北国の街(65年92分 脚本・倉本聡 監督・柳瀬観)
 舞台は新潟県十日町(ロケ地は長野県飯山らしい)。高校3年生の小島海彦(舟木一夫)は東京の大学を目指している。父子家庭で父親の公平(信欽三)は機織り職人。老人性結核で寝たり起きたりの生活だ。舟木は新聞配達をしながら家計を助けている。ある朝、駅前で隣町の女子高生・志野雪子(和泉雅子)が同じ高校の不良学生・和田(根岸一正)に付きまとわれている所を救う。危うく根岸のグループにリンチにあうところをクラスの藤田(山内賢)に助けられる。山内は不良だが気の良い奴で二人は仲良くなる。学校の帰り、舟木は和泉と偶然列車で乗り合わせる。満員でお互いを意識してしまう二人。当時の田舎の列車は乗車扉がなかったため舟木の学生帽が飛んでしまう。雪の中、帽子を探す二人はこれがきっかけで付き合うようになる。それを知った根岸はしつこく横恋慕。自分に譲るように舟木を脅迫する。和泉は銀行の支店長の娘で半年前に転校してきたばかり、東京の女子大を目指していたが不治の病で良くて6年くらいしか生きられない体だった。その事を舟木は知らない。二人は駅でラブレターを交換したりお互いの家にも行き来するようになる。将来は東京で会おうと誓い合うのだが信が病気で倒れてしまう。舟木は受験を諦め信の後を継ぐ決意をする。山内はストーカーのように舟木と和泉に付きまとう根岸と対決する。足を刺されて負傷するがケンカには勝つ。病院のベッドの上で教師の竹中(葉山良二)から舟木が受験を諦めた事を知った山内は舟木から誘われて一緒に機織りの仕事を始める。和泉は自分も受験を止めようとするが舟木は「僕たちは若い。時間は充分ある。」と説得する。やがて和泉は受験を突破、東京へ旅立つ。走り去る蒸気機関車を遠くから見送り線路の上に立ち尽くす舟木の姿に主題歌『北国の街』が被りエンドマーク。
 雪の田舎町での舟木と和泉の恋物語は燃え上がるような事もなく静かな展開。高校生同士だし当時の二人の人気を考えれば仕方がないか。舟木の家で二人っきりになり接吻してもおかしくないような状況になってもそうはならない。和泉は受け入れOKという表情だったのにやらない舟木は歯がゆい。和泉は余命いくばくも無いという設定なのだがあまり生かされていない。しかし単身上京していくのだから下手をするとこれが永遠の別れになるかもしれない。この事を舟木は知らないのは何とも切ない。この辺の処理の仕方もイマイチで、特にメリハリのないストーリーは観ていて退屈。倉本聡作品にしては凡作。二人の恋物語よりも不器用な山内の姿のほうが印象に残る。山内も和泉の事が好きらしいのだが、そういう感情を押し殺して二人を応援する姿には好感が持てる。
(2003年5月10日記)

          氣まぐれ渡世(62年89分 脚本・若井基成、西河克巳 監督・西河克巳)
 1962年、警視庁第3会議室では密造拳銃に関する捜査会議が開かれていた。この銃は通称・J1拳銃。カギを握るのは白坂譲次・通称気まぐれのジョージ(宍戸錠)。警察は錠をマークする。錠は室内クレー射撃場(こんなのあるの?)で数人の女連れの社長(天草四郎)と勝負(天草は金、錠は地方の射撃場での優勝メダルを賭ける)錠は見事な射撃ぶりで金を稼ぐ。そこへ現れた初老の紳士(変装?した藤村有弘)。錠が射撃を教えるが藤村は妙に上手い。錠よりも上手いので稼いだ金を藤村にやろうとしたりする。夜、立ち寄ったバ−で赤ん坊を連れた黒木(日野道夫)。顔に傷のある関西弁の男・テツ(青木富夫)に連れて行かれてしまう。日野は強引に赤ん坊を錠に託し出て行く。追いかけると日野は殺されていた。自分と同じように孤児となった赤ん坊に同情した錠は自分のマンション(定職もないのに良い部屋!)に連れて行く。朝、子供に飲ませるために隣室の牛乳を盗もうとする錠だが部屋のオバサンとそこを訪れていた修道女のマリア・ベルナデッタ・蕗子(芦川いづみ)に見つかってしまう。慣れない育児を見かねた芦川は錠と赤ん坊を自分の働く教会(孤児院付き)に連れて行く。錠は芦川に子供を預け、赤ん坊を殺した犯人を追いかける。手がかりは黒木の死体の側に落ちていたタバコの吸殻・外国製の闇タバコ『ナイルクイーン』、おそらく青木の吸っていたもの。錠はクレー場で会った藤村有弘に尾行されている事に気づく。藤村は警視庁刑事・日高(射撃の名人@錠よりも上手かったのも納得!)だった。藤村を巻いて、タバコの線からキャバレー&カジノバー風の店に乗り込んだ錠はチンピラ・サブ(野呂圭介)を締め上げて関西弁の男の名前がテツであることを聞き出す。野呂の話しから日野の家が神田のモデルガンショップ・黒木屋だと知った錠は黒木屋に乗り込む。