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若い傾斜(59年78分白黒 脚本・池田一朗、小川英 監督・西河克己)
川瀬康夫(川地民夫)は勤労学生。昼は東亜電力に勤め、夜は夜学で法律の勉強。弁護士を目指している。親友でクラスメートの庄司新吾(赤木圭一郎@新人)は弁護士の緒方亮介(二本柳寛)の事務所で働いている。川地の家は母子家庭で母親の奈津江(山根寿子)も二本柳の事務所で働いていた。学校帰り、赤木とラーメンを食べての帰り道、川地は車にぶつかりそうになる。乗っていたのは太陽族風の連中。運転していたのは美根子(浅丘ルリ子)。金持ちそうな連中にムカっときた川地は「僕の体は時間に刻まれているんだ。君たちとは違う!」と怒鳴ってしまう。川地と同じアパートには櫟伊三郎(信欣三)、妻・民子(北林谷栄)、娘・千加子(清水まゆみ)が住んでいる。信は川地の上司の係長でもあった。清水は川地が好きなのだが、川地は清水を妹程度にしか思っていない。東亜電力創立40周年記念パーティが開かれる。川地は信の指示で招待状を二本柳の事務所に届けに行く。二本柳は東亜電力の顧問弁護士を務めていた。川地はここでルリ子に再会する。ルリ子は二本柳の娘だった。パーティの夜、川地は信から手帳を預かる。何のことか分からない川地だが、翌日新聞に東亜電力の汚職記事が載る。川地が信から預かったのは汚職メモだった。2等の石炭を1等品と偽り買い入れ金を着服した流れが詳細に書かれていた。係長の信は五十嵐専務(柳永二郎)の指示に従っただけだが、信は逮捕される。川地はメモを二本柳に渡そうとする。赤木はハッキリとは言わないが「(渡すのは)止めた方が良い。」二本柳を尊敬している川地はメモを渡す。川地が好きなルリ子は川地をゴルフに誘う。海岸で接吻する二人。夜、清水が帰宅すると、川地の部屋に赤木が留守番している。清水は川地がルリ子と仲良くしているのでヤキモチ。赤木と飲みに行く。酔った清水は成り行きで赤木とホテルへ行ってしまう。川地とルリ子は付き合いだす。2年後に夜学を卒業したら、結婚の約束をする。二本柳は山根と愛人関係にあるために反対。信は罪を全部被って自供する。保釈金や家族のために300万円出すから、という二本柳の指示だった。この事で検察の追及が鈍る。柳とグルの二本柳は信を見捨てる。赤木はルリ子に頼んで信の保釈金15万円を出してもらう。二本柳を信じる川地には内緒。保釈された信は二本柳のところに300万円貰いに行くが、当然二本柳は払わないでしらばっくれる。表に出た信はショックでトラックに轢かれ死ぬ。信の葬式にも来ない柳たちに怒った川地は二本柳に預けたメモを新聞社に持ち込もうとするが、二本柳は焼き捨てたから無い、とトボける。赤木はメモを盗み出し、柳を強請って300万取る。そして川地に「千加子(清水)はお前に惚れているから、お前から渡せ。」赤木は、二本柳は会社とグル、更に山根とは愛人関係にあることを川地に話す。怒った川地はルリ子と二本柳がいる日光の別荘へ乗り込む。川地は二本柳と対決、二本柳の猟銃を突きつける。二本柳をかばうルリ子を前に撃つことが出来ず、銃を放り出して去っていく。後を追うルリ子の姿でエンド。
川地の演じる主人公はお人好し過ぎる。会社の顧問弁護士の二本柳をどうして信じられるの? 大事なメモまで渡しちゃって、どうかしてるよ。赤木は大人の汚いやり口を全てお見通しで醒めた感じ、どこか達観していた。真相を川地に話して「何もかも嘘っぱちなんだ。」 しかし川地のためにルリ子を動かしたりと、友情に熱いところも見せる。赤木は清水が好きだが、清水は川地が好き。分かっているもののヤケ酒を飲んで酔った清水とホテルに行ってしまう。成り行きでやってしまった事を後悔しているから純情な男でもある。しかも清水のために300万強請り取ってくるのだから、イイ奴じゃないか(笑)。赤木はこの作品では準主役級の扱いで出番も見せ場も多い。清水と酒場で飲んだり、歌声酒場でロシア民謡を歌うシーンでは良い表情を見せる。映画自体はソツのない出来だが、これって社会の矛盾に対する若者の怒りみたいなのを描きたかったの?二本柳は苦学して現在の地位を築いたのに、苦学した人間が嫌い。だから自分も嫌いだと吐露するなど、屈折したところを見せる。しかしラストで川地を追って去って行くルリ子に「どんな事をしようと強い者が勝つ世の中なんだぞ。」 という台詞があるけど、どこか薄っぺらな感じがした。この頃のルリ子しゃんは人形のように美しい。思わず・・・じょんじょろりん!!
