や
・
やくざの詩(60年87分 脚本・山田信夫 監督・舛田利雄)
舞台は横浜。佐伯(内藤武敏)組の経営するナイトクラブで幹部・安田(木島一郎)が何者かに撃たれ重傷を負う。ピアニストととして雇われた滝口哲也(小林旭)が見事な手際で応急処置をして見せる。旭は元外科医で殺された恋人の仇を取るために医学を捨てピアニストとなり犯人を捜していた。手がかりはスペイン製ゲルニカ拳銃弾。旭はこの弾をネックレスにしていた。内藤の組のお抱えである酔いどれ医師・水町義雄(金子信雄)は完璧な応急処置を見て旭が元医者だったことを見抜く。旭は金子に近づきゲルニカ拳銃弾のことを尋ねるが金子には見覚えが無かった。金子には医者の卵である娘・通子(芦川いづみ)がいた。旭は金子や芦川と親しくなる。内藤の組は黒沢(松本染升)をボスとする黒沢組と敵対していた。木島をやったのは松本の組の仕業と考えた内藤は拳銃の仲介業者・相川一郎(二谷英明)に大量の拳銃を注文する。同じ頃、松本は同じく仲介者の次郎(垂水悟郎)に銃を注文、両者の組は一触即発状態となる。二谷と垂水は兄弟で木島を撃ったのは垂水。銃を売るために両者の組を対立させたのだった。垂水は右腕が不自由だった。戦災孤児だった二谷と垂水はスリやかっぱらいで生計を立てていたのだが鉄道の車内でスリをやって見つかり、逃げるために二谷が垂水を走る車両から突き落して腕が潰れたのだった。二谷は旭が追う犯人が実弟・垂水だと知っていた。垂水は旭の恋人にチョッカイを出してカタワ者となじられて殺してしまったのだ。かつて旭に命を助けられたことがある二谷は旭との友情の板ばさみで悩む。二谷は垂水を船で神戸に逃がそうとするのだが、垂水は乗り遅れてしまう。その時に知り合った内藤のナイトクラブの歌手・北野由美(南田洋子)と一夜を共にする。この事で南田に惚れた垂水は生き残るために逃げるのは止めて旭を殺そうとする。南田には死んだ組の幹部だった恋人・藤本がいた。この恋人の弟・透(和田浩治・新人の表記あり)は兄の跡をついで幹部を目指して組のチンピラをしていた。南田は何かと和田の面倒を見ていた。垂水はゲルニカで旭の命を狙うが失敗。弾は一緒にいた金子に当り金子は亡くなってしまう。死の間際、金子は戦時中、軍医をしていたのだが捕虜に伝染病を注射して人体実験をしていたという過去を吐露する。以来、世捨て人になりやくざ相手の医者を務めていたのだった。金子が撃たれたとき、逃走する垂水の後姿を見た南田は和田を連れて郷里の信州に帰る決意をする。垂水は松本の組に拳銃を渡し松本らと内藤のクラブに殴りこみに行く。目的は殴りこみに乗じて旭を殺すことだったが二谷に邪魔をされ失敗する。南田が和田を連れて郷里に帰ることを知った垂水は逆上し南田を殺してしまう。そして閉鎖されたナイトクラブに旭を呼び出し決着を付けようとする。そのことを知った二谷は旭よりも先にクラブで待ち伏せ垂水を殺そうとするが、旭と勘違いをした垂水に返り討ちにあう。そこへ旭がやってくる。二谷が死んだことでまた逆上した垂水は旭を撃つ。弾は旭ではなく旭の首に下げていたゲルニカ弾のネックレスを切る。そこへ南田を殺されてこれまた逆上した和田が旭のショットガンを持ち出して垂水を撃つ。ネックレスが切れたことで全ての呪縛から開放された旭は「俺はやっぱり医者なのだ。」と言い出し、金子の病院で芦川を助手にメスを握り垂水を救うのであった。夜明けの河原で芦川と並んで立っている所でエンドマーク。
混み入った人間関係を上手く処理していたし、暗黒街の雰囲気もレトロな匂いがして好感が持てる。ゲルニカ拳銃ってどんな物かと思ったら日活コルトにアルファベットでゲルニカと書いてあるだけだったのにはガッカリ。これに小型のサイレンサーが付いていた。しかしゲルニカ弾のネックレスが旭の復讐の象徴のような使われ方をされているのは面白いのだが、切れたところで「俺はやっぱり医者なのだ。」は単純すぎる。大体、金子が撃たれた時、芦川が旭に手術を頼むのだが、「俺はもう医者じゃない。」と言って見殺しにしているのだ。父親を見殺しにされているのに旭を恨まない芦川は大人である。この映画が公開されたのは60年の1月31日。翌月14日に赤木圭一郎主演の『拳銃無頼帖抜き射ちの竜』が公開され、裕次郎、旭、トニー、そして和田浩治を入れてダイヤモンドラインというスターシステムが確立されることになる。この作品はその直前の作品であり、シリーズ物が多い旭にとっては珍しい単発作品。しかし旭はクラブで主題歌『やくざの詩』ばかりを歌っていたがあんな陰気な歌をナイトクラブで歌ってイイのか?(実際、酔客から苦情が出ていた。)それからこの作品は舛田利雄監督作品なのだが、どこか井上梅次っぽい感じがするのはどうしてだろ??