そこで日野の妻と名乗る女・麻子(香月美奈子)と出会う。赤ん坊の母親が見つかったとホッとする錠だが、香月は組織のスパイだった。香月は赤ん坊を引き取り姿を消す。錠が孤児院でソフトボールに興じていると(ピッチャーは芦川いづみ!)藤村たちが乗り込んで錠を殺人容疑で逮捕してしまう。J1拳銃は戦争中、航空兵だった錠が戦友・鷲尾俊太郎(内田良平)と作ったものと同型だった。内田はニューギニアのジャングルで行方不明となっていた。銃の設計図が錠の部屋から見つかった事で容疑がかけられたのだが藤村には錠が犯人とは思えない。藤村は捜査課長の宮永(加藤武)を説き伏せ錠を泳がせる事にする。香月が母親ではない事を知った錠は護送中に藤村を殴り倒し護送車から脱走する。錠は教会に行く。赤ん坊は引き取ったと見せかけて教会に置き去りにされていた。芦川から赤ん坊の肌着に「何かあったら養育費を三河島の東邦玩具から貰ってくれ」と書かれた紙があったと聞いた錠は東邦玩具へ乗り込む。ここの地下が拳銃密造工場だった。銃撃戦となりここにいた香月を連れ出した錠。香月の持っていたトランシーバーで組織のボスと連絡を取る。組織のボスは内田だった。香月は内田の愛人だった。谷中の墓地で内田と会う錠。内田は自分と組んで大儲けをしようと誘う。断る錠に内田は自分たちが乗る船を教え、「気が向いたら来い」。しかしこの船は囮で内田の部下や香月は藤村たちに逮捕される。錠はトランシーバーで内田と連絡を取る。かつての航空管制塔で会った錠と内田。錠は内田を倒そうとするが、後ろから青木に銃を突きつけられる。昏倒されトラックに乗せられて車ごと殺されそうになるが脱出。撃ち合いとなる。錠は拾ったドライバーを投げ付け内田から銃を奪い殴り合いとなる。ライフルで錠を殺そうとする青木だが、誤って内田を撃ってしまい内田は死ぬ。青木は駆けつけた藤村に撃たれる。ラストは修道院。赤ん坊を芦川に託し去っていく所でエンド。
 錠を殺すのならさっさと撃ってしまえば良いのにトラックに乗せて段取りを組んだりするのは妙な感じだし、映画の出来としては平凡なもの。しかし芦川いづみのシスター姿は一見の価値あり。この人は聖女だ!女神だ!マリア様じゃあ!!この手のコスプレ趣味のある方にもオススメです。シスターの衣装のあるイメクラあったらイキたい所だけど芦川いづみみたいな人が現実にいる訳はないナ。あぁ・・・オイラも芦川いづみサマに抱っこされたい。
(2002年9月14日記)

          君が青春のとき(67年、脚本・山田信夫、倉本聡、加藤隆之介、監督・斎藤武市)
テレビ局の新米プロデューサーの木所香 (吉永小百合)は自らの企画『君が青春のとき』を製作する事が決まり有頂天になっていた。これは夜の青山族の生態を隠し撮りで描くドキュメント番組である。青山族とは夜の青山を徘徊する若者達の事である。上司の内藤武敏の指示で番組の構成には内藤の旧友で作家の仲谷昇が担当する事が決まり撮影はスタートする。隠しマイクを付け、夜のクラブに潜り込む吉永はここでピン公(山本圭)という若者と知り合う。ピン公を騙してその日常を隠し撮りする吉永だが、彼がOLをしている姉(十朱幸代)思いの若者だと知り苦しむ。「結婚の決まっている十朱の顔だけは映さないで欲しい。」 と懇願するピン公。結局、仲谷が番組審議委員会に提訴して放送は中止となる。「考えてから飛ぶのではない。飛んでから考える、これが青春だ。」 仲谷の台詞が印象的な青春映画。吉永の友人で十朱の同僚に米倉斉加年が扮した。吉永の明るい雰囲気と退廃的な青山族とはアンバランスな感じはするが、山田信夫、倉本聡の脚本は骨太な作りでこの時期、量産された小百合映画の中では異色の作品。当時の若者風俗も垣間見れる貴重な映画でもある。
(2000年9月16日記)

          狂熱の季節(60年75分白黒、脚本・山田信夫、監督・蔵原惟繕)
 チンピラの明(川地民夫)は渋谷のジャズ喫茶で黒人ギル(チコ・ローランド)と飲んでいる。その横では仲間で外人相手の娼婦・ユキ(千代侑子)が客と騒いでいる。川地はユキの手引きでその客の尻ポケットから財布をスリとるのだが、刑事(深江章喜)に現行犯逮捕されてしまう。深江を手引きしたのは記者の柏木(長門裕之)。川地は東京鑑別所に送られてしまう。川地はここでチンピラ勝(
