闘牛に賭ける男(60年、脚本・山田信夫、舛田利雄、監督・舛田利雄)
 北見(石原裕次郎)は新聞社の事業部員。日本での闘牛興行を担当するが直前でスペイン風邪が流行したために中止となる。この事で裕次郎は新聞社を辞め、仲間の高原駿夫と組んでTV映画の買い付け&製作会社を興すが失敗。起死回生を夢見て再び日本での闘牛興行を計画、単身スペインへと向かう。裕次郎の婚約者で新劇の女優役に北原三枝。北原の元婚約者でエリート銀行員に二谷英明が扮した。ラストは興行主との契約に成功、北原は演技の勉強でアメリカへ旅立つ所で映画は終わる。
 裕次郎、北原、二谷の三角関係を大胆な回想形式を絡めて描いた大作メロドラマ。スペインロケも効果的で面白く観られる。この作品は61年の正月映画として60年年末から公開された。北原三枝の引退作でもあるのだが、この作品での北原はいつもと化粧の仕方が違うのか、目つきがキツイ感じがしてあまり好きではない。それでも映画の出来は良いので有終の美は飾れたと思う。
(2001年2月2日記)

  東京騎士隊(ナイト)(61年 原作・原健三郎 脚本・山崎厳 監督・鈴木清順)
 土建会社の御曹司、和田浩治は父親の事故死で留学先のアメリカから帰国、高校生ながら二代目社長となる。和田はラグビー、フェンシング、拳闘、楽器と何でもこなすスーパー高校生。学園でも人気者になる。和田は音楽部に入部し部員の清水まゆみと仲良くなるのだが、清水の父、嵯峨善平はライバル会社の社長で父を事故死に見せかけて殺した黒幕だった。和田の追求で嵯峨は自殺、清水はショックを受けるが部員達の励ましで再び明るさを取り戻すのであった。
 和田の義理の母親に南田洋子、嵯峨と密通していた和田の会社の専務に金子信雄。番頭さんに小沢昭一(良い役。)、音楽部のメンバーの一人にかまやつひろし(まだ髪の毛が短い。)がいた。音楽部顧問の外人教師にジョージ・ルイカー(好演!)が扮した。映画の出来はどうという事のない凡作だが、賑やかで楽しい。
(2001年3月28日記)

  東京流れ者(66年、原作、脚本・川内康範、監督・鈴木清順)
 本堂哲也(渡哲也)は『不死鳥の哲』の異名を持つヤクザだ。所属する北竜二の組と敵対する江角英明の組との争いを避けるために流れ者となった哲だが、行く先々で江角の組からの刺客(川地民夫)に襲われる。最後は味方であった北竜二にも裏切られた事を知った哲は東京へ戻り、北と江角を倒すのであった。
 任侠映画風の庄内篇、西部劇風の佐世保篇とオムニバス映画のような展開は軽快で面白い。渡哲也の歌う同名の主題歌は随所に流れるのでミュージカル映画でもある。哲を助ける流れ者のヤクザ『流れ星のケン』に二谷英明が、哲を慕う歌手、千春に松原智恵子が扮した。二谷の緑のジャンパー姿、『刺青一代』以上に奇妙なセットと演出の銃撃戦や「流れ者には女はいらねえ。」の名台詞が印象的な変な映画。渡は不死鳥をふちょうと発音していた。
(2000年11月22日記)

  続・東京流れ者 海は真赤な恋の色(66年 脚本・大野景範、三代大五 監督・森永健次郎)
 川内康範の原作を映画化。主人公の名前は同じだし『東京流れ者』のタイトルが付くので↑の続編かと思うのだが、ストーリーに繋がりはないようだ。自分の親分・甲田を殺して自首、3年の刑期を終えて刑務所から出所した本堂哲也(渡哲也)。通称『不死鳥の哲』(今回はふじちょうではなく何故かフェニックスと発音する。)は兄貴分・戸田信次(垂水悟郎)、通称エースの秀を頼って垂水の故郷・高知へとやって来る。渡は高知へ向かう船上で二段撃ちの健(吉田輝男)と出会う。吉田は甲田組からの依頼で渡の命を狙っていたのだ。垂水との約束を守って高知でカタギになる決意でやって来た渡。しかし垂水は高知にはいなかった。垂水の妹・節子(橘和子・新人の表記あり!)は老舗の酒屋店主・杉安太郎(嵯峨善兵)の家で暮らしていた。渡は嵯峨の店で働きながら垂水が現れるのを待つ。嵯峨の息子・浩司(杉良太郎・新人の表記あり!)は地元の顔役・瀬川(金子信雄)の経営するナイトクラブの踊り子・サリィ香山(松原智恵子)に入れ込み金子から借金をしていた。松原は垂水のかつての恋人であった。杉は借金のカタに嵯峨の持ち舟の貨物船を取られ捕らえられていた。吉田は金子の組織に草鞋をぬぐ。垂水はカタギにはならずに神戸で麻薬組織の顔役になっていた。金子は渡に垂水との取り引きの立会い人となることを依頼する。渡は杉を自由にする事を条件に承諾する。そして貨物船上で取引きが行われるが、金子は裏切り渡共々垂水も殺し麻薬を独り占めしようとするが、垂水と渡の活躍で失敗。金子も吉田も死ぬ。垂水も吉田との撃ち合いで死んでしまうのであった。渡は嵯峨に引き止められるが、パターン通り高知の街を出て行くところでエンド。
 前作との共通点は哲のかつての恋人の名前が千春という事だけ。清順監督のものと違って緊張感のない平凡な出来であった。何より勿体無いのは吉田が渡のライバル役として全く機能していない事。何のために出てきているのか分からないのは本当に惜しい。またこの作品の橘和子は新人らしくまだ垢抜けない感じで初々しい。渡に惹かれて行くヒロインを型通りに演じていた。松原のダンスは素人目で見ても下手クソな感じ。この人にはバンプ役は合わないヨ。バンプ役といえば本家?白木マリがナイトクラブのマダムで金子の情婦・ひろみ役で出ていたが、もう踊らなくなったせいか?少し太っていた。この時の白木はまだ29歳だと思うのだが老け込むのは早過ぎるゾ。上映時間も何故か73分と中途半端。
(2001年10月2日記)

