青春とはなんだ(65年、脚本・山田信雄、舛田利雄、監督・舛田利雄)
 
地方の高校に赴任してきたアメリカ帰りの英語教師、野々村健介(石原裕次郎)がラグビー部を創設し、不良生徒を更生させていく姿を描いた学園青春ドラマ。これは良くも悪くも昭和40年代の青春物の典型的なパターンとなった。原作は石原慎太郎の同名小説。石原作品にしては珍しく経済的に恵まれない家庭の話しも出てくる。同僚の教師に十朱幸代、高城淳一、須賀不二夫。優等生に太田博之が扮した。この作品は映画公開の3ヵ月後、65年10月に夏木陽介主演で日本テレビからドラマ化されヒットした。
(2000年10月24日記)

          青春の海 (67年、脚本・三木克巳、監督・西村昭五郎)
 石坂洋次郎原作『ザルと空気銃』を映画化。校長をブン殴って地方の中学に赴任してきた教師、三宅杏子(吉永小百合)は妹、千加(和泉雅子)と漁師の笠置衆の家に下宿している。ある日、吉永はクラスの問題児、小倉一朗の家に家庭訪問をする。小倉の家は母子家庭で母親(高須賀夫至子) はバーのマダムをしている。吉永はここでバーテンをしている渡哲也と出会う。渡はグレて家出した笠の息子であった。渡の兄に川地民夫。弟に和田浩次、山内賢となかなかの豪華キャスト。砂浜を吉永と和泉がじゃれあうように歩く姿をロングで捉えるシーンや、街を出て行く渡哲也に付いて行こうとする吉永を「住んでいる世界が違う。」と渡が説得するシーンの台詞は秀逸。主題歌は吉永小百合の歌う『勇気あるもの』(名曲!!)
 (2000年9月13日記)
 

          青春のお通り(65年、脚本・三木克巳、監督・森永健次郎)
 吉永小百合扮する南原桜子(通称チャッカリスカヤ)は明るく元気でちゃっかり者の現代娘。親友の浜川智子扮する青柳久子(通称ケロリンスカヤ)と旅行会社に就職したものの初出勤の日に退職。テレビのシナリオライターの藤村有弘の家に住みこみのお手伝いさんになる。美人で気取っている松原智恵子扮する駒井中子(通称キドリンスカヤ)とはケロリンの兄、青柳圭太(浜田光夫)を取り合う恋のライバルだ。吉永、浜田、松原の3角関係が楽しい青春喜劇映画。
(2000年9月13日記)

          青春のお通り 愛して泣いて突っ走れ(66年、脚本・三木克巳、監督・斎藤武市)
 設定、登場人物等、前作『青春のお通り』の続編。内容は前作同様に他愛ない青春喜劇。吉永の姉が黒人青年の子供を産んだり、藤村が心臓麻痺で急死したりと、湿っぽい部分もあるものの吉永のツッコミ、浜田のボケぶりは絶好調!!漫才を見ているようで楽しい。ラストは吉永と浜田が結ばれるのを暗示して映画は終わる。
(2000年9月13日記)

