大学の暴れん坊(59年白黒 脚本・高岩肇、古川卓巳 監督・古川卓巳)
城戸禮原作の小説を映画化。赤木圭一郎の主演第2作。信州の山奥から上京してきた竜崎三四郎(赤木圭一郎)はスポーツ万能の大学生。三四郎は柔道大会で人見四段(梅野泰晴)を再起不能にしてしまう。梅野の妹、千恵子(芦川いづみ)に気のある学生ヤクザの法元(内田良平)は執拗に赤木をつけ狙う。赤木は法律事務所に勤める大学柔道部の先輩で芦川の恋人の田口(葉山良二)から柔道をケンカに使うことを禁じられてしまう。内田のボス二本柳寛は商店街を不正に買収しようとしていた。その買収を阻止しようとした葉山の危機を知った赤木は救出に向かう。 クライマックスは禁を解かれた赤木が大暴れ!たった一人で数十人のヤクザをやっつけてしまう。赤木の脳天気な大学生ぶりは若大将的なノリ。赤木の大学6年生の先輩?に藤村有弘(珍しく良い役)、赤木の相手役に稲垣美穂子、その父に佐野浅夫が扮した。ラストの乱闘シーンはキャバレーでやるのだが、カジノありリングありの奇妙な空間。美術を担当したのが鈴木清順作品でお馴染みの木村威夫。しかし肝心の映画の出来は陳腐であまり面白くない。シリーズ物にでもすれば若大将シリーズの対抗馬になれたかも・・・・もしそうなっていたら赤木は日活の加山雄三的なスターになっていたかもしれない。
(2001年2月9日記)

          大幹部シリーズ
 無頼シリーズ、前科シリーズの後を受けて製作された現代やくざ物。
 ラインナップは以下の通り
 @大幹部 殴りこみ(69年、脚本・棚田吾郎、舛田利雄、監督・舛田利雄、
          出演・渡哲也、浜田光夫、青木義朗、岩崎加根子、金子信雄、阿部徹)
 A大幹部 ケリをつけろ(70年、脚本・大工原正泰、中西隆三、監督・小沢啓一、
            出演・渡哲也 大原麗子 范文雀 今井健二 地井武男 睦五郎 青木義朗 )
 タイトルが大幹部となっているだけで、ストーリーに関連性はない。組のために服役したやくざ(渡哲也)が出所後、組に裏切られ仲間や舎弟を殺されて単身殴りこみに行くというのがパターン。所属していた組と戦うというのが共通しているだけで主人公の役名(@は風間哲、Aは朝倉竜次)も設定も全く別物である。作品の出来栄えは2本ともこの時期製作された現代やくざ映画としては標準的な水準にある。しかし無頼シリーズを観てしまうと印象は薄い。
 (2001年1月18日記)

          大巨獣ガッパ(67年84分 脚本・山崎厳、中西隆三 監督・野口晴康 原案・特撮監督・渡辺明)
 出版社プレイメイト社は雑誌『プレイメイト』の創刊5周年記念事業として、テーマパーク・プレイメイトランドを計画する。呼び物として南海の動物や美女をはべらすそうだ(って人身売買?)。記者・黒崎浩(川地民夫)とカメラマン・小柳糸子(山本陽子)、動物学者・殿岡大造(小高雄二)らは美女や動物採取の為、船で南太平洋へやって来る。キャサリン諸島のオペリスク島にやって来た一行は、怪獣ガッパの子供を捕獲、日本に連れ帰る。ガッパにはテレパシー能力がある為、ガッパ夫婦が仔ガッパを取り戻しにやって来る。何故か熱海に上陸、温泉街を破壊。小高の協力を得て自衛隊が河口湖で対決するが、水陸両用、空まで飛ぶガッパには通用しない。川地や山本は仔ガッパを返した方が良いと提案するが、雪丘は納得しない。結局、雪丘の娘や島の子供・サキ(町田政則)に泣きつかれ仔ガッパを親に返す。親子の対面は羽田空港。滑走路で再会した親子は仲良く島へ飛んでいきエンド。