  東京の孤独(59年100分白黒 脚本・松浦健郎、井上梅次 監督・井上梅次)
 プロ野球球団『ディッパーズ』は優勝決定戦で『ウェーブズ』と対戦するが敗れてしまう。敗因は投手陣が手薄なため。優勝を逃した責任から監督・大貫(大坂志郎)の辞任という噂も出るが球団社長・星野(三島雅夫)と話し合い来年の優勝を条件に留任する。大坂は入団テストを行い戦力補強を図る。大阪の妻・薫(月丘夢路)と大坂の妹・登世子(芦川いづみ)はテスト会場に大坂の激励に列車で向かう途中、車内で財布を落として困っている猿丸真二郎(小林旭)と出会う。旭は投手としてテストを受けに行く途中だった。芦川と月丘は旭を会場に連れていく。自称20勝投手の旭は同じテスト生の強打者・黒柳平介(宍戸錠)を最初は空振りさせるものの打ち込まれてしまう。意気消沈した旭は会場から逃げ出す。旭と錠の才能に惚れた大坂は二人を合格とするが錠も会場から姿を消す。天才肌だが傲慢で計算高い錠は自分を高く売るために故意に姿を消したのだった。大坂は三島に二人を捜すように頼む。大坂は二人を入団させて優勝出来なかったら監督辞任という約束をさせられてしまう。錠はスポーツ新聞の記者・野々宮(西村晃)に手紙を出し売り込む。錠は浅草仲見世で服の叩き売りをしていた。西村は口を利く代わりに錠からリベートを取る。しかし旭はなかなか見つからない。ある晩、芦川と月丘は偶然テレビのボクシング中継で試合をしている旭を発見する。旭は岩坪(殿山泰司)のジムに所属する4回戦ボーイだったのだ。旭は殿山の経営するバーに住み込みでバーテンをしていた。大坂は芦川とジムへ行くが留守。バーに行くと試合に負けたショックで郷里の博多へ帰ってしまった後だった。スチュワーデスをしている芦川は博多行きの便に搭乗した際、旭の実家を訪ねる。旭の母は旅館の女中をしていたのだが、西村が先回りしていた。手付金の50万円を強引に押し付け承諾書にサインさせてしまう。大坂や西村が旭のスカウトに動いている事を知ったバーのホステス・梢(清水まゆみ)も博多にやって来て旭に迫る。旭に野球の才能がある事を知るまで旭には冷たかった清水だが野球選手になれば金が入ると考えて唾を付けておこうと思ったのだった。芦川が博多に来ていることを知った旭は芦川の滞在するホテルにやって来る。芦川は『ディッパーズ』に入団して大坂を助けて欲しいと頼む。旭は大坂を尊敬していたし芦川に惹かれ始めていたので承諾するが、腹黒い西村は『ウェーブズ』からリベートを取り「大坂は『ウェーブズ』の監督になる。」と言って旭を騙して『ウェーブズ』に入れてしまう。この事で芦川と疎遠になるが大坂は旭に『ウェーブズ』でがんばれ!と励ます。一方、『ディッパーズ』に入った錠は頭角を現して行く。しかし傲慢な錠は二日酔いで試合に出て醜態をさらしてしまう。大坂の良き理解者でもあるヘッドコーチの堀木(安部徹)に叱られ反省する錠。旭もデビューして大活躍をしてみせる。旭と錠は新人王のタイトルを争うことになる。芦川に惚れている二人は本人の目の前で新人王を獲った方が芦川にプロポーズするという約束を交わす。芦川は旭を発奮させるために承諾してみせる。『ディッパーズ』と『ウェーブズ』は錠と旭の大活躍で連戦連勝。リーグ優勝を賭けて雌雄を決することになる。決戦前夜、旭は大坂の家を訪ねる。大坂と旭は互いに健闘を誓い合う。試合は一進一退、9回裏、『ディッパーズ』の攻撃。『ウェーブズ』の1点リードでツーアウト。バッターは錠。ホームラン級のファールを打たれたりとヒヤッとするが最後の1球でまたファールを打たれるがファースト?が取りアウト、試合終了。『ウェーブズ』の優勝が決まる。優勝出来なかった事で大坂は監督を辞める。芦川と旭は付き合い始める。ラストは大坂、月丘、芦川、旭のいる湖畔の別荘へ安部がやって来る。安部は大坂の後を継ぎディッパーズの監督に就任していた。安部は大坂に他球団(球団名忘れた)の監督の話を持って来る。当初、月丘と「ゴルフショップでもやってノンビリ暮らす。」と語っていたが野球への思いを断ち切れない大坂は安部の話を受ける。そして互いに来シーズンの健闘を誓い合う。そこへ旭と芦川が手をつないでやって来るところでエンド。
 この作品は『渡り鳥シリーズ』が製作される数ヶ月前のもの。旭と錠は野球でもライバルだった事が分かる貴重な?作品。しかし梶原一騎的なストレートなスポ根ものではない。錠の見せ場も少ないし試合のシーンも単調で工夫がないため野球映画と呼ぶには中途半端。旭・芦川・錠の三角関係も取って付けたようだ。これに清水まゆみも絡むのだがこれまた大した出番もないので恋のさや当て映画でもない。それでもストーリーの語り口が巧みな為、100分の映画もダレる事なく観る事が出来る。出演は他に大坂を失脚させて監督の椅子を狙う2軍監督・小芝(植村謙二郎)。『ウェーブズ』監督・高峰(弘松三郎)。特別出演で当時のアナウンサーや評論家、『大毎オリオンズ』や『讀賣ジャイアンツ』の選手が出演していたようだが野球は興味が無いので誰が出ていたのかは分かりましぇ〜ん。分からないといえばどうしてタイトルが『東京の孤独』なの??
(2003年4月15日記)