          青春をわれらに(56年98分白黒、原作・源氏鶏太、脚本・笠原良三、監督・春原政久)
 南部友助(伊藤雄之助)は南部産業の創業者。現在は息子の周吉(
市村俊幸)に社長を譲り、現在は隠居の身。しかし63歳になっても元気一杯、頑固一徹。ワンマンぶりは相変わらずだ。今日も朝早く起床。庭でウェイトトレに余念が無い。毎朝5時には家族を叩き起こして回る。伊藤の家は市村の他、その妻・頼子(斉藤美和)。娘で大学生の美奈(左幸子)、小学生・正二(森住修平)、女中・ヒロヤ(鏑木はるな)がいるが、みな伊藤のワンマンぶりにビクビクしている。伊藤はヒマらしく、家族の帰宅統計表を作ったりして朝からカミナリ。小学生の森住は伊藤の真似をして、伊藤のカミナリ統計表を作って逆襲するのが笑える。市村と斉藤は、再婚すれば丸くなって伊藤のカミナリも無くなるだろうと、お見合いを計画する。知り合いの山田夫人(新井麗子)に見合い相手を紹介してもらうのだが、相手は社会事業家の朝倉女史(北林谷栄)。見合いは伊藤には内緒。サンケイホールで白扇会という踊りの会を見物に行き、その後偶然を装って新井&北林と合流。食事しながらさりげなく見合いの計画だった。しかし北林が老人ホームの建設を計画していると聞き、自分が老人扱いされていると誤解。レストランで北林と派手な喧嘩をしてしまい大失敗。おまけにこれが見合いだったと知った伊藤は大激怒。「どうせ見合いなら、もっと若いのを世話しろ!」市村にカミナリが落ちる。ある日、八重子(坪内美詠子)が訊ねてくる。現在は新橋で小料理屋をやっているのだが、坪内は元・芸者。20年前、伊藤は坪内の常連客だった。用件は娘・京子(東谷暎子)の就職だった。南部産業に入れて欲しいと言われる。今でも坪内に気のある伊藤は快諾するが、市村は縁故採用はNGと受け付けない。カミナリを落とす伊藤だが、縁故採用NGの決まりを作ったのは伊藤自身だったため強く言えない。仕方なく旧友・高崎産業社長・高崎(殿山泰司)に頼む。殿山とはかつて八重子を取り合った仲だった。殿山は現役社長なので、東谷の入社はOK。翌日、伊藤は南部産業に顔を出す。若い社員は創業者である伊藤の顔を知らないために受付嬢(星野晶子)に呼び止められてしまう。「俺を知らないとは何事か!」トイレに行こうと通りがかった庶務課長・山本(柳谷寛)を見つけた伊藤は柳谷にカミナリ。若い社員たちに訓示をたれる伊藤。その間、トイレをガマンしている柳谷は苦しそう。伊藤の訓示は創業した頃の話から始まる。明治41年、伊藤は苦学しながら人力車夫、モッコ担ぎから兜町に打って出て、南部産業を作ったらしい。この辺の訓示がかなり長かったようで、その間柳谷はずっとトイレをガマン。伊藤が帰った後、トイレに駆け込むのだが、ドアのところで漏らしてしまう。伊藤は社長室に行く。市村は留守のよう。そこへ建築技師・高井(宍戸錠)が訪ねてくる。錠は南部産業ビルの改築を担当していた。事務所には春休みで市村の秘書のバイトをしている左がいた。左の話では錠は大学時代ラグビー部で活躍したらしい。ビルの改築の話を知らない伊藤はまたカミナリ。錠と喧嘩をして追い返してしまう。その夜、伊藤は殿山と坪内の店に行く。南部産業は入れないが、殿山の会社はOKと坪内に告げるのだが、肝心の東谷は南部産業に入りたいしく、断ってしまう。伊藤たちが飲んでいると、偶然柳谷と森山(フランキー堺)が飲みに来る。フランキーと二人っきりになりたい東谷は外から店に電話をかけて、フランキーを呼び出す。残った柳谷は伊藤の相手をさせられる。この時の柳谷の服装は上は背広なのだが、トイレに間に合わなくて漏らしたために下はモンペ姿だった。坪内に気のある伊藤だが、店では坪内は「パパさん」と呼ばれる初老の男・品川(芦田伸介)の相手をしている。ある雨の夜、タクシー乗り場で錠と左が再会する。これがきっかけで付き合うようになる二人。坪内を意識してか?最近の伊藤はオシャレに気を使うようになった。偶然、街で東谷に会う。東谷に帽子を選んでもらう伊藤。よく似合うから坪内へポイントアップすると言われ満更ではない。東谷はフランキーとの事を相談する。東谷は伊藤の会社で市村の秘書をしているフランキーの恋人。二人は結婚したいのだが、坪内は東谷に小料理屋を継いで欲しいため認めなかった。その後一人で銀ブラ、坪内の店に行く途中、坪内に会う。坪内は伊藤に色っぽく、「今度、折り入って相談したい事がある。」と言われ、有頂天になる。ボーっとなった伊藤は車に轢かれてしまう。乗っていたのは北林だった。病院に担ぎ困れるが軽症。ついでに人間ドッグを受けるのだが、健康体で30年は生きられると言われ喜ぶ。いつも振り回される市村夫婦は複雑な心境。日曜日、左は弟を連れて錠と遊園地へ遊びに行く。偶然、錠の務める今泉建設社長令嬢・陽子(明美京子)と会う。明美も弟連れで遊びに来ていたようだ。ある日、伊藤は左に誘われて錠のラグビーの試合を応援に行く。試合は負けてしまうが、伊藤と錠は仲直り。そこへ明美が現れる。明美も錠に惚れていた。左は「今夜試合の慰労パーティをやるから来て欲しい。」と招待される。会場で錠と踊る明美を隅で見ている左。踊り終わった明美は左のところにやってくる。屈託の無い調子で、将来は錠と結婚するつもり。今、錠が住んでいる会社の資材置き場は、昔住んでいた屋敷を使っているので、改築して錠の事務所兼住まいにすると言われショックを受ける。帰宅して庭で泣いているのを伊藤が見つける。ワケを聞いて大激怒。錠の住む屋敷に怒鳴り込んで、錠と大喧嘩となるが、錠は明美と結婚するつもりなど無く、本当に好きなのは左だと分かり仲直り。しかも錠の祖父が横浜で事業家をしている、かつてモッコ担ぎをしていた仲間(錠の二役)と分かり驚く。すっかり仲良くなった二人、伊藤は錠におぶわれて帰宅。錠は左に求婚する。東谷から坪内が家出したと聞かされる。フランキーとの結婚で親子喧嘩したらしい。坪内は伊豆の旅館にいるらしい。伊藤は坪内にプロポーズしようと伊豆に行く。出かける時、市村たちに「近いうちにおめでたい事になるかもしれない。」。伊豆の浜辺で坪内に会う伊藤だが、プロポーズは断られてしまう。坪内は芦田と来ていたのだ。フラれてガッカリの伊藤だが、二人を祝福する。一人になった伊藤は、坪内への思いを振り切るように、東谷に選んでもらった帽子をクレー射撃のように海に投げ、持ってきた猟銃で撃つのだった。伊藤は、南部産業の『定年退職者大運動会』を開く。北林の計画する老人ホーム建設に協力することを宣言。「南部産業が今あるのはみんなのおかげ。みんなで助け合って生きていこう。我々の青春はこれから、青春をわれらに!」と挨拶。ラストはかけっこに参加する伊藤。左と走って一着でゴールインして終わる。
 春原監督お得意の喜劇映画。ダラダラして今観ると古臭い展開だが、水に落ちるシーンがあったり、錠と殴りあいっぽい喧嘩(笑)をしたりと伊藤が熱演。孫娘役の左もメンコイ。フランキー堺はチョイ役程度の出番しかないので、その辺は残念。宍戸錠もこの頃は、頬っぺたも膨らんでいないタダの二枚目でしかない。映画では63歳役の伊藤は隠居をして会社では「大社長」と言われている。本人は気持ちだけは若いつもりでいる。今は60歳過ぎていても現役バリバリで仕事している人も多いし、定年退職しても若々しい人も大勢いるが、この時代は立派な老人という括りになってしまうのだろう。映画の出来は大した事も無く、3日も経てば忘れてしまいそうな作品だが、「青春をわれらに」という言葉は心に残る。せめて気持ちだけは若くいたいネ!
(2005年10月17日記)

