青年! 青年とは何か?

 

今夜のNECOは我が心のお姉さん・芦川いづみさんご出演の『青年の樹』。 主演は裕次郎なのだが、野郎はどうでも良いのだ。公開されたのは60年4月29日。GW作品だ。今観ると女優陣が豪華。芦川いづみさんの他、北原三枝に笹森礼子(新人!)、 やはり新人の表記ありの和田悦子もいる。裕次郎映画なのに、第一ヒロインが北原三枝ではなく芦川いづみさんなのはどうして?

 原作が石原慎太郎のせいか、ノー天気な大学生モノではなくジェット機汚職や底辺の労務者の生活苦みたいなのも出てくる。裕次郎のクラスメートの小高雄二&和田悦子はブルジョア学生。出番は少ないが親同士の決めた政略結婚をするらしい。しかしそこには悲観的な感情はない。二人とも金持ちの生活を満喫、明るく割り切っている。アメ車のオープンカーを乗りまわし、パーティをするシーンがあった。大学生モノというと、派手な遊びのシーンが多い。当時は大学進学率も低かったから誤解した若者は絶対にいたはず(断言!) 東京の大学生になれば、こんな生活が出来る。そう思った地方の若者はいただろうな。

 しかしこのアメ車は苦学生・梅野泰晴がアジ演説している横を煙を撒き散らして通り過ぎるシーンがあった。同じ学生でも全く違う生活。格差社会ってやつだ。そんな状況を挿入してみせるのは流石!

 裕次郎は大学生だが、横浜の沖仲士たちを仕切るヤクザの組長・芦田伸介の息子。敵対する組との抗争で芦田は殺される。代貸しの大坂志郎は後を継ぐ事を勧めるが、裕次郎はヤクザを嫌って組を解散。勤労学生になる。しかし組がなくなって200人の組員の多くは路頭に迷っているのを知る。窃盗未遂で捕まった者、敵対する組に虐待されながら港で働いている者。最後まで組の事務所を守っていた大坂志郎も殺され、裕次郎は殴りこんで来たヤクザと乱闘。大学はクビになる。憤慨した学生たちが講堂に集まり集会を開こうと歩き出す姿に映画の冒頭の入学式シーンで総長・滝沢修の祝辞がかぶる。

「青年!・・・・・戦え、挑め、そして逃げるな。それでもし傷つく事があれば、それこそ諸君が真の青年である証である。敗れる事は恥ではない。闘争こそが青年の持ちうる誇りと純潔である。律儀な好青年であるよりは、自分に誠実な法楽こそが青年の本当の姿というものである。」

 この台詞は原作にあるの? スゴイね、慎太郎。さすがは一ツ橋の秀才だ(オイラにとっては耳の痛い台詞)。

 結局裕次郎は組を再建する事を決める。それなら最初から解散する事はなかったのだ。映画の中盤で、大坂志郎の止めるのも聞かずにいきなり解散宣言してしまう。おいおい200人の組員はどうするんだよ。いきなり失業者だ。これでは流行の派遣切りと同じじゃねえか。

 いろいろ考えてしまうこの作品だが、GW作品らしく顔ぶれも豪華。この作品の笹森礼子はルリ子しゃんに似ている。美人!! もっと活躍して欲しかった一人。毎度の事だが、芦川いづみさんには見とれてしまう。こんなキレイなお姉さんに構って欲しい(オイオイ)。