 第一次怪獣ブームの頃に製作された日活唯一の怪獣映画。松竹のギララと並び称される事も多い。本家・東宝に比べて、ストーリーに新味もなく、特撮も大した事がない。何より怪獣の世界に親子の情愛が入って来るのには興醒め。おまけにヒロイン山本陽子はイマイチ。この頃の山本は東宝ビューティ・水野久美のような華やかさがない。とはいえ、こんなイロモノ作品(失礼!)では小百合サマクラスは使えないもんなぁ・・・仕方ないか。他サイトでも突っ込まれているけど、どうして上陸するのが熱海なの? 今ではサビれた(またまた失礼!)温泉街だが、当時は勢いがあったのだろう。タイアップだったの?他の出演者も奇妙だ。小高の助手に和田浩治や藤竜也の顔が見える。この二人はどう見ても学術チームの人間には見えない。納得出来ないのはラスト、ガッパを見送った後、山本は会社を辞めて専業主婦宣言をするのだ。一応、川地と結ばれるのを暗示して終わるのだが、小高、山本、川地の三角関係も説明不足だから、この宣言はあまり効果的とも言えない。しかしアクションものや青春ものでお馴染みの面々が、怪獣映画を真面目にやっているのには好感が持てる。美樹克彦の歌う主題歌は名曲!
(2005年1月21日記)

          第三の死角(59年97分白黒 脚本・直居欽哉、蔵原弓弧 監督・蔵原惟繕)
 芳川一郎(長門裕之)は東邦造船調査部の社員。出世のためには何でもする冷酷な男。会社は労働争議で揺れている。スト破りで工員たちをリストラ。上司の宮地課長(山田禅ニ)を無視して会長・久保一太(東野英治郎)や社長・谷村社長(宮阪将嘉)、牧調査部長(芦田伸介)に存在をアピール。加治英介(葉山良二)は表の顔はナイトクラブ・モンブランのマネージャーだが、裏では経済ヤクザ・青山礼之介(森雅之)の秘書。森は東邦造船乗っ取りを画策している。葉山は経理課員・木村(伊藤寿明)を買収して東邦造船の帳簿(損益特別控)を手に入れる。帳簿を渡した帰り、伊藤は森の部下の小泉鉄(深江章喜)にひき逃げされて殺される。社の特命で調査を始めた長門は伊藤の身辺を調査。深江の存在を知る。深江はボクサー崩れで出入りしているジムで葉山と出会う。二人は大学時代の友人であった。長門は宮阪の勧めで東野の娘・秋子(稲垣美穂子)と見合いをする。出世のために乗り気の長門だが稲垣にはその気はない。長門には同僚の有村かづ子(渡辺美佐子)という恋人がいる。渡辺は長門と平凡でも静かな暮しを望んでいるが長門は渡辺をセフレ程度にしか考えていない。モンブランで飲んだくれている稲垣は葉山と知り合う。稲垣は葉山に惚れているが、苦学した葉山はブルジョア令嬢の稲垣には複雑なものがあってその気にはなれない。伊藤と同じように森に情報を流していた杉山係長(浜村純)も殺される。やったのは深江。葉山の父親はサラリーマンだったが、会社の不正の片棒を担がされて自殺していたので伊藤と浜村を殺した深江が気に食わない。以前から葉山と深江は犬猿の仲。東邦造船の株価が下がり会社は苦境に喘いでいた。原因は造船所を新設したが許可が下りない事。乗っ取りを企む森が役人に金を渡していたのだが、長門は役所とかけ合い許可を取ってみせる。またまた山田の立場はない。許可が下りて株価が上がる。株主総会が近づいてくる。株を買い占めていた森は葉山に稲垣に近づくよう命令。狙いは稲垣の株だ。