          赤道を駆ける男(68年、脚本・才賀明、斎藤武市、監督・斎藤武市)
 やくざの小林旭は堅気になって恋人の若林映子と故郷のブラジルで暮らすために、密輸の宝石を持ち逃げし逃亡を計る。しかし組織の殺し屋、
郷^治と刑事の丹波哲郎に追われ、乗っていたモーターボートごと爆死する。5年後、旭は生きていた。リオデジャネイロで水上バスの船長をしていたが、勤めていた船会社が組織のボス金子信雄に買収されてしまう。若林は金子の妻となっていた。金子はリオの顔役、内田朝雄と手を組みブラジル進出を企てていたのだ。結局、金子は内田に裏切られ殺されてしまい、内田の組織は旭と丹波によって壊滅する。旭は罪を償うため若林と別れ、丹波と帰国するのであった。旭のライバル役に内田良平、リオ警察の刑事に葉山良二と近藤宏、旭に惚れている現地の娘にシリア・ポールが扮した。
 この作品は当時、小林旭が主宰していた『アローエンタープライズ』第一回製作作品で小林旭主演100本記念作品でもある。ブラジル長期ロケを敢行した意欲作だが、出来は平凡でブラジルロケ以外、特に観るべきところもない。『カサブランカ』と『渡り鳥』を混ぜた様な作品なので相手役が浅丘ルリ子なら良いのだが、ボンドガール若林映子では感情移入できない。ライバル役の内田良平も悪くはないのだが、宍戸錠の域には及ばない。観ていて退屈な作品。
(2000年10月8日記)