  東京の人(56年前篇72分後篇54分白黒 脚本・田中澄江、寺田信義、西河克己 監督・西河克己)
 川端康成の新聞小説を映画化した前後篇合わせて126分の大作メロドラマ。
『前篇』
 島木俊三(滝沢修)は出版社の社長。妻・白井敬子(月丘夢路)がいる。自宅には別々に表札が出ていることから内縁関係のようだ。二人にはそれぞれ子供がいる。月丘には新劇女優の朝子(左幸子)、大学生の清(青山恭二@新人)。滝沢の高校生(17歳)の娘・弓子(芦川いづみ)。芦川は月丘と一緒に風呂に入るくらいよくなついている。滝沢の会社は経営が行き詰っていた。関西に金策に行くものの失敗して東京駅に降り立つ。出迎えに来たのは会社の小林みね子(新珠三千代)。新珠はひそかに滝沢を愛していた。昭和21年、芦川の母は体調が悪く田舎の病院に入っていた。自ら興した出版社で忙しい滝沢に代わりに当時9歳の芦川の面倒を見ていたのが当時駅の売店で働いていた月丘。芦川の母の死後、二人は一緒になったのだった。月丘はかつては銀座の宝石商『美宝堂』の娘だった。空襲で亡くなった月丘の父の部下・川村(山田禅二)は独立して銀座で宝石店を営んでいた。ある日月丘は山田に頼まれ南京虫型の時計を田部(芦田伸介)の豪邸に届けに行く。芦田は闇屋から成り上がった成金で駅の売店で働いていた月丘とも顔なじみだった。芦田の弟・昭雄(葉山良二)は外科医で3年前に芦川の盲腸の手術をした事があった。顔を見合わせて驚く月丘と葉山。これがきっかけで葉山は月丘や芦川と親しくなる。青山は義理の妹でもある芦川に惹かれていた。何度か求愛するのだが坊ちゃんの青山は頼りなく芦川に拒否されていた。左には劇団仲間の役者・小山一夫(金子信雄)という恋人がいた。妊娠した左だが「子供はいらない」と金子に言われる。左の公演を月丘、葉山、芦川で観に行く。妊娠している左は公演終了後に体調を貧血で倒れてしまう。左は手当てをしてくれた葉山に妊娠していると吐露する。そして公演が終わったら中絶するので適当な医者を紹介して欲しいと頼むのだった。その夜、左は月丘に公演が終わったら家を出て金子と結婚すると宣言する。金は無いので式は挙げずに仲間内で会費制のパーティをするそうだ。自分の次は芦川が結婚する番だと葉山と結びつけよと芝居の切符を二人に用意したりする左。芦川は葉山に惹かれていく。会社が危なくなった滝沢は新珠と料亭で過ごした夜、債権者たちが第2会社を作るために工面した金を持って失踪する。月丘は葉山の協力を得て滝沢を探す。その結果、滝沢は竹芝桟橋から出た船から身投げしたらしいことが分かる。船会社の事務所で受付係(河上信夫)から話を聞いていると新珠も現れる。この事から滝沢と新珠が特別な関係にあったと悟る月岡。遺体は勿論、遺留品もないのだが乗船者と下船者の数が1名合わなかった。いなくなった男の風体が滝沢と酷似していた。ショックを受ける月丘はその夜、葉山と結ばれる。月丘と葉山は余程セックスの相性が良かったのか?二人は離れられない関係になる。葉山と逢瀬を重ねる月丘はある日、密輸時計を扱ったとして警察に連れて行かれる山田の姿を目撃する。月丘に「声はかけるな。」と目配せする山田。芦田から葉山の妻に芦川を貰えないかと頼まれる月丘だが葉山と不倫関係にある月丘は「あの子はまだ高校生ですから・・・」と曖昧に断る。青山から求愛されていた芦川は葉山に惹かれていたのだが、赤い羽根の街頭募金活動をしているとき、デートしている月丘と葉山の姿を目撃してしまう。ショックを受けた芦川は家を出て級友の英子(桂典子)の家に転がり込む。芦川にフラれた青山も家を出る。月丘が葉山に惹かれている事を青山は感じていた。責められる月丘。月丘も葉山も心では別れなけらばと思っていても体は逆であった。青山は本郷にある級友の下宿に転がり込む。葉山は芦田から滝沢が生きていると聞かされる。滝沢が死んだとは思えない新珠はバーのホステスをしながら探していた。クリスマスの晩、葉山から滝沢が生きているらしいと言われ驚く月丘。月丘は葉山に別れ話を切り出す。葉山もそれを了承するのだがクリスマスの夜だけでも一緒にいたいという葉山。月丘はこれを断り帰路につく。夜の銀座を歩く月丘。

