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地図のない町(60年96分白黒 脚本・橋本忍、中平康 監督・中平康)
舞台は地方都市の一角にあるスラム街・東雲町。戸崎慎介は笠間雄策(宇野重吉)の診療所で働く医師。ある夜、妹の佐紀子(吉行和子)に「今夜は遅くなる。」。懐に医療用のメスを隠し持ち外出する。町の映画館・オリオン館に行く。映画(上映してるのは『狂った果実』)も観ないで2階の通路から隣の家を張り込む。後ろから声をかけられる。驚く葉山。声をかけたのは梓組のヤクザ・持田政雄(山内明)、通称・キズマサ。葉山の動きを警戒している様子だ。
10ヶ月前、葉山は手術を失敗、急患の患者を殺してしまう。以来、病院を辞めて競艇場通い。吉行に食わせてもらっていた。吉行には市役所勤めの恋人・梶原五郎(梅野泰晴)がいた。葉山が競艇場に行っていた日に梅野とデートする吉行。しかしその帰り道、川っぷちを歩く二人は地元の暴力団・梓組のチンピラ5人にカラまれる。梅野は袋叩き、吉行は強姦されてしまう。翌日、吉行は睡眠薬を大量に飲み自殺を図るが、偶然近所の家に往診に来ていた宇野が治療して一命を取り留める。葉山は警察に行くのだが梓組の組長の梓米吉(滝沢修)は地元の有力者だったため警察も弱腰だ。ビビった梅野も警察に証言しないで泣き寝入りだ。吉行はショックで心を閉ざしてしまっていた。中学の先輩で新聞記者をしている中塚(佐野浅夫)は「バカなことはするなよ。」。葉山は滝沢の所に行くが「証拠もなしに騒ぎ立てるな。」と取り合わない。
再び映画館、隣の家から銭湯に行く小室加代子(南田洋子)が出てくる。物陰には山内が葉山の様子を窺っている風だ。
6ヶ月前、街の遊郭・さくら横町で葉山は幼馴染みの南田と再会する。南田はちょんの間で売春婦をしていた。葉山は南田と関係する。南田が東雲町に住んでいた事から葉山は吉行を連れて東雲町に引っ越す。1階には家主のおみね(三崎千恵子)家族が住む2階が新居。引越しには南田も手伝いに来る。吉行は相変わらず心を閉ざしたまま。葉山は宇野の診療所で働き出す。葉山が引っ越した日、南田は父親・養七(浜村純)の借金のかたで滝沢の妾になると告白する。
映画館で張り込む葉山。葉山が見張っているのは妾となった南田の家。中には滝沢がいる。銭湯に行った南田の帰りを南田が飼っているネコをおもちゃの空気銃で撃ってイジめている。葉山は外に出る。道で梅野とすれ違う。梅野は女連れだった。梓組との件で吉行と別れた(棄てた)梅野は別な女と付き合っているようだ。葉山は入った飲み屋で佐野とバッタリ出会う。佐野と酒を飲む葉山。佐野は酔い潰れてしまう。
1ヶ月〜3日前、東雲町は不法建築の町だった。元々この町は市有地で終戦後人々が勝手に家を建てて住み着いて出来た町だった。これに目をつけた滝沢は街の人々を追い出して家賃9000円の高級マンションを建てようと画策していた(当時の相場は4000円)。宇野は町の人々の相談役のような存在。人々は宇野の診療所に集まって立ち退き反対運動を起こす。そこへ梓組のチンピラ(玉村俊太郎、柴田新、榎木兵衛?)が脅しに来るが町の人々に追い出される。滝沢は立退き料をたったの10000円で追い出そうとしていたが抵抗する町の人々に怒り「勝手に住み始めた・・・図々しい、ビタ一文払わねぇ。」。議員も務める滝沢には警察も弱腰。記者の佐野も甘い汁を吸おうと滝沢にくっついていた。反対運動をする町の人間が次々に暴行を受ける(競輪場で小沢昭一が、夜の町で嵯峨善平が襲われる)。町の連中は怖気付いてしまう。宇野は滝沢に会いに行く。滝沢は宇野の診療所も取り上げようとする。診療所は宇野の持ち物なのだが宇野は薬品代やその他、質屋の丸一商事の丸太一郎(宮坂将嘉)から借金をしていた。滝沢はこの借金を勝手に肩代わり。借用書を盾に宇野の病院も取り上げようとする。町では浜村だけが襲われない事から皆から疑われる。宇野は宮坂に会いに行こうとする。そこへ山内が現れる。山内は左手に傷を負っていたが宇野の指示で葉山が治療をする。借金の件で宇野は宮坂に会うのだが宮坂は取り合わない。宇野は金策に走り回る。宇野の診療所は立ち退き反対運動のシンボル的存在。住民の他、噂を聞きつけた人々が宇野にカンパ、借金返済の目途が付く。しかし宇野はリンチに合い重傷を負う。堪忍袋の緒が切れた葉山は滝沢殺害を決意、懐に医療用メスを忍ばせ滝沢を狙っていたのだ。
