谷口千吉…男の世界だ 3

 

17日木曜日は『暁の脱走』

 鈴木清順監督の『春婦伝』 のオリジナル。ストーリーは同じだが、山口淑子の役は慰問団の歌手になっていた。慰安婦の方が良かった気がする。いろいろな事情があったのだろう。まーでも、それを割り引いても面白かった。この手の作品を観るといつも思うのだが、要領の悪いオイラではあっという間に戦死だろうナ。怖いコワイ。



19日は『黒帯三国志』

 明治の末、九州の柔道場・正風館の小天狗の異名を持つ小関昌彦(三船敏郎)。汽車の中で海南拳闘クラブの小鉄(藤木悠)に絡まれている加茂紀久子(岡田茉莉子) を救う。岡田の父は地元の名士らしい。道場に岡田の父がやってくる。三船の師・天路正純(佐分利信) に娘の婿にしたいと言ってくるが、三船の心は佐分利の娘・静江(香川京子) にあった。三船は勉強家で東京に出て海外留学したいと言う夢を持っていたが、育ての親でもある佐分利信への義理から言い出せないでいた。拳闘クラブの連中が仕返しにやって来る。私闘は禁じられていたが、藤木の兄弟子・伊庭八郎(佐伯秀男) と対決。勝利するが、それを知った佐分利は三船を破門する。破門することで三船を東京に送り出してやったのだ。
 東京に出た三船は外務省の留学試験を受けるが不合格。生活費を稼ぐために人買い譲次(田中春男) に騙されて北海道の監獄部屋で働く事になる。売店の女お葉(久慈あさみ) は三船に好意を持ってくれて親切だが、親分の山猫は約束の給料も払おうとしない。ある日、黒眼鏡の土工・形原四郎(小堀明男) がやってくる。タダ者ではない感じ。劣悪な労働環境で脱走した人夫を山猫が折檻しようとして堪忍袋の緒が切れた三船が大暴れ。謎の男・小堀明男は山猫を追って東京からやって来た警視庁の刑事だった。小堀も加勢して監獄部屋から逃げてくる。東京に戻った三船は翌年、留学試験に合格する。久慈あさみ、山猫も東京にいたが、久慈は山猫に殺される。
 報告のために九州に戻ると、正風館は既になく、『伊庭唐手・拳闘道場』 に代わっていた。三船が東京に出た後、佐分利は佐伯の兄で沖縄帰りの少林拳唐手の使い手・俊介(平田昭彦) に闇討ちされ失明。道場は乗っ取られていた。佐分利と香川は長屋で暮らしていた。三船を狙って九州にやって来た山猫は平田たちと組んで三船を狙う。五所明神で平田と対決する三船。序盤は唐手に苦戦するが、最後は裏投げっぽい技で石段に叩きつけ勝利。山猫は小堀に逮捕される。留学のため東京に出る三船を香川や岡田が見送る姿にエンドマーク。

インテリ役の多い平田昭彦が唐手使いの役。一見の価値あり。佐分利信を失明に追い込む技は左の上段回し蹴り。結構足が上がっていたのには驚いた。佐伯と藤木の拳闘は大した事は無い(失礼) 。面白かったが格闘技映画としてはイマイチ…かな。



21日月曜は『吹けよ春風』

 鑑賞の機会の少ない作品らしい。ミクシイやネットの映画サイトをググると、マニアの間ではこの作品が今回の特集の目玉のようだ。人の良いタクシー運転手(三船敏郎) と客のエピソード8つによるオムニバス作品。

@ 結婚前の恋人同士(小泉博&岡田茉莉子) がタクシーの中で痴話喧嘩。男が強引に接吻しただけで仲直りしてしまう。ルームミラーごしに見守る三船敏郎(勝手にしやがれ、という感じ) 。

A 自動車に乗ったことのない子供たち。10人くらいいた。100円だけ乗せてくれと言われて乗せる。適当な所まで走って降ろすのだが、迷子になって帰れなくなってしまう。仕方がないのでタダで元の場所まで送ってやる。

B 夜道で若い女(青山京子) を乗せる。典型的な家出娘。東京駅で降ろすのだが気になって戻ってみると、案の定悪い男に連れて行かれそうになる。助けてやったものの帰ろうとしないので夜の街で喧嘩別れしてしまう。

C 日劇前でファンに囲まれたスター(越路吹雪) を乗せる。次のステージまで息抜きがしたいと言われ神宮外苑をドライブ。二人で歌を歌って楽しい時を過ごす。

D 深夜、早慶戦帰りの酔っ払い(小林桂樹・藤原釜足)を乗せるのだが、小林に「窓抜けの天井渡り」 を続けられて困ってしまう。

E 銀婚式を迎えた老夫婦。大阪から引っ越して知り合いがいない。仕事中だが食事に招待される。

F タクシー強盗(三國連太郎) に遭遇。ピストルを奪って交番に飛び込んで助かる。

G 復員兵(山村聡)とその妻(山根寿子) を乗せる。中共から帰ってきたというが様子が変。実は刑務所にいたのだが、子供たちには復員兵と偽っていた。子供たちとの再会に涙。

 ラストは街で
Aの家出娘と再会。母親と一緒だったから無事に帰ったらしい。お礼を言おうとタクシーを追い駆ける娘の姿にエンドマーク。

 
@Aはアッサリした感じでこの後のエピソードのための助走という感じ。BFは一気に観られる。Gでホロリ。『幸せの黄色いハンカチ』 のプロトタイプのような話だった。三船の役は人が良すぎるとは思ったが、この辺は映画だね。それでも噂通りの傑作。面白かった。 昭和20年代の都内の街並みが拝める。これDVDで自宅で繰り返して観たい。平日真っ昼間の上映なのに超満員。ギリギリに行ったので54番。補助席での鑑賞だった。