郷^治@新人!)と知り合う。タイトルバックは軽快なジャズに乗せて郷と鑑別所内で暴れたり、看守を襲ってタバコを奪い牢屋の中で吸う姿が描かれる。真夏のクソ暑い日に二人は出所する。銀座で車を盗み、先に出所している千代を呼び出す。千代はこれから商売らしく客と一緒。新橋駅?有楽町駅?で客と千代を乗せる。千代が商売に使っているアパート(大和田町のあざみ荘)に送ってやる。川地は警察に「売春行為をしてる」、と電話。すぐにパトカーがやって来る。このドサクサに紛れて千代は客の財布を盗み、川地たちと合流。海に行く。川地はここで婚約者で画家の文子(松本典子)とデート中の長門を発見。車を長門にぶつけ、松本を拉致。強姦してしまう。夜、盗んだ車を業者(何故か大人はいない、子供ばかり)に5万円で売り飛ばす。川地は渋谷にアパートを借り、郷と千代と暮らし始める(この二人はデキてしまったらしく手をつないで寝ているシーンあり)。朝、鑑別所の癖で早起きしてしまった川地は早朝の町をフラフラ。牛乳を盗んで帰ると、郷と千代は朝からセックス。川地が「そんな事は夜だけにしときなよ。」と言うと、郷は「もうすぐ終わるよ。」。昼、ジャズ喫茶でダラダラしていると松本が現れる。松本の話では長門は川地との一件について何も尋ねて来ない、という。逆に以前よりも優しくなったと言う。面倒になって帰ろうとした川地に松本は「妊娠した。」と告げる。長門とは随分前に一度だけしかしていないから、川地の子供らしい。郷は川地を地元の暴力団・関東組に入ろう、と誘う。すっかり郷の愛人になってしまった千代も勧めるが、川地は「つまんねぇよ。」と意に介さない。郷は関東組に入る。川地は赤電話荒らしで金を作り、またジャズ喫茶へ。そこには松本がいる。松本は長門との日常を吐露する。「映画を観て、お茶を飲み、いつもとちっとも変わらない。私がこんなに変わっているのに・・・」。川地は全く動じず。松本がトイレに行っている間に、川地は松本のバッグを取って出て行ってしまう。夜の街で関東組のチンピラになった郷と会う。「面白いぜ、仲間がいっぱいいてよ。」ショバ荒らしと乱闘する郷を見て「ケンカをするのはジャズの分からない奴らだぜ。」。ある日、川地は松本の家に行く。その日は松本の画家仲間が集まっていた。松本は「帰れ!」と言うが、若い画家連中(草薙幸二郎、他)はイカレタ川地に興味を覚えモデルに誘う。草薙のシャツの中に吸っていたタバコを投げ入れ外に出る川地。長門とデートに行く松本に付きまとい、食事を奢らせる。気の弱い長門は松本を置いて帰ってしまう。翌日、ジャズ喫茶ではチコが千代に「付き合って欲しい」。川地も「付き合ってやれよ、アブれてるんだろ。」と言うが、千代は黒人が嫌い。川地は「一番偉いんだぞ、クロンボは。こんなイカすジャズ作ったんだからな。それを盗んだのがシロンボさ。それを真似したのが俺たちさ。」。そこへ松本がやって来る。「長門に自分がされた事をして欲しい。そうすれば自分たちは同じになれる。」と懇願するが、川地は店内に流れているジャズに夢中。頭にきた松本はジャズのかかっている蓄音機を切ってしまう。ジャズが切れて川地はキレる。ビンを割って松本を刺そうとするが、チコに止められる。店を飛び出した川地はチコに慰められる。そして車で海へ。誰もいない海で泳ぎまくる川地とチコ。松本の話を横で聴いていた千代は長門を誘惑。ホテルにしけ込む。ホテルから出てくる所を隠れて見ている松本。千代は松本に「ガツガツしやがって、長門はサイテーだよ。あいつは誰に頼まれたのか知ってるんだよ。」。ある日、郷と川地がアパートで飯を食っている。そこへ千代が帰ってくる。長門の子を身ごもったらしい。商売出来なくなるから堕ろそうという千代に郷は「産めよ。俺の子かもしれないし。どっちにしたってお前の子には違いないんだし。」。郷には幹部になれるチャンスがあるらしい。優しい郷の言葉で盛り上がる二人。朝っぱらから抱き合う二人に遠慮して、川地は外へ。やってきたのは松本の家。留守らしいので窓ガラスを割って忍び込む。書きかけの絵にイタズラして外に出るのだが、隣の家に鶏小屋があるのを発見。一羽盗んで、松本の家で焼いて食べてしまう。松本の部屋には蓄音機はあるのだが、レコードはクラシックしかなかった。かけっぱなしで眠ってしまう川地。そこへ松本と長門が帰ってくる。長門が千代とセックスしたことで、平等になった二人の仲は元の関係に戻っていた。川地が寝ていたのに驚く二人だが、ガスの元栓を開いて川地を殺そうとする。しかし寝返りを打った時に蓄音機のスイッチが入り目が覚めてしまう。ガスが開いている事にも気付かずに帰ってしまう川地。その夜、郷が瀕死の重傷で帰ってくる。権藤組のボスを殺って来たのだが、返り討ちにあったらしい。医者を呼ぼうとするが、既に死んでいる。「言わねぇこっちゃねぇ。仲間なんか作るとロクな事はねぇ。」数日後、中絶手術をするために病院に行く千代に付き添って行く川地。待合室にいると松本と長門がいる。松本も中絶するらしい。川地は松本を抱き寄せ、千代を長門に押し付ける。「何をするんだ。」という長門に対し、川地は「こうなるのがホントじゃねぇか。こいつ(松本)の子供は俺のだし、こいつ(千代)の子供はあんたのじゃねえか!」病院の待合室で大笑いする川地の姿がストップモーション。軽快なジャズがかかってエンドマーク。