(2002年5月12日記)
・
やくざ番外地(69年86分、脚本・永原秀一、浅井達也、監督・西村昭五郎)
東京23区を縄張りにする野見組。組長の野見(柳永二郎) は幹部の村木(丹波哲郎)に多摩地区制圧を命令する。そこはテキ屋の高瀬組の縄張り。丹波は片腕の三郎(高宮敬二) と乗り込んで、沢地(永山一夫) をボスとする地元の愚連隊を焚きつけて“血生会” を組織。高瀬組の縄張りを荒らす。高瀬組の幹部・塚田(佐藤慶) は丹波の兄弟分。佐藤は妻・静江(小畠絹子) にスナックをやらせている。小畠のスナックで再会する二人だが、互いに敵同士になっている皮肉なめぐり合わせ。丹波には妹・冴子(山本陽子) がいる。幼稚園の先生。二人だけの兄妹なので丹波は溺愛している。高瀬組長(清水将夫) には服役中の息子・信司(長谷川明男) がいる。近く出所してくる予定。清水は血生会に襲われる。死に際に長谷川に跡目を譲る宣言して息を引き取る。出所した長谷川は事故にあった園児を助けたことで山本と親しくなる。清水の葬式の際、横浜の葛城組が助っ人を申し出る。葛城組長(須賀不二男) の腹も柳と同じで高瀬組の縄張りが狙い。それが分かっている長谷川はその申し出を昧にゴマます。丹波は長谷川に野見組傘下に入るように要求するが、長谷川は敢然と断る。高瀬組幹部の堤(郷^治) は丹波に切りつけるが、長谷川に止められる。組を離れ単身丹波を狙う郷だが、高宮に射殺される。それを知らない佐藤は郷を救おうと血生会の賭場に乗り込む。イカサマを見破るが血生会にかこまれて大ピンチ。助けに行った長谷川が指を詰める。かけつけた丹波が長谷川の指を預かってその場を納める。長谷川と恋仲になった山本だが、丹波とのいきさつを知って家出。小畠の店で働き始める。高瀬組との抗争が進まないことに業を煮やした柳は丹波を下して北原(深江章喜) を差し向ける。丹波との約束では、高瀬組を潰したら縄張りは永山が仕切るという事になっていたが、深江が来た事でそうも行かなくなった。血生会は高瀬組の組員を次々と襲う。スナックも襲われて山本をかばって小畠は死ぬ。佐藤は血生会に殴りこんで深江を刺し殺す。丹波にも襲い掛かる。仕方なく丹波は佐藤を殺してしまう。長谷川は葛城組の手を借りて野見組との抗争を決意するが、柳と須賀は裏で手を組んで長谷川の命を狙う。小畑の店に行った丹波は長谷川と山本の死体を発見。怒りの丹波は柳と須賀の手打ちしきに乗り込んで須賀を射殺。柳を刺し殺すが、自分も刺されて死んでしまう姿にエンドマーク。
主役が丹波哲郎で小畠絹子、高宮敬二と新東宝メンバー。他に数本出ているとはいえ、佐藤慶に長谷川明男、永山一夫と日活らしくない顔ぶれが目立つ作品。しかし日活では不遇の扱いの山本陽子のアップのシーンが結構多かった気がした。出来の方は可もなく不可もない。多摩市という設定なので、佐藤慶が街中を歩くシーンではミドリヤの看板が見えた。八王子あたりでロケしたのかな? 。丹波哲郎は実は背が高い。ハンサムタワーの高宮敬二と並んでも大して変わらない。胸板とか厚くて体格も良い。TV『ジキルとハイド』 もそうだったけど、チンピラや警官役の役者さんたちよりもひとまわりデカイのだ。
この作品での高宮敬二は台詞が一言もなかった。無言のまま人を殺す。『あらくれ』 の宍戸錠みたい。小畠絹子のスナックでジュークボックスの曲に合わせて妙な踊りをやっているのはご愛嬌。
こういう作品を観るたびに組織を維持することの難しさを痛感する。高瀬組は他の組の縄張りを荒らすこともなく平和? にやっていただけ。野見組は右肩上がりで無いと収まらない。組織というのは右肩上がりで無いと維持できない。現状維持では、いずれ落ちていく。人間社会では平和は許されないのだろう。
(2009年11月11日記)
・