          零戦黒雲一家(62年、脚本・星川清司、舛田利雄、監督・舛田利雄)
 敗色濃厚な第2次大戦末期、バルテ島航空隊に谷村海軍飛行中尉(石原裕次郎)が赴任してくる。 この基地の隊員たち(草薙幸二郎、井上昭文、榎木兵衛、高品格、内田良平、天坊準、
郷^治、木島一郎、黒田剛といった日活悪役陣プラス浜田光夫の豪華な顔ぶれ!)はどいつもこいつも一癖ありそうな荒くれ隊員ばかりだ。 隊員たちのボスが八雲海軍上等飛行兵曹(二谷英明)。当初、裕次郎と二谷&隊員たちは対立するが、最後は型どおりに和解、裕次郎に心酔するようになる。島に漂着する従軍慰安婦で二谷のかつての恋人に渡辺美佐子。温厚な設営将校に大坂志朗が扮した。ラストは米軍の爆撃機が島に攻めてくる。裕次郎と二谷は救出に来た潜水艦に隊員たちと渡辺を乗せ零戦で飛び立って行く。米軍機を迎撃するために・・・・。
 救出に来る潜水艦の艦長で芦田伸介が出演。裕次郎の指揮官ぶりはスーパーマン的でイマイチ感情移入できないのだが、舛田利雄作品らしくダイナミックなタッチで面白く観られる。実機とミニチュアを巧みに使った特撮も良好。
(2001年2月21日記)

          前科シリーズ(69年、監督・小沢啓一、主演・渡哲也)
 無頼シリーズの後を受けて製作された現代ヤクザもの。ラインナップは下記の通り。
1 前科 仮釈放(かりしゃく)
(脚本・池上金雄、出演・渡哲也、松原智恵子、長内美那子、大木実、沖雅也、今井健二、青木義朗)
2 前科 ドス嵐
(脚本・星川清司、出演・渡哲也、麻生れい子、中村竹弥、青木義朗、今井健二、宍戸錠)

 タイトルに前科と付いているが設定やストーリーに関連性はない。渡の役名も1が大原竜次、2が松永竜次と別人である。1作目は組のために入獄したヤクザ(渡哲也)が出所すると、親分が殺されていてその仇を討つ話。2作目は出所すると所属した組から冷遇され、旧友の宍戸錠が殺されていたり母(森光子)や妹(麻生れい子)が圧迫されたりする。最後は保護してくれた長老(中村竹弥)や旧知のヤクザ(佐藤充)が殺されて単身殴りこむ。
 1の前半はどこか『紅の流れ星』や『野良猫ロックシリーズ』のような自堕落な日常がユーモラスに描かれる。(特に沖雅也の姉役の松原智恵子との会話は楽しい。)そうかと思えば2では母親や妹、旧友との過去が描かれ たりでシリーズ物なのに一貫性がないのが残念。面白く観られるのだが『大幹部シリーズ』と同様に『無頼シリーズ』と比較すると印象は薄い。
 (2001年1月19日記)