 全編、川地の暴走ぶりが凄まじい。行き当たりばったりで本能のまま、感覚的に生きる姿はスゴイ!2003年夏発行の『映画芸術404号』によると、蔵原監督は川地に「広い砂漠で太陽がギラギラ輝いていて、飢えた雄ライオンが太陽に向って吼え叫んでいる。そのライオンなんだよ。」とアドバイスしただけだったそうだ。自由にやらせてもらって、この作品から役者は面白いと思い始めたそうだ。川地たちが住むアパートは電車の沿線で電車が通過するたびに激しく揺れるボロアパート。それがまた良い雰囲気。街なかのシーンでは隠し撮りや手持ちカメラでの撮影が多い。太陽がギラギラして、いかにも狂熱の季節という感じが出ている傑作。当時、新人だった郷も無駄に頑張っている感はあるものの熱演。安定を求めて組に入るのに死んでしまうのは何とも切ない。オイラ的には気の弱い長門に感情移入してしまう。松本は「神様みたいな人」と言うが、単に気の弱い男だけだと思う。川地がいるのに松本を置いて逃げてしまうのが、どうして神様なんだよ。でもこういう臆病なところは理解できる。普通の男は見苦しくても、カッコ悪くても好きな女を絶対に手放さないところだが、逃げ出してしまう姿は何となく分かるんだよなぁ。逆に理解できないのは松本だ。どうして自分を強姦した川地のところへ何度も来るんだ。しかも長門との関係を聞かれてもいないのに吐露するのは理解できない。その辺はチョッと無理があったと思う。
(2004年8月23日記)


          霧子のタンゴ(63年86分白黒、脚本・沢村勉 監督・滝沢英輔)
 待井千代(松原智恵子) は佃島で暮らしている。家族構成は松原の他、祖父・六平(松本克平)。姉・多恵(南田洋子) 。両親は東京大空襲で亡くなってしまった。松原は毎日、渡し舟に乗って銀座のナイトクラブTOLEDOへ通勤。クローク係りをしていた。ある日、泥酔した客・大矢木俊一(小杉勇二) がコートのポケットに入れておいた20万円が紛失。疑いがかかる。支配人(弘松三郎 ) や他の従業員が疑いの目を持つが、松原に好意を持つコックの菊川明(山内賢) と先輩バーテンの永田三郎(内藤武敏) だけは親身に接する。山内はカレー屋をやる夢を持っている。落ち込んでいる松原を貸しモーターボートに誘い慰める。山内は小杉と幼馴染み。松原の無実を晴らそうと小杉や小杉の父・亮三(清水将夫) のところに奔走。小杉と清水も真面目な松原が犯人とも思えない。しかし弘松は松原を解雇してしまう。その後金は見つかる。小杉がTOLEDOに来る直前に飲んでいたバーに置き忘れていたのだ。マダム(谷川玲子?) が届けてくれた。責任を感じた小杉は、大会社社長の清水に再就職を頼む。清水は自分の会社の系列である靴屋(ウヰンザー靴店) を紹介。松原は勤めることになる。南田には失業中の恋人・桧竜司(野村隆) がいた。家に連れてきて紹介するが、松本は気に入らない。南田は家を出て桧と暮らし始める。清水は真面目で純情な松原を息子の嫁にと考える。小杉も松原に惹かれていく。松原も金持ちの小杉に惹かれていく。小杉は死んだ清水の妻の子供ではなく、若い頃に柳橋の料理屋の仲居に産ませた子供だった。現在は長野の方で温泉旅館をやっているらしい。小杉は大学生。自分の出生に不満を持っていて、大学も行ったり行かなかったり。清水との関係もどこかギクシャク。山内は松原の家に出入りして松本に親切にしていた。ある日訪ねると、具合の悪い松本がいた。松原は不在。看病する山内。医者を呼びに行った山内はデート帰りで小杉と接吻している松原を目撃。激怒する山内は帰宅した松原を罵る。TOLEDOも辞めてしまった山内は内藤の世話で中華料理屋で働き始める。松原は本当に愛しているのは山内だと悟り、逢いに行く。二人を祝福する小杉。小杉は母親に会いに車を飛ばす。旅館の女将・染井鶴(奈良岡朋子) は「自分は後妻だから、あんたの母親ではない。」 と嘘を言って追い返す。自棄になった小杉は帰り道にスピードの出しすぎで事故を起こして死んでしまう。小杉が死んだのは自分のせいではないかと、自らを責める松原。清水は違うというが、気持ちの整理がつくまでお互いに会わない事を決める。山内は外国航路の船のコックになる。握手して別れる二人の姿にエンドマーク。