東野の持つ軽井沢の別荘で二人は結ばれる。稲垣の株を得て森側は60%を占める。長門は渡辺から妊娠を告げられる。長門は中絶するように言うが、絶望した渡辺は自殺してしまう。株主総会では葉山と長門が対決するが、葉山は帳簿を武器に9000万の使途不明金を追求。ピンチの長門。その頃、森は東野と裏取引。手を引く代わりに大金をせしめる。ビルの屋上の葉山と長門。下を見下ろしながら長門は「踏み潰されないように這いつくばって生きているのが人間だ・・・もっと素直に生きろよ。」 そう言って非常階段から落ちて死んでしまう。足を洗って稲垣と暮らす決意の葉山は森の所に行く。「社会は血も涙もない取り引きの場所・・・まともに生きてみたくなった。」 退職金代わりの報酬を要求する。金額は稲垣の株券代。森は深江に葉山殺害を命令する。撃たれながらも深江を倒した葉山は、モンブランのカウンターで飲んでいる森を撃ち殺すが、深江に撃たれた傷のため死んでしまう。死ぬ直前、稲垣のところに電話するが、瀕死の葉山は何も言えない。柵に受話器を引っ掛けたままズルズルと倒れて息絶える。受話器から「もしもし」 という稲垣の声にエンドマーク。
 裏と表の組織の中でダーティに生きる男たちの話なのだが、ストーリー運びがイマイチ。稲垣の演じた秋子はワガママな金持ちの遊び女という設定のようだが、清純なイメージの稲垣がやるとそうは見えない。この辺はミスキャストのような気もする。長門はどうしてビルから落ちたのか? 映画を観る限りでは自殺っぽいけど死ぬ事はないだろう。組織を抜けようとする葉山を森は殺そうとするが、これもそこまでする必要はないと思う。そこら辺の処理の仕方も未整理でどうも話に乗りにくい。しかし白黒の硬質な画面は非情な世界の雰囲気をよく出していた。もう一度観たい作品。脚本担当した蔵原弓弧は蔵原監督夫人の宮城野由美子。宝塚から映画女優になり、製作再開当時活躍した一人。本作ではヒロインに関する描写を手伝ったらしい。
(2008年11月28日記)

          爆薬(ダイナマイト)に火をつけろ(59年92分白黒 脚本・池田一朗、阿部桂一 監督・蔵原惟繕)
 中西忠治(小林旭)は仲間の杉次郎(岡田真澄)、大江達彦(梅野泰靖)と組んで土建屋・中西組を経営していた。旭が代表、岡田は技術、梅野が会計を担当。旭の妹・久子(島村葉子・新人)も庶務を手伝っている。旭たちは臨海工業地帯の第3工区の埋め立て工事の入札に参加するが、業界のボス・加納(嵯峨善平)の子分で大手建設会社社長・岩井(天草四郎)が談合を申し込んでくる。他の会社は談合に応じるが旭はこれを無視。入札に成功する。天草の組は第1、第2工区の工事を担当していたが嵯峨は土地の不正払い下げを画策していた。土地を手に入れてレジャ−ランドを作るつもりであった。第3工区が欲しい嵯峨は天草に工事の妨害工作を命令する。そのために人夫が集まらない。旭は風太郎(ホームレス?)たちを集め、人夫として働かせる。最初、風太郎たち(高品格、久遠利三、黒田剛、その他)は旭と対立するが定石とおり旭の男気に惚れまじめに働くことになる。女流カメラマン・志賀千賀子(白木マリ)が工事の取材で現場に出入りするようになる。白木は銀行の支店長・志賀(伊達信)の娘であった。伊達の部下・剣持(波多野憲)と婚約していたが打算的な波多野よりも野性的でたくましい旭に惹かれていく。人夫の一人・須田(安井昌二)は元医者だった。余命いくばくない患者を安楽死させた過去を持っていた。