南田は銭湯には一時間以上入っている。滝沢を嫌う南田は少しでも滝沢と一緒に居たくないためにゆっくり入る事にしていると南田から聴き出していた。葉山はメスを握って南田の家に忍び込む。しかし滝沢は既に死んでいた。葉山と同じ医療用メスで刺し殺されていたのだ。驚く葉山。動転した葉山は逃げ出す。一度は外に飛び出す葉山だが指紋や凶器のメスを残してある事から自分が疑われると考え現場に戻る。まだ南田は戻っていない。葉山は自分が触れたと思われる箇所を拭うのだが凶器のメスがなくなっている。誰がか持ち去った。誰だ?メスを持ち去ったのは浜村であった。浜村は町の連中に疑われた事から滝沢を殺すと息巻いていた。浜村が乗り込んだのは葉山が立ち去った後。犯人が葉山だと考えた浜村は葉山をかばうつもりで凶器を持ち去り川に棄てたのだった。浜村から葉山の事を聞いた南田は葉山を高飛びさせようとするが葉山ではないと知る。葉山と南田は犯人は山内では、と考える。山内は組の命令で刑務所に入ったものの出所してみれば約束が何一つ実行されていないことに怒り滝沢の命を狙っていたらしい。犯人は山内と考えた葉山と南田は警察に行く。しかし犯人は宇野だった。警察は宇野の行方を追っていた。宇野は川の下流で死体で発見される。青酸カリを飲んでの自殺だった。宇野の死体を前に山内は「(宇野が)もう10分、20分遅ければ俺がやっていた。・・・(南田、葉山、浜村も狙っていた。)遅かれ早かれ誰かがやっていたんだ。」。駆けつけた吉行は「(宇野以外)他の誰にも出来ない。」。滝沢を殺して町を救った宇野だが佐野は冷たく「ところが新聞の報道は違うんだなぁ。」新聞は「借金苦の町医者、逆上して刺殺」という見出し。滝沢の葬式が行われる。弔問に行く葉山。葉山の姿を見て梓組の幹部・竹林(安部徹)の他、組員たちは警戒する。葉山は霊前で「正直者をバカにするとどうなるのか良く分かったでしょう。善良な人間を守る法律はない。それでも私たちは生き抜いて見せる。」と呟き去って行くところでエンド。
回想シーンと張り込みシーンを交互に入れる手法はサスペンス色をアップするのに効果的。何より葉山が滝沢殺害を決意するまでの過程が丁寧に描かれるのは特筆に価する。滝沢を殺しに忍び込むシーンも緊迫感があって良い。東雲町もバラックのような家が立ち並んで違法建築(地図にない町)の雰囲気があるのだがこれはセット組んだの?いつもは重厚な役の多い滝沢がここでは俗物的なボス役を好演。南田を苛めたり住民に対する冷酷な扱いは一見の価値あり。他に吉行強姦の捜査責任者に庄司永健、佐野の妻・清乃(高野由美)、梓組の弁護士に下条正巳の顔が見えた。しかし重傷を負ったはずの宇野が犯人とは良く考えれば無理があるような気もする(笑)。
(2003年11月1日記)
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地底の歌(56年白黒89分、脚本・八木保太郎、監督・野口博志)