やくざ渡り鳥・悪党稼業(69年、脚本・山崎厳、監督・江崎実生)
昭和32年、地方の温泉町に流れ着いた流れ者の鬼頭善吉(小林旭)。女郎屋で勝子(高樹容子)を足抜け、駆け落ちしようとしたケン(市村博)を捕まえた旭は賭場でも郷田(榎木兵衛)との勝負でイカサマを見破り調子よく宇野(高品格)の組に潜り込む。高品は旭に隣町の組のボス、南条(加原武門)の息子・茂(郷^治)殺しを依頼する。郷は香港から麻薬を仕入れて女郎たちに打って売春防止法施行後、トルコで秘密売春させようと画策。これに脅威を感じた高品は郷殺しを依頼、旭は高品と契約しておきながら加原とも密通。加原からも金を取り高品殺しを請け負う。郷の目の前で高品を刺してみせるものの高品は生きている。その頃、加原の組の幹部・政五郎(宍戸錠)が出所してくる。錠は以前は横浜の組にいたが旭に取り引きの物と金を持ち逃げされ組は潰されていた。錠は旭を仇と付け狙う。そこへ現れた流れ者の香港ジョー(渡哲也)。渡は兄貴分の仇の錠を狙いつつ、二つの組の争いに目を付け漁夫の利を得ようとしていた。旭は目を付けた女郎・信子(長谷川照子)にご執心。高品から巻き上げた金で信子を買うが信子は結核。金には汚いが女には弱い旭は病院へいれる。信子は錠の妹であった。錠が刑務所に居る間に郷に犯され女郎屋に売られていた。入院したものの錠に看取られて死んでしまう。郷にはみどり(牧紀子)というデパートの洋服売り場で働いている恋人がいた。旭はみどりを襲う。みどりはM女だった。シラけた旭は温泉に放り込む。旭が高品と加原から金をとったのを知った高品は旭を拷問するが全てを知った錠に助けられる。そして協力して高品を倒し、麻薬の取り引き現場に乗り込み加原と郷を倒す。そこへ渡が登場。三つ巴で物と金を奪い合うが警察が乗り込んで3人逃げ出す。旭は子分の谷村昌彦と信子の墓参りをしてどこかへ去って行く。
旭の武器は銃ではなくてヌンチャクにカマが付いたものと特殊警棒?。タイトルに渡り鳥と付いているが滝伸治とは何も関係が無いのが残念。当然ながら?フロアショーで白木マリも踊らないし地方都市とのタイアップもないのでスケール感もなし。旭とジョーの間にしゃれた会話も無い。渡哲也の出番も少ない(他作品とのかけもちだったのか?)。コメディタッチの展開で旭も気持ち良さそうに演じているが、もっと『渡り鳥』のパロディに徹しても良かったと思う、この辺はマニア(オタク)から観ると不満が残る。監督は江崎実生だけどダラダラしてイタダケない作品。主人公・鬼頭善吉の活躍は長谷部安春監督作品『あらくれ』へと続く。
(2003年2月6日記)
・
野獣の青春(63年、脚本:池田一朗、山崎忠昭 、監督・鈴木清順)
大藪春彦原作『人狩り』を映画化。原作は上手く立ち回って暴力団の上前をはねるアウトローの話しなのだが、映画版では元刑事の宍戸錠が殺された恩人の同僚刑事(木島一郎)の仇を討つために小林昭二の組に潜入、敵対する信欣三の組と共倒れさせる話しに変わっている。組織に潜入する設定以外は全くの別物。原作は大藪作品としては平凡なもので特筆するほどのものではないが、映画化された本作は暗黒街の異様なムードを描いた傑作。特に脇役陣の設定描写がユニーク。猫を溺愛するサディスト小林昭二。錠の相棒の不能のメカフェチ江角英明。「お前の母親はパンパンだった!」と言われると逆上してナイフで相手の顔をスダレのように切り刻むサディスト川地民夫。木島の貞淑な妻で実は組織のスパイだったという悪女に渡辺美佐子。他には金子信雄、郷^治、信欣三、星ナオミが出ていた。映画館のスクリーンと同調する銃撃戦や砂丘のような小林の庭での情婦(香月美奈子)と小林とのセックスシーン等、印象的なシーンが多い。中でも映画のラストで渡辺の正体が明らかになり川地に襲われるシーンは秀逸。一見の価値あり!
