女と命をかけてブッ飛ばせ

 

今月のNECO『ようこそ新東宝の世界へ』。宇津井健主演の『女と命をかけてブッ飛ばせ』を観ました。もうタイトルが最高!!こういう安易なタイトルで映画を作ってしまうこのセンスが良い!だから潰れたんだよ、という突っ込みはナシ。宇津井健の役は新聞社のバイク便ライダー。タイトルバックではバイクをぶっ飛ばす宇津井健の顔のアップ(とても飛ばしているようには見えない)。冒頭から「命なんか惜しくねえよ。」 「オートバイで死にてえんだ。」 白バイ警官から目を付けられている宇津井健の運転ぶりはコワイ。信号無視、無理な追い越し&すり抜け。オイラも車やバイクに乗る事が多いが、こんな奴が来たら大変だ、さっさと道は譲るよ。しかし現実にこういう運転をするバイクは多い。先日も車に乗っていたら、強引に抜いていったバイクがいた。オイラとは関係のないところで事故って死んで欲しい。

 映画はバイクではなく、水上ボートのエンジン開発競争に絡む陰謀話になる。悪役・芝田新の会社と、宇津井健の親友で、新聞社のセスナのパイロット・伊達正三郎の兄・若宮隆二の会社との開発競争なのだが、何とも強引な展開は新東宝というよりも、宇津井健映画という感じでイカス。前述した札付きの悪質ライダー(あえて言わせてもらう)の宇津井健が色っぽいクラブママ・魚住純子に誘われて芝田新の会社のボート乗りとなる。その後、ライバル会社が伊達の兄の会社と知った宇津井健だが、芝田新とは契約をしてるし魚住純子は色っぽいしで、仕方なく芝田の会社で働くのだが、伊達の操縦するセスナが墜落、伊達は松葉杖となってしまうし同乗していた記者の国方伝は死んでしまう。おまけにテスト操縦していた若宮隆二は燃料タンクに砂を入れられ爆発、殺されてしまう。伊達の墜落は事故なのだが、ボートの爆発は芝田の仕業。宇津井健は芝田の会社を飛び出し、事業を引き継いだ伊達に協力する。アメリカ人バイヤーを前にレースをすることになるのだが、芝田は伊達の妹で宇津井の恋人の星輝美と国方伝の恋人・三条魔子を人質にレースに負けるように脅迫してくる。一度は断る宇津井だが(って断るなよ)、レース直前、魚住が二人を助ける。全力で飛ばす宇津井を芝田がライフルで狙うが失敗。何故か?敵ライダー・泉田洋志に当たり芝田に突っ込み、悪党は全滅、メデタシメデタシ。ラストは魚住のオープンカーに星輝美を乗せた宇津井健がぶっ飛ばして行くトコでエンド。
 宇津井健はどうみてもボートのレーサーには見えないし、相変わらずエラそうな態度(笑)。姿勢が良いせいか、上体が硬そう。芝田の経営するキャバレーで星輝美と三条魔子が働くのも解せない。

 宇津井健がバイクで走るシーンは原宿で撮ったと思われる。星輝美が白バイに捕まるシーンは表参道通り、青山同潤会アパート(現・表参道ヒルズ)前。60年頃は表参道通りも高い建物がないので、道幅が広く見える。この辺りは、同じくNECOで放送中の成田三樹夫主演『土曜日の虎』(65年)でも頻繁に登場(成田三樹夫の事務所が明治通りと表参道通りの交差点付近のため)、この頃になると若干、オシャレなビルが出てくる。東京の景観が変わるのは東京オリンピックを境にしてだから、60年頃はのどかなものだったのかもしれない。明治通り、神宮前1丁目の信号近辺を通過するシーンもあった。他、魚住純子のオープンカーと走るシーンは代々木の体育館辺りだと思うんだけど。ロケ場所を推測するのも、古い邦画の楽しみだと思う。