平林たい子原作の朝日新聞連載の同名小説を映画化。二本柳寛を組長にする伊豆組は旧態然としたやくざ組。深見泰三の吉田組に押されて斜陽化が進んでいる。鶴田光雄(名和宏)は伊豆組の幹部で二本柳の娘・トキ子(坪内美詠子)に慕われている。ストーリーは名和が「おかる八」の異名を持つ博徒(菅井一郎)の愛人・辰子(山根寿子)と不倫したり、名和の子分・びっくり鉄(高品格)に売り飛ばされた坪内の友人・花子(香月美奈子)を捜したりと、侠客としての名和の日常が淡々と描かれる。名和は組のために他所の賭場でツボ振りなどをして金を稼いでいたのだが、ある日、賭場での争いで人を刺し逮捕される。名和の投獄中、二本柳は深見の子分で山根の弟でもあるチンピラ・ダイヤモンドの冬(石原裕次郎)に殺されてしまう。名和は献身的に尽くしていた組を失い、帰る場所も無くしてしまうのだった。やくざの空しさを描いた佳作。出番は軽いが、ダイヤモンドの冬を主演スターとなる前の石原裕次郎が好演。それだけでも記憶に値する。舞台になったのは江東区の一角。映画の序盤に錦糸町駅前が出てくるが、現在は当時の面影はない。
(2001年5月2日記)
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知と愛の出発(58年コニカラー91分、脚本・植草圭之助、監督・斉藤武市)
舞台は長野県下諏訪。地元の高校3年生・綾部桃子(芦川いづみ)は同級生の河野恵美(白木マリ)と湖畔で休んでいると、白木にレズ関係を強要される。友達でいようと断る芦川。白木は地元の大病院の一人娘。父・秀樹(永井智雄)。白木は若い後妻・春子(江端朱美)を嫌っていた。若い医師・三樹(小高雄二)は野心家で白木だけでなく江端までも狙っていた。芦川に断られて怒った白木は乗って来たモーターボートで帰ってしまう。帰れなくなった芦川だが、丁度ボートに乗っていた南條靖(川地民夫)に助けられる。川地は同じ高校のクラスメートだった。芦川は来春、女子大進学を目指していた。女子大を出てラジオ局に入り、ルポルタージュの構成の仕事をしたいと明るく川地に語る。川地は建築家になりたかったが、厳格な父親(永田靖)の命令で東大の法科を目指して勉強中だった。今回の事で仲良くなる二人。芦川の家は貧乏で進学費用がなかった。中学教師をしている父・健司(宇野重吉)は亡くなった母親の療養費ために蓄えておいた進学費用を使ってしまっていたのだ。芦川は女子大を諦め、短大進学に切り替える。夏休み、クラスメートの津川洋子(中原早苗)と諏訪湖畔のホテルのレストランでウェイトレスのアルバイトを始める。祭りの夜、バイト帰りの芦川と中原は都会の太陽族グループ(柳瀬志郎、堀江勇、林史朗、他)たちに襲われる。芦川は無事だったが、中原は拉致されてしまう。芦川を迎えに川地がやって来る。中原が連れて行かれたのに、湖畔でデートする二人(オイオイ)。中原の叫び声が聞こえたのに愛を語らう二人。中原が暴行されたのが新聞に実名写真入で報道(当時はそうだったの?)、入院中の中原。そこにバイト中に腹痛で倒れた芦川が担ぎ込まれる。急性盲腸炎だった。輸血の必要がある芦川、小高は中原から血を採ろうとするが、強姦された中原の血は嫌だ!ゴネる芦川(ヒドイ!)。心配で駆けつけた川地が輸血を申し出て川地の血を使う小高。助かる芦川だが、翌朝、中原は病院のベッドの上で服毒自殺してしまう。スケベな小高は術後の芦川をも襲おうとしたりする。輸血したのが川地ではなく、中原だと思い込んでいる芦川は見舞いに来た川地を追い返してしまう。退院する芦川に小高がデートの誘いの手紙を寄越してくる。川地に会いたい芦川は川地の家に行くが、父親がいるために会えない。「会いたい。」と手紙を出す芦川だが、代わりに来たのが妹で会う事が出来ない。そこへ偶然、往診帰りの小高に会う。ヤケになった芦川は小高に誘われモーターボートに。湖畔で芦川は自分の体には強姦された中原の血が入っている。自分は堕落した。堕落してやる、と叫ぶ芦川に小高は輸血したのは川地だから君は純潔だ、と言う。それを知った芦川は小高を振り切り湖に飛び込む。あわてた小高は芦川をボートに乗せる。その光景を見ていた白木は電話で川地に密告。芦川は川地の家に行くが、またまた父親に追い返される。湖畔で川地と会う芦川だが、小高とボートに乗っていた芦川を怒る川地。