島村は岡田から思いを寄せられていたが他の人夫たちと違い真面目な安井と恋に落ちる。高品たちの働きで工事は予定以上に順調に進むのだが、天草の組の人夫頭・鬼倉(深江章喜)は風太郎の一人・権田(土方弘)を買収、トラックを壊したり工事現場を破壊したりする。現場を高品たちに押さえられた土方は買収されたことを白状する。旭はいきり立つ高品たちを押さえ、単身乗り込んで深江と乱闘になる。そこへ高品たちがなだれ込み大乱闘になってしまう。そしてこの一件が新聞に載ってしまう。書いたのは新聞記者・坂巻(西村晃)。西村の書いた記事は事実とは違いセンセーショナルなものであった。このことで銀行からの融資を打ち切られ窮地に立たされてしまう。一時は工事中止かと思われたが役所の技官で旭の理解者でもある富岡(近藤宏)の口利きで工事は続行されるが台風が接近してくる。旭は補強工事を指示するが銀行からの融資はもちろん街金の世郷隆光(芦田伸介)からも借金を断られ補強資材も買えない。白木は父親を説得、自分のスタジオ建設資金200万円も出して旭に渡す。旭は資材を買い高品たちと補強工事を行う。暴風雨の中、補強工事を強行するのだが海に落ちた人夫を救おうと飛び込んだ安井は死んでしまう。そして補強工事も失敗し中西組は工事から降ろされてしまう。旭は黒幕・嵯峨のところに乗り込み、「今回は自分の負けだがまた復活する。いつかはあんたを倒す。」と宣言。とりあえず中西組を解散しようとするが高品たちにほだされ続行する気になる。そこへ近藤が飛騨の山奥のダム工事の仕事を持ってくる。再び活気づく旭たち。ラストは数台のトラックに分乗した旭たち、白木が自分のオープンカーに乗って併送、旭について行くと宣言し並んで飛騨の山に向かうシーンでエンド。
 この作品は『渡り鳥シリーズ』以前に製作された作品。そのためか旭の相手役が浅丘ルリ子ではなく白木マリというのは珍しい。ヒロインなので白木の役はバンプ役ではないのがチョット残念。嵯峨とのやりとりも殴り合いで解決しない所からアクションものというよりもどこか青春物的な感じもする作品。
(2002年9月28日記)


          大氷原(62年94分 脚本・秋本隆太 監督・斉藤武市)
 オホーツクの氷原を行く金沢海産のトッカリ船(第二海洋丸)が氷の上を歩いている男を発見・救出する。男は新井鉄次(宍戸錠)、樺太からやって来たハンター。錠は日本人だが、終戦で両親と死別してギリアーク人に育てられた。島田船長(山田禅二)は錠を網走に連れて来る。網走にはギリヤーク人のシャーマン(長)のおかね婆さん(細川ちか子)がいる。細川の家に行く途中、小屋で休んでいると、春川組のチンピラ3人組に襲われている娘を救う。娘は錠が格闘している間に逃げてしまうのだが、ギリヤークの木彫りのペンダントを落としていく。錠の両親は終戦のとき、沢野という日本人に裏切られ、ソ連兵に処刑されていた。錠は両親の仇を討つためにやって来たのだった。手がかりは網走か紋別にいるらしい山瀬というハンター。この山瀬が沢野の事を知っているらしい。細川は養女でギリアーク人の冴子(和泉雅子)と暮らしていた。仇を討とうという錠に「(沢野を)探すなんてのは無理。それより日本じゃお金が無きゃ暮らせないよ。」。錠は仕事を求めて金沢海産を訪ね、ハンターとして売り込む。金沢海産には腕利きの北村貞夫(小高雄二)がいたが、小高と勝負をして勝った錠を社長の金沢(大坂志郎)は即決で雇う。