『後篇』
 クリスマスの晩、芦川は桂や他の級友たちとキャバレー・プレジュアにいた。級友の一人、稲子(中原葉子)が歌手としてステージに立つのを見に来たのだ。この店にはホステスとして働く新珠がいた。新珠は芦川に滝沢は生きている事を話す。ある夜、新橋界隈で偶然再会する滝沢と新珠。滝沢は「僕はもう死んだ人間だ。」と言って人ごみの中に消えてしまう。年が明けて月丘は家を処分して銀座に自分の宝石店『京美堂』を出す。釈放された山田が番頭になり開店準備に忙しい。その様子を見に来た芦川。月丘は店の2階に自分や女中・ふみ(加藤温子)の他に芦川の部屋も用意していた。芦川はまた月丘と暮らしだす。滝沢を探す新珠は隅田川沿いでホームレスをしていた滝沢を探し当てる。月丘は葉山の子供を身ごもっていた。芦川には旅行に行くと言って中絶する月丘。葉山はドイツに留学する事になる。金子は役者を辞めてサラリーマンになる。関西放送の企画部員になるらしい。一緒に来て自分の企画したラジオドラマに出て欲しいと言う金子。東京で女優を続けたい左は金子と別れる。左は2度目の妊娠をしていた。月丘は「自分が育てるから子供は生むように。」と左に言う。金子から電話がかかってくる。一度は「さよなら!」と言って電話を切る左だが金子に会いに行くのであった。青山は民生局で働いていた。社会に出て逞しくなった青山はホームレスの実態調査をしていたのだが体を壊して収容所で寝ていた滝沢と再会する。青山は日暮里駅前に芦川を呼び出し再び会いに行く。芦川は帰ろうというが滝沢は「弓子(芦川)はママ(月丘)の子だよ。」と言って帰らない。葉山がドイツに旅立つ日がやって来た。羽田で見送る芦田たち。月丘は別なところからこっそりと見送る。月丘の姿に気が付かない葉山だがタラップに立った時に月丘に気づく。窓から手を降る葉山。飛行機は飛び立っていく。青山と芦川は月丘を連れて滝沢に会いに行くが既にいなくなっていた。周囲の人に尋ねると新珠と出て行ったらしい。船に乗っている滝沢と新珠。睡眠薬で心中覚悟の新珠だが滝沢は薬を東京湾に捨てて「生きてみるつもりだ。」新珠は「(滝沢と一緒なら)生きていきましょう。」。ラストは銀座の街を歩く青山と芦川。滝沢を多少は理解できるようになった二人は明るく歩いていく。
 2時間を越える大作なのだが出来の方は大味。月丘と葉山、滝沢と新珠の二組の不倫カップルが登場するがどちらがメインなのかはっきりしない。おまけに青山と芦川、左と金子の関係も中途半端。ダラダラと長いだけであまり面白くない。新聞に連載されていたせいか、細切れのエピソードを繫げただけで何がしたいのかよく分からないピンボケな作品。月丘と葉山の関係だが、かなりドロドロしたセックスをするのだろう。頭ではイケナイと思っていても体の方はそれを許さない。どんなに気持ちの良いセックスをしていたのだろうか。もちろんこの頃の映画だから濡れ場はもちろんキスシーンもないのだが、淫靡な人妻役は月丘のハマリ役。じょんじょろりん!!したくなるよ。この頃の芦川いづみは実年齢は20歳越えていたのだが幼い感じ。後年のお姉さん女優にはなっていない。高校生役だから仕方がない。映画の冒頭、月丘と芦川の入浴シーンあり(もちろん裸は見れましぇ〜ん)。当時、三浦洸一の歌う同名の主題歌はヒットした。
(2003年7月29日記)

