谷口千吉…男の世界だ 4

 

23日は『独立機関銃隊未だ射撃中』

 昭和20年8月11日。旧ソ連と満州の国境付近のトーチカに潜む5人が全滅するまでの恐怖を描いた作品。班長・三橋達也。上等兵・佐藤允。3年兵・堺左千夫。学徒兵・太刀川寛。志願兵・寺田誠。

 戦闘の恐怖でトーチカを飛び出した堺が殺される。小隊長の夏木陽介が酒とタバコを持ってやって来る。「死守しろ。」 と命令して去っていく。翌日、迫り来る戦車隊との対決。戦車に飛び乗り、強引に蓋を開け、手りゅう弾を内部に投げ込んだ三橋が死ぬ。佐藤は火炎放射器で焼死。ソ連の猛攻にトーチカも潰され寺田も死ぬ。廃墟のトーチカ跡からむっくりと起き上がる太刀川だが、咲いていた花と共に爆弾を打ち込まれエンド。

 映画の殆んどはトーチカ内部で繰り広げられる密室劇とも言える作品。三橋は家族から貰ったお守りを付けている。「こいつがある限り、俺に爆弾は落ちない。」と言い切る。しかし死んだ時、お守りがトーチカの中に落ちていた。三橋、堺が死に3人になる。傷を負った佐藤が「戦争に勝ったら知り合いがやっている満州の会社に就職するんだ。本土の倍給料が貰えるらしいから、女房と子供を呼んで暮らすんだ。」 と語る姿には涙が出た。
 戦車への攻撃方法だが、地雷をヒモにつけ戦車に投げる。ヒモを使って地雷を戦車に踏ませて倒していた。こういう攻撃法もあるのか。スタッフや出演者の中には当然戦争経験者はたくさんいたはず。リアルな感じがした。 タイトルに“独立” なんて付いているが、これは緊迫感漂う戦争映画だった。面白かった、というよりも悲しい傑作!!


24日は『ジャコ萬と鉄』

 『銀嶺の果て』、『暁の脱走』 と並ぶ谷口監督の代表作。北海道の漁村。ニシン漁の季節になると集まってくる出稼漁夫たち。網元の九兵衛(進藤栄太郎) のところにやって来た片目の男・ジャコ萬(月形龍之介) 。九兵衛は終戦のときにジャコ萬の船をかっぱらって樺太から日本に逃げてきた。置いてけぼりをくったジャコ萬は死線を彷徨う。ジャコ萬は九兵衛への復讐を胸に漁村にやってきたのだ。そこへ戦死したはずの九兵衛の息子・鉄(三船敏郎) が帰ってくる。鉄はいわゆるバカ息子ではなく腕も立つ、気風も良い。酒ばかり飲んで働かないジャコ萬と対決。定石どおり、最後は男同士の友情にジャコ萬は復讐を諦めて、最後は漁に参加。ニシン漁の季節が終わると自分に惚れている女・ユキ(浜田百合子) と漁村を去っていく。鉄も跡目の座を姉夫婦に譲り、ドタ袋を担いで漁村を出て行く。

 タイトルからジャコ萬と鉄が派手にぶつかって、男同士の対決と友情が爆発する話しかと思ったら、そこまでスゴイぶつかり合いはなかった。しかし現実にこういう荒っぽい男の世界は苦手だ。この映画の三船敏郎は荒っぽいが明朗快活で裕次郎的な野郎である。酒宴の席で戦地で覚えた土人の歌を歌って踊ったり、ジャコ萬と喧嘩したり、漁師たちに混じって網を引いたり、ケチで横暴な父親に意見したりもする。
 鉄は毎週土曜日に街にでる。教会のミサでオルガンを弾いている久我美子を拝みに行くため。惚れているのだが声もかけられない純情ぶり。一度だけ久我美子が子供たちとバレーボールをしている。近くで眺めていると暴投。ボールが転がってくる。拾い上げて久我美子に抛ってやる。直接係わるシーンはこれだけ。漁村での裕次郎的な活躍ぶりとは大違い。

 ラストはドタ袋を担いで漁村を出た鉄が、表から久我美子の姿を確認だけして去っていく後姿にエンドマークがかかる。派手なぶつかり合いは無かったものの、三船が帰ってきて跡目をとられるのではと戦々恐々する姉夫婦や素性が不明な通称・大学(松本光男) 。賃金が安くてストライキを起こす漁夫たちなどの描き分けも巧み。
 この作品は東宝争議の真っ最中に作られたらしい。そんな時に良くこれだけのものが作れたものだ。面白かった。代表作と言われるのも分かる一篇。

 この作品も70年代にテレビ東京『日本映画名作劇場』 で放送されたものの、例によって睡魔に負けて挫折した口惜しい作品だった。無事にリベンジが果たせた。