川地は芦川に絶交宣言をする。芦川は小高に何もなかった、と証言してくれと頼むが、一笑に付して相手にしない小高。逆に芦川を襲う小高だが、拒む芦川は部屋にあったナイフで小高を刺す。かすり傷だったが、警察沙汰となり地元の新聞に実名顔写真入りで載る〈新聞記者の中に二谷英明がいた〉。この事で学校を辞める宇野。絶望した芦川の所に川地が夜這いに来る。「君を信じられなかった自分がバカだった。」。二人は自殺しようと山に登る。その頃、新聞記者(二谷英明と河上信夫)が小高にインタビューしたいとやって来る。取り次いだ永井が小高の部屋に行くと、小高と江端が寝ていた。小高の言う事がウソで、芦川は無実だと気づいた永井は二谷たちに真実を記事にするように諭す。その頃、山頂にたどり着いた芦川と川地は自然の雄大さに触れ、自殺は止めて生きていく事を決心するのだった。
不潔だとか純潔だとか、古臭い男女関係が支配している話。58年で田舎町の話では仕方がないか。この映画の芦川いづみは、中原が拉致されて湖畔で叫び声が聞こえたのに、警察に届けないで川地とデートとは薄情な女だ。おまけに輸血も強姦された中原の血は嫌だとゴネたりとヒドイ女だ(笑)。芦川がゴネている声は隣室で寝ていた中原は聞いていたのだ。自殺したのは芦川にも責任の一端はあると思う。川地も小高とボートに乗っていただけで絶交宣言するとは薄っぺらな男である。こういう男は現代でも多いかな。しかしセーラー服姿の芦川はメンコイ。白木マリはどうみても高校生には見えない。この作品は川地民夫にとって『陽のあたる坂道』に続いて2作目の作品。
(2004年10月27日記)
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乳房よ永遠なれ(55年白黒110分、脚本・田中澄江、監督・田中絹代)
若くして亡くなった女流歌人・中城ふみ子とその愛人・若月彰の手記を映画化した作品。舞台は札幌。子持ちの主婦が離婚後、女流歌人となるが乳がんで亡くなるまでを淡々と描いた田中絹代監督作品。下城ふみ子(月丘夢路)は夫(織本順吉)と見合い結婚、長男・昇(呉藤孝行)妹・あい子(植木まり子)と二人の子供がいる。しかし夫(織本順吉)との仲は冷え切っていた。月丘は地元の新聞記者・山上(安部徹)が主催する歌会に趣味として参加していた。歌会の仲間には月丘の幼馴染み・きぬ子(杉葉子)の夫・堀卓(森雅之)がいた。森は月丘を励ますが元々体調に難があるために病死してしまう。織本に愛人(浦島久恵)がいることを知った月丘は子供を連れて実家に戻ってしまう。そして正式に離婚が成立、あい子は月丘が引き取るが、長男・昇は愛人と一緒になった織本に取られてしまう。そんな時、安部は月丘の作った歌を東京の新聞社に送る。この歌が認められ月丘は女流歌人としてデビューする。月丘の弟・義夫(大坂志郎)がせい子(木室郁子)と結婚したり、隣の奥さん(田中絹代)に頼んで長男を外に連れ出してもらいそのまま実家に連れかえったりというエピソードが挿入される。以前から乳房にしこりがあった月丘は病院に行く。乳がんと診断され入院。病床でも歌を作る月丘。東京の新聞社から記者の大月章(葉山良二)がやってくる。月丘の歌集出版のためにやって来たのだ。最初、月丘は病床の自分の姿を見せたくないと葉山との面会を拒絶したり病院を抜け出したりエキセントリックな行動が目立つようになる。結局、葉山の真摯な姿を見て会うことになる。これがきっかけで葉山との仲が親密になる。しかし病状は進行、月丘の本が出版されるが安部や歌会のメンバーで主催したパーティには出席できない。代わりに葉山が出席する。そして葉山が社用で東京へ戻っている間に月丘は亡くなってしまうのであった。原作はどうなっているのか知らないが難病路線の映画としては乳がんという病の説明が不足していて中途半端だし、葉山との恋愛モノなのか、二人の子供との愛情モノなのかどっちつかずの作品。田中絹代は原作に感動して映画化したそうだが、まとめ方に難があった気がする。しかし月丘夢路はオイラ好みの熟女だからOKだ。(ってアンタねぇ。)