  東京は恋する(65年94分 脚本・才賀明 監督・柳瀬観)
 塚口明夫(舟木一夫)の仕事は看板の絵描き。歌は上手いが彼女のいない若者。日曜日、独りで銀座に恋愛物の映画を観に行くが周囲の客はアベックばかり・・・空しい。映画が終わり銀ブラする舟木だが雨に降られて雨宿り。そこで一緒になった緒方みちこ(伊藤るり子)。伊藤に一目惚れした舟木。舟木はある日夜の街で幼馴染の三村健次(和田浩治)と再会する。和田に誘われ舟木は和田のアパートに転がり込む。伊藤は和田のアパートの近くの洋品店の店員だった。和田は仲間(杉山俊夫、市川好朗、木下雅弘、市村博)とバンドをやっていた。いつかはプロになろうと努力するがなかなかチャンスがない。和田は舟木をボーカルにしようとするが、舟木にその気持ちはなかった。和田はナイトクラブのステージに立とうとクラブ社長・遠山圭太郎(菅井一郎)の娘・玲子(山本陽子)に取り入る。伊藤と再会して有頂天になる舟木だが、伊藤は和田の恋人だった。顔には出さないがガックリする舟木。しかし和田は金持ちの玲子に夢中で伊藤と付き合う気はなかった。傷心の伊藤は田舎の父親からの見合い話のため帰郷する。その頃、和田のバンドは菅井のクラブでデビューする。伊藤は帰郷していなかった。街で舟木は伊藤と再会する。伊藤は舟木の看板書きの師匠の田所文太(葉山良二)の紹介で保育園で働き始める。伊藤は郷里から上京した祖父母に舟木を和田という事にして紹介する。真面目な舟木を見て安心して帰郷する祖父母。この事で舟木と伊藤の仲は急接近する。そんな時、プロデビューしてこれから売り出そうとした和田のバンドだが、和田以外のメンバー全員怖気づいてしまい、バンドは解散。プロへの夢を断たれた和田。山本にもフラレ失意の和田は初めて自分に必要なのは伊藤という事に気づく。舟木は伊藤への気持ちを押し殺し和田と伊藤の仲を取り持つのであった。
 出演は他に和田たちが常連のラーメン屋・まんぷく亭店主に桂小金治。舟木の同僚に堺正章。映画の出来は平凡であまり見せ場もないので面白くないが、真面目で人の良い役の舟木、調子が良くて上昇志向の強い和田、舟木を見守る葉山。皆、型通りな役回りを好演していた。ヒロイン役の伊藤るり子は初々しくて良い。しかし桂小金治の台詞ではないが、どうして伊藤のような良い娘が和田なんかに・・・納得できんゾ!!
(2001年11月12日記)

   都会の空の用心棒(60年、原作・若井基成 脚本・池田一朗、小川英 監督・野村孝)
 速水八郎(小林旭)は小さな航空会社のヘリコプターパイロット。上空からのビラ撒きが主な仕事だが、時には遭難救助の仕事もする。旭は山で遭難した区役所の役人・木浦祐三を救助したことから土地の不正払い下げの事実を知り、真相究明に乗り出す。
 事件の黒幕・二本柳寛、スリだったが旭の男気に惚れ助手になる疾風の浩・杉山俊夫、木浦の恋人・稲垣美穂子、旭の会社の社長令嬢で通信員・浅丘ルリ子(メンコイ!!)。ジェリー藤尾がアイスピックを使う殺し屋(なかなかのハマリ役!)に扮した。クライマックスではヘリに乗った旭に追い詰められた二本柳は運転を誤り崖から転落死する。アクション物としては平凡だが優れた特撮や空中撮影、旭のスーパーマンぶりやアクションも素晴らしく楽しい作品。旭の勤務する航空会社は池袋西武の屋上・西武タワー、60年当時はヘリポートだったようだ。当時の池袋駅東口が観られるのは貴重だ。
(2001年5月24日記)

  都会の空の非常線(61年、原作・若井基成 脚本・池田一朗、小川英 監督・野村孝)
 『都会の空の用心棒』の続編だが、設定が同じなのは旭と杉山俊夫だけ。勤務先も西武タワーから調布?の飛行場に変わっている。ストーリーは医師・下条正巳の病院建設用地を巡っての土地の争奪戦に巻き込まれた(でしゃばった)旭の活躍を描いたアクション物。敵のボス・山内明、用心棒・高品格&垂水悟郎。旭の上司・内藤武敏。事件に巻き込まれたヒロインに浅丘ルリ子が扮した。旭のスーパーマンぶりは相変わらず、特撮も空中撮影も前作を上回る出来だが、ヘリコプターを使ったアクションはイマイチ。高品格やヘンな鼻歌を口ずさむ垂水悟郎も見せ場がなく低調な作品。しかし旭は足代わりにヘリで飛んで行くけど良いのか?
(2001年5月24日記)

 

          トップ屋取材帖シリーズ(59年〜60年白黒)
原作は島田一男。腕っこきのトップ屋・黒木三郎(水島道太郎) の活躍を描いたシリーズ物。全6作。トップ屋とは週刊誌のトップ記事を書くライター。トップ屋なんて現在では死語なのだろうか。60〜70年代はこのトップ屋が登場する映画やドラマが多かった気がする。ラインナップは下記の通り。監督は全て井田探。

@『迫り来る危機』 (59年56分白黒 脚本・星川清司)
A『拳銃街一丁目』(59年51分白黒 脚本・星川清司)
B『悪魔のためいき』(60年50分白黒 脚本・星川清司)
C『影のない妖婦』(60年53分白黒 脚本・星川清司)
D『影を捨てた男』(60年46分白黒) 脚本・星川清司)
E『消えた弾痕』(60年50分白黒 脚本・山口純一郎)

黒木は戦時中、特務機関兵だった。1作目で「8年前に新聞記者をしていたが疑獄事件のスクープで上層部と衝突。記者を辞めた」 という台詞がある。それでトップ屋になったと思われる。レギュラーは助手兼カメラマンの猪俣ユリ(葵真木子) 。他に『週刊実話』 編集長・柳生が@とAが西村晃。BとCが弘松三郎。DとEが佐野浅夫。小柳警部がAが弘松三郎。B、D、Eが雪丘恵介。B、C、Eに葵の友人役でお妙(久木登紀子)、ベティ(桧多加子)、ミーちゃん(柳田妙子)、Bがアコ、Cがター坊(斉藤久美子) が出演するが出番は少ない。少ないといえば葵真木子の出番も少ないのが残念。水島主演のシリーズなので仕方ないが、彼女が主役のエピソードがあっても良かったと思う。ヒロインは@が白木マリ。Aが南風洋子。BとCが筑波久子。DとEが香月美奈子。皆さん色っぽくて非常に魅力的。全て悪のヒロインとでも言ったところ。

