·          風速40米58年、監督・蔵原惟繕、脚本・松浦健郎)
建築学部の学生の裕次郎が父親(宇野重吉)の建設会社をライバル企業から救うアクション映画。 クライマックスは東京に接近した大型台風の下での、ビル建設を妨害に来たやくざとの乱闘シーン。暴風雨シーンの雨量は圧巻! 相手役は北原三枝。弟分に川地民夫。 歌のシーンあり、裕次郎&北原のシャワーシーン?ありで見所は多いのだが、映画の出来は平凡。
(2000年9月2日記)

·          風船(56年110分白黒 原作・大佛次郎、 脚色・川島雄三 今村昌平)
 村上春樹(森雅之) は若い頃は画家を志していた。才能もあり将来を嘱望されていたのだが、実業家に転身。カメラ会社の社長として成功。豪邸に住み金持ちの生活を送っている。森は仕事で関西に行く。出入りしていたカメラ家のウィンドに飾ってあった写真のモデルが、終戦間もない頃に下宿していた家の娘に似ていることに驚く。帰りに下宿していた京都を訪ねる。大家夫婦は既に亡くなっており、家には娘の阿蘇るい子(左幸子) とその弟・達次郎(牧真介) がいた。左は生活のためにバーで働き、ヌードモデルもする。牧は学生で家庭教師をしている。貧乏だが暗さはない。姉弟、仲良く暮らしている。自分が下宿していた部屋も残っていて懐かしい気持ちになる。森の家庭は、世俗的でプライドの高い妻・房子(高野由美) との間に一男一女。長男・圭吉(三橋達也) 。妹・珠子(芦川いづみ) 。三橋は森の会社の営業部長。会社は大企業なのであくせく働かなくても大丈夫なようで優雅な生活。三橋は西銀座のバー・ミノトオルで働く戦争未亡人・久美子(新珠三千代) と愛人関係。芦川は幼少期の病気の後遺症で左腕に障害を持つ。日常生活に不便がない程度だが、軽い知的障害もあるようだ。三橋はナイトクラブの経営者・都築(二本柳寛) の紹介で三木原ミキ子(北原三枝) を紹介される。二本柳は森の画の師匠の息子。北原は歌手でファッションモデル。二本柳と北原はいわゆる大人の関係のようだが、二本柳は金持ち息子の三橋と付き合う事を薦める。北原は金目当てで三橋を誘惑。最近は新珠の愛情に飽きてきているので、三橋は北原にのめりこんで行く。芦川は三橋から新珠の存在を聞いて、ミノトオルを尋ねる。天真爛漫な芦川は新珠と仲良くなる。森は芦川を京都に連れて行く。芦川は左や牧とも仲良くなる。新珠は三橋が北原と付き合い始めたことに絶望。別れ話を切り出す三橋に、死ぬ、 と新珠。三橋は、「本当に死ぬのなら黙って死ぬものだ。君はそんな馬鹿じゃないはず。」 。新珠は睡眠薬で自殺未遂。森は三橋を自立させるために依願退職させ、知り合いの会社に就職させる。以前から考えていたのだが、新珠の件が契機となった。新珠は芦川が献身的に看病、回復する。二本柳も心配して見に来るが、三橋は意地で行かない。「新珠とは金銭を介した付き合い。毎月の手当ては渡してある。行く必要はない。」 高野は手切れ金を持って行く。二本柳は、「元気になったら自分の所に来るように。身を立てるようにしてあげる。」 と親切だが、新珠はガス自殺で死んでしまう。墓前で泣きじゃくる芦川。森は社長を退き、京都に移住する決意。高野に一緒に来るように誘うが子供と離れるのは嫌だと断る。森は単身京都へ行く。若い頃のように左の家に下宿。絵を描いて気ままな暮らし。祭りのある晩。左に手を引かれ祭りに行く。盆踊り会場では牧が太鼓を叩いている。左に言われ見てみると、京都暮しに難色を示していた芦川が浴衣姿で踊っている姿でエンド。

