君に幸福を センチメンタルボーイ

 

夏に日本映画専門チャンネルで放送した舟木一夫の『君に幸福を センチメンタルボーイ』を観ました。いや観たのは夏でずっと感想文書こうと思っていたのだが、ここのところ夜パソコンの前に座ると眠くなってしまい、ずっと書けないでいた。ダメだねぇ、こんな事では・・・反省!!

 ストーリーは能登から上京してケーキ職人を目指してアマンド(笑)に務める舟木一夫。田舎から出て間もないため親しい友人もいない。先輩の小鹿敦が休みの日に銀座に連れてってやる、と約束してくれたものの、小鹿はナンパ(劇中ではガールハントと言っていた)して知り合った彼女とのデートに忙しくすっぽかされてばかり。街で知り合った同郷の内藤洋子に恋をするのだが、向こうはホテルの箱入り娘の女子大生。舟木一夫は貧乏人のケーキ職人の卵。おまけに母親の山岡久乃は芸者をしていて内藤の父親のホテルに出入りしている。育った境遇が違いすぎる事に悩む舟木一夫。ラストは内藤洋子がアメリカに留学する事になる。舟木一夫は何故か見送りに行かない。船で去っていく内藤洋子の姿に全くシンクロすることなく、黙々とケーキを作って終わる。

 特に盛り上がる事もなく、淡々と進むこの映画、ハッキリ言ってあまり面白いとは思えなかった。舟木一夫の東宝での作品ってこの『君に幸せを・・・』の他、『その人は昔』の二本あるが、どちらもイマイチ(あくまで個人的な好みネ)。『その人は昔』も相手役はやはり内藤洋子なのだが、まともな台詞がなく、歌で構成する実験作とでも言える作品。それでもオイラ好みではなかった。
 何故、面白いと感じなかったのか?それは舟木一夫の役に魅力が無いからだ。どちらも田舎から上京する青年役なのだが、学校も出ていないし孤独なところがあるせいか友達も少ない。『その人は昔』では恋人・内藤洋子と上京してくるのだが、二人の世界に篭りがちで世界が広がっていかない。経済的にも苦しいので、観ていてちっとも羨ましいと思えないのだ。そんなのだから貧乏に嫌気が差した内藤は金持ちボンボンに乗り換えてしまう。ストーカーのように付きまとう舟木の姿は見ていられなかった。

 同じような境遇でも日活映画での舟木一夫は明るくて魅力があるキャラだから、いつも友や仲間がいた。ラーメン屋(『仲間たち』)、看板屋(『東京は恋する』)、船乗り志望の若者(『友を送る歌』)でも、周囲には仲間がいた。大学生(『ああ青春の胸の血は』、『青春の鐘』、他)でもそうだ。特に大学生などはまだまだ大学進学率が現在ほど高くない頃だったから、当時の若い観客は羨ましいと思って観ていた人も多かったはずだ。
 しかし逆にこういう見方も出来る。地方から上京した勤労青年。現実は日活映画のようには行かなくて孤独な毎日。週休二日なんてない時代だから、月曜〜土曜までアクセク働いて日曜日に独りで映画館へ、スクリーンでは自分と同じような、恵まれない日々を過ごす舟木一夫の姿を見て感情移入してしまう。東宝の舟木一夫作品はどちらも評価する人は多い(気がする)のはそのためではないか?。若大将的なノリの映画を観ると、虚しくなってしまうもんなぁ(現在のオイラがそうです)。

 この『君に幸せを・・・』は同時上映が『ゴジラの息子』だったため、40代男性で観たという人は多い(と思う)。実はオイラもそうなのです。親に連れられて新宿で観た記憶がある。舟木一夫がソフトクリーム舐めてたら、空から物が降ってきたモノに頭をぶつけて気絶するシーン。ケーキを作るシーンだけは憶えていました。ただ降ってきたモノが内藤洋子のハンドバッグだったのは忘れていました。

 この作品はオイラ的には面白いとは思えないけど、当時の風俗(グループサウンズや街並み、ファッション等)が垣間見れるから、その辺はポイント高し。主題歌や挿入歌は学園ソングや青春歌謡ではないから、そこの所はマイナスかな。