(2005年1月23日記)
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若い突風(60年87分 脚本・山崎厳、西河克己 監督・西河克己)
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私、違っているかしら(66年作品、脚本・倉本聡、長広明、監督・松尾昭典)
森村桂原作の『違っているかしら』を映画化。女子大生の白石桂(吉永小百合)の就職活動奮闘記を明るいタッチで描いた青春映画。吉永の母親に淡島千景、同級生に浜田光夫。宇野重吉、鈴木瑞穂、三島雅夫等のベテランが脇を固めた。名作『キューポラのある街』で弟役を好演した市川好朗が吉永の弟分役で出ているのもウレシイ。人はなぜ働くのか?なぜ生きていくのか?を味のある台詞で表現した佳作。今も昔も女子大生の就職は大変なのね。
(2000年9月13日記)
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私は泣かない(66年白黒 脚本・監督・吉田憲二)
村上早苗(和泉雅子)は新宿の不良少女。中年女からひったくるように財布をスリとるのだが地回りのヤクザに見つかり乱闘、逮捕される。2年間の女子少年院暮らしの後、仮退院。半年間、保護司でもある弁護士・原田修一郎(北村和夫)の家に住み込む。しかし北村の世話で洋裁学校に通うもののどうも続かない。2年の間に恋人・宏(市村博)にも去られ周囲に対して反抗的な和泉だが、街で偶然かつての和泉を知るトラック運転手・神崎三郎(山内賢)と再会する。山内に励まされ、北村の小児麻痺の息子・幸男(市川久伸)の世話をするうちに周囲に心を開いていく。毎日、郊外の養護学校へ市川をおぶって送り迎えをする和泉。やがて山内は山奥のダム工事現場で働くために九州へ去っていく。二人は文通をしてお互いに励ましあう。ある日、寝たきりの息子を独りで介護している父親・古賀省造(下条正巳)が失業と介護疲れで絶望、息子を殺してしまうという事件が起きる。養護学校の教師・小沢弓恵(芦川いづみ)の提案で下条を支援することになる。同じ身障者の息子を持つ父として一度は弁護を断った北村だが和泉の涙ながらの説得で弁護を勤める決意を固め、芦川や和泉たちは減刑嘆願の署名運動をする。そして執行猶予付きの判決を勝ち取る。しかし釈放された下条は息子の墓前で自殺してしまう。ヤケになった和泉は芦川と立ち寄った酒場で客と喧嘩、ケガをしてしまう。夜、部屋で寝ていると車椅子の市川が入ってくる。そして氷嚢を取り替えて出て行く。和泉は市川の思いやりに涙する。やがて半年が過ぎる。北村は和泉を引き止めるが、和泉は自立する決意をする。出て行く日、何も知らない市川をいつものようにおぶって学校へ送り届けた和泉は川崎の電気工場の職に就くため北村家を去っていくのであった。
ソツの無い出来だが、やや駆け足的で上映時間91分で展開するのはキツイ感じがした。山内は顔見世程度の出番しかないのも残念。しかし和泉は根は素直だが心に爆弾を持っている非行少女の役は上手い。オイラも和泉雅子におんぶして欲しいゾ!芦川の出番も顔見世程度、活躍末期なためかこの頃は完璧に脇にまわっている。和泉の不良時代の仲間で太田雅子が出ていた。
(2001年9月24日記)
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われらの時代(59年白黒97分 原作・大江健三郎 脚本・白坂依志夫 監督・蔵原惟繕)
東大生の靖男(長門裕之)は政治や思想も興味の無いシラケ学生。暴力やセックスに熱中するわけでもなくダラダラと生きている。歳をとって病院のベッドの上で胃がんで死ぬのを待っているだけの人生だ。唯一の夢は日本を脱出してフランスに行く事。普段は年上で外人相手のコールガール・頼子(渡辺美佐子)のヒモをしている。弟の滋(小泉静夫)は同性愛者で朝鮮人の高(小高雄二)、真二(山本勝)と同居。バンド『アンラッキーボーイズ』として大黒(金子信雄)が支配人のクラブで売れない専属バンドとして活動している。長門は小泉からパリに留学を目指している歌手・明子(吉行和子)のフランス語家庭教師を頼まれる。