第10話  この街が好きです。

蒲田日活

 

オイラは蒲田という街が好きだ。特にJR蒲田駅東口から京浜急行蒲田駅にかけての商店街が楽しい。ゲームセンター、レンタルビデオ店、ドラッグストア、ラーメン屋、等が充実していて飽きない街だ。洋服も安い。ファッションには無頓着なオイラであるが上着が2000円と破格な値が付いていたのを見て、衝動買いをしてしまった事もある。
 今回紹介する『蒲田日活』はこの商店街の反対側。JR蒲田駅西口を出て日本工学院方向に歩いて、線路際にあった映画館だ。

 

現在は写真の様に駐車場となってしまい面影はない。無くなったのは80年代に入ってすぐのようである。ここには1979年8月に3回来ている。観た作品は下記の3本である。
1度目は8月2日(木)新ハレンチ学園
(71年、脚本・山崎厳、鴨井達比古、監督・林功、
出演・宍戸錠
高松しげお、E・H・エリック、常田富士男、桂三枝、他)
2度目は8月8日(水)錆びたナイフ
(58年、脚本・石原慎太郎、舛田利雄、監督・舛田利雄、出演・石原裕次郎、小林旭、杉浦直樹、北原三枝、白木マリ、清水将夫、他)

 


3度目は8月11日(土)人間狩り (62年、脚本・星川星司、松尾昭典、監督・松尾昭典、出演・長門裕之、中原早苗、渡辺美佐子、大坂志郎、北林谷栄、伊藤孝雄、他)

蒲田日活は当時、ロマンポルノ映画の上映館であった。ところがこの時、午前中の1回だけ古き良き日活映画、それも普段はテレビ放送や映画館でかかる機会の少ない作品の特集をやってくれたのだ。入場料は朝の1回だけ200円だった。午後からは通常通りの料金でのポルノ上映となる。(いくらだか忘れた。)『新ハレンチ学園』は電車で行った。初めて行くところで土地勘がない。遅刻したら大変だからだ。
 『錆びたナイフ』と『人間狩り』は自転車で行った。上映が10時スタートだったので、朝ご飯を食べて7時頃に出発、暑い中をひたすら自転車をこいだ。この時は第2京浜を走って行ったのを憶えている。ここは平日の午前中は人影もまばらであるが、周囲はキャバレーやピンサロばかりなので夜は客引きだらけになる。気の弱いオイラでは夜の一人歩きなど出来そうにない雰囲気である。小さな映画館であった。普段はポルノ上映館だからあまりキレイとはいえない。客もオイラのようなオタク野郎が1〜2人という貸切り状態であった。ポルノ映画なら労務者が何人か観に来ているのだろうが、無名の旧作では当然だよね。実際、『錆びたナイフ』は裕次郎の代表作と言う事でビデオでの再見の機会はあるが、『新ハレンチ学園』と『人間狩り』は未だ再見の機会がない程の幻の作品である。個人的には『新ハレンチ学園』はどうでも良いが、『人間狩り』は傑作の刑事もの。機会があれば、もう一度観たいよ。
 今回も捜すのに苦労した。東口は以前、何度か遊びに来たりしたのだが、西口の方は殆ど行った事が無かった。蒲田出身の知人に問い合わせたり、付近の聞き込みをしたりしてようやく見つけたのが、上の写真である。今度ゆっくり西口散策してみようかな。

 

蒲田日活 詳細データ不明
1980年代前半頃、廃館