第3話
女を忘れろ

 

オイラがネットデビューしたのが97年頃。
最初は右も左も分からなかった。頭が悪いので試行錯誤の連続だった。ネットに慣れてきて最初にハマッたのが「お見合いネット」、いわゆる「出会い系」というやつだ。しかし返事が来る事は殆んど無い。女の子のところには全国からオイラのようなモテナイ男たちから飢えた熱いメッセージが山のように届くらしい。競争率が異常に高くなるので、よほど目立つ楽しいことを書かないとダメなのだろう。
 オイラの経験では返事が来るのは10通に1通。今まで500人の女にメールを出した。一度でも返事が来たのは50人。3〜4回メール交換が続いたのは50人中、20人。5回以上交換したのは20人中10人。実際に会ったのは10人中4人。4人中2人は会った次の日にゴメンナサイのメールが来た。残りの1人だが、会ったきりナシのつぶて。もうメールが来なくなった。
もう1人とは・・・・・・・・

 あれは99年のGWの時だった。オイラはJR錦糸町駅にいた。
お見合いネットで知り合った、キョウコちゃんと初めてオフで会うからだ。
キョウコちゃんとメール交換をはじめて3ヶ月になる。メールの波長が合ったのか、ほとんど毎日やりとりをしていた。キョウコちゃんは31歳。詳しくは分からないがデザイン関係の仕事をフリーでやっているそうだ。錦糸町というローカルな場所(地元の人、スマン)を指定してきたのは、キョウコちゃんの方だ。近くに住んでいるのだろう、時々遊びにくるそうだ。田中美佐子似のキレイな人だった。会えない時の為に、お互いの携帯番号を教え合っていたので相手を確認する事ができた。お茶しながら話をした。キョウコちゃんはボーリングが好きらしい。時々、仕事関係の人達とやるそうだ。で、ボーリングをした。オイラはボーリングをしたのは平成になって初めてだ。イヤァ〜!!女の子とやるボーリングがこんなに楽しいとは思わなかったよ。以前、やったのは仕事関係のゴツイ兄ぃちゃん達とだもんなぁ。ボーリングの後は食事をした。本当に楽しかった。その日は和やかな雰囲気?で別れた。
第一ラウンド終了ってところである。

アナ「浜田さん、どうでしょう?」
浜田「そうですねぇ。相手の出方を見たということでGUTS選手、良い立ちあがりですよ。」

 ここまでは良い。問題はこの後である。
今までの経験では、こちらがメールをしてももう返事が来なくなるか、ゴメンナサイのメールが来るかのどちらかなのだ。しかし今回は違った。何と!いつも通り、メールが来たのだ。ああ、良かった。ホッとした。しかしイヤな予感はしていた。
錦糸町のオフから1〜2週間ほどしたあたりで、オイラは2度目のデートの勧誘をした。はぐらかされる様にやんわりと断られた。それでもメール交換は続いた。と言う事はいくらかは脈はあるのか?
まぁ良い・・・・この辺は微妙だから、ユックリと攻めていこう・・・・・・・・・ムフフ。
 そんな時、オイラのパソコンの調子がおかしくなった。
オイラはパソコンはあまり詳しくない。面倒だから、リカバリーした。悪魔?がオイラに囁いた。
「良い機会だからWin98にしようぜ。」
この時までオイラはWin95を使っていた。98のアップグレード版は買ってあったのだが、インストールに自信がなかったので、やらずにいたのだ。98インストールの準備は出来ている。メモリーもHDDも増設してある。あとはやるだけである。
「ようし、やってみるか!!」
オイラはWin98インストールにチャレンジした。インストールは本で読んだ通りで簡単なのだが様々な設定が面倒だった。環境設定っていうの?よく判らないけど。うまく行かなくて、3度もやり直した。
その度にリカバリーしたりして、最初からやり直したよ。サポートセンターにもTELしまくり、仕事の合間や夜中にやったので、出来あがるのに3日かかった。1度目のインストールがうまく行かなかった時、正直あせった。出来ないと、キョウコちゃんにメールが出せない。そう思ったオイラは、キョウコちゃんの携帯にTELした。オイラは「パソコンの調子が悪くなったので、しばらくメールできません。直ったらメールします。」と言った。キョウコちゃんはオドオドした感じで、「わかりました。」と答えてくれた。TELを切った後、「何か、キョウコちゃん。よそよそしかったな。」そう思ったが、ビックリしたのだろう、と解釈し、作業に没頭した。
 3日後、パソコンが生きかえった。Win98もバッチシだぜ!!
しかし今回は本当に苦労した。悩んだ。気が滅入った。インターネットやブラウザの設定もして、オイラはネットに接続した。3日ぶりだぜ!ほとんどネット依存症になっているオイラにとって、3日は長かった!!メールの確認をしよう・・・・オイラはメールボックスを開いた。
そこで見たものは・・・・・・・!!!!!

 メールが来ていた。キョウコちゃんからだった。
「・・・・・これ以上、メール交換をしていると、GUTSさんに期待をさせてしまうようです。それではGUTSさんを傷つけることになってしまいます。だからこれをラストメールにします。もう会えません・・・・・サヨウナラ。」
ガ〜ン・・・・ドカ〜ン・・・・・ポコぺ〜ン・・・・・ジョンジョロリ〜ン!!!!
何と言って形容して良いのか分からないほど、ショックだった。送信時間を見ると、オイラがTELした一時間前になっていた。おそらくキョウコちゃんはこのラストメールを見て、怒ってTELしてきたのかと思ったのだろう。それで、声の感じが変だったんだ。今から考えると、あの時のキョウコちゃんの声は何かを警戒している風だった。まぁ、ネットでもリアルでもゴメンナサイされるのは毎度の事だが、
キョウコちゃんはオイラ好みだっただけに少なからずショックだった。
ったくよぉ!!これだから女は・・・・・精神的には大っキライだぜ!!
あれから何人かの女のコとメール交換したが、どうも続かない。
あぁ・・・こんなオイラの上にも、いつかは星は降るのだろうか?