 フランク永井のヒット曲を主題歌にした作品。フランク永井はTOLEDOで歌うだけでストーリーには絡んでこない。数年前は日活映画に出演していただけに寂しい扱い。松原の勤める靴店の店員に水森久美子と進千賀子の顔が見えた。林浩子という人もいたようだが、顔を知らないので確認できず。南田洋子の勤め先は日本証券代行という会社だったようだ。看板が出ていた。本筋には絡まず、出番も少ない。この頃忙しかったのかな? この映画が製作された昭和38年はまだ佃大橋が建設中。39年に橋がかかるのだが、それまでは佃島は陸続きではなかったため、佃の渡しが運行されていた。この作品は佃の渡し舟が観られる貴重な作品である。しかしながら映画の出来は平凡。監督が滝沢英輔なのでそれなりの風格はあるが、50年代SP作品の雰囲気が漂う。
(2010年1月8日記)

 

          銀座旋風児シリーズ(59年〜63年、監督・野口博志)
川内康範原作、野口博志が監督、小林旭が主演したシリーズ物。銀座を根城にするインテリアデザイナー・二階堂卓也(小林旭)が密輸団や汚職事件を摘発する探偵活劇。
ラインアップは下記の通り。
1 銀座旋風児
 (59年、脚本・川内康範、共演・浅丘ルリ子、青山恭二、宍戸錠、南風夕子、白木マリ、芦田伸介、
 西村晃)
2 銀座旋風児 黒幕は誰だ
 
(59年、脚本・川内康範、共演・浅丘ルリ子 、南風夕子、青山恭二 、宍戸錠 、菅井一郎 、雪丘恵介 、
 安部徹)
3 銀座旋風児 目撃者は
彼奴だ
 
(60年、脚本・織田清司、共演・浅丘ルリ子 、小沢昭一 、青山恭二 、松本染升 、浜村純、白木マリ)
4 銀座旋風児 嵐が俺を呼んでいる
 (61年、脚本・織田清司、共演・浅丘ルリ子 、青山恭二 、 松尾嘉代 、山内明、近藤宏 、南風夕子)
5 
二階堂卓也銀座無頼帖 帰ってきた旋風児
 (62年、脚本・織田清司、共演・小林旭 、松原智恵子 、藤村有弘 、青山恭二  、上月左知子 )
6 嵐が呼んでる旋風児 銀座無頼帖
 (63年、脚本・織田清司、保坂潔 、共演・
松原智恵子、高品格、 松尾嘉代、高野由美、清水将夫)
旭の助手には@〜C作目まで浅丘ルリ子、D、E作が松原智恵子、旭に協力する新聞記者に青山恭二が扮した。旭をバックアップする情報屋の政には宍戸錠(@、A作)、小沢昭一(B作)、近藤宏(C作)、藤村有弘(D作)高品格(E作)がそれぞれ扮した。@が供出ダイヤ横領事件。Aが公団汚職にからむ偽札事件。Bが金融機関の内紛に絡む殺人事件。Cが外車の密輸入組織摘発。Dが売春組織摘発。Eがダイヤ密輸事件に絡む幼児誘拐事件を解決する。原作が『月光仮面』の川内康範らしく旭の活躍はスーパーマン的である。刑事でもないのに、ろくに本業の仕事もせずにやたらと?事件に首を突っ込んでくる。警察を指揮して事件を解明するのも不思議。しかも銀座を道行く女の子たちから「旋風児〜」なんて呼ばれてチヤホヤされるのはもっと不思議。神出鬼没な活躍ぶりは
東映の『多羅尾伴内』の日活版とでも言うべきものかな。このシリーズは『渡り鳥』『流れ者』シリーズと並行して作られた。前二者と違い、都会的な本作は60年当時の銀座の街並みも垣間見れて楽しい。映画の出来としてはどれも平凡で(バカバカしくて)特に観るべき物はない。小林旭の数多いシリーズ物の中では評価は低いがイロモノとしては面白い。オイラは好きだな。このHPのタイトルの元ネタにもなった作品。
(2001年1月12日記)

         銀座の女(55年109分白黒 脚本・新藤兼人、高橋二三 監督・吉村公三郎)
 
いくよ(轟夕起子)は銀座7丁目にある芸者の置屋・しづもとの女将。しづもとには芸者の琴枝(乙羽信子)、照葉(藤間紫)、ミサ子(南寿美子)、見習いのさと子(島田文子)の他、パチンコ好きのお手伝いさんのきよ(田中筆子)がいる。乙羽は元ミス日本3位の人気者。藤間の趣味は宝くじ。当たったら里子にだした息子と一緒に暮らしたいと願っている。ミサ子(南寿美子)はジャズが好き。2年前、17歳のときに62歳の浪曲師の旦那を取らされた反動で落ち込んだ時はジャズのレコードをかける癖がある。島田は福島の農家の娘なのだが貧乏で借金のカタでしづもとに奉公に来た。島田の両親はこれで牛を飼う。乳を出すようになれば暮らしも楽になると言う。映画の冒頭、轟は顔なじみの内外タイムスの記者&カメラマン(近藤宏、他)に誘われ乙羽、藤間、南を連れ映画を観に行く。一本は原水爆の映画なのだがもう一本は記録映画。多摩にある老人ホームの話だった。主役として映っていたのはお篠婆さん(飯田蝶子)。飯田は轟が芸者になった頃の置屋の女将だった。かつては柳橋で売れっ子芸者だった飯田だが身寄りがないために老人ホームで暮らす姿に轟は将来の自分の姿を見るような気がした。轟はそうならないように保険をかけていた。