夜霧に消えたチャコ(59年白黒、脚本・銀座八郎、監督・森永健次郎)
『平凡別冊』所載の川内康範原作の小説を映画化。フランク永井の歌う同名曲を主題歌にした上映時間49分の添え物映画。作詞家志望のタクシー運転手・遠藤節夫(青山恭二)は霧の夜に自殺未遂の女・広瀬久子(筑波久子)を助ける。筑波は広島の原爆孤児で19歳の時に養父に強姦され家出、売春宿で働いていた。自分の行く末を悲観して自殺を図ったのだが、青山と知り合い生きていく決意をする。しかし売春宿の女将(若原初子)に見つかり青山の前からも姿を消す。筑波は銀座のクラブのマダム(広岡三栄子)に拾われてホステスとして働き始める。2ヵ月後、偶然クラブの客を乗せたことで再会する筑波と青山。しかし売春宿時代の顔なじみが偶然クラブに客として来た事で筑波の過去が暴露されてしまう。それにもめげずに青山は筑波との結婚を決意する。青山の妹・公子(丘野美子)、音楽仲間・永井(フランク永井)も祝福、筑波をイメージして書いた青山の詞にフランクが曲を付けた歌がレコード化される事も決まり明るい雰囲気になるのだが、筑波は再び青山の前から姿を消すのであった。筑波は被爆者なので原爆病の恐怖に怯えているが、医者の診断ではそんな兆候はないというから何も自殺しようとする事はないと思うし、二人の間に何の障害もなくなったのだから、どうしてラストで姿を消す必要があるのか。この辺はどうも良く分からない。映画の出来はバツだけど、59年当時の東京の街並みが見られるだけでもウレシイ。こういう無名の作品は鑑賞の機会がほとんど無い貴重なもの。筑波久子は本当に美人だ・・・タマランぞ。また映画の中で度々、「原爆病」と言う台詞が出てくる。しかも筑波を快く思わないホステス・しげ子(三田容子)が「原爆病って伝染するんでしょ。」なんて言う台詞まであるのだ。正式な病名は何と言うのか分からないし伝染するとも思えないが、被爆問題の関係団体に見つかったらウルトラセブン第12話『遊星より愛をこめて』と同じく上映禁止になるのではないか。無名の作品で良かったね。しかし脚本を書いた銀座八郎って何者?(2001年6月27日記)

        夜の勲章(63年101分 原作・藤原審爾 脚本・千野皓司、神原孝史 監督・松尾昭典)
 
阿久根産業の御曹司・阿久根純一27歳(小林旭)は私立探偵。父親のビルに事務所を開いたものの開店5日経つのに客は来ない。秘書の山岡瑠璃(星ナオミ@大好き)に尻を叩かれるが大金持ちの父親に寄生しているのでノンビリしたもの。そこへ初めての依頼人・夏木瑛子(松本典子)がやって来る。行方不明になった種違いの姉・伸子(仁木裕子)を捜して欲しいというものだった。仁木は新宿のクラブ・ゼロでホステスをしていたのだが2月13日の夜からアパートから姿を消していた。手がかりは仁木の部屋にあった奇術師・大原天嶺(小沢昭一)の名刺だけ。調査を開始した旭は仁木のアパートの管理人(原恵子)から仁木は失踪直前まで暴力団風の男たちに軟禁されていた事を聞きだす。クラブ・ゼロに乗り込んだ旭は支配人・篠村(内田良平)から仁木は麻薬中毒だったことを聞く。旭は内田を疑うが内田は仁木に麻薬を止めさせようとしたと言う。しかしクラブ・ゼロは麻薬の売買を行っている事からどうも信用できない。旭は知り合いの警視庁刑事・有吉(井上昭文)の所へ行き該当する変死体が出ていない事を確認した後、小沢の出演している劇場・ロマンス座へ行く。仁木に麻薬を教えたのは小沢であった。元々、仁木はロマンス座の踊り子だったのだがその美貌に目をつけた小沢が麻薬タバコを吸わせて仁木をモノにしたのだった。小沢の話では仁木には実の父親の遺産1000万円が入っていたが、内田というバックがいたために仁木の事は諦めたらしい。旭は松本の勤める病院にいく。松本には内科医の松井(椎名勝己)という恋人がいた。旭に事件の依頼を頼むように勧めたのも椎名であった。そんな時に月島の岸壁に女の変死体が上がる。確認のために松本を連れて現場に行く旭。死体は仁木ではなかった。ホッとする松本。井上は1ヶ月前に退職した元刑事・岩井(大坂志郎)に確認してもらうが大坂にも心当たりがなかった。死体は仁木ではなかったがクラブ・ゼロのホステスだった。