星影の波止場(68年85分 脚本・山崎厳 監督・西村昭五郎)
 羽田空港にオープンカーで乗り付けた笠原順(浜田光夫)は車をセールスマン(林家こん平)に20万円で売り飛ばし、サンチャゴ行きの飛行機に乗ろうとするが、飛行機は何者かに予約がキャンセルされていた。新東京興行の看板を掲げる暴力団のボス・落合(河村弘二)の仕業だった。空港で河村の子分たちに拉致されそうになった浜田だが、オープンカーを買い戻し港に逃走。カーチェイスをして上手く逃げてオーストラリア行きの船に乗ろうとするが、タッチの差で乗り遅れてしまう。次の船は2週間後。行くところの無い浜田は偶然、盛り場でチンピラの吉村(柳瀬志郎)たちにフクロ叩きにあっている田村次郎(阿木譲)を救う。浜田は阿木の紹介で、レストラン『インペリアル』へ行く。インペリアルは潰れかかっていた。店を切り盛りしているのは新庄礼子(和泉雅子)なのだが、チーフの岸本(深江章喜)の他、ボーイたちは真面目に働いていない。深江は店を潰して坪50万、総額5000万円になるインペリアルの土地を売り飛ばし、退職金を取ろうと企んでいたのだ。更に深江は仕入れの金もピンはねしていた。浜田は訪れた客の注文を取り、手馴れた手つきで料理を作って見せる。接客も料理の腕も一流の浜田は店で働きだす。最初は浜田を信用しないシェフの川井(高品格)だが、浜田の料理に感心して味方となる。阿木は亡くなったインペリアルの店主の息子だった。和泉は捨て子だったのだが、阿木の父親に育てられたのだった。翌日、浜田は阿木と肉屋(衣笠真寿夫)や八百屋を回り、肉や野菜の仕入れ値を値切ってみせる。更に深江の横領の事実を突き止める。阿木は深江を解雇する。深江の子分だったボーイたちも辞めてしまう。その夜、浜田、和泉、高品、阿木の4人で営業していると、河村の子分たちが店にやってくる。仕方なく浜田は河村の所へ行く。浜田は腕の良いギャンブラーで河村が香港の組織との取引現場を撮影したフィルムを持っていた。河村が浜田を執拗に追うのはこのフィルムを取り戻すためだった。浜田はギャンブラーの師匠で現在は堅気となり、アンデス山脈でダム工事現場で働く岡本を頼って行くつもりだった。足を洗って岡本と働こうという浜田は、フィルムのネガを盾に国外逃亡しようとしていた。無事に海外に出られたらネガを渡す、という浜田は店に戻る。翌朝、建物の屋上で洗濯物を干す和泉。その横で看板のペンキを塗る浜田。二人で仲良く唄をデュエット。その様子を悲しそうに見ている阿木。阿木は和泉が好きなようだ。新東京興行幹部・加納(波多野憲)は旧友の花房知念(宍戸錠)に謝礼を50万円払う、とインペリアル立ち退きを依頼する。錠は波多野の情婦のソープ嬢・利江(浜川智子)をウェイトレスとしてインペリアルに潜り込ませる。浜田は店の改装を提案、信栄金融(谷村昌彦)から1000万円借り、建築業者(青空はるお&あきお)に改装工事を依頼、工事を2日でやらせる。店はマンモススナック・ヤングメイトとして生まれ変わる。店がデカクなると人手が要る。募集するのだが、河村の子分となった深江たちに妨害される。阿木はゴーゴー喫茶でヨタっている友達に声をかける。オープン初日、錠が乗り込んでくる。阿木はグレて店を飛び出していた時期があって、その時に博打で300万円の借金があった。「博打の借金は払う必要が無い。」という浜田だが、狡猾な河村は証文を用意していた。浜田は錠と証文と店をかけてポーカーで勝負をする。まともな勝負なら経験豊富な錠が勝つところだが、錠は何故かワザと負ける。浜田が船に乗る日まであと3日、阿木は浜田に「和泉は浜田が好きだから、ずっとここにいてくれ。」と頼むが、浜田の決心は変わらない。証文を取られた事を知った波多野は怒る。波多野と錠は大学時代の親友だった。波多野が犯した強姦事件を身代わりで被ってやった事もあるらしい(笑)。阿木は和泉のパスポートと船券を渡す。「浜田と一緒に行け。」和泉は浜田に行かないでくれ、と頼むが「人間は誰でもやらなきゃならない事がある。