第11話  思えば遠くへ来たもんだ

市原市民会館 (千葉県市原市)

 

 

市原市民会館は市原市役所の正面にある大きなイベントホールである。田舎だから交通の便は悪い。JR五井駅から小湊鉄道の路線バスで15〜20分くらい乗って市原市役所で降りるのだが、バスは日中1時間に1本しか来ない。
 1978年秋頃、『愛と死の記録』(66年、脚本・大橋喜一、小林吉男、監督・蔵原惟
繕)を観ている。今回は『ぴあ』の自主上映のページで見つけた。上映日は土曜日。当時、高校生だったから学校がある。上映開始が午後2時頃だったかなぁ。遠いから学校帰りに寄っても間に合いそうもない。少しでも早く着くために、上映日の1週前の土曜日にリハーサルをした。学校が12時過ぎに終わった所でダッシュで駅へ走り、JR(当時は、国鉄)に飛び乗る。

当時、アメ横で買った安物のデジタル時計(安いと言っても当時4800円した。防水でもなければストップウォッチはもちろんアラームも付いていない。秒の表示すらないという現在では考えられないシロモノ。それでもオイラにとっては宝物であった。)をチラチラ見ながら時間を計った。五井駅に到着したところで既に2時。「やはりダメか・・・・」最初から観る事は出来そうもない。初めて行った所なので五井駅からどのバスに乗れば良いのかも分からない。しかもバスの時刻表を見てビックリ!!前述した様に一時間に1本しかバスが来ない。「仕方ない・・・・」オイラは駅からタクシーに乗った。もう何度も書いている事だが、オイラは金がない。しかし背に腹は変えられない。『愛と死の記録』はどうしても観たい・・・いや観なければならないのだ!!何故ならオイラは小学校一年の時からサユリストだ。崇拝する吉永小百合様の映画である。しかも未見である。リハーサルといえども万全を期したい。変な使命感にかられて非常用の1000円札をサイフから出し、タクシーを拾った。結局、15分ほど遅れて到着する事がわかった。
 前半15分観る事が出来ない。正直、オイラは迷ったよ。全部観る事が出来ないのなら今回は諦めようかと・・・・。しかし現在と違って、当時は日活映画を手軽に観る事が出来なかった。特に『愛と死の記録』のようなシリアスな作品は映画館でもなかなかかかるものではない。そう考えると、このチャンスを逃したら2度と観る機会は訪れないかもしれない。オイラは決行を決意した。
 そして上映日当日がやってきた。良い天気であった。リハーサルをしているので気持ちに余裕がある。予定通り?15分遅刻でホールの座席に着く事ができた。さて肝心の映画であるが、いつもの青春物ではないので小百合様もシリアスな表情が多いのだが、渡哲也が発病するまでは実に穏やかな優しい表情を見せてくれた。こんな彼女がいたら、この先の人生楽しいだろうなぁ、とモテないオイラは思った・・・トホホ。ラスト、小百合様が亡くなった渡の後を追って自殺するのだが、観ているこっちも悲しい気持ちにさせられた。やっぱり小百合様にはいつもの明るい青春物をやっていて欲しいな。

 帰りは駅までバスで帰った。映画の終了時刻とバスの時間がピッタリでそれほど待たずに乗る事が出来た。帰りの車中で見た夕日が眩しかったのは今でも憶えています。白状するけど、帰りはバスもJRもキセルして帰りました。JR、小湊鉄道関係者の方、ゴメンナサイ。

 

 

 

市原市民会館詳細データ
惣社1丁目1番地1
TEL 0436−22−7111