エロは儚い、しかしピンク映画は不滅なのだ

 

9日土曜日。またまたラピュタ阿佐ヶ谷で『60年代まぼろしの官能女優たち』 に出撃! 3月から続いたこの特集も今回がラスト。トリを飾るのは香取環さん主演の『悲器』 。朝10時40分にチケット購入。整理番号は3番。トークショーが無いとこんなもの。

                      


 
20時50分開場。客は30人くらいか。行った事のある方ならご存知だろう。ここは整理番号順に入場する。最初に整理番号1番から5番が呼ばれる。3番のオイラは当然3番目に入る権利がある・・・はずだった。ところがオイラの前には既に5人並んでいた。何だよこれ。オイラは3番だぜ。何で5人いるの? 仕方が無いから6番目になってしまった。これって一人順番を無視している奴がいるって事だ。通常なら5人入った後に6番から10番が呼ばれるのだが、目の前のオイラを怪訝そうに見る係員。番号を見て中に入れてくれたが、一瞬「テメエ順番守れよ!」 的な視線を感じた。気のせいかもしれない。しかし少し不快な気分になった。だいたいこの係員が番号をチェックしていればこんな事にはならないはずである。せっかく3番だったのに・・・まぁいつもの場所に座れたから構わないけど、上映前から面白くない。


                      


 
すぐに書かないからスト−リーもだいぶ忘れている。

 茨城県? の港町にあるニッカバー・ムーランは飲み屋兼売春宿。一階が飲み屋。2階には部屋があり3000円出せばホステスが相手をしてくれる。港に立ち寄った漁船の連中が遊びに来る。この連中は常連さん。その中にいた青年・テツヤ(名前知らん) は童貞。こういう店も初めてなので緊張。ヨシエ(香取環) が上手に筆下ろししてやる。テツヤはヨシエに夢中になってしまう。

 ヨシエは人妻だが旦那は借金を作って2年前に蒸発。金額は10万だが、利子が付いて30万円。高利貸し(名前知らん) から返済を迫られている。幼い娘を抱えて仕方なく売春婦をしている。ヨシエに言い寄る高利貸し。もみ合った際、やかんが倒れ眠っていた娘が火傷。あわてて娘を抱えて表に飛び出すと、テツヤの車とバッタリ。車で病院に連れて行く。この事で親しくなった二人。娘に玩具を買ったりと親切にしてやる。真面目なテツヤにヨシエも少しよろめく。

 店には他に数人の娼婦がいる。その中の一人、モトコ(これ誰だっけ?) には付き合っている男・リョウ(名前知らん) がいる。結婚を約束しているというが、定石通り詐欺師。ある日警察に捕まってしまう。

 他に痴呆状態になったタミ(名前知らん) がいる。元は娼婦だったのだが、無理がたたったのか? ボケてしまった。ヨシエが食事を運んだりと面倒を見ていたが、ある日階段から落ちて死んでしまう。

 テツヤの船が出ることになる。このまま別れられないテツヤはヨシエにプロポーズ。今度の航海は二十日間。その間の生活費は給料を前借りするから店は辞めてくれ。娘と3人で暮らそう。出航前に金を渡す、と約束するが、ヨシエは港には行かない。モトコにテツヤ宛ての別れの手紙を託す。船は出て行く。砂浜を一人歩いていくヨシエの姿にエンドマーク。


                      


 
港町の売春婦たちの群像劇とも取れる作品であったが、酒場のセット(これどこかの店を借りたの?) もチャチイ。港町もホントの田舎の港でとても売春宿があるように見えない。新味の無い話で特に面白いとも思えなかった。クレジットには香取環の他、松井康子、可能かず子、の名前があったが、初心者のオイラにはよー分からん。


                      


 
ピンク映画というのは決してメジャーにはなれない世界。フィルムが処分されて二度と鑑賞する事が出来ない作品も多いらしい。

 しかし内容もただやりまくるだけのAVとは違い、男も女もしっかりと役者をしていた。若松孝二監督は「300万でもこれだけのモノが作れる。」 と胸を張っていたっけ。

 恥ずかしながら今まで知らなかった。香取環さんは名前だけ知っていたが、久木登紀子さんを意識したのも今回の上映を観てからだ。葵映画の存在も西原儀一監督の名前も知らなかった。修行が足りません。

 ピンク映画は現在でも途切れることなく新作が作られ続けている。上映している劇場も少ないし、館内の治安は浅草的で決して安心して観られるとは言えない環境だ。それでもこういう世界を愛好する人たちがいる。ネットやミクシィを検索して回ると、この手の作品を研究している人たちが大勢いた。製作側も観客もアウトサイダーとしての意地と誇りを持っている。こういう人たちがいる限りピンク映画は不滅なのだ。