(2001年3月13日記)
・
野獣の門(61年81分 原作・山村正夫 脚本・小川英 監督・古川卓巳)
潜行秘密捜査官・神永五郎(二谷英明)の活躍を描いたアクション物。建設会社の経理課長が車に轢き殺される事件が起きる。この課長は会社の金2000万円を横領していた。その3ヵ月後、丸の内の商事会社に強盗が入り経理部長が殺害、社員の給料2000万円が奪われる。2つの事件の共通点は経理担当者を抱き込んで金を奪い殺すという点。経理部長の殺害に使用された拳銃弾はコルト32ACPの偽造弾だった。この弾は未だ日本では使用された事のないもので東南アジアの偽造団が作った物、この偽造拳銃弾を追ってやって来たFBI捜査官が殺されてしまい捜査は暗礁に乗り上げる。指令者(芦田伸介)は二谷に捜査を命じる。事件後、最初に殺された経理課長が通っていたクラブホステス・夏子(楠侑子)が姿を消した事から二谷はこのクラブ経営者・郷田(阿部徹)に近づく。用心棒・風間龍と名乗り組織に潜り込む二谷。阿部はクラブの他にゴルフクラブも経営していた。阿部は香港の顔役・李(二本柳寛)と組んで偽造拳銃弾を密造していた。また所有するゴルフクラブに網を張り、カモになりそうな企業の経理担当者を楠を使って抱きこみ会社の金を横領&強奪していた。二本柳は楠を香港へ売り飛ばす。この事を知った阿部は二本柳と対決するが返り討ちに合い殺されそうになるが、二谷が逃がしてやる。二本柳の次のターゲットは明和銀行桜の門支店の金庫。娘・洋子(松原智恵子)に危害を加えると支店長の野崎(下条正巳)を脅迫、手引きさせ金庫の金3億円を強奪する。二本柳の情婦・ユカリ(中原早苗)は二本柳を裏切り、先に強奪した4000万円を手に二谷と逃亡しようとする。そしてPM7時に羽田空港で待ち合わせの約束をする。二谷は自分が行けなかったら警察へ行くように説得する。中原が裏切った事を察知した二本柳は部下の江幡高志に命じて空港で中原を押さえようとするが、間一髪中原は警察に駆け込む。銀行から金を奪った二本柳は二谷、下条、阿部の部下だった杉山俊夫らを殺して海外逃亡を図る。そこへ阿部が乱入。銃撃戦となる。この撃ち合いで阿部、杉山は死ぬ。そこへ二谷の連絡で警察が踏み込み全員逮捕されるのであった。しかし一つの事件が終わり二谷はまた別の事件に挑む。秘密捜査官に休みはないのだ!!