 大佛次郎の原作を映画化。タイトルの『風船』 は風船のようにフラフラ生きている男女の意味らしい。フラフラしていないのは森と芦川だけのような気がする。森は出来ることは自分でやらなければ気が済まないタイプ。社長を辞めたり京都に行ったりと、全て自分で決断していた。芦川には悪意みたいなものが一つもない。他の連中は計算づくで行動しているのに打算も何もない。こういう天使のような役はこの人のはまり役である。
 映画の中で風船という表現を使っていたのは、二本柳と北原である。「自分の過去に、踏んでも蹴ってもすがり付いてきて離れようとしない女がいたら、別の世界が開けていたかもしれない。男の重荷や足手まといになるような一途で真実になれるような女がいたとしたら、自分の風船も止まっていたかもしれない。現代ではそんな女はいなくなってしまっている。」 二本柳が新珠に親切だった理由を象徴している。しかし北原はタバコを吸いながら「生活がそうさせるのよ。仕方がないからフラフラしてるのよ」 とバッサリ。二本柳の語るとおり、新珠のような女は男には重荷だろう。真面目な勤め人が相手なら良い奥さんになるような気がする。しかしそういう男には魅力は感じないかもね。
 三橋は遊びも知っていてモテるが、温室育ちのボンボン。親が金持ちだから生活には困らないが、生活力は無さそう。これはこれで風船なのだろう。三橋の今後を考えてしまう。もう大会社の部長ではない。おそらく北原には棄てられるだろう。もう風船のような生き方をする余裕はないかもしれない。
 天使のような芦川いづみばかりが絶賛されるが、オイラは断然、北原三枝だ。都会のイイ女という感じが良く出ていた。美人でスタイルが良くて、奔放に見えて実は計算高い。住んでいるのも、おそらく当時としては最先端のマンションだろう。完全な洋間でベッドの上には電話がある。衣装は森英恵が担当。ファッションを観るだけでも一見の価値あり。面白く観られた作品だが、風船のような男女の話にしては中途半端か。二本柳と北原側の描写を中心にすれば良かった気もする。作品から感じ取る情報が多くて、上手く書けなかった。この欄は備忘録だから、まぁ良いか。
(2009年9月10日記)

·          踏みはずした春(58年 脚本・寺岡信義、岡田達門 監督・鈴木清順)
藤口透吾原作『BBSの女』を映画化。新米BBS(保護司)の左幸子が少年院帰りの小林旭を更生させる話し。旭は少年院出身ということで就職も出来ずにヤケになったりするが、左や幼稚園の先生をしている恋人・浅丘ルリ子の励ましで立ち直ろうとする。しかし、かつての仲間の宍戸錠や野呂圭介、武藤章生が妨害し、ルリ子を暴行しようとする。刑事の殿山泰司に助けられたルリ子だが、意識不明の重態、おまけにその罪が旭に着せられて逮捕されてしまう。危うく少年刑務所行きになるところだったが、野呂の自白で無事に釈放される。旭には絵の才能があった。ルリ子からプレゼントされたネクタイに書いた絵を関係者に認められ絵の仕事をして行く決意をする。不良少年にしては旭は老けた感じでカッコ良すぎ、あまり似合わないのだが、新米保護司役の左はなかなか良い。今ではすっかりお婆さんになってしまった左だが、この頃はカワイイ。ルリ子も可憐である。旭に絵の才能があるというのは、ご都合主義的な感じもなくはないが爽やかな後味の作品。左の上司の保護司に二谷英明が扮した。
(2001年5月3日記)