錠は和泉から山瀬は金沢海産で雇われてすぐに遭難して亡くなったと聞かされる。春川組に借金のある小高は、幹部の高橋(弘松三郎)に錠を殺せと命令される。ラッコ猟の最中、小高は錠を撃ち殺そうとするが、良心の呵責に耐えかね断念。港に戻った小高と弘松はもみ合いになる。小高のパンチで弘松は海に落ちて死んでしまう。幸い正当防衛が認められ釈放されるのだが、今度は錠が出入国管理法違反で捕まってしまう。小高は日本人でなくギリアーク人だった。和泉とは許婚の間柄だったのだが、ギリアーク人であることを嫌う小高は大坂の娘・杏子(中原早苗)に惹かれていた。その事を和泉は知っていた。和泉も錠に惹かれ始めていたのだが、錠が捕まっていなくなったために元気が無い。小高も何故か網走から姿を消す。一年後、入国手続きを済ませたのか?錠は網走に戻ってくる。偶然、同じ頃に小高も網走に戻って来る。小高は何か大坂の弱みを握っているらしい。大坂から金を貰って姿を消したのだが、行くところの無い小高は戻って来たのだった。大坂は春川組組長(近藤宏)に指示をして、錠と小高を争わせ小高を始末しようとする。港の突堤で錠は小高&春川組と対決するのだが、金沢海産の連中が錠の助っ人にやって来たために失敗する。小高を殺す事を諦めない大坂は、ラッコ猟に同行する。大坂は濃霧が出てきたのを理由に、小高とコンビで小船に乗っていた山下春麿(沢本忠雄)共々、氷原に置き去りにしてきてしまう。錠は二人が無事なら知床付近にいると推測。翌朝、磯舟に乗って救出に行こうとする。一人では無理だと、細川は和泉を同行させる。夜、無人の小屋に泊まる錠と和泉。和泉は「自分は誰からも愛されていない。」。錠は「自分には好きな娘がいる。しかし彼女には許婚がいた。でも俺には彼女の記念の品がある。」網走に来る途中に助けた娘の事だった。錠はあの時助けた娘は和泉だった事を知っているのだが、和泉はすぐに逃げてきたので錠だった事を知らない。しかし早朝、錠よりも早く目が覚めた和泉は、錠が自分が落としたペンダントを持っている事を知る。錠が自分を思っている事を知って涙ぐむ和泉。夜が明けて出発する錠と和泉だが、元々胸が悪い和泉は途中で倒れてしまう。和泉は「こんな(男みたいな)格好で抱かれたくなかった。白いスカートを穿いて、白いブラウスを着てあなたに抱かれたかった。」錠の腕の中で愛の告白をして亡くなってしまう。一人で知床に向う錠は無人の小屋を発見。中には小高と沢本がいた。小高は瀕死の状態。小高は錠に山瀬が書き残していたメモを渡して死んでしまう。沢野の正体は大坂で、山瀬を小高と同じパターンで氷原に置き去りにして殺したのも大坂。網走に戻った錠は大坂のいる春川組に乗り込む。春川たちを叩きのめし、大坂を殺そうとする錠だが、中原に懇願され断念。中原は大坂を説得して自首させる。ラスト、小高、和泉の墓前に手を合わせる錠。細川、沢本、和泉の友人・民子(松尾嘉代)に見送られ錠は網走を去っていく。
 極寒の網走でロケを敢行。寒いから、これ撮影は大変だったんじゃないの?しかし観た感想は、何だかなぁ、という感じ。錠は腕利きのハンターという設定なのに、それがアクションに全く生かされていない。アクションシーンもあんまり無いし、荒っぽい海の男の話というわけでもない。小高と錠の友情話でもない。愁いを含んだ和泉は美少女だが、錠や小高の相手役には若すぎる。愛情に飢えた少女という設定らしいのだが描写も中途半端。錠の仇討ち話も取って付けたような感じだ。無理にアクションにしないで、『硝子のジョニー野獣のように見えて』みたいにすれば良かったのかもしれない。