日活アクションとしては個に関わる部分はないものの、二谷の秘密捜査官ぶりがカッコイイ一編。この秘密捜査官・神永五郎の活躍は続編『青い街(ブルータウン)の狼』に続く。
(2001年12月15日記)
・
破れかぶれ(61年68分白黒 脚本・山田信夫、阿部桂一 監督・蔵原惟繕)
光夫(川地民夫)は暴力団・東西興業のチンピラをしている。港に着いた外国船の情報を、チンピラ仲間の次郎(郷^治)とバイクで争うように事務所に知らせて小遣い稼ぎ。川地は小さなバー・パンチョスのマダムをしている年上の女性・加代(渡辺美佐子)のヒモ。川地は渡辺を「オバさん」と呼んでいる。渡辺はチンピラを辞めて堅気の仕事に就くことを望んでいるが、川地にはその気はない。アルゼンチンに行く事を夢見ているようだが、それもどこまで本気なのか怪しい。川地は渡辺の財布からクスねた金で競馬に行く。兄貴分の辰(江幡高志)から3万円渡され、馬券を買ってくるように命令されるが、売り場の前で指示されたのとは違う馬券が確実という情報を耳にする。最初は「兄貴の金だから・・・」と相手にしないが、馴染みのズベ公・良子(和田悦子)から「弱虫!」と罵倒される。「絶対確実」の言葉に釣られ、馬券を買ってしまう川地だが、ハズれてしまう。川地は渡辺に泣きつくが、渡辺の店も経営が苦しくて家賃や酒屋への支払いも出来ないくらい。バーテンの木島(内藤武敏)は何かと渡辺を支えているが、何か過去がありそう。川地は知り合いのバイク屋のおやじ(河上信夫)のところから18万5000円の新車を持ち出し、江幡に渡してしまう。保険屋のおばさん(田中筆子)から渡辺が生命保険に入っている事を聞く。受取人は川地。渡辺が死ぬと100万円入るらしい。自分の事を思ってくれている事にシュンとなる川地は翌日から改心して、渡辺の店を手伝いだす。渡辺に背広を買ってもらい意気揚々と集金に回るが、チンピラの川地は誰も相手にされずどこも払ってくれない。腹を立てた川地は暴れてしまい、内藤にたしなめられる。内藤は元ボクサー、試合で人も殺した過去があった。密かに渡辺に惚れていたので、自堕落な川地が許せない。河上の店のバイクを勝手に売り飛ばした事がバレ、江幡は渡辺に落とし前として6万円を要求してくる。金に困った川地は知り合いのデパートの化粧品売り場に勤めるハルミ(久木冬喜子)のところへ。久木は神戸の顔役・工藤(深江章喜)の情婦らしい。川地とは体だけの関係なので断られる。川地は久木のベッドの下から700ドルを見つけ盗んでしまう。円に換金しようと金融会社・星川金融に行くが、そこは手形のパクリ容疑で警察の手入れを受けていた。ヤバイと思った川地は700ドルをゴミ箱に隠す。ドルは警察に見つかって取られてしまう。ドルを取り戻そうと、東西興行が動き出す。渡辺はどこで作ったのか6万円を持っていくが、川地が700ドル(当時25万円)盗んだ事を聞かされ愕然とする。やがて川地は捕まり、リンチを受ける。「命が惜しければ、明日までに50万作れ。」開放されるが、郷の監視つき。命乞いするが、当然取り合わない。渡辺の部屋を家捜しするが金はない。残高50円の通帳しかなかった。渡辺に泣きつくが、5万円しか集まらない。逃げる川地だが、郷に捕まる。渡辺は店の常連で会社経営者の宮本(伊藤寿章)に50万円の借金を申し込む。渡辺に気がある伊藤は渡辺の体を担保に金を貸す。再び、渡辺の部屋。100万円の生命保険証書を見つけた郷は川地に「100万よこせ!」元々、川地と郷は幼馴染みだった。いつも川地に出し抜かれていた郷は、川地を踏み台に幹部になろうと野心を燃やしていた。郷は川地に保険金目当てで渡辺を殺せ、と命令する。その企みを知った内藤は渡辺に「愛してるから、行かないでくれ!」渡辺は「遅かったわ。・・・・あなた(内藤)はいつも遠くから見ているだけ。・・・・あなたは一度の過失を許せない人。私は光夫(川地)を許すわ。」殺されるのを承知で事務所に向う渡辺。歩いて来る渡辺を車でひき殺すように命令される川地。川地の車の前に立つ渡辺だが、川地は殺す事が出来ない。怒った郷と殴り合い、川地は郷を連れて東西興業に行く。東西興業は星川金融の仲間で手形のパクリ、恐喝、売春で警察の手入れを受け、江幡たち幹部は全員逮捕。郷も連れて行かれてしまう。自由の身になった川地は渡辺の前で泣き崩れる。「何度も尻拭いをしてくれるから、甘ったれてしまうんだ。頼むから放って置いてくれ。オバさんまでダメになっちまう。俺を捨てて行ってくれよ!」泣きじゃくる川地。渡辺は川地を捨て夜の街に消えていくところでエンド。
『狂熱の季節』、『黒い太陽』同様に、川地の滅茶苦茶な生き様はヒドイ!! 内藤の台詞でないが、この映画での川地は渡辺にとっては「苦しめられて泣かされて」それだけの存在としか言いようがない。それでも川地を見捨てないのはどうして? 久木もそうだけど、セックスの相性か? 悪あがきする度に借金の額が上がっていくのもヒドイ! 舞台になるのは上野や御徒町付近らしくアメ横や御徒町駅周辺が出てくる。金に困ってジタバタする川地の演技は一見の価値あり!この作品は赤木圭一郎の遺作『紅の拳銃』の添え物作品。68分と短いせいか、川地と郷の関係、リングで人を殺したという内藤の描写も中途半端。川地の自堕落な日常も少ないのが欠点か。出演は他に東西興行のチンピラ・政(柳瀬志郎)、アメ横の三国人(榎木兵衛)、酒屋の御用聞き(市村博)、バーの大家・柴田(山田禅二)。川地と郷が街中をバイクで走るシーンやアメ横、デパート内でのシーンは隠し撮りか!?
