柔の道は一筋にあらず
4月にNECOで放送、東宝『柔の星』を観た。
桜木健一主演の柔道モノ。こう書くと名作『柔道一直線』を彷彿とさせる。この人気を当て込んで作ったのだろう。桜木健一の役は伊豆の高校柔道部員・大木。『柔道一直線』同様に母子家庭。俵崩しという必殺技の使い手で静岡県大会で優勝した日、母親を病気?で亡くしてしまう。東京でラーメン屋を営む叔母さんの清川虹子に引き取られ花畑高校に編入。柔道部に入部する。とはいえ『柔道一直線』のようなストレートな柔道モノというわけでもない。特訓と必殺技とライバルも明確に描かれていない。
何より主役が柔道そっちのけでタバコは吸うわ、悪友役の近藤正臣の誘いで悪い仲間と吊るんだり、不良の金持ち娘と付き合ったりで柔道部を追い出されてしまう。恩師の川津祐介の指導で立ち直って一人で特訓。その努力が認められ柔道部に復帰。全国高校柔道選手権で優勝するまでを74分足らずで描いた作品。つまらなかった。
主人公の俵崩しも効果的に使われていない。せっかくの必殺技なのに、全然盛り上がらない。例によって(笑)、空中に飛んで相手を投げるのだが、対戦相手の成川哲夫は何の伏線も無く、きれいに着地して後から落ちてきた桜木健一を投げ飛ばしてしまう。この敗戦の夜、落ち込んでいる桜木健一のところに近藤正臣とその不良仲間たちがやってくる。誘われて夜遊び。チンピラグループと喧嘩。これがきっかけで柔道そっちのけで遊びだすのである。不良仲間の中に『恐竜戦隊コセイドン』でヒムガシ・テツ隊員を演じた三景啓司の姿が見えた。クレジットに名前がないから本名で出ていたのかな。
対決シーンも引き気味のシーンばかりで迫力がない。この辺の撮り方も東映の方が一枚も二枚も上だ。面白いのは桜木健一の柔道の構えが仮面ライダー2号の変身ポーズ。技闘は仮面ライダーを担当した高橋一俊。一世を風靡した変身ポーズのルーツはここにあった。オープニングから柔道着姿の桜木健一が一人で走っているのだが、アスファルトの上を裸足。オイオイ、膝と足首痛めるぞ。しかし当時はこれがカッコ良かったのだろう。
柔道一直線から流れてきたのは近藤正臣だけ。こいつは柔道部員だったのだが、遊び人なので実力の方は大した事は無い。結城真吾のようなキャラクターを期待したのにライバルじゃないとは、もうこの時点でがっかり。決勝で戦うのは一度は敗れた成川哲夫@スペクトルマン!。その師匠はレッドバロンでSSTの大郷キャップを演じた大下哲矢。女優さんの方は金持ち娘に岸久美子。ケンちゃんのお母さん役やった人じゃん。桜木健一のクラスメートで隣の牛乳屋の娘に木村田貴子@知らん。成川哲夫の高校が天道高校。『柔道一直線』のライバルの一人、剛道の大豪寺虎男の学校じゃないか。偶然か? はたまたオマージュか?
『柔道一直線』のようなのを期待したのにガッカリの作品でした。しかしまぁ、柔の道は一筋にあらず、いろんなのがあって良いのだ!
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