(2005年8月3日記)

          太平洋のかつぎ屋(61年87分 脚本・星川星司、熊井啓 監督・松尾昭典)
 
日新
航空のパイロット立花哲次(小林旭)は輸送機でロサンゼルスへ飛ぶ。相方はかつぎ屋と呼ばれるはぐれ者のパイロット集団・パシフィックポータースから派遣されたジム・ブラック(マイク・ダニーン)。ジムは軍用機上がりのパイロットで酒を飲みながらの操縦。ハワイ上空で悪天候で視界ゼロ。管制塔の支持でホノルル空港に着陸しようとするがマイクのミスで着陸に失敗。輸送機は炎上してしまう。旭は失神していたジムを救出するのが精一杯、荷物は燃えてしまう。ジムは自分の保身の為、失神していたのは旭だと偽証。旭は日新航空を解雇されてしまう。旭はパシフィックポータースに殴りこむがここで航空学校時代の親友・杉江洋介(宍戸錠@頬に傷あり)と再会する。宍戸は大手の航空会社のパイロットだったが事故を起こして頬に傷を負い、落ちぶれてかつぎ屋になっていた。錠はホステスのくみ子(白木マリ)と暮らしていた。航空学校の校長・品田(二本柳寛)は旭のパイロットとしての才能を惜しみ教官として迎えようとする。最初は拒む旭だが二本柳の娘・典子(浅丘ルリ子)に説得され宮崎の航空学校にやってくる。旭は二本柳の家に厄介になる。ある日、旭はルリ子に錠がかつぎ屋になっている事を話す。学生時代、錠はルリ子に惚れていた。白木と暮らす錠だが今でも気持ちは変わらずルリ子の写真をペンダントに入れて持ち歩いていた。旭はルリ子に錠に会ってかつぎ屋から抜けるように話してくれと頼む。しかし旭に惹かれているルリ子は「残酷ね。」と言って拒むのであった。二本柳は旭に地上勤務を命じる。空への夢を捨てられない旭だが教官として新人を育てる。卒業式、我慢できなくなった旭は無断で訓練機で空を飛ぶ。地上に戻ると二本柳のビンタ。「お前は辛抱できないのか。今日まで何を教えてきたんだ。サーカスや空中遊泳をするためにお前を呼んだんじゃないぞ。」しかし旭の表情は明るい。吹っ切れた旭は教官を辞め東京に戻る。パイロットの職を求めて就職活動するが事故を起こした前科のある旭をどこも雇ってくれない。雨の夜、雨宿りをしているとパシフィックポータースの連中と再会する。日本支社の責任者のアンディ白井(岡田真澄)は旭を誘う。気は進まないが他に自分を雇ってくれないので仕方なく岡田の世話になる。パシフィックポータースはならず者の外人部隊のような所だった。錠とアメリカ人のジムの他、陽気なイタリア人・マリオ(モリス・グルエル)、黒人・ニック(チコ・ローランド)、冷静なドイツ人・ダン(ヴェルナード・ヴァレ)、凶暴なマイク(エディ・住吉・モハンダース)、事務所に住み込む少年・タロウ(栗原勇)。いずれも一癖も二癖もある連中ばかりだった。ルリ子も旭を追って?東京に出てくる。二本柳の旧友で雑誌『航空世界』編集長・南部(芦田伸介)の下で記者として働き始める。芦田はルリ子の初仕事として「かつぎ屋の実態調査」を命じる。取材でパシフィックポータースを訪ねるルリ子にマイクがちょっかいを出す。この事で旭とマイクが衝突する。ケンカで勝負するのではなく飛行機の操縦で腕を競う。アクロバッティックな空中戦で旭が勝利する。徐々に仲間に溶け込んでいく旭。白木の働くクラブでルリ子は錠と会う。その場を逃げ出す錠。ある時、マリオが操縦する飛行機が墜落してしまう。