2年前に新聞広告で自分の養子を募集、一人前になるまで学費や生活費を出す代わりに将来は自分の養子となり老後は一緒に暮らしてもらう。広告を見て申し込んできた若者の中で轟が選んだのは東京工業大学の学生・矢の口栄作(長谷部健)。轟は長谷部には手堅い会社に勤める技師となり結婚をして子供が出来たら同居して孫の世話をしながら静かに暮らしたい、という希望を持っていた。しかし長谷部は小説家志望。作品を書いては雑誌に投稿、すでにデビューもしていた。轟に対して冷めた態度の長谷部。長谷部はしづもとの元芸者で現在はスナック?のママさん・操(日高澄子)と関係していた。長谷部が慣れない土方仕事をして体調を崩したのを見舞いに行ったときに関係してしまったのだった。このスナックには文学かぶれのホステス?・ブンちゃん(北原三枝@顔見世程度)が働いている。轟には政界の大物・高梨三郎(清水将夫)というパトロンがいたが外遊から戻った清水から別れ話を切り出される。手切れ金を受け取って別れる事を承諾する轟。ある日、大学の帰りに清水の息子・一彦(宍戸錠)がやって来る。宍戸は長谷部に「清水は轟のパトロン、その轟の金で大学に行っているのだから金をよこせ。」、と無心に来たのだった。黙って金を渡す長谷部。長谷部の書いた作品が昭和文学賞を受賞する。清水と別れた轟の頼りは長谷部なのだが作家として生活できる目途がついた長谷部は賞金の45万のうち2年間世話になった轟に今までかかった分を計算し30万プラスお礼5万円を、日高には借りた金1万2千円プラスお礼3千円を手切れ金代わりに渡し出て行ってしまう。轟&日高は祝福するつもりで準備をしていたのだがガックリ。島田は結核になっていた。買い物に出た島田は銀座ではバレるので月島の診療所まで歩いて行く。轟たちには内緒で医師の長畑(金子信雄)から治療を受けていた。藤間の息子が修学旅行で東京に来る。久しぶりに会えるので喜ぶ藤間。息子は不j間が宝くじを買っているのを見て一枚(50円)買って藤間にプレゼント。嬉し泣きする藤間。南のかつての62歳の浪曲師の旦那から金の無心の手紙が来る。怒って手紙を破り練炭で燃やしてしまう南だが郵便為替で送ってやる。最近、乙羽の人気がガタ落ち。かつては政治家や社長など大物の客が常連だったのだが最近は閑古鳥。乙羽の兄・福島(浜村純)は税務署の調査員。今までは浜村に気兼ねして乙羽を指名していたのだが最近、浜村は八王子に転勤になっていた。指名がなくなったのはその為だった。「新聞にでも載って有名になればまた人気者になれるかな。」などと考えてしまう乙羽。島田はホームシックになっていた。結核のこともあり元気が無い。迷い猫の面倒をみるのだけが楽しみ?定期的に金子の治療を受けていた。金子から処方される薬を壁にかかる乙羽のミス日本3位の額縁の後ろに隠していた。ある日、しづもとの2階から失火、半焼してしまう。現場検証の結果、アイロンの不始末のようだが放火の疑いもあった。長谷部に去られた轟はヤケになって火をつけたと自首。そこへ乙羽が有名になりたかったと自首してくる。警察署長(殿山泰司)や刑事たち(清水元、青木富夫)は困惑。今や人気作家となった長谷部が名探偵気取りでコメントまでする始末。轟と乙羽がいないと困る藤間と南は島田に身代わり自首してもらう。島田は未成年だから刑も軽く済むと考えたのだ。島田が自首したという報を聞いた金子が島田の可愛がっていた猫を連れて署にやって来る。しづもとが焼けた時、島田は猫を連れて診療所に来ていたから犯人ではない、と証言に来たのだった。しかし真犯人は島田だった。結核で将来に絶望した島田は母親恋しさもあり放火、しづもとが無くなれば家に帰れると考えたのだった。田舎から島田の両親が出てくる。育てた牛が乳を出すようになったと搾りたての牛乳を差し入れに来た。その牛乳を飲む殿山たち。みな泣く。轟たちは島田が出て来た時に迎えてやれるようにしづもとを建て直す事を誓う。ラストシーンは警察署を出た轟たちが「仕事、仕事。」と言いながら銀座の街に消えていく。
 戦前からのベテラン監督・吉村公三郎が日活で唯一撮った作品。戦後は大映を主戦場にしていた人がどうして日活で撮ったの?(吉村はこの作品の他、菅井一郎の初監督作『泥だらけの青春』の監修も務めている)。芸者たちの境遇を上手く整理してまとめているので2時間近い上映時間も苦にならない。55年当時の銀座の街並みが拝めるのも貴重。貴重といえば月島にあるという設定の金子の診療所が登場する際、勝鬨橋が必ず映るのだが大型船通過のために橋の両端が跳ね上がるシーンが収録されている。映画の冒頭の記録映画に登場する飯田蝶子は63歳、轟は38歳という設定なのだが現在の目で見るともっと老けて見える。当時は60歳過ぎの女は老婆だった。40歳近い女は完璧にオバサンだったという事か。