(2005年1月21日記)
・
闇に流れる口笛(61年 総天然色80分 脚本・山崎厳、安藤穂夫 監督・牛原陽一)
舞台は横浜、クラブ・ジョーカーの支配人・柿崎(芦田伸介)は拳銃や麻薬密売組織のボス。雑貨店店主・天野(金子信雄)の店を窓口にしていた。深夜、取引現場に現れた口笛を吹く男。アメリカ製の金貨を車に投げ付け、警察を手引きして取引を妨害する。バイヤーのウィリアム(マイク・ダニーン)が警察に撃たれ重傷を負う。その姿を目撃したホステス・ユミ(天路圭子)は芦田とその部下・伴(波多野憲)に監禁されてしまう。そんな時、横浜に流れ着いたマドロスの坂巻洋次(和田浩治)。波多野は芦田の娘・咲子(吉永小百合)に惚れていた。嫌がる小百合を強引にクレー射撃場に連れ出すが、ここに現れた和田。和田はアメリカ製金貨を持っていた。波多野と射撃勝負をして和田は見事な腕を披露、この事がきっかけで芦田の組織に潜り込む。和田はクラブ・ジョーカーで花を売っていた少年・弘(石川秀樹)と知り合う。石川は花売りをしながら行方不明となった姉の天路を捜していた。天路はジョーカーの地下室に監禁されていた。和田は芦田の手先として働きながら天路を捜すが、芦田と波多野に怪しまれ殺されそうになる。そこを救ったのが口笛の男。和田は疑いを晴らしたければ口笛の男を捜し出して殺せ、と命令される。金子は口笛の男に怯えて芦田を裏切って自首を考える。芦田は金子を囮にして競馬場に口笛の男を誘き出す。波多野に促され和田は男を射殺する。さらに芦田は金子と天路を車に乗せ海に沈めて事故死に見せかけて始末する。そんな時、刑務所から殺し屋・大沼(土方弘)が出所してくる。口笛の男・川村(葉山良二)は生きていた。一度、助けられた借りがあるので和田は殺さなかったのだ。波多野は取り引きに行く芦田と和田を警察に密告する。そして密輸ルートとクラブ乗っ取りを画策するが、証拠不十分で釈放される。和田の正体は坂巻ではなく横溝三郎。終戦後、芦田と金子は共謀して船を持っていた和田の父親を殺して船を乗っ取り、その船を使って密輸事業に手を染めていた。現在の地位はそれを元手に始めていたものだった。和田とその母親はアメリカで暮らしていたが、父親の仇を討つためにやって来たのだった。和田の正体を知った芦田は自分を裏切ったのが波多野だと知っていながら素知らぬ顔で波多野に和田殺しを命令、そして土方に波多野を始末するように指示する。和田は波多野を返り討ちにすると父親の死因を吐かせようとするが土方に撃たれ姿を消す。芦田は土方を連れて仕入れた拳銃をさばこうと商人・張(小沢昭一)と取り引きをする。そこへ乗り込んだ和田。銃撃戦の最中、芦田の持ち込んだ商品の拳銃を持って逃走しようとする小沢は土方と相撃ちになり共倒れ。そこへ葉山が指揮する警官隊が乗り込んで芦田は逮捕される。葉山の正体は県警の刑事だったのだ。和田は弘の母親に小百合への別れの手紙を託し横浜を去っていく。持っていたコインを投げて表が出たら北海道、裏が出たら九州と決める。表が出たらしく北海道へさすらって行く和田の後姿に主題歌が流れてエンド。
芦田伸介、金子信雄、波多野憲に土方弘、おまけに小沢昭一と悪役の顔ぶれが豪華なのだが、それぞれに見せ場が全くなく勿体無い作品。この頃の小百合も普通の少女スターという感じだし、葉山良二の出番も少ない。ストーリーにも新味もなくあまり面白くなかった。強いて良い所を挙げるとすると波多野の情婦に楠侑子が出ているくらいか。こういう色っぽいお姉ちゃんは大好きダ!!
(2002年9月14日記)
|