マリオはジムの世話で密輸&密航の手引きをしていた。ジムを責める旭だが錠が止めに入る。錠はジムの世話でかつぎ屋になった。その恩義を感じて旭と対立する。事務所内で旭と錠が壮絶な殴り合いを展開する。その時、電話が入る。沖縄に台風が接近、救難物資を運ぶ仕事の依頼だった。旭・錠・ジムの3人はそれぞれ飛行機に乗って物資を運ぶが錠の機がエンジントラブルで海上に不時着、錠はボートで脱出する。米軍が錠を捜索するが見つからない。しかも台風が接近しているので捜索が打ち切られてしまう。旭は水上機で錠を捜す。台風が接近する中、錠を発見する旭だが海上は波が高く中々着水できないが、何度目かのトライで成功、錠を救出する事に成功する。この働きが認められて旭は日新航空に復帰の話が出るが、旭は「俺には見えてきたんだ。空は俺たちが裸で生きるところだ。」と言いパシフィックポータスに残る決心をする。旭の活躍に脱帽したジムはホノルル空港での事故のとき失神していたのは自分だと認めるのであった。
 空に生きる男たちの活躍を描いた作品。何より旭の歌う主題歌は軽快。特撮も空中撮影も良好で、この歌をバックに空を飛ぶ旭はとにかくカッコ良かった。かつぎ屋の外人連中の描き分けも比較的しっかり出来ていたし、旭と錠の殴り合いも日活アクション名勝負の一つとしてランクされてもおかしくないくらいの壮絶なもの。この外人連中もただの乱暴者かと思ったら、旭が根性見せると受け入れてくれるから根は良い奴らのようだ。でもこういう荒っぽい世界はオイラには無理だな。難を言えば肝心のストーリー展開があまりスマートでない。旭・ルリ子・錠の三角関係も中途半端で87分で描くのは勿体無いような気がした。
(2003年4月27日記)

          太陽と星(62年84分 脚本・熊井啓 監督・牛原陽一)
 田舎から上京した戸倉剛(二谷英明)とその弟・武(和田浩治)。ヒッチハイク同然で東京に向かう二人は途中、早川物産社長・早川(内藤武敏)と芸能プロ牧村プロダクション社長・牧村美和子(香月美奈子)の乗る車のクラクションの故障を直してやったことで東京まで同乗させてもらう。二人は叔母・とき(三崎千恵子)の家に身を寄せる。三崎は銀座で食堂・まんぷく亭を切り盛りしていた。二谷は元は大手建設会社で働いていたが怪我をした部下の治療費を自分の退職金で払ってしまって現在は無職。職探しのために上京したのだった。和田はロカビリー歌手を目指して二谷に付いてきたのだった。早速、二谷は職探し、和田は三崎の店で働き出す。三崎には息子・和夫(杉山俊夫)がいた。最初は和田と敵対するが杉山も歌手志望という事で仲良くなる。和田は出前で音楽スタジオに行く。そこで芸能ブローカー・兵頭(庄司永健)にスカウトされライブハウス?で歌い始める。さらに歌っているところを香月に見込まれ香月のプロダクションの所属となって売り出される。杉山はバンドボーイに雇われる。和田のファンにかおる(和泉雅子)がいた。和泉はいつも和田のステージに来ていた。和泉は足が不自由だったが和田は和泉に惹かれていく。ある日、三崎の店で常連の三沢(佐野浅夫)が酔って暴れる。佐野は近所の運送店の社長なのだが仕事が上手くいかず飲んだくれていた。店のツケも溜まっていて三崎も迷惑している。二谷は佐野を送っていく。佐野の運送店は娘の伸枝(南田洋子)が切り盛りしていたが仕事も無くクズのような運転手(高品格、深江章喜、土方弘、芦田伸介というスゴイ顔ぶれ!)