(2003年7月23日記)

          銀座の沙漠(58年91分白黒 脚本・高岩肇 監督・安部豊)
 深夜の港、山内(小高雄二)は男(二階堂郁夫)を殺す。カバンを奪い死体を海に捨てる。小高はカバンを持って銀座のキャバレー“モンテクリスト”に戻る。ここの支配人・庄治(金子信雄)は暗黒街の責任者なのだが、組織のボスは三国人の王・ホウショウ(漢字不明)。事務所で小高の奪ったカバンを受け取る金子。中の物を見て「望月(神山勝)の野郎、こんな事してやがったのか。」神山は組織の幹部の一人。物(麻薬?金?)を横流し?ネコババ?していたようだ。その頃、モンテクリストには関西から流れてきたチンピラ・繁田三郎(長門裕之)が店にインネンを付けて大暴れ。ボーイたち(深江章喜、柳瀬志郎、赤塚親弘@赤木圭一郎、他)に取り押さえられ叩きだされる。その後、また店に戻ってくる。組織の幹部?楠梨花(南田洋子)の口利きで店のボーイに就職する。翌日、刑事・守住(水島道太郎)&刑事C(木島一郎)がやって来る。ボーイをしていた二階堂の死体が東京湾に上がりその捜査で来たのだ。金子は「(二階堂は)3ヶ月前にクビにした。」と答える。調子の良い長門は店に溶け込むのも早い。深江、柳瀬、トニーたちとモンテクリストの裏にある喫茶店・“オアシス”に行く。ここで働いているのが加納礼子(芦川いづみ)。長門は皆に“お近づきの印”として「好きな物頼んでくれ。」全員“スペシャル”を注文。初めて来た店でよく知らない長門もスペシャルを頼むがこれは小さなコップに注がれたコーヒーで一杯300円するシロモノ(58年当時で300円とは高過ぎ!!)文句を言ってゴネる長門。そこへマスター・聖人(柳永二郎)が出てくる。柳は芦川の親代わりでもある。柳は長門の親と知り合いだった。そのおかげでスペシャルの代金は勘弁してもらう。芦川と仲良くなった長門は遊園地でデート。ここで長門は妻・由美(白木マリ)と幼い息子を連れて休日を楽しむ小高の姿を見る。芦川には銀座界隈では通称・男爵と呼ばれるアル中の兄(西村晃)がいた。元は絵描きだったようだが酒で身を持ち崩して今はブラブラ。金子は二階堂の件で神山を問い詰める。神山は二階堂にブツを持ち逃げされたとシラを切るが使い込みをしていたのは明らか。同様の事は金子もしていた。開き直った神山と仕方なく手を組む金子。その頃、長門は南田に呼び出され彼女のマンションにいた。南田は長門に金とタバコを渡し金子の監視するように命令する。翌日、長門は芦川、西村と競輪場に遊びに行く。アル中の西村は競輪には興味がなく「わかんねぇ。」と言って帰ってしまう。競輪場には神山がいた。便所で用を足す神山を金子の命令を受けた小高が殺す。丸角(大坂志郎)は表向きは不動産屋だが暗黒街の人間。警官・小森(大森義夫)を情報屋として飼っている。大森からの情報では神山は死に際「山・・・」と言ったらしい。放っておけば警察は小高を追及すると考えた金子は小高を高飛びさせる。一度は逃げようとした小高だったが店に戻ってホステスと踊っていた。激怒した金子が小高を問い詰めると白木や子供のために捕まって足を洗いたいと言う(だったら自首しろよ)。金子は小高に金を渡し逃げるように説得するふりをして小高を撃ち殺そうとするが失敗。右手を負傷した小高はアパートに戻る。白木は薬を買いに行こうとするがトニーや深江たちに捕まってしまう。小高と白木はモンテクリストの地下室に閉じ込められる。そこは人口沙漠であった。沙漠の熱気は凄まじく長時間閉じ込められたら脱水症状で死んでしまう。金子は沙漠で小高たちを殺すつもりであった。長門やトニーたちは金子の命令で小高と白木の死体をドラム缶に詰め東京湾に捨てる。小高たちは死んではいなかった。長門は小高と白木を入れたのとは別のドラム缶を捨てたのだった。長門はトニーたちを帰し小高と白木を助け出す。何だかヤバそうな感じがしてきた長門は南田に「仕事を辞めたい」と言う。しかし南田は「あんたはもう組織の人間。自由はない。」そんな時組織のボス・王は香港に帰る。南田は金子にボスからの命令を告げる。それは“これからは南田がボス代理として組織を束ねる”、というものだった。南田が帰った後、金子は弘松、他の幹部たちと相談。南田がボス代理に納得できない弘松たち。夜、金子は南田のマンションへ行く。金子は「弘松たちが南田を狙っている。手を組みましょう。」と言い寄り南田にキスしようとするが南田は落ち着いて金子の手にタバコを押し付け追い返す。長門は金子に「店を辞めたい。」と言うが金子は「もう少し辛抱しろ。」と取り合わない。「あいつはいろいろ知りすぎた。」。