旭は再び内田から話を聞く。内田は5年間の刑務所暮らしから出てきた晩、クラブゼロで出会い深い仲になった。その時既に仁木は麻薬中毒だった。仁木との事を真剣に考えた内田は麻薬を止めさせようと仁木のアパートに軟禁していたのだった。しかし殺された夜、何者かに連れ去られたのだった。そんな時に、ロマンス座の地下から仁木の死体が発見される。容疑者として小沢が逮捕されるが証拠もないため釈放となる。仁木は殺される直前、麻薬を買いに小沢のところに来ていたのだが係わり合いを恐れた小沢は仁木を追い返していた。仁木の死体が発見された事で旭の仕事は終わりだが納得の出来ない旭は調査を続ける。星の調べでクラブ・ゼロの事が分かる。ゼロの経営者は織部(小泉郁之助)。小泉は全く表には出ず遠隔操作で内田たちを動かしていた。旭は内田の子分を締め上げて仁木が失踪した日の事を聞きだす。その日、内田は佃島に行っていた。佃島の水上生活者(河上信夫)から不審なモーターボートの事を聞いた旭はボートを調べる。ボートから死体の女が履いていたと思われるハイヒールが出てくる。月島の女殺しは内田の仕業であった。ヒールが出たことでボロが出ると考えた小泉は幹部の小田切(木島一郎)に内田の始末を命令する。旭がゼロを訪れた夜、内田は殺されていた。旭は大坂の家に行く。大坂は故郷の大島に帰っていた。追いかける旭は三原山で大坂を捕まえる。仁木は妖しい魅力を持つ女だった。大坂は麻薬捜査で仁木と知り合ったのだがその魅力に溺れたため刑事を辞めたのだった。大坂は仁木を道連れに自殺するつもりだった。旅館で待ち合わせ酒に薬を混ぜて死ぬつもりだった。しかし一度は現れたものの「すぐに戻る。」と言い残して消えていた。内田に軟禁されていた仁木を連れ出した奴がいる。仁木は脱出した後、大坂と旅館で会いその後麻薬を買いに小沢に会った後、殺された。アパートを脱出し大坂と会った時は禁断症状ではなかった。連れ出した奴は仁木に麻薬を打ち正常に戻したことになる。「麻薬は麻薬ルートにあるばかりではない。」大坂の言葉をヒントに東京に戻った旭は椎名の事を調べる。仁木が殺された夜、椎名にはアリバイがなかった。旭は椎名を追う。椎名は松本と仁木の遺骨を持って仁木の郷里へ行っていた。松本も椎名を疑いだしていた。仁木の墓の前で問い詰めると椎名は真相を吐露する。アパートから連れ出したのも仁木を殺したのも椎名だった。仁木が死ねば遺産は松本に入る。その金で椎名は松本と 一緒に暮らすつもりでいたのだった。自首を勧める松本に逆上した椎名は松本も殺そうとするがそこへ駆けつけた旭と星。椎名は旭に追い詰められる。スケートリンクで指を負傷した椎名は崖から落ちて死んでしまうのであった。事件は解決、旭の事務所に次の依頼が来る。ラストは旭の愛車のオープンカーに乗る旭と星。東京上空(新宿駅周辺)が映り主題歌「今日も何処かで」がかかりエンド。
 シナリオタイトルは『俺の拳銃は歌をうたう』。その名の通り旭のマスコットとして拳銃(リボルバー)型のオルゴール、シリンダーの中がシガレットケースになっているという珍しいものが登場する。藤原審爾の原作はアメリカの探偵小説を真似て書かれているので、探偵には許可証(ライセンス)があり拳銃の所持も認められているというものだった。この映画の旭は金持ちの坊ちゃんで“趣味と実益を兼ねて”探偵家業をやっているというお気楽なご身分。おまけに星ナオミなんて美人秘書まで連れて全く羨ましい。映画の出来はどうという事はないがシリーズ物の多いアキラ映画には珍しい単発物。小林旭はどうでも良いが秘書役が星ナオミというのはこれまた珍しい。日活映画では『探偵事務所23・くたばれ悪党ども』以外、目立った役がなかった女優さんだがこの人はイイね。立ち回りでほつれた旭の背広を「脱いでください。」と言って縫ってくれたり、眠ってしまった旭を介抱してくれたりと甲斐甲斐しい所見せてくれる。いつものホステスやダンサー役とは違う一面が見られる。星ナオミを観るだけでも一見の価値のある作品。この作品を観ると星ナオミでじょんじょろりん!!したくなるヨ。
(2003年6月9日記)

        夜のバラを消せ(66年、脚本・下飯坂菊馬・瀬川昌治、監督・舛田利雄)