次郎(阿木)は君(和泉)が好きなんだ。奴の気持ちも分かってくれ。」諦めた和泉はパスポートと船券を海に捨ててしまう。オープン初日、浜川は波多野の命令で地下の倉庫に火を点けようとするのだが、錠に見つかって失敗。錠は「波多野の事を忘れさせてやる。」と言って、浜川を犯す。行為の後、「これを機会に加納(波多野)を忘れろ。ワシは疲れた。」と捨て台詞が可笑しい。波多野は谷村に圧力をかけ、借金の全額返済を要求する。店には深江が乗り込んでくる。「今夜中に金を作らなきゃ店を壊す。」。浜田は河村のカジノに行き、ネガを担保にカードで勝負をする。最初は劣勢な浜田だが、最後は逆転で勝利。金を作る。更にネガには河村たちが映っているだけで、取り引き現場などは映っていないと種明かしして見せる。怒った河村たちに追われる浜田だが、錠に救われる。錠は岡本の親友だった。浜田とポーカー勝負をした時、カード捌きから岡本の弟子だと見抜いたのだ。ワザと負けてやったのは、岡本との友情の為だった。浜田は金を錠に渡す。錠はネコババせずに和泉に渡してやる(笑)。明け方、浜田は船に乗り込み去っていく。港に立つ和泉の姿に阿木の歌う主題歌『俺には天使の君だった』が被りエンド。
 船が出航するまでの2週間の間に暴力団と対決、店を建て直して去っていく、というのは赤木圭一郎や高橋英樹の『激流に生きる男』を彷彿とさせる。しかしどうして主演が浜田光夫なの?青春物で勤労青年や学生役の多い浜田は、どう見てもスゴ腕のギャンブラーには見えない。柳瀬志郎や深江章喜よりも小柄な浜田ではちっとも強そうに見えないのだ。ライバル役の宍戸錠も普段は寺で僧侶をしているのだが、そんな男がどうして事件に首を突っ込んでくるのか?坊さんがどうしてギャンブラーなの?劇中ではモップスやテンプターズが出てきて歌を披露するシーンもあるのでGSファンには嬉しい作品。この映画を観たのは2005年9月28日(水)、渋谷ユーロスペースでの『日活ニューアクション&日活歌謡映画特集』。作品上映後に黒沢進(GS評論家)&サミー前田(音楽プロデューサー、DJ)氏のトークショーがあった。この二人の話では、主題歌も歌っている阿木譲はこの映画の公開から1年後に芸能界を引退。『ロック・マガジン』編集人や文筆家として活躍、現在は関西の方で店をやっているらしい。映画のストーリーは60年代前半の日活アクションの匂いを残すものだが、アクション物なのか、青春物なのか、ハッキリしない妙な作品。しかしこの頃の和泉雅子はメンコイので、作品の出来はどうでも良い(笑)。
(2005年9月30日記)

        坊ちゃん記者(55年96分白黒 原作・山崎英祐 脚色・須崎勝彌 監督・野口博志)
 伊勢恭介(小林桂樹)は東都新聞の新米記者。柔道五段の猛者で新聞社の柔道大会で優勝するほどの実力者だ。事件が起こると猪突猛進でぶつかるのだが人の良いのが災いして闘志はいつも空回り。ライバル誌の新報タイムスの記者・山名純平(金子信雄)に抜かれてばかりだ。取調室のロッカーに隠れて放火犯人(河瀬正敏)の自白を盗み聞き内容を窓から仲間にサインを送り記事にするが金子にサインの内容を解読されまたまた抜かれてしまう。一度は辞表を出す桂樹だが社会部長・金丸剛介(山村聡)は笑って辞表を破ってしまう。記者たちの溜まり場となっている酒場・吉満の女給・光子(雨宮節子)とは友達以上恋人未満の微妙な関係だ。ある日、銀座を歩いているとバレーダンサー・浅井ルミ子(津島恵子)と小柳老詩人(増田順二)がデートしているのを見かける。桂樹が偶然その場に居合わせた街頭カメラマン島村秋雄(信欣三)に二人の写真をフォーカスしてもらう。人気バレリーナと老詩人との取り合わせにさわやかな印象を受けた桂樹は記事を書くが差し替えられてしまい実際に掲載されたものは東スポのようなセンセーショナルな内容だった。抗議にやってくる津島。平謝りの桂樹だが別に事件が起こるとすぐに飛んで言ってしまう。桂樹は信に頼まれ新聞社のカメラマンに雇ってもらおうと写真部長(川上信夫)に頼むが断られてしまう。