第6話
おたく野郎23・銭と女に弱い男
今回はまたまたお見合いネットで会った女性との苦い思い出を書きたい。相手の名前は・・・・そう・・・・ゆり子チャンとでもしておきましょう。ゆり子チャンは29歳。六本木にある外資系企業に勤めるOLさんだった。もちろん自己申告なのでどこまでホントかは知らない。しかし殆んど毎日メール交換をしていた。仕事の話し、毎週観ているというテレビドラマの話し、流行の映画の話しとか書いてやりとりしていた。文章から受ける印象はしっかりしたOLさんという感じだった。頻繁にやり取りしていたのだから、結構盛り上がっていたと思う。メール交換を始めて1ヶ月くらい経った頃、話題にも事欠いてきたし冗談交じりに「会いたいなぁ・・・」と書いたら、「私、あんまりカワイクないけど、それでも良いならOKです。」という返事が来た。おぉ・・・500人目にしてやっと会うところまでこぎつけたぜぃ!!
さてどこで待ち合わせをしようか・・・気の利いた所はないかな?毎度の事であるが、オイラはおたくだからモテナイ。従ってまともにデートをした経験もない。本屋でその手の本を物色してみる。『TOKYOウォーカー』だったかなぁ・・・新宿南口特集をやっていた。普段はこういうチャラケタ雑誌は縁がないので毛嫌いしていたが、背に腹はかえられない・・・・・立ち読みしてみた。ウ〜ム・・・・なるほど・・・・なかなかオシャレな店が多いみたいだ。ようし待ち合わせは南口にしよう。パークハイアットホテルのある新宿サザンタワーの入り口を待ち合わせ場所にした。
1998年11月8日(日)PM3時。オイラは子持ちの同僚ソリマチくんにコーディネートしてもらった『紳士服のア〇キ』で買った上着とズボンを華麗に?着こなして待ち合わせ場所に立っていた。いつものおたくファッションではないぞ!時計も学生時代に赤羽の大×本製本でバイトして買ったオメガ・スピードマスターをしていった。科学特捜隊のムラマツキャップやウルトラ警備隊のソガ隊員&キリヤマ隊長がしていたのと同型のやつ。少年時代にテレビで観て以来、欲しかった一品である。改まった席に出席する時しかしないので、購入して20年近く経っているにも係わらず文字盤に傷一つ無い。オーバーホール済みなので、精度もバッチリだ!約束の時間の20分前に到着。ひたすら待った。どんな人が来るのか、ちょっとドキドキ。テレクラのアポとった人の心境がわかるヨ。しかし本当に来てくれるかわからない。来たもののオイラを見てすっぽかすかもしれないし・・・まぁ良い。ブ男のオイラを見て、気に入らなかったら黙って帰ってくれ!オイラはゆり子チャンが来た時に品定めしやすいように目立つ場所に立った。
ご自慢のオメガの針が3時を指す頃、「GUTSさんですか?」という声がした。振り返ると30才くらいの女性がいた。おお・・・・メンコイじゃん!!永作博美似のカワイ子ちゃんだった。声をかけたという事は第1段階はクリアか!?とりあえず近くのオシャレな感じの喫茶店に入った。改めて挨拶をした。そして尋ねた。どうしてオイラとメール交換する気になったのか?「会員登録したら最初に来たのがGUTSさんからだったんです。書いてあることが面白かったからお返事しました。」ウ〜ム・・・面白かったかぁ。ま、500人も書いてれば多少は面白く書けるようにもなるゼ!!しかし会員登録をした途端、嵐のようにメールが来たそうだ。キリがないので100通くらい来たところで退会したらしい。中には「お前がどこの誰なのか知っているぞ。」と言うようなストーカーまがいのメールもあったそうだ。そんなメールを出して何が面白いんだろ?しかし最初の方に目立つ事を書いて出すのが返事をもらえるコツなのかもしれないな・・・・一つ勉強になった。