娘の季節(68年90分 脚本・馬場当 監督・樋口弘美)
 
路線バスの車掌をしている津村みどり(和泉雅子)の日常を描いた作品。和泉には同僚の運転手・古橋次郎(杉良太郎)という恋人がいる。会社の事務員で女子寮の寮長・堀込康子(芦川いづみ)は和泉や他の車掌たちに厳しく接っするため皆から煙たがられていた。芦川は元々は車掌でかつては杉と付き合っていたのだが、杉が運転していた時に禁止されているステップ乗車をして事故にあい左腕が不自由だった。この事が原因で杉と別れたという過去があった。これがしこりとなって和泉と芦川はどうもしっくりしない。車掌仲間の小夜(笹森みち子)は服装が派手ということで芦川から注意を受ける。笹森は会社を辞めてホステスとなり、金持ちの三国人・洪(玉村駿太郎)と結婚する。光枝(日色ともゑ)は和泉の兄・弘一(川地民夫)の恋人だったのだが川地は失業。再就職のあてもなくブラブラしているので別れて大学生・千葉洋二(中尾彬)と付き合いだす。やがて日色は妊娠。二人は真剣で結婚を考えているのだが、中尾の父親・大作(大滝秀治)に反対される。一度は中絶しようとする日色だが同じく妊娠した笹森と病院で再会。幸せそうな笹森の姿を見て未婚の母となる決心をするる。和泉は女子寮で出産できるように芦川を説得する。川地は笹森の勤めていたバーのマダム・ユキ(水垣洋子)と同棲するのだが水垣は骨肉種となってしまう。金に困った川地はバスの無賃乗車の常習犯で通称・五千円婆さん(北林谷栄)と組んで磁石を使ってパチンコで荒稼ぎをするが警察に捕まってしまう。笹森の口利きで示談となり釈放された川地は改心して宅配の仕事に就く。しかし生活苦は変わらず心中してしまう。川地と水垣の遺体を前に泣き崩れる和泉。失意のまま寮に帰ってくると日色は男子を出産していた。赤ん坊の無邪気な笑顔がきっかけで和泉と芦川は和解する。路線バスはツーマンからワンマンへ移行しようとしていた。車掌の仕事も残業が禁止され給料も減ってしまう。車掌の一人・千代(草間靖子)は会社に無断で夜の観光バスのガイドをしていたが、会社にバレてしまう。バイト禁止のため解雇されそうになるが和泉や芦川が会社と交渉、草間は解雇されずにすむ。杉は和泉との結婚を決意、プロポーズする。和泉もこれを受け入れるのであった。
北林の役名の五千円婆さんの由来だが、北林はバスを降りる時、五千円札で運賃を払う素振りを見せる。運賃30円ではつり銭が足らないのでタダ乗りとなることから通称・五千円婆さん。ラストはタダ乗りしようとした北林に和泉は用意していた小銭でドッサリと4970円手渡すところ。映画の出来は平板でどうということも無い作品だが、混み入った人間関係を分かりやすく表現していた。芦川いづみはこの作品の後、『孤島の太陽』に助演して引退。『孤島・・・』では殆んど出番が無かったが、この作品ではそれなりに出番があった。左腕が不自由でも芦川いづみは良い。日色の赤ん坊をあやしている姿などを観ているとオイラもあやして欲しくなるゾ!!。(ってまたこういうパタ〜ン?)
(2002年4月29日記)

          霧笛が俺を呼んでいる(60年 脚本・熊井啓 監督・山崎徳次郎)
 
横浜に寄港した船の船員、赤木はエンジントラブルで出航が1週間延びた為、旧友の葉山良二 を尋ねる。ところが、葉山は半年前に入水自殺をしていた。死因に疑問を持った赤木は葉山の愛人、芦川いづみの協力を得て、独自の調査を開始する。 その結果、葉山は横浜で麻薬組織の幹部となっていた事がわかる。自殺も警察の目を欺くための偽装であった。芦川いづみと高飛びをしようとした葉山だが組織にも裏切られ、警察と赤木にも追い詰められビルの非常階段から墜落死する。
 葉山を追う刑事に西村晃、その部下に木島一郎。悪玉側は二本柳寛、内田良平、深江章喜のお馴染みのメンバー。当時15歳の吉永小百合(新人の表記あり!)が葉山の妹役で出演している。内容はご存知、キャロル・リード監督、ジョゼフ・コットン、オーソン・ウェルズ主演のアメリカ映画『第3の男』のリメイクだが、映画の出来としては大した事はない。 しかし赤木の風貌と作品全体に漂う無国籍情緒は今観ても素晴らしい。赤木の歌う同名の主題歌は名曲!
(2000年11月24日記)

          無鉄砲大将(61年 脚本・松浦健郎、中西隆三 監督・鈴木清順)
 和田浩治は高校の空手部員。母子家庭で母親の山岡久乃は小さなバーのマダムをしている。和田は近所に住む酔いどれ医師、菅井一朗の娘の芦川いづみに憧れている。芦川は普段から山岡に代わって和田の面倒をよく見てくれる。しかし芦川には地元のやくざ葉山良二という恋人がいた。堅気になって芦川と暮らしたい葉山だが、葉山のボスが芦川に目をつけた。和田は空手を使って芦川を救う。しかしオイシイ所は葉山に持っていかれてしまうのが悲しい。 所詮、子供がいくら頑張っても分別のある大人には敵わないのね。
 和田の同級生に清水まゆみが扮した。鈴木清順監督の青春アクションだが、映画としては他愛ない凡作。 しかし芦川いづみのお姉さんぶりは最高である。和田のためにマフラーを編んでやったり、ケンカをすると 叱ってくれたりと、観ているこっちは羨ましくなる。青春物では先生、お姉さんといった年長の役が多い人、オイラも甘えたいぞ!!
(2000年10月8日記)