水島の武器? はライター型の隠しカメラ。タバコに火をつけるフリをして隠し撮り。犯罪組織に潜入して犯行に加担しているにもかかわらず、罪にも問われず事件を追うのは不自然。事件が勝手に水島のところに舞い込んで成り行きで展開していくのも都合が良すぎる。しかしどれも白黒画面にサスペンスムードが映えて良い雰囲気。水島は契約が切れたのか? 翌年61年からしばらく日活を離れるので消滅したが、もっと続けて欲しかったシリーズ。ダイヤモンドラインが確立され若いスターが育つ。水島道太郎のようなベテランの主役クラスは出番が少なくなってきた。日活を離れたのはその辺も理由の一つかもしれない。

各作品の内容は下記の通り。
@『迫り来る危機』 (59年白黒)
8年前に関係のあったクラブママ・お蝶(白木マリ) と横浜の路上で偶然再会した水島。白木は麻薬組織の密売部門の責任者。トップ屋と知らない白木は水島を仕事に誘う。取り引き現場をライター型の隠しカメラで撮影。香港からの密輸船にはストリッパーを名乗るテリー(ジェニファー・M・ナイト) が密航していた。騒ぎは起こしたくないので白木のキャバレーで働かせることになる。この組織のボスは香港にいるらしい。詳細は不明だが荷揚げと販売が別組織になっているらしい。荷揚げ責任者の劉(冬木京三)は白木の地位を狙っていた。須藤(土方弘) を殺し屋として差し向けるが土方は麻薬中毒のため失敗。冬木側に始末されドザ衛門。新しい取り引きに使う割符を白木の仲間・六(高品格) が受け取るが冬木に殺される。取り引きでの麻薬の中身はニセモノ。一味は警察に逮捕される。一味の摘発現場を撮影する水島。テリーは国際麻薬取締官。テリーの指示で警官隊がやってくる。取り引きを警察に知らせたのは水島だが、麻薬がニセモノだったのは白木が事前に裁いていた。組織をリセットしたのはボスの命令らしい。白木は水島に置手紙を残して逃亡を図るが空港で逮捕される。白木の逮捕現場は葵がバッチリ撮影。『麻薬密輸団潜入記』 のタイトルで『週刊実話』 のトップ記事を飾る。この作品の白木マリは踊らないが、いつものように色っぽい。高品格が白木を慕う役を好演。密売組織の一員だが根は悪くないのだろう。水島にも親切だったのが印象に残る。

A 『拳銃街一丁目』(59年白黒)
露店で10枚30円で作る名刺屋の六さん(片桐常雄) から情報を貰って『偽名刺紳士録』 のルポを書いた水島。六さんは元海軍兵曹長。用心のため必ず一枚余分に刷って行きつけの店のバーテン飯田(雪丘恵介) に預けていた。名刺の裏には客の容姿の覚え書きが書かれていた。水島はバーで六さんが落とした名刺を拾う。東京秘密情報社、大沢虎之助と書かれていた。この名刺は殺人現場に落ちていた物と同じ物。その後六さんが殺される。大沢を六さんに紹介したのは六さんのドヤ仲間のあんまのタコの市(山田禅ニ) の娘・新子(南風夕子) 。駅で偶然出会って六さんに紹介したらしい。南風は大沢の顔を知っている。怪しい男たちに追われた水島と南風は街のホテルに逃げ込む。そこに現れたのが雪丘。大沢の名刺を10万円で売ってくれと言ってくるが追い返す。ホテルのウィスキーを飲んだ水島だが、ウイスキーには睡眠薬が入っていた。水島が眠っていた間に何者かが家捜し。大沢の名刺は靴底に隠してあったので無事。部屋には南風もいない代わりに雪丘の死体があった。疑われる事を恐れた水島はホテルから逃走。事務所に戻った水島はホテルコスモポリタン607号室に呼び出される。部屋には太田黒(富田仲次郎) がいた。名刺の覚え書きから太田黒が大沢と見破った水島。殺したのは一味の明(野呂圭介) 。水島は名刺と引き換えに南風を返すよう要求。夜9時に引渡しの約束。隠しカメラを懐にホテルへ乗り込む。ボスは富田ではなく山田だった。南風は山田の情婦。六さんは名刺が殺人に使われたことで富田や山田を強請っていた。雪丘も同様に強請ってきたので殺してしまった。山田たちは水島を殺そうとするが、南風の銃が山田を撃つ。富田と野呂は弘松に逮捕される。南風を連れて事務所に戻る水島。南風から事件の真相を聞かされる。南風の父親は最初に殺された寺島に騙され、幽霊事業に金を出して破産。自殺。山田、富田、野呂は南風の父親の子分。協力して寺島に復讐したのだった。事務所にやってきた弘松たちに南風は逮捕される。このこと記事にする水島の姿にエンドマーク。ヒロインが南風ではちょっと印象が弱い。殺人の動機ももう一つ。それでもテンポは良いので一気に観られる。