少し話をして多少リラックスしたところで、とりあえず新宿高島屋をブラブラしようという事になった。二人でJRの上に掛かっている橋を渡っていると妙な気分になるネ。「これってデートみたいじゃん・・・・デートってこういうのを言うのかな?」こういうのワルクないねぇ。でもメール交換していたとはいえ実際に会ったのは今日が初めて、別に恋人という訳ではないのだからあまり期待しないようにしないとダメだ。オイラは基本的に風体が不気味だから、節度を持った付き合い方をしないとストーカー扱いされてしまう。オイラはどんなに落ちぶれても、ストーカーだけにはならない!と心に決めている。(しかし世間の女どもはそう思っていないようだ・・・・・悔しい。)東急ハンズを覗きながら上の階に昇った。新宿ジョイポリスがあるので中で遊ぼうという事になった。ジョイポリスといえばお台場が有名だが、新宿のはレーシングカーや潜水艦みたいなのに乗り込んでの体感ゲームが多い。ゲーセン大好きのオイラだが、こういうのは初めてだ。でもゆり子チャンみたいなカワイ子ちゃんと一緒だと楽しいね。楽しく時間を過ごす事が出来た。遊んだ後、ジョイポリスの上の階にあるレストラン街でご飯を食べた。食べたのはイタ飯だよ、イ・・・・タ・・・・飯!!いやいやウンマイね。柄にもなくワインなんか飲んじゃったヨ。でもデートのお金はオイラが持ったから結構散在しちゃった。
第1ラウンドはここまでかなぁ・・・・後は駅まで送ってバイバイが無難だろう。次のラウンドに繋げるためにも、ゆり子チャンが不安がらないように紳士的に振舞わないと。1Fに降りた時、ゆり子チャンが言った。
「夕べ、有楽町で会社の人と飲んだんです。その時、お店に携帯忘れちゃって・・・お店にTELしたら預かっているそうなんです。これから取りに行きたいのですが一人だと心細いからGUTSさんも一緒に来てください。」
オイラはもっちのロンでOKした。『東京騎士隊(ナイト)』か『ボディガード牙』みたいジャン。心の中で細い腕を上げてマッスルポーズしました。
アナ
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「第1ラウンドから意外な展開ですね。浜田さん。」
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浜田
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「そうですねぇ。ここまで見る限り悪い女性ではなさそうだから、変なお店に連れて行かれる心配はないでしょう。一緒に来てくれと言うくらいだから、ある程度信用されたという事かもしれません。GUTS選手、良いですよ。ポイント取りましたよ。ここは大振りせずに小さくまとめて打って行く事が大事です。」
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新宿から地下鉄丸の内線に乗った。日曜日の夜だからか、車内はそれほど混んでいなかった。2人で並んで座って話しをした。「私、結構性格キツイんです。嫌いな人だと顔に出ちゃうんです。」ゆり子チャンが言った。そういう女には今まで何度も不快な思いをさせられて来た。その度に「オイラが何をした?何にもしてないだろが!そんなにオイラが不気味か?気持ち悪いか!」何度も心の中で問うたよ。オイラは努めてそんな思いを顔に出さないようにして「フ〜ン、そんな風には見えないけどね。」と適当に相槌を打ってお茶を濁した。何だか嫌な予感が走った。地下鉄は日比谷駅に到着した。ここからなら歩いて行ける。ゆり子チャンが携帯を忘れたという店はソニービルの近くの居酒屋さんだった。
事に携帯を受け取ったゆり子チャン。今度こそここでバイバイかな?
