谷口千吉…男の世界だ 6 33号車応答なし

 

7日水曜日はまたまたラピュタ阿佐ヶ谷に出撃。17時からの『33号車応答なし』 鑑賞。6月から通い続けた谷口千吉監督特集も個人的にはこの作品がラスト。残りはあまり興味が涌かないのでパス。またいつか出会う日も来るだろう。

 ネットを検索するとこの作品も取り上げているサイトやブログは多い。パトカー警官・池部良とベテラン志村喬がクリスマスイブの夜、33号車でパトロールに出る。悪戯の通報で振り回されたり、キャバレーのぼったくりで駆けつけたり、産気づいた若い夫婦を病院に連れて行ったりする。スピード違反のタクシー運転手に注意したりと大忙し。パトカー警官の日常は『警察24時』 を見ているようだ。

 池部は新婚。奥さんの司葉子は池部の職業が警官という事で、同じアパートの奥さん連中から警戒されている。普通警官が住んでいるとなれば、用心棒代わりに重宝されると思うのだが、そうではないようだ。この日は夜勤らしく夕方からの出勤。池部には警官を辞めて知り合いの会社へ転職をして欲しいらしいが、池部にはその気はない。夫婦喧嘩したまま出勤してきた。
 志村喬はいい歳なのに奥さんが妊娠。出産が近いらしく入院中。
 タクシー運転手が殺されたという無線が入る。現場にはぺしゃんこになった無線のラジコンカーの玩具が落ちていた。先ほど注意したタクシー運転手(柳谷寛) が子供への見やげと持っていたものだ。
 夫婦喧嘩した司葉子は姉(中北千枝子) と夜遊び。キャバレーの客とアイススケート場に行くと酔っ払い同士の喧嘩を警官が仲裁しているのを目撃。いたたまれなくなる。

 志村と池部は塀から降りてきた浮浪児見つけ追跡。入った家は慈善家・須川(沢村宗之助) の工場。浮浪児はここに引き取られた子供だった。志村は工場の建物の中に柳谷の乗っていたタクシーを発見するが、後ろから鈍器で殴られて昏倒。浮浪児に呼び出され工場に入った池部も捕まってしまう。そこには手配中の殺人犯・平田昭彦と沢村の娘で平田の情婦・根岸明美がいた。平田は志村を人質にパトカーで浦安に行く事を要求。そこから手配した船で香港に逃走するつもりだった。深夜の葛西橋通りを走る33号車。途絶えかちな無線連絡を怪しんだパトカー本部は捜索を開始。池部は浦安近くの砂利置き場でパトカーを横転させる。逃走する平田と根岸だが、途中根岸は砂利を運搬するベルトコンベアから落下。単身で逃げる平田と格闘の末、取り押さえる。翌朝、包帯を巻いて帰宅。心配する司。仲直りしてエンド。


                     

 

池部良の若い警官は横柄。いわゆる「おいこらっ」 式警官のようだ。普段もそうらしく、司令室の無線士が「無愛想な奴」 と言う風な台詞があった。志村は人情警官のようだ。柳谷のタクシーを捕まえた時、客として乗っていたのが根岸明美。警官の志村に臆するところも見せずに、あっけらかんとしている姿に好感を持つ志村だが、柳谷を射殺したのが根岸。恐ろしい娘だ。手配犯の平田はオカマっぽい喋り。またそこが冷酷そうな感じがして怖い。

 昔は警官って煙たがられる存在だった気がする。別に悪い事をしていなくても、近くにいると妙にビクビクしたものだ。映画の中でも庶民が街頭テレビを観ているトコに、志村や池部が立ち寄るとビックリしていた。そうかと思えば、スケート場で酔っ払い同士の喧嘩を仲裁する警官がヨタヨタしていると、野次馬から「しっかりしろよ!」 的な野次が飛んでいた。戦前では警官といえば泣く子も黙る存在だったと思うが、この頃はだんだんと民主警察に変わっていく頃だったのだろうか。

 前半は『警察24時』みたいで、一つ一つのエピソードには緊張感があるが、妊婦を病院に運ぶエピソードなどはホッとする物があった。『吹けよ春風』 的なエピソードで繋げていく作品かと思ったら、後半は一気にサスペンスに変わる。変える必要はなかった気もするけど、後半の平田&根岸を乗せて走るシーン、様子がおかしいことに気が付いた司令室が、33号車の追跡を始めるのも緊迫感があったので、これはこれで良かったのかもしれない。最後は殴り合いでケリがつくのは安易な感じもしたけれど面白かった。

18時半終了。まっすぐ帰宅。待ち時間もなく、乗り継ぎも良かったので、すんなり帰れた。