金子は大坂に長門殺しを命令する。PM2時に青山墓地で長門と会う約束をした南田。大坂の命令を受けた大森が現れ南田を殺す。続いてやって来た長門も殺そうとするが、長門ともみ合いになった際に大森の拳銃が暴発、大森は死んでしまう。逃走する長門。そのやりとりを遠くの車から見ている金子、「間抜けな野郎だ。」。警察も長門を手配する。長門は西村に1万円やり西村の服と取り替える。水島が大森の事で大坂のところに聞き込みに来る。水島は全てお見通しなのだろう。「小森(大森)は素行が悪かった。」揺さぶりをかけるつもりで大坂に大森の事を尋ねる。トボける大坂。大坂は殺し屋・深田(佐野浅夫)に長門殺しを命令する。長門の服を着ていた西村が逮捕される。ところが取調べ中に西村は死んでしまう。死因は麻薬中毒だった。ポケットから麻薬も出てくる。水島は何故か?自殺と発表。長門は“オアシス”の3Fに潜伏していた。柳は長門に語る。南田は2年前にフラっと柳の店にやって来た。「私は贅沢がしたい。最後に大きな不幸がやって来ても構わない。」という南田に柳は王を紹介、金子と提携するようになった。才覚のある南田は組織で力をつけ幹部となったのだった。殺された事から「本当に大きな不幸が来てしまった。」と悔やむ柳。金子は何も知らない芦川から長門の居所を知る。水島は大坂の不動産屋に行く。大坂に「西村は殺された。」と語る水島。西村が警察署に連行される際、西村と揉み合い麻薬を注射する瞬間の佐野が新聞社の撮影した写真に写っていたのだ(笑)。佐野は長門の服を着ていた西村を長門と間違えて殺したのだった。「あのバカ野郎が!」と大坂。大坂は“オアシス”に電話、「真相を話すから。」と長門を呼び出す。長門をトラックの荷台に乗せる。荷台には大坂の他、佐野もいた。大坂は佐野を撃ち殺し崖から捨てる。驚く長門。佐野は警察に追われているため口封じに始末したのだ。大坂は組織のボスが王なのを知らないので王の正体と組織の持つ麻薬のありかが知りたい。大坂と長門は走るトラックの荷台の中で格闘となる。長門は大坂を荷台から突き落とす。長門は自分を殺そうとしたのが金子だと知り運転手に銃を突きつけトラックを奪う。“モンテクリスト”に戻った長門は支配人室へ乗り込むが、金子の命令で深江が芦川を人質にとっていたため捕まってしまう。金子は長門と芦川を沙漠に閉じ込める。砂漠の熱気で絶体絶命の長門と芦川。金子のところに柳が「芦川を返せ!」と乗り込んでくる。王は香港へ帰る際、友人の柳に組織の全権を託そうとしたのだが柳は「自分には無理。」と断ったため南田がボス代理となったのだった。柳と金子、格闘となるが柳ピンチとなる。そこへ小高が乱入。長門に助けられた小高は柳のところに匿われていたのだった。自首するつもりの小高だったが柳のピンチを助ける。そこへ水島たち警官隊が突入、金子たち全員逮捕。長門と芦川は裁くから救出される。自首しようとする小高に水島は「飯でも食ってから出頭しろ。(長門に)事情聴取するから後から来い。」ラストはお堀端。白木や芦川に見送られながら警視庁へ出頭する小高と長門でエンド。
 オープニングから沙漠である。タイトルバックは砂に銀座の風景写真を付き立てたかのような奇妙なもの。ラピュタ阿佐ヶ谷で観たのだがチラシの宣伝文には「麻薬患者が蠢く人口沙漠」と書かれていたのだが実際には麻薬患者は蠢いていないし沙漠というよりも砂場という感じのチャチなもの。温風?熱気?が出てくるからサウナの強烈なモノ、と言えなくもない。どうしてそんなものがクラブの地下にあるの?どうして小高&白木、長門&芦川をすぐに殺さないで、イチイチ砂漠に閉じ込めるの?沙漠なんて必要がない気がする。組織のボス・王も一切姿が出ない。電話で金子や南田に命令しているようだが、ボスの正体は誰か?的な味付けにすれば盛り上がったと思うのだが、出ないのであまり意味のない気がした。設定やストーリー展開がうまく消化出来ていないのは残念。せめてもっと沙漠を見せて欲しかったナァ。沙漠というよりも銀座の暗黒街に蠢く連中の話という感じで奇妙な作品。しかしボーイの中に無名時代の赤木圭一郎が本名・赤塚親弘で出演していたのは特筆に価する。この作品は上映の機会が殆んど無かった無名の作品。老舗の『赤木圭一郎を偲ぶ会』でもチェックされていなかったようだ。トニーはどうでも良いような軽い役なのだが、長門を取り押さえて金子の前に突き出したシーンでは何故かすぐには引き上げず画面の隅に長い時間映っていて、長門と金子の会話に頷いていたりしていた(カメラテストか?)。唯一の台詞はオアシスでコーヒーを注文する「スペシャル」の一言だけ。軽い役のためか?最後の警官隊突入時にはいなかった。
(2003年9月13日記)