクラブに潜入するが正体がばれてしまい捕まる。

 三原に誘われた天知だが、ビルの一室に閉じ込められてしまう。腕時計に手紙を付けて外で遊ぶ子供に拾わせて助けを呼んで脱出する。

 三原葉子は丹波の妹。捕まった上月が船に連れ込まれたので乗り込む。船は沈没していなかった。無国籍状態にして密輸に使っていたのだった。
 この船の船長が冒頭で殺された安井昌二。調査員として潜入したものの、今では組織の中心人物になっていた。三原葉子は安井の情婦。天知に追い詰められて二人は夜の海にダイブ。死んでしまう?

 警官隊がやって来てメデタシメデタシ。波止場を歩く二人の後姿にエンドマーク。


                       

鑑賞から一ヶ月以上経過したので忘れてしまった点が多い。メモ帳を見ても細かく書かなかったため記憶が繋がらない。もう一度観てみたいが、おそらく二度と鑑賞の機会はないだろな。

 出演者の多くは新東宝残党。三原葉子の出番は少ないが、この人が出ていると『地帯シリーズ』っぽくてイイ。大友純があのツラで「オーケーオーケー。」 と言うのは笑える。最初はオーケーではなくて、包茎かと思ったのはオイラの根性が皮被りだからだろう(笑) 。

 ヒロインの上月佐知子といえば、オイラの世代だと『流星人間ゾーン』 の母親役。現在でも現役なのは嬉しい。

 丹波哲郎は何だったのか? 憶えていないのが残念。しかも映画の途中でいなくなってしまうのだ。殺されたと言う台詞だけで済ませるなよ。

 保険調査員の天知茂がどうして危険を犯してまで事件を追うのか、その辺の動機の説明が不足しているが、新東宝の怪しさが大宝映画という、これまたよー分からん会社配給の2乗で怪しさ満点。好きだなこういうの。

                       

 上映終了後、この映画のチーフ助監督をしていた山際永三監督トークショー。

ロケは61年12月から行われた。年末27日に製作資金が底を尽き一時中止。これで終わりかな、と思ったら、大晦日にいきなり佐川社長から「金が出来たから作るぞ!」  と呼び出され、山際氏がスタッフや出演者に声をかけて正月返上でロケしたらしい。そうは言っても金はない。最初の数日こそ小田急のバスを借りてロケバスに使っていたが、 金が続かないので移動はタクシーに分乗していたらしい。カメラなどはトランクに入るが、レフ板は積めない。車の屋根の上に被せて左右から手で抑えて運んだ。そんな苦労して作った作品なのでトークショーでの山際氏の記憶は鮮明だった。「貧乏な状態で撮ったのに、良く出来ている。」 と語る。

 シナリオタイトルは『海の罠』 だったが、これでは地味すぎると、会社側は変えてしまった。水原弘の『黒い花びら』 に引っ掛けたのではないか?(笑)

 1月に完成したこの作品だが、そのときには大宝は業務を停止してしまう。元々配給網も脆弱。東京では新宿の“地球座” の1館だけ。全国でも数館程度だったらしい。
 フィルムが長く行方不明だったのは、会社が消滅した時に債権者が持っていってしまった。債権者もこんなフィルムを貰っても仕方がないので廃棄してしまったのでは? と思われていた。今回発見された事を喜んでいた。