第11話
八月はエロスの季節


 今は12月、毎日寒いネ。ところがこれを書いているのは8月。まだ夏である。8月と言えば太陽である、濡れた砂である、エロスの匂いである。あれは数年前の8月。オイラはソリマチ君に誘われて会社の連中たちとプールに行った。内訳はオイラも含めて男5人、女2人。元々、女子社員の少ない会社なので女性が2人しかいないのは仕方がない。

 一人は眼鏡ッ子の雅子チャン。眼鏡を取ると神田うのに似たスレンダーな子でなかなかの酒豪だった。飲み会では欠かせない存在だった。もう一人は我が心のお姉さんでもあるヒトミさんだった。第5話にも書いたが後に宗教に走ってしまったあの人である。オイラよりも一歳年上で浅野温子似の明るい美人。不細工なオイラにも気さくに笑顔を見せてくれるお姉ちゃん。しかしヒトミさんには学生時代の同級生の婚約者がいるらしい。プールに来たのはヒマだったし、何より憧れのヒトミさんの水着姿が拝めるという下心があったためだ。所詮は適わぬ恋だけど、少しでもヒトミさんの傍にいたかった。いやホントの事を言うと、ヒトミさんの水着姿を記憶して夜のオカズにしようと思ったのダぁ!!
 しかし今回のヒロインはヒトミさんではない。 このプールにはウォータースライダーって言うの?急角度の滑り台があった。両手を伸ばして落下に近い角度で水の中に突入するのだが、オイラは高い所や絶叫系の物があまり得意ではなかった。でもヒトミさんの前で「コワイよ。」なんて言いたくなかったから痩せガマンして一度だけ滑ってみせた。何回もやるのは嫌だからみんなが滑っている間、荷物番をしていた。荷物と言っても着替えはロッカーの中、タオルや小銭、日焼け防止オイル等の簡単な物。プールサイドの一角にみんなの荷物を置き、大の字に寝そべってボーっとしていた。
 ふと傍らを見ると若い女がオイラと同じ様に黄昏ていた。加藤夏希似のカワイ子ちゃん(氏名年齢不詳)推定年齢22〜23歳ってところかな?黒い瞳が印象的で黄色のビキニ姿が眩しいナ。話をしてみたい。でもナンパなんてやったことないし、何と言って声をかければ良いのか分からないオイラはチラチラ横目で見るしかなかった。そんなオイラの悶々とした視線を感じたのか、夏希チャンがこっちを見た。ヤバイ!と思ったが咄嗟に「暑いですね。」何言ってんだよ、と自分でも思ったが黙っていると益々怪しまれると思い、会社の連中と来たのだが荷物番をしている。いや本当は絶叫系が苦手だから番をしているんだと正直に告白した。訳わかんない事をペラペラ喋っているオイラを怪訝な顔で見ていた夏希チャンだったが、コワイのは苦手という所でクスッと笑ってくれた。これがきっかけで会話をする事が出来た。夏希チャンはバイト先の連中と来たそうだ。どうやら彼氏と来たと言うわけではないらしい。 これは上手くすればこの後、エッチ出来るかもしれない・・・素人童貞ともオサラバかなぁ。一度で良いから生きているうちに無料でセックスしてみたいもんだゼ!!
 そんなあらぬ妄想で股間のコルトをモッコリさせながら、ソリマチ君たちへの口実を考えていた。何とか夏希チャンと二人っきりになりたいもんだ。その時である。「ママぁ〜!」小さな女の子の声がした。声の主は30歳くらいのオバちゃんたちに連れられた3〜4歳の女の子だった。オバちゃんたちの誰かの娘かと思ったら何と!夏希チャンの子供だったのだぁ。バイト先ってスーパーのパートなのだそうだ。夏希チャン、子持ちの人妻だったのぉ!!しかしこの夏希チャンの娘、とにかく人なつっこい子だった。初対面のオイラにマトワリ付いてくる。オイラは子供は苦手だよ。しかし夏希チャンに似てカワイイから将来は何人の男たちを悩ませるようになるのだろうか?きっとオイラのようなモテナイ男を貢がせて甘い汁を吸うのだろう。しかし娘だけではなく、パート先のオバちゃん達もいるのでこれではホテルで
エッチは無理だな。
 結局オバちゃんや夏希チャンが娘と遊んでいる間、この連中の荷物番までやらされた。そうこうしている内にソリマチ君たち戻ってきちゃったヨ。そろそろ上がって、どこかで飯でも食おうというソリマチ君の提案だが、夏希チャンたちが戻ってこないとマズイので「後から追いかけるよ。」と答えた。我ながら人が良すぎると言うか、気が弱いと言うか・・・トホホ。
 30分くらいして夏希チャンたちが戻って来た。別れを告げてオイラはあわててソリマチ君たちを追いかけた。みんなと合流してヒトミさんと一杯飲みたいよ。更衣室には誰もいなかった。みんなの行く店は分かっているので慌てる必要はない。オイラはシャワー室に入った。
 毎度のことだが、鏡に映る自分のモヤシな体を見て溜息をついた。少しは体を鍛えなきゃカッコ悪いな。スポーツジムにでも通うかぁ。そんなことを考えながらシャワーを浴びていた。その時である。ムニュ!いきなり後ろから抱きつかれて股間を掴まれた。そしてオイラのコルトを一回しごかれてしまった。何だよオイ!!耳元で「今晩、どうお?」ダミ声で囁かれた。後ろを見ると殿山泰司似のオッサンだった。気持ちワリィ!「止めろよ!」ほとんど悲鳴に近い声で怒鳴って(叫んで)殿山泰司なオッサンを振りほどいた。オイラは小心だからビビったよ。でも一回しごかれてチョット起っちゃった。どうせしごいてもらえるなら夏希チャンにして欲しかった、チラッと思った。こんなオッサンの手で大きくなって情けない。大きくなったオイラのコルトを見た泰司なオッサンはニヤっと笑った。冗談じゃないよ、いくら何でもそんな趣味ないよ。オイラは慌てて隣のシャワーに移り泰司なオッサンに触られた部分を洗い流して濡れた体のままジーパンをはいて更衣室を逃げ出した。オイラが身支度をしている間、オッサンはジーっとこちらを見ていた。あの舐め回す様な目つきは思い出す度にゾッとする。ソリマチ君の話ではあそこは時々そういう趣味の方々のハッテン場になるのだそうだ。早く言ってよ。しかし何か変な一日でした。