「せっかくここまで来たから、お茶飲みません?」
ゆり子チャンが言った。近くの喫茶店でコーヒーを飲んだ。ケーキ屋も兼ねている店らしく、ショーウィンドウにケーキが陳列してある。で、甘いものの話しになった。ゆり子チャンはあまり甘いものは好きではないそうだ。世間では女は甘いものが好きと言われているようだが、必ずしもそうではないみたいだ。そういえば以前、勤めていた会社の女の子もあまりケーキの類は食べないなんて言っていたな。
「・・・普段はあんまり(ケーキは)食べないんですけど、食べちゃおうかな。」
早速オイラはケーキを注文、二人で食べたよ。今日は楽しかった。イタ飯だけでなくケーキまで女の子と食べられた。こんな事はもう2度とないかもネ。
茶店を出て2人で地下鉄の日比谷駅へ歩いた。時間は22時近い。ゆり子チャンは板橋の方に住んでいるそうだ、都営三田線で帰ると言った。日比谷駅で別れるとき、オイラは「またメールします。良かったらまた会ってください。」と言った。まだ警戒しているかもしれないので、あえて電話番号も訊かなかった。
帰って来て風呂に入り、午前1時。ネット依存症のオイラはネットに接続した。明日は仕事なので、ちょっとだけやって寝よう。メールが来ていた。さっき別れたばかりのゆり子チャンからだった。
「今日はご馳走様でした。ありがとうございました。オヤスミナサイ。」
わざわざメールをくれるなんて・・・・やったぜベイビー!!(いつのギャグだよ?)。その夜は興奮してなかなか寝付けなかった。寝たり起きたりを繰り返して朝を迎えた。翌日は眠かった。仕事は辛かったけど、昨日ゆり子チャンと過ごした事を考えるとウキウキして疲れも苦にならなかった。夜、仕事は無事に終わり帰宅してオイラはパソコンの電源を入れた。ゆり子チャンにメールも書かないとなぁ・・・その前に一応メールのチェックだ。おっ!メールが来ている。ゆり子チャンからだった。
「日曜日はありがとうございました。私はGUTSさんと話していてもあまり自分の事は喋りませんでした。どう思いました?・・・・・私には2ヶ月前まで彼がいました。でも別れたんです。振られたのです。ずっと泣いてばかりいました・・・・・GUTSさんは本当に良い方ですね。でも良い方であればあるほど、私にとっては治りかかった傷が広がるような気がしました。もう会えません。退屈なときにメールだけ、と思われるのでしたらまたメールください。」
な・・・な・・・な・・・な・・・な・・・なんじゃコラァ〜!!!!!舐めてんな・・・この女。要するに、「会う気はないけど、メールくらいならしても良いのよ。」って事かい!!何様のつもりだよ。「良い人」これは男を振る常套句だよな。どうでも良い人ってことでしょ。このメール、結構長いものだった。読み進めていくとこんな事が書いてあった。「・・・・高校時代の友達にGUTSさんの事を話しました。彼女は私の前の彼氏の事も知っています。彼女は「やっぱりダメだったんだ。(前の・・・)彼の事はそう簡単には忘れられないよね。」と言っていました。」何が「やっぱりダメ」だよ。ゴメンナサイしてきたのはお前の方じゃねぇか。悲劇のヒロイン気取りも良い加減にしろよ。それにオイラはあんたの彼氏の事なんか知らないよ。そんな話しされたって仕様がないよ。しかし何となくこうなる事は予想していた。確かに話しをしていてもゆり子チャンはあまり自分の情報を喋ってはくれなかった。「やっぱり・・・」なんて言うけどさ、会った時点でオイラに幻滅してゴメンナサイする事を考えていたのだろう。彼氏にフラレタなんてホントにフラレタのかよ。案外自分からゴメンナサイしたんじゃないの?それをフラレタなんて言ってヒロイン気取っているのではないのか?もっと意地の悪い見方をすれば、実は現在もその彼氏と付き合っていて、オイラの方が良ければ乗り換えちゃおうなんて考えていたのかもしれない。オイラはメールで嘘は書かなかったけど、読みやすくレスが書きやすいように工夫して書いていた。もしかしたらメールから来るオイラのイメージはちょっとイカス男だったのかもしれない。ところが実物のオイラは筋金入りのブ男のオタク野郎。幻滅したんだろネ。「やっぱり彼の方が良いや。」と思い直したのかもしれない。彼氏って、どんな男なんだろ?大きな会社にでも勤めているヤンエグ(死語!)なのかな?でもって二枚目で・・・・でも優しくないのかな?だからお見合いネットなんかに登録したのかなぁ??でなければセックスが下手だとか?(それだったらテレクラかQ2に行け!!)
しかしまぁ・・・・・・ブ男でゴメンネ。
もし彼氏と付き合っているのなら変な浮気心は起こさないで上手くやりなよ。
お幸せに!!
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