(2002年7月31日記)
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チャンチキおけさ(58年白黒47分 脚本・池田一朗、小川英 監督・小杉勇)
田所三郎(沢本忠雄)は佐渡で漁師のしている家の三男坊。長男・源一(長尾敏之助)夫婦と母親・ふさ(紅沢葉子)たち家族で働いている。沢本には恋人・千枝(香月美奈子)がいるのだが、都会に憧れる沢本は長尾と喧嘩して家を飛び出してしまう。東京にいる次男の太平(二谷英明)を頼って上京する。二谷は有望な競艇選手だったのだが、何故か浅草で水上バスの運転手をしていた。沢本が上京してくる報せを聞いて浮かない顔の二谷は、仕事帰りに行きつけの飲み屋に行く。飲み屋には看板娘の町子(堀恭子)がいる。二谷が飲みに行くと、新顔の春さん(三波春夫)が良い調子で“チャンチキおけさ”を歌っていた。上京した沢本は憧れの東京で競艇選手になって良い暮しをしたい。競艇などやらないで地道に生活する事を勧める二谷。翌日、沢本は競艇場に行くのだが、二谷が八百長レースをやった噂を聞いて、客と喧嘩をしてしまう。二谷は沢本の就職先を探すのだが、なかなか見つからない。三波春夫にも相談するが、三波は長谷部組の盃を貰ったらしい。長谷部組と聞いて暗い表情の二谷。何かを探るような表情の三波。沢本は愚連隊との喧嘩で知り合ったチンピラ・金公(近江大介)と長谷部組のチンピラになってしまう。夜の街でダフ屋稼業に勤しむ沢本は、長谷部組のキャバレー・ブルーバードに飲みに行く。ブルーバードのダンサー・野見京子(横山美代子)は二谷の元恋人だったらしい。組長の長谷部(長弘)は子分の森(青木富夫)から沢本が二谷の弟で、船の操縦が出来る事を聞く。二谷は沢本の就職先を決めてくる。石川島の修理工だが飲み屋で三波から、沢本が長谷部組のチンピラになったことを聞いた二谷は、帰宅した沢本と口論。沢本は八百長を詰るが、二谷は八百長をやってはいなかった。長谷部組に八百長を強要されたのだが、嫌でボートを転覆させたのだった。口論の末、沢本は出て行ってしまう。沢本は横山のマンションへ行く。ヤケクソで横山をベッドに押し倒すが、「私は長谷部の女。」と言われ、ビビって逃げ出してしまう。長弘は密輸の手伝いを沢本にやらせる。船の操縦をする沢本だが、横山から聞いた二谷はモーターボートで乱入。船上で格闘になるが、沢本共々、長弘たちに捕まってしまう。倉庫に監禁され、危機一髪のところを包囲した警官隊に救われる。警官隊の中には三波がいた。三波は長谷部組を内偵する保安官だったのだ。沢本は佐渡に帰る。地元の祭りで香月と踊る沢本。タイアップのため祭りのシーンは結構長い。夜、飲み屋で背広姿の三波春夫が“チャンチキおけさ”を歌っている。隣には二谷。歌の途中で店を出る二谷。その姿を見送る堀恭子。カメラが引いていくと川向こうに松屋デパートが映りエンドマーク。
二谷が浅草で水上バスの運転手という設定なので、隅田川の乗り場が出てくる。乗り場から松屋デパートが見えるのだが、当時の浅草には松屋以外、大きな建物がないのでやたらと目立つ。この頃は浅草のランドマークだったのだろう。映画の序盤から三波春夫は随所に出てくる。主題歌・チャンチキおけさを歌うだけではなく、胡散臭い表情。普通のパターンなら乗り込んだ二谷が大暴れして一件落着なのに、あっさりやられてしまう。どうなるの?と思ったら、三波春夫が保安官として乗り込んでくる、というオチにはチョッと笑ってしまった。映画の出来は可もなく不可もなく、平凡な作品。
(2006年2月15日記)
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