たちがトグロを巻いているだけ。二谷は南田に溜まったツケを集金しようとするが払ってもらえない。おまけに高品、深江、土方たちと喧嘩になるが二谷は3人を叩きのめしてしまう。二谷の腕と度胸を見込んだ南田は二谷をスカウト、運送店を手伝ってもらうことになる。そんな事にはおかまいなく和田は内藤に二谷の就職を頼む。二谷の実力や人柄に惚れた内藤は自分の会社に来て欲しいと二谷に言うが、今自分は佐野の運送店を離れるわけにはいかないと断る。内藤はいつでも良いから来て欲しいと言う。二谷は運送店を建て直すために営業に回るがなかなか仕事を取る事ができない。そこで内藤が車を直してもらったお返しに仕事を回してくれる。二谷は3人をまとめて運送の仕事を始める。元やくざの芦田だけは二谷に従わない。芦田は和泉の兄であった。足を洗って和泉と東京に出てきた芦田だが地道に働くことに馴染めずいたが和泉に懇願され二谷たちと働くようになる。しかし和田と和泉のデートを目撃した芦田は事故を起こしてしまう。怪我は大した事はなかったが和田は二谷と袂を断つ。佐野や他の運転手たちは芦田を首にしようと言い出すが二谷は許さない。さらに和泉が涙ながらに訴えて和泉も事務員として運送店で働き出す。和泉は二谷と病院に行き足の診察をしてもらう。治らないと思っていた足は治ると聞かされ喜ぶ和泉。和田はバンド仲間(林茂朗、小島忠夫、中尾彬)のパーティに和泉を呼ぶ。和泉の美しさに目を付けたバンド仲間は和田を巻き込み、勝った者が和泉をモノにするという約束で賭けをする。和田は和泉を守るためにイカサマをする。和田が和泉を姦ったという噂を聞いた芦田は刃物を持って和田を襲う。そこへ二谷と和泉が駆けつけて誤解が解ける。数日後、二谷は運送店を芦田に託し内藤の会社に就職する。ラストは運送店を去って行く二谷と和田。物干し台から手を振る和泉。去って行く二人を映してエンドマーク。
 二谷と南田のベテラン同士のやりとりは息の合った感じで良い。脚本が熊井啓なのだがダラダラしたストーリーで映画としては平凡なモノ。あまり記憶に残るものではない。潰れかけた運送店で給料も払えないはずなのに4人も居残っているのは変だし、ラストで二谷が内藤の会社に行ってしまうのはどうして?あんたが抜けたら潰れちまうゾ!純情で真面目そうな和泉がライブハウスに独りで通うのも変ダ。脚本の熊井啓は助監督にも名を連ねている。熊井がスゴイのか監督の牛原陽一が上手いのか?ご都合主義的な設定を巧みな語り口で見せた不思議な作品。
(2003年1月14日記)

          探偵事務所23(ツースリー)シリーズ
大藪春彦原作の同名小説を映画化。
ラインナップは以下の通り。
@探偵事務所23 くたばれ悪党ども(63年、脚本・山崎厳、監督・鈴木清順)
A探偵事務所23 銭と女に弱い男(63年白黒、脚本・浅野辰雄 山中耕人、監督・柳瀬観)

探偵事務所23所長の田島英雄(宍戸錠)は警視庁捜査一課の金子信雄の依頼を受け、警察が表立って動けない事件を追いかける。1作目も2作目も武器密売組織を摘発する話。原作はハードボイルドなのだが、コメディタッチの展開が楽しい。中でも錠の助手の初井言栄、土方弘の怪演ぶりは一見の価値あり。錠の相手役は笹森礼子、星ナオミが扮した。『くたばれ・・・』のシナリオタイトルは『吼えろマシンガン』。タイトル通り銃撃戦ではナンセンスなくらい弾が飛び交う。『けんかえれじい』と並ぶ清順作品の傑作。
 (2000年10月23日記)