週2回、東大近くの喫茶店で教え始める長門だが雨の日にずぶ濡れになった2人は雨宿りで入った連れ込み旅館でセックスしてしまう。これがきっかけで二人は出来てしまう。小泉の夢はトラックを買う事。トラックに乗って演奏旅行に出るという夢物語を真剣に考えていたが、やり場のないエネルギーは小高・山本らと爆弾を作り総理大臣襲撃にエスカレートしていく。この襲撃は総理を殺す事ではなく、チョット脅かす程度のつもり。何故か小泉はこれが成功すればトラックが買えると思い込んでいた。そんな時に長門の提出した論文が1等賞をとりパリ留学が決定する。有頂天の長門のところに同級生で左翼の八木沢(神山繁)が不法滞在しているアラブ人(ササン・ジャバ)をつれて来る。フランスへ行くのならアラブの独立運動に協力して欲しいと言って来るのだが、政治には興味の無い長門は冷たくあしらう。そこへ吉行がやって来る。妊娠したらしいのだ。長門は急に保守的になってしまい、子供と3人でパリに行こうと吉行と約束する。渡辺とも別れて独立する決心をする。日本人をバカにした渡辺の客・ウィルソン(ウィリアム・S・バッソン)をぶっ飛ばし、アパートも決め吉行のアパートに行った長門だが、吉行は医者から子供が出産出来ない体だと言われたらしく落ち込んでいた。絶望した吉行は長門と無理心中しようとガスの栓をひねるがこれに気が付いた長門がガスを止める。どうでも良くなった長門はアラブ人の革命に協力する決意をする。小泉や小高は総理大臣襲撃を決行するが、ビビッた山本が爆弾に火をつけることが出来ず失敗してしまう。小高が同性愛者になったのは朝鮮戦争の時、米兵にくっ付いて朝鮮に渡ったときに米兵と関係を持って覚えたのだった。ナイトクラブでこの時のアメリカ人・ジミィ(ポール・ラッファロ)に再会した小高はポールとベッドイン。小高はポールにトラックを買う代金100万円をねだるが断られてしまう。口論となりポールを絞め殺して金を奪ってしまう小高。アパートに帰って来た小高は山本をなじる。怒った山本と爆弾を使ったチキンレースのようなゲーム(爆発するまでどちらが爆弾の近くにいられるか)で雌雄を決するが二人とも爆死してしまう。小泉はこの事で警察に追われてしまう。喫茶店でアラブ人と密会中の長門は偶然、逃走中の小泉と再会する。同情したアラブ人が自分のマンションに小泉をかくまう。小泉は小高が奪った金をナイトクラブの自分たちの楽屋に隠していた。長門とアラブ人は金を取りに行く。気を失っていた小泉が目を覚ますと誰もいない。部屋には鍵がかけられている。長門たちが自分を裏切ったと思った小泉はクラブに電話をかける。電話に出たのは頭は弱いが小泉のことが好きな良重(応村芳子)。金の入ったバッグを持ってくるように頼むが、アラブ人と鉢合わせしてしまう。混乱した応村は大騒ぎ。張り込んでいた刑事にアラブ人や小泉の居場所を喋ってしまう。マンションに警官隊がやってくる。逃げようとした小泉はマンションのベランダから足を踏み外して転落死してしまう。長門やアラブ人も警察に捕まるが訃報滞在のアラブ人は強制送還。長門は爆弾や殺人&強盗とは無関係という事で釈放される。フランスの書記官(J・P・ブスキー)がやって来る。アラブ人との関係を確認に来たのだった。無関係ならOKだが関係しているなら留学取り消しと言われる。無関係と言ってしまえば良かったのだが、長門は何故か関係していると答えてしまう。留学出来なくなった長門は警察署の外へ出る。待っていた神山が「一緒に革命の活動をしよう。」と誘うが長門は拒否する。絶望した長門は橋の上から下を走る鉄道に身を投げて自殺しようとするがビビって出来ない。若者よ、自殺する事も出来ない。ただダラダラと生きて行くだけ。これがわれらの時代なのだ。とナレーション(佐野浅夫?)が被りエンド。
60年安保を前にしてシラケタ(屈折した)若者たちの生態を早いタッチで描いた佳作。無気力だったり、やり場のないエネルギーをもてあますのは今も昔も変わらない。アメリカ人にバカにされるのも今と同じ!?
(2003年5月12日記)
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