若い人

 

21日のNECOは石坂洋次郎先生の名作『若い人』 原作が発表されたのは戦前。昭和12年頃? ヒロイン江波恵子のエキセントリックな女の子は当時としては斬新だったと思う。
 周知のようにこの作品は何度となく映画&TV化。その時々に活躍したアイドル女優が江波恵子役を演じてきた。オイラの世代だと桜田淳子版なのだが、心情的にはこの日活版を推したい。 小百合サマが熱演。いつもの優等生とは違いここまで屈折した役は珍しい。裕次郎の間崎センセはどうでも良い。男はどうでも良いのだ。橋本先生役のルリ子しゃんは毎度タマラン。美人だが女教師らしくギスギスしたところがまた良い。キツそうなトコがホント良いのだ。
 劇中、修学旅行で東京に行くが泊まるのは本郷の旅館街だろう。バスが春日通り、湯島天神から湯島の交差点方向に坂を下っていくシーンが チラリと映る。都電の線路が見えたので当時は都電が走っていた。そういやオイラが幼稚園の時、遠足で上野動物園に行ったのだが、都電で行った記憶がある。
 雨の夜、帰宅が遅れた小百合サマを裕次郎が探すシーンではニコライ堂が映っていた。本郷の旅館街も現在ではすっかり寂れてしまった。最盛期は100軒以上あったらしい。あの辺りに行くとそんな感じの建物が残っている。ネットで調べたら現在でも営業している旅館が数軒残っているというから驚き。

 この頃の日活映画は脇役が豪華。校医役は大坂志郎。ルリ子しゃんの叔父さん役が小沢昭一。大坂志郎の語る江波恵子論は秀逸。 「子供にとって母親はセックスを持たない女性。しかしあの子は幼いときからそれを見せ付けられてきた。」  たしかそんな感じの台詞だったと思う。石坂洋次郎作品らしい分析。『あいつと私』でモトコ桜井が浅田けいこに息子・三郎出生の話を語るのと通じる。独特の男女観が印象に残る。
 小沢昭一の語る橋本先生の話もまた良い。叔父さんとはいえ血は繋がっていないので、昔惚れていたらしい。だからルリ子しゃんが裕次郎に惚れているのが分かる。どうかヨロシク、 二人で酒を飲むシーンはユーモラスで、これまた印象に残る。
 小百合サマの母親が三浦充子。その愛人が北村和夫。他に目に付いたのはバスガール役が葵真木子? 同僚教師に堀恭子&井上昭文さん。裕次郎の下宿のオバさんが武智豊子。その旦那が殿山泰司。進千賀子が『青い山脈』同様に黒ブチメガネをかけた生徒役でチラリ。

 しかし気になるのは江波恵子の行く末である。裕次郎はラストで、あの子は母親のようになってしまうのだろうか、などと脳天気に独白している。お前が何とかしてやれよ! とも思うが、間崎センセはそこまでする気はないようだ。そりゃそうだ。裕次郎の相手役はルリ子しゃんと決まっているのだから仕方ない。 江波恵子のような子と付き合うと、思いっきり振り回されるだろう。そういう覚悟のある男でないと、なかなか難しいだろう。サイコーに良い男か、『あいつと私』で宮口精二が演じた弱々しい男のように、極端に強いか、極端に弱い男でないと無理だと思う。そう考えると、モトコ桜井という女性は石坂文学に登場した女性の中では非常に頭の良い、クレバーな女性という事になるのだろう。だからこそ社会的な成功を収めてる事が出来た、とも言える。


あーしかし・・・小百合サマなら振り回されてみたい!! その前に相手にされないヨ・・・・って当たり前だ。