面会に来た信にダメだった事を話すと気落ちして帰っていく。気の毒だとは思うもののすぐにまた取材に出て行ってしまう桂樹。しばらくして信が海に身投げして自殺してしまう。死体は出なかったものの遺書が置いてあった。それによると信は津島の写真を撮った際、人ごみに揉まれ誤ってカメラを落としてレンズを割ってしまっていた。商売道具を壊してしまい新聞社のカメラマンの仕事もなく悲観して自殺したのだった。津島はダンススタジオをやっていて子供たちにバレーを教えていたのだがフォーカスされたことで父兄から抗議を受けていた。根も葉もない記事のためだという事を桂樹に証明して欲しい津島はスタジオで父兄たちに説明して欲しいと依頼。桂樹はタクシーでスタジオに向う。タクシーの助手席には運転手・相川六蔵(天草四郎)の娘・ミー子(渡辺典子)が乗っていた。訳を尋ねると生き別れになった母親・しず(山村くに子)を捜しているという。その話に感動した桂樹は津島との約束をすっぽかして父娘タクシーの母親探しの話を記事にする。最初は怒った津島だが記事に感動して天草&典子に面会にやって来る。そして天草が仕事中、典子を預かりバレーを教える事になる。都内では自動車強盗が横行していた。深夜、走っている車を襲い運転手を殺害して車を奪うというもの。車は車体番号を改ざんし売りさばいてしまうらしい。桂樹は山村聡の指示でデスク・野津一郎(伊豆肇)らと事件を追っていた。知り合いのバーのマダム・佐竹和子(日高澄子)の話では車を安く買えるルートがあるらしい。そんな時、桂樹の記事を見た典子の母親が名乗り出てくる。山奥の旅館で働いていたのだが新聞を見て名乗り出たのだった。天草のタクシー会社事務所で典子&山村くに子と待っている桂樹だが天草のタクシーが襲われてしまう。重症を負って病院に担ぎ込まれるのだが駆けつけた典子&山村くに子に看取られて亡くなってしまう。吉満に自殺したはずの信が現れる。信は自動車強盗団の片棒を担がされていたのだが気の弱い信は逃げ出して来たのだった。吉満の2階を取材の拠点にしていた桂樹や伊豆たちだが吉満は信を追ってきた強盗団に包囲されていた。伊豆の指示で囮を使い強盗団を引きつけ他の記者に信を警察に連れて行かせる。桂樹と伊豆は強盗団の本拠地へ乗り込む。入れ違いに強盗団のボス・ブラックの鉄(高品格)たちが逃げていくのを目撃した桂樹は単身追跡。強盗団が解体工場に使っている廃ビルに追い込む。そこへ刑事の坂本(深水吉衛)が現れ二人で強盗団と対決する。本拠地を調べていた伊豆は解体工場の場所を調べ警察&新聞社に連絡。桂樹は得意の柔道で強盗団をぶっ飛ばす。最後はボスの高品とドロ川の中で壮絶?な格闘、捕まえる。お手柄の桂樹は何故か女の子にモテモテ。雨宮、津島、日高たちからラブコールが殺到するのだが忙しいのは変わらない。九州で起こった海難事故の取材で車で羽田に向う姿にエンドマーク。
 日活なのに何故か小林桂樹主演。気は優しくて力持ち的な役どころははまり役か。桂樹の家は母親と3人の妹ばかりの女系家族。母親は口では新聞記者の仕事を快く思っていないが桂樹の書いた記事を“恭介お手柄帳”と題したノートにスクラップしているシーンあり。内容は平凡なもので3日も経てば忘れてしまいそうなレベルの作品。天草が殺されたり自殺したはずの信が実は生きていて強盗団の片棒担いでいて桂樹を尋ねてくるというご都合主義的な展開が目立つ。また柔道が得意という設定なのだからせめてクライマックスの強盗団との格闘はもっとその辺を生かせば良かったのに大して見せ場も無いものに終始してしまっているのも勿体無い(いきなり刑事の深水が現れるのも変)。ドロ川の中での高品との格闘も今ひとつ。でも二人とも髪の毛までドロだらけになっていたから当時としては頑張った方かな。強盗団の顔ぶれは高品の他に深江章喜や柳瀬志郎の顔が見えた。この人たちはこの頃からギャングだったようだ(笑)。映画の最初の方で小林桂樹とすれ違う人の中に宍戸錠がいた(と思う)。
(2003年7月7日記)