B『悪魔のためいき』(60年白黒)
葵は仲間からハジキ売り春子(中村万寿子) の話を聞かされる。新宿の街で後を付けるが盲腸で倒れる。見舞いに行った水島はハジキ売りの話を聞いて中村を追う。久木登紀子からドヤはあかね荘と聞いて潜り込む。中村と仲良くなった水島は姉貴分の朱美(筑波久子) を紹介される。筑波に教えられてカジノにやってきた水島。ここで出会った船長(二本柳寛) の手引きで筑波と再会する。筑波の案内で山荘にやってきた水島だが、そこにはマンドリン(星虎ニ)、パンドラ(榎木兵衛)、彦造(玉村駿太郎)、おっさん(山田禅ニ) 健(高品格) がいた。ボスは二本柳。他の連中は船長の船の船員だったらしい。葵から話を聞いた編集長の柳生(弘松三郎) は中村を尾行して山荘にやってくるが捕まってしまう。そんなときに殺人事件が起こる。殺されたのは日東自動車部長の高山。高山はカジノに出入りしていたらしい。日東自動車はトラックを名古屋工場に7台裸輸送(カゴの付いていないトラックを陸送) する。以前もそれが狙われたことがあった。筑波の指示で強奪。水島も強奪に加わるが隠しカメラで現場写真を撮影。昏倒させた運転手のポケットに弘松が監禁されている山荘の場所を書いたメモを入れておく。奪ったトラックは港の倉庫に運び込む。待っていたのは二本柳。高山を殺したのは二本柳。香港に高飛びする算段。筑波も欲しい二本柳は香港に誘うが筑波は拒否。腕づくで連れて行こうとする二本柳たちと水島の乱闘。車で逃げる水島と筑波。追う二本柳。山道で格闘となるが筑波の銃が二本柳を撃つ。転落する二本柳。二人は山荘に向う。隠しカメラのライターから水島の正体を見破った筑波。中村は筑波の妹だった。終戦の時に満州で生き別れになっていたのが3ヶ月前にやっと逢えた。中村はこの事を知らない。中村を堅気にしたい筑波は中村の事を水島に託して警察に捕まってエンド。トラック7台強奪するのに殺人までするものなのか。その辺が無理あるような気もする。この頃は裸輸送なんてしていたのね。しかし東名高速道路のない時代に名古屋までとは大変だ。筑波久子は緊張感のある美人。ナイスバディで色っぽい。

C『影のない妖婦』(60年白黒)
東都日報の記者・西村(街田京介) からバー城のマダム・千代(筑波久子) を紹介される。筑波は戦時中馬賊として名を馳せた万里の虎こと遠野大三(二本柳寛) の妹らしい。二本柳は水島の戦友でもあった。筑波の部屋には特務機関で給仕をしていたターニャ(ビーチェス・ブラウン) がいた。筑波の話では突然ターニャが訪ねてきて写真を渡された。それは二本柳が処刑された写真であった。筑波はその事を記事にして書いてくれと言う。調べていくと密入国ブローカーの存在に気づく。公安調査庁は動いているらしい。万里の虎は生きていて組織のボスではないかと睨んだ水島。組織の一味の高品格に襲われている筑波を救った水島は筑波のマンションへ。そこで組織の全貌を聞いた水島。葵の友人たちは組織の経営するナイトクラブ・ロクサーヌのパーティに招待されていた。船上で行われるもので何も知らずにタダ飯、タダ酒で大喜び。葵が事務所に帰ると高品が待ち構えていた。葵も船に拉致されてしまう。筑波のマンションを出た水島はターニャから万里の虎の居場所を聞き出す。船に潜入した水島。そこで待田の死体を発見する。船内では売春パーティが行われようとしていた。女たちは海外に売り飛ばされる。水島側に付いた筑波も売られる運命。乗り込んだ水島は二本柳と再会する。密輸団のボスとなっていた二本柳は水島を仕事に誘うが当然拒否。乱闘となるが、ターニャが警察に知らせたので警官隊がなだれ込んできて一網打尽。筑波も二本柳も逮捕される。ターニャは強制送還だが、「私また密航してくる。東京大好き。黒木さんいるからね。」 。やってきた弘松が「万里の虎は黒さんの友達らしいね。記事書けるかい?」 、「トップ屋に情は無用。こりゃ良い記事になるよ。」 と去っていくシーンにエンドマーク。前作よりも色っぽいシーンの多い筑波久子。この人が観られるだけで満足の作品。

D『影を捨てた男』(60年白黒)
昔馴染みの医療雑誌記者・新倉十蔵(山田禅二) が整形手術をした外人女性の写真を売り込んでくる。犯罪の匂いを感じた水島は6万円で買うことになるが、山田は翌日殺される。調査を開始した水島は整形した病院を訪ねる。看護婦・弓狩美佐(香月美奈子) と会う。山田が持っていた写真に香月のものがあった。香月は山田や院長の赤岩(河上信夫) から言い寄られていたらしい。香月から河上が行きつけのクラブ・リロを教えられた水島。クラブの奥ではブルーフィルムの上映会が行われていた。ここで写真の外人女性・ハミイ・ローランス(リン・フィスク) がいた。店を出た水島はハミイの仲間のスペード(深江章喜) から撃たれるが脱出。翌日の昼、事務所は何者かに家捜しされる。目的は写真らしい。好色な河上は香月に襲い掛かるが後ろからナイフで刺されて殺される。赤岩の持っていたハミイの写真は深江が回収。残る写真は水島の持つ分だけ。赤岩はモグリ医者で堕胎や整形をしていた。ハミイの写真をネタに恐喝しようとして殺された。水島は香月のマンションを訪ねる。薬の入った酒で眠らされた水島から写真を奪った香月はハミイの後釜に座ろうと試みる。水島は眠ったフリをしていた。後をつける水島。組織のボスは劉(嵯峨善兵) 。嵯峨は世界を各地に暗躍する暗黒街のボスらしい。ハミイは嵯峨の組織の幹部で国際指名手配されているために整形したのだ。山田を殺したの香月。嵯峨は東京にカジノを作る計画。赤岩の病院で整形手術をしていたのは組織の一員の阿久津(岡田真澄) 。コンチネンタルホテルで水島から奪った写真をネタに嵯峨に交渉する香月は、狙い通りハミイの後釜に座る。その模様を隠し撮りする水島は深江たちに襲われるが、深江はビルから転落して死ぬ。ハミイが殺されるのでリロに行く水島は岡田が行方不明になった整形外科医なことを知る。岡田からハミイの行方を聞いた水島は殴りこんでハミイを救い乱闘。嵯峨を追い詰める。警官隊が駆けつけて一網打尽。香月は小柳警部(雪丘恵介) に逮捕される。柳田編集長(佐野浅夫) から記事の催促をされる姿にエンドマーク。香月美奈子も色っぽい美人だが、筑波久子や白木マリに比べると今ひとつ。