·          不良少女魔子(71年83分 脚本・藤井鷹史 監督・蔵原惟二)
 魔子(夏純子)は渋谷を根城にするズベ公グループの一人。仲間とカツアゲしたりクラブで遊んだりと毎日、自堕落な生活をしている。ある日、クラブで踊っていると不良グループの一人、秀夫(清宮達夫)が夏をナンパしてくる。夏は乗ったフリをして清宮を誘い出し仲間とカツアゲしようとするが失敗。清宮を暴行する。清宮は仲間の洋次(岡崎二郎)、徹(小野寺昭)、サブ(清水国雄)らと共謀し夏を拉致するが、夏に惚れた清宮は夏を逃がしてしまう。しかしクラブで夏のグループと岡崎のグループが乱闘を起こす。そこへ地元の暴力団・安岡興行の幹部・田辺(藤竜也)が現れる。藤は夏の兄だった。藤は清宮らを逃がしてやろうとするが、反抗したため見せしめに岡崎の足を見事なドスさばきで刺してみせる。退散する清宮たちだが、 岡崎は安岡興行への復讐を誓う。岡崎たちは安岡興行の売春宿に客のフリをして潜り込みコールガールを逃がす。安岡興行社長の安岡(宍戸錠)は大幹部・内海(深江章喜)、藤に犯人探しを命令する。清宮と恋仲になった夏は岡崎たちに安岡興行のマリファナ密売ルートを教える。岡崎たちは密売場のスナックを急襲、マリファナ強奪に成功する。グループの中で才覚のある小野寺はマリファナのサバキ先を開拓し金に替える。安岡興行の執拗な追跡が始まった。密売ルートを洩らしたのが夏たちという事を付きとめ拷問、岡崎たちの仕業と白状させる。その結果、清宮と小野寺が捕まり拷問を受け小野寺が安岡興行に寝返る。降伏の説得をするように命令され釈放された清宮と小野寺、岡崎は寝返った小野寺と袂を分かち、清宮は岡崎たちと逃亡、夏たちのグループと合流し湖畔のロッジへ隠れる。小野寺は藤にロッジの場所を教える。岡崎たちが買い出しで留守のときに藤たちが乗り込んでくる。夏の仲間の一人が殺され、夏は連れ戻される。小野寺は岡崎たちを捜し出し仲間になるように忠告するが拒否、小野寺の乗る車と清宮&清水の乗る車が唐突にカーチェイスを始め清宮&清水の車がクラッシュ。二人は死んでしまう。夏は清宮の仇を取ろうとするが藤に止められる。藤ともみ合ううちに夏は藤のドスで藤を刺殺してしまう。藤の亡き後、マリファナ密売を任された小野寺。卸し元の外人とプールサイドで打ち合わせ中の小野寺を夏は刺し殺す。水の中に浮かぶ小野寺の死体。夏は周囲にいた人間に取り押さえられる。駆けつけてくる岡崎。ラストシーンは夏の口元のアップで呟くような台詞「ジャマだな・・・みんな退いてよ。」
 ストーリー展開は早いがこれと言って観るべきところはない。しかし序盤の夏たちの自堕落な生活ぶりは『野良猫ロックシリーズ』を彷彿とさせる。70年頃の渋谷駅周辺が観られるのも今となっては貴重。この頃の夏純子は多少痩せぎすなボディだが魅力的だ。ちょっとムラムラしました。この映画が公開されたのは8月25日同時上映は名作『8月の濡れた砂』。日活はこの後、9月18日から和泉雅子主演の『朝霧』、同時上映は『七人の刑事・終着駅の女』(『夕陽の丘』が同時上映の劇場もあったらしい。)の公開を最後にロマンポルノ路線に転向する。『朝霧』も『七人の・・・』も白黒作品のため、かなり以前に製作されたモノだと思う。出番は異常に少ないが、宍戸錠の旧体制日活の最後の出演作でもある。
(2001年10月20日記)

·          青い街(ブルータウン)の狼(62年 脚本・小川英 監督・古川卓巳)
『野獣の門』の続編で潜行秘密捜査官・神永五郎(二谷英明)の活躍を描いたアクション物。乗客を乗せた旅客機が爆破される事件が起きる。旅客機には密入国したヘロインの運び屋・チャーリー根本が乗っていた。チャーリーのカメラに爆弾を仕掛けシャッターを切ると爆発する仕掛けになっていたのだ。チャーリーはシンガポールから10億円相当のヘロインを持ち込んでいた。指令者(垂水悟郎)は二谷に潜入捜査を命じる。二谷はショージ(字、不明)と名乗り密輸組織との接触に成功。チャーリーが密入国したルートと同じ沖縄から東京にやってくる。そしてヘロインの元締め秀南白(二本柳寛)の部下になる。二本柳は東京の組織のボス矢代(藤村有弘)を使って日本の市場を独占するつもりだ。しかし藤村は二本柳を殺してヘロインを独り占めしようとする。二本柳と藤村の組織の激しい争奪戦が展開するが二谷の活躍で共倒れ、組織は壊滅する。映画の冒頭で旅客機ごと爆死した男は本物の秀南白で実は二本柳がチャーリーだったり、藤村の経営するクラブの歌手が芦川いづみで芦川はかつて二谷が潜入捜査した事件の関係者の娘で警察に父親を売ったのが二谷だと思い込んでいる。芦川の父親は最初の爆破された旅客機に乗っていたという設定があるがあまり生かされず。他に芦川に憧れる片腕のトランペット吹きにチコ・ローランドが出ていた。ラストは二谷の正体を芦川が知って誤解が解けるのだが、二谷は海岸線の小高い丘で銃撃戦をした後、芦川を置いてヘリコプターで去って行くところでエンド。(オイオイ、こんな所に置いて行くなよ。どうやって帰るんだ?)。二谷の活躍はカッコイイのだが、映画の出来は平凡な物。芦川はクラブ歌手という設定なので劇中に何度か歌を歌っているシーンがあるがこれは吹き替え??
(2001年12月14日記)