夏の嵐(56年86分白黒 原作・深井廸子 脚本・長谷部慶治 監督・中平康)
オープニングは嵐吹きすさぶ砂浜。水着姿の深井綾子(北原三枝)のアップ。「卑怯よ〜!!」と叫んで嵐の海に飛び込んでいくシーンにタイトルが被り映画が始まる。北原は葵中学の英語教師。家庭はなかなか複雑なようで父・義孝(汐見洋)、母・みつ(北林谷栄)、姉・妙子(小園蓉子)、弟・明(津川雅彦)の5人家族。かなり裕福な家庭で豪華な屋敷に住む。北原は幼い頃、里子に出されたらしいが養父が亡くなって戻ってきたらしい。そのせいか家族や学校に対して冷めた考え方をしている。「洗練された容姿、誰にも負けない豊かな知識、際立った才能。私はそれで人を魅了しようと思った。人間の愛情なんか求めているのではない。人を自分の前にひざまずかせ、自分の誇りを汚さぬようにするためだ。・・・(家族に対しても)私はこの人たちを愛していない。」という台詞もある。津川は本当は弟ではなく従兄弟。津川は医学部志望の浪人生だが美しい北原に恋愛感情を抱いている。ある日、小園が婚約者・秋元啓司(三橋達也)を家に連れてくる。北原と三橋は互いに顔を合わせて愕然とする。北原は一昨年の夏に女学校時代の友人たちと山に行った。夜、独りで湖畔に出た北原は口笛を吹いている三橋と出会う。北原は「どんな手段を用いても彼を私のものにせずにいられなかった。」衝動的に抱擁、接吻をしていたのだった。自殺未遂の過去のある三橋が小園との結婚を選んだのは「平凡な人生に身を委ねることは死ぬことに等しい。」と思ったからだった。、奔放な北原は小園に内緒で三橋とデート、遊覧船に乗り夜の外人墓地で抱擁する。学校で劣等生の大門(大鶴義英)から「好きだ。」と告白?される。大鶴は知恵遅れ?爪をかむ癖があった。注意した北原は大鶴を殴ってしまう。「・・・私は自虐的な衝動でその子を打ち密かな快感を覚えたことは人間として恥ずべきことであったのだ。」大鶴はPTAの会長の息子だったために問題となる。大鶴の父親に顔の利く同僚教師の城戸(金子信雄)が揉み消す。金子は以前から北原に気があった。北原は金子と音楽会に行きその夜は金子とホテルに泊まる。さらに津川とも関係する。一時はマリッジブルーになり結婚を延期したいと言っていた三橋と小園の結婚も決まり式の予行練習も行われる。夏の終わり、北原、津川、三橋、小園の4人で海へ行く。まだ晴れているが台風が近づいているらしい。砂浜には他の客もいない。一泳ぎした後、ビーチパラソルの下で休む4人。気が付くと三橋の姿がない。三橋は一人で沖へ向って泳いでいる。台風の影響か海は荒れている。危ないので呼び戻そうとするが3人の声は届かない。北原は「卑怯よ〜。私はそんなの許さない」と叫び三橋の後を追って海に飛び込む。荒れる海、波間に三橋と北原の姿が消えて行きエンド。
ストーリーにあまりメリハリがなく、心情を吐露する台詞が多いので観ていてちょっと退屈な作品。人間関係や家族関係の設定が未消化の感は否めない。生徒を殴って快感を覚えた、という台詞があるからS女なのか!?オイラ的にはこの辺を膨らませてくれればじょんじょろりん!!なのだがそれは無理(って当然!)。何故嵐の海に消えて行くのかも良く分からん。原作はどうなっているのか知らないが86分の映画では分かりにくい。三橋、金子、従兄弟の津川と関係するのもセックスシーンがないのでこの辺も不満。50年代で北原三枝では無理か。でも北原はキレイなので無くても良いよ(笑)。
(2003年11月8日記)