E『消えた弾痕』 (60年白黒)
霊柩車が襲われる事件が起こる。乗っていた3人の男たちは撃ち殺される。3人とも身元不明な上に使われた銃の弾丸が残っていない。売春組織の原稿を柳田(佐野浅夫) から突っ返された水島は佐野が飲んでいるクラブ・ゼロに乗り込む。トイレで見知らぬ男・大友(紀原耕) から突然ビックリ箱を渡される。後を追ってトイレを出た水島は宮地那津子(南風夕子) に誘われる。目的はビックリ箱。佐野からクラブのママ・松村三輪子(香月美奈子) を紹介される。紀原は店に入ってきたジョニー(岡田真澄) とマブチ(星虎二) の姿を見て逃げ出す。店を出た水島は銃で襲われる。そこへ香月に誘われ車でマンションへ。香月の目的もビックリ箱。逃げ出す水島。翌日事務所に行って新聞を読むと紀原が射殺された記事。水島はビックリ箱を額縁の裏に隠す。小柳警部(雪丘恵介) の所に行く。紀原からも弾が出なかった。使われたのはおそらくチェコスロバキア製の特殊拳銃。水島は雪丘から霊柩車襲撃は武器密輸団の仕業らしいことを聞き出す。武器を包んでいた油紙が残されていたらしい。事務所に帰ると葵が友達(久木登紀子、柳田妙子、他) と踊っていた。その際、久木がビックリ箱を拾って持ち帰ってしまう。葵は電話を言付かっていた。「今夜7時に青山のブルースカイアパート503号室。情報を買って欲しい。」 相手は南風らしい。電話があったのは4時。アパートに行ってみるとエレベータ内で南風が殺されていた。503号室に行ってみる。部屋にイヤリングが落ちていた。香月がしていたものだ。パトカーのサイレンが聞こえる。部屋から出ようとすると鍵がかけられて出られない。罠のようだ。窓をつたって逃げる水島。その頃事務所では水島の名前をかたってタクシー運転手が寿司折を持ってくる。葵にこれを食べて休め、と言付かってきた。寿司には睡眠薬。食べた葵が眠っている間に安本(山田禅二) たちが家捜し。目的はビックリ箱。取られたと思った水島と葵。葵はおたふく風邪で入院。水島は雪丘に捕まる。南風殺しの容疑者だが殺された時間は昼の11時から12時。その時間水島は雪丘たちと一緒だったため疑いは晴れる。南風から電話があったのが4時。電話の時間は南風は既に殺されていたことになる。釈放され事務所に戻ると岡田真澄たちが待ち構えていた。目的はビックリ箱。銃で殴られまた家捜しされる。葵の見舞いに来た久木たち。久木は落ちていたのを自分が持って帰ったが、喫茶店エルビスのトイレに捨ててしまった。久木たちは取りに行く。水島は佐野の所に行く。南風が殺された日、一緒に射撃場にいたのだが、4時に10分ほど席を外していたというのだ。水島は香月のところへ行く。香月は密輸団のボス。ビックリ箱には取り引きの際に使う割符が隠されていた。南風を殺したのは香月。密輸団の事を知って脅迫してきたから。割符を持つ葵と久木のところに星虎二たちが迫る。渡すように電話をする水島。香月の手下に捕まり地下室に監禁される。ビックリ箱は香月の手に渡るが、岡田真澄が裏切る。最初の霊柩車を襲ったのは岡田たち。間一髪で脱出した水島は雪丘に電話で岡田たちの車のナンバーを知らせてトランクにもぐりこむ。香港のボスから派遣されている取り引き相手の陳(嵯峨善兵) と取り引きしようとするが香月は既に手を打っていて岡田、星、山田は陳たちに殺される。乗り込んだ水島は陳一味と乱闘。ピンチになるが雪丘が警官隊を引き連れて一網打尽。連行される香月を葵が撮影。「トップ屋さん。記事にする時は一番キレイなのを使ってね。」 夜の町に去っていく水島と葵の後姿にエンドマーク。シリーズ最終作。この作品の香月美奈子は美しかった。出番も多かった。多かったといえば、葵真木子と久木登紀子も結構出番があったのは嬉しい。この作品だけ脚本が山口純一郎。割りと混み入ったストーリーなので香月が勝手に真相を説明するなどご都合主義っぽい感じもなくはないが、これもテンポも良く一気に観られた。面白かった。
(2010年3月17日記)