谷口千吉…男の世界だ 1

 

現在、ラピュタ阿佐ヶ谷では谷口千吉監督特集が行われています。

6日日曜日は『銀嶺の果て』 鑑賞。

 三船敏郎のデビュー作。谷口監督のデビュー作でもあり、脚本を盟友だった黒澤明が担当したことで有名な作品。DVD化もされているようだが、恥ずかしながら初見。

 銀行を襲って冬山に逃げ込んだ3人組の強盗(志村喬、三船敏郎、小杉義男) 。途中小杉は雪崩で死んでしまい残った二人は山小屋に逃げ込む。そこには高堂国典の爺さんと孫の若山セツ子、山男の河野秋武がいた。3人の人情に触れる志村喬。三船敏郎は若くて冷酷、凶暴な男。河野の案内で山を越えようとするが、冬の北アルプスは難所。崖から落ちそうになった志村と三船を救おうと怪我をした河野。三船は志村の金を奪い、河野も見捨てて一人で逃げようとするが、改心した志村と争って崖から落ちて死んでしまう。動けない河野をおぶって山を降りる志村。警察に捕まるのを承知で下山。小屋では警察が待っている。河野は助かり志村は逮捕される。山を去っていく汽車の窓から冬山を見上げる志村にエンドマーク。

 これ志村喬が主役の話だと思うのだが、クレジットのトップは三船敏郎になっている。周知のようにこの作品元々は『山小屋の三悪人』 というタイトルだった。いつ頃代わったのだろう。大人の事情で変わったのかな??
 この頃の三船敏郎は若くてギラギラしている。別に役者じゃなくても、たいていの奴は若いときはギラついているものだ。初老男のオイラは最近はそのギラついた若者を見ると眩しくて苦しくなる。

この頃の若山セツ子はメンコイ。


8日火曜日は 『男対男』 鑑賞。

 加山雄三のデビュー作。これも初見。

 戦友だった三船敏郎と池部良。戦後、三船敏郎は志村喬が社長の海運会社で沖中士たちの班長をしている。池部良はヤクザの幹部でキャバレーを経営。聾唖者の恋人・星由里子と暮らしている。池部のボス・田崎潤は密輸に利用するために志村の会社の乗っ取りを企てる。志村の息子のボンボン・加山雄三を北あけみを使ってたらし込む。志村喬が平田昭彦に車で轢かれて重傷。会社の大ピンチ。更に平田は星由里子を強姦。悲観した星は自殺してしまう。怒った池部とモーターボート上で西部劇のような決闘をして平田を倒す。改心した若大将は三船敏郎と協力。起死回生を狙って爆発物の運搬業務を請け負う。妨害に来た田崎一派。三船敏郎に加勢した池部良は死んでしまう。三船は池部の銃で田崎一派を撃退、田崎を倒すのであった。

 三船と平田の海上での決闘だが、この辺の描写は映画的。ここまでド汚い野郎がそんな正々堂々とした勝負をするのはおかしい。ヤクザに限らず喧嘩慣れしている奴は、絶対に真ッ正面から勝負の土俵には上がらない(相手が弱いなら別) 。田崎の用心棒が熱狂的な信者の多い(のか?) 平田昭彦&中丸忠雄。キャバレーのカウンターで二人が並んで酒を飲むシーンは妙に絵になる。この映画の加山雄三はアキラ映画の沢本忠雄や青山恭二的な青二才的な役。ボンボンの若大将が平田昭彦にぶっ飛ばされるのは貴重なシーン(笑) 。同じデビューでも若大将は育ちの良さからかギラギラ感がない。初老男のオイラにはホッとさせられる。