          鮮血の記録(70年 脚本・山崎厳 監督・野村孝)
 第2次大戦末期、部隊を見捨てて敵前逃亡の濡れ衣を着せられた野尻稔大尉(小林旭)。生き残ったものの部隊は全滅、郷里ではショックで母は首吊り自殺、婚約者の由香(水野久美)は行方不明、妹は縁談を断られ20歳も年上の男の家に嫁ぐはめになる。終戦後、復員した旭は復讐に燃えて逃亡した上官・町田(岡田英二)を捜して流れ者になる。昭和22年、東京にやってきた旭は偶然、ヤミ市でかつての部下・原(田村高広)と再会する。田村はGIに輪姦され発狂した妻をかかえながらヤミ市の組合長として地元の暴力団と対立していた。旭は田村に請われてヤミ市の用心棒になる。旭はここでGI相手の酒場で働く水野と再会する。水野は田村の世話でホステスをしていたのだ。暴力団のボス・倉畑(青木義朗)はヤミ市の労働者を人質に田村を脅迫、田村は旭を罠にはめ米軍物資の横流しの罪を着せる。水野との恋が再燃しようとしたにも関わらず、旭はMPに逮捕され沖縄の収容所で4年間の強制労働となる。旭は収容所で二郎(岡崎二郎)と知り合う。昭和26年、出所して東京に戻った旭は岡崎の協力を得て自分を裏切った田村の行方を追う。田村は旭が逮捕された後、ヤミ市から行方をくらましていた。ヤミ市はマーケットとなっており青木の部下の飯田(
郷^治)が経営していた。田村はヤミ市時代の仲間で電機会社社長・北村(中村竹弥)の世話で妻を精神病院に入れ小さな経済新聞社をやっていた。田村を捕まえて問い詰める旭だが、中村の計らいで誤解が解け田村と和解する。青木はいくつかの特許を持つ竹林の会社の手形をパクリ、会社の乗っ取りを企てるが旭と岡崎の活躍で失敗する。青木は旭と岡崎の乗る車を銃撃、旭は助かるが岡崎は死んでしまう。田村の調査で青木の黒幕はかつて自分に濡れ衣を着せた岡田という事がわかる。岡田は実業家として成功し政界進出を狙っていた。全ての黒幕が岡田と知った田村は単身、殴りこむが返り討ちにあい殺される。中村の会社も岡田の圧力で銀行からの融資を断られ青木に乗っ取られてしまう。旭は単身、殴りこみ岡田を刺殺したところでエンド。日活アクションのベテラン山崎厳のシナリオは長い話を93分に上手く凝縮しているが、特に目新しい話でもなく型通りである。ラストの殴りこみは岡田の会社の屋外パーティ会場にドスを懐にした背広姿の旭がやってくる。旭を発見した青木、郷、他の子分たちが他の客に気づかれないように刺殺しようとするが逆に旭に殺される。旭も傷を負うが上着で傷を隠し岡田に近づく、追い詰められた岡田は壇上で旭に捕まり観衆の目前で刺殺される。恨みを込めた旭はドスを3度も岡田に突き立てる。傷を負った旭は壇上から転げ落ちヨロヨロと立ち去るところでストップモーション、エンドとなる。
 ラストの旭の殴りこみシーンは音楽だけで台詞が一つもないのが印象的だが、大勢の客が青木や郷が旭に刺されて倒れるのに気が付かないのは何かヘン。おまけに水野久美は風呂場で手首を切り自殺してしまうのだが、何故自殺する必要があったのか良く分からん。原作は野尻稔原作の『焰の記録』。主人公と同じ名前だからもしかして実話?しかし作品としては平凡な出来。冒頭、ラストで岡田を刺殺するパーティ会場に旭が立ち、今までの出来事を回想する所から始まる。そこから殴りこみに至るわけだから同じ野村監督の名作『夜霧のブルース』を彷彿とさせるが、あまり効果的とは言えない。出演は他に青木の子分に柳瀬志郎、岡崎の妹に伊藤るり子。ストーリーとは関係ないが旭はシチズンの腕時計をしていた。
(2001年9月25日記)