 徳川新六(石原裕次郎)は政界の大物の千成(東野英治郎)の命を受け、悪徳政治家(三島雅夫)、麻薬組織のボス(清水将夫)、実業家(永井秀明)を失脚させる。しかし本当の悪は孤児だった裕次郎を育ててくれた東野英治郎であった。裕次郎はひょんな事から知り合った由美かおるの協力を得て、『父』である東野に闘いを挑む。
 柴田錬三郎原作『俺の敵がそこにいる』を映画化。モーターボート、スポーツカー、液体爆弾に秘密基地等が登場。日活アクションというよりも当時流行った007映画を彷彿とさせる作品なのだが、中年太りが始まった30代の裕次郎の相手役が当時10代の由美かおるなのはどうにも不釣合いであった。出番は少ないが東野の愛人役に芦川いづみが扮した。ラスト、東野に撃たれて死ぬまでほとんど台詞がなかったのが記憶に残る。
(2000年9月27日記)

        夜をひらく 女の市場(69年84分 脚本・成沢昌茂 監督・江崎実生)
 舞台は池袋。槌田昭(小林旭)は一匹狼のホステス引き抜き屋。自称「ネオンの草原を行く夜の開拓者」。大企業『百瀬観光』社長・百瀬悌三(加藤嘉)の妾腹の息子でもある。旭は加藤の依頼で新たにオープンさせる『クラブ・パイオニア』のためにホステスの引き抜き&スカウトをする。暴力団・黒河興行社長の黒河(内田良平)が経営するクラブ・レーズンシャト−のホステス・あさい(長谷川照子)のヒモでバーテン・郁夫(川地民夫)を手なずけてNo.1ホステス・まさ美(沢知美)やママ・和江(松井康子)の妹・レミ(藤田憲子)を引き抜く。更に川地は松井を強姦、強引に引き抜こうとするが失敗。松井は内田の女だった。川地は内田の子分の穴吹(木島一郎)、根本(榎木兵衛)たちに拉致拷問、右腕を折られスケコマシとして再起不能にされてしまう。内田は大岩建設にレーズンシャトーのビルを建てさせたのだったが、その費用を踏み倒していた。社長の大岩為吉(上田吉二郎)はその責任を部下の小松崎(雪丘恵介)に取らせクビにしてしまう。内田は雪丘をレーズンシャトーの営業部長にすえる。内田は川地に続いて旭も狙う。車で旭を轢き殺そうとするが失敗。内田は雪丘に命令して旭の身辺を探らせる。旭には内縁だが最愛の妻・梅子(山本陽子)がいた。内田は雪丘に命令し車で山本を狙わせる。気の弱い雪丘は殺す気は無かったのだが山本は死んでしまう。怒りに燃えた旭は『クラブ・パイオニア』のオープンを見届け、レーズンシャトーに殴りこみ内田たちを倒す。そして加藤に別れを告げ、再びネオンの草原へと旅立って行くのであった。
 映画の出来は平凡なもので大して面白くなかった。川地は腕だけではなくキンタマも潰されたの?女が抱けなくなったそうだ。それでも長谷川照子は川地の面倒を見るのだからイイ女だ。変わりに沢知美とレズるらしい(笑)。旭と山本陽子が夜の池袋でデートするシーンはあるが、裕次郎&ルリ子コンビのようなロマンチックな雰囲気は無い安っぽい感じ。場所が池袋だし崩壊が近い日活では仕方が無いか。出演は他に山本の祖母に浦辺粂子。加藤の娘に中山千夏@顔見世程度が出演。旭はワシントンの顔の入ったペンダントを持ってる。これが夜の開拓者ぶりを象徴していた。得意の?台詞が「独立独歩、人を頼らず。」オイラには耳の痛い台詞だ。顔なじみの歌手に青江三奈。随所に挿入歌『池袋の夜』を歌っていた。この作品は『女の警察』シリーズ1作目と2作目の間に公開された作品。夜の世界が舞台なのは同じだし、旭とホステスたちとのベッドシーンがあるのも同じ。違うのは長谷川と沢のレズシーンか!?(笑)。この映画の旭は必ずしも善玉ではない。暴力団の内田は勿論悪党だが、最初にホステス引き抜きをしてきたのは旭なのだから旭も充分ワルだよ。内田の悪党ぶりはいつもながら見事!小心な雪丘に旭の身辺を探らせる台詞がイイ。「人間誰しも弱みがある。君(雪丘)は女房子供が可愛いからこうして働いているのだろう。奴に子供がいるとは思えないが惚れた女でもいれば・・・」家族を狙うのはヤクザやストーカーの常套手段だがTVや映画ではリアル過ぎるためか、最近は描かれることは珍しくなった。流石は内田良平!青木義郎に続いてアニキと呼ばせてください!!(2002年6月13日記)