あんた男だよ

 

今月NECOで放送『飢える魂』、『続飢える魂』を観た。川島雄三監督作品というよりも小林旭デビュー作と言う方が有名な作品。内容は青年実業家の三橋達也と、20歳以上歳の離れた成金土建屋と結婚した南田洋子とのメロドラマ。今なら不倫モノで濃厚な愛欲シーンで売るところだろうが、この頃のこの作品、このメンバーでは無理と言うもの。川島作品と言えば、『洲崎パラダイス赤信号』や『幕末太陽伝』のような傑作があるが、これはダラダラと頂けないメロドラマだった。
 南田のメソメソした姿と夫役の小杉勇の俗物ぶりばかりが目に付いた。この作品に出る女性は総じていただけない。いくら美人でもこんなのでは普通の男では引いてしまうだろう。亡き夫の友人で病床の妻を持つ大坂志郎と不倫する轟夕起子は勿論、ラストで三橋達也とガス心中で死んでしまうホステス渡辺美佐子。な〜んか魅力がなかった。小林旭も轟夕起子の息子役なのだが、たいした出番もない(デビューだから仕方ない)。
 この作品は30年位前に千葉テレビで前篇だけ観た記憶がある。後篇は放送しなかったと思う(したのかな?)。少なくとも観た記憶がない。おかげで30年ぶりに話が繋がったよ(笑)。いやもう前篇の記憶もなかったので、ほとんど初見に近かった。これはラジオドラマ化されていたらしく北は北海道から南は九州までラジオ局が協賛していたようだ。そのせいか地方ロケが多かった。この時代は街並みが現在とほとんど違うので異国の街に見える。高いビルが少ないので空が広く見える。首都高速も東京タワーもない。麹町にあった日本テレビのテレビ塔が登場するのは貴重な資料映像だろう。

 南田洋子はこの作品のときは23歳。今さらながら美人! 長門裕之が惚れたのも分かる。しかしネットで検索すると現在は認知症らしい。あんな美人が・・・そういや数年前に『おすぎのシネバラ』に夫婦で出演した際も、喋るのは長門裕之ばかりで南田洋子はほとんど喋らなかった。既に兆候はあったのかな? 南田洋子は沢村国太郎の介護を20年近くしていたそうだ。今度は自分が介護されているのか。運命とはいえ悲しい。豪邸を引き払い老夫婦が暮らしやすいマンションに引越し。長門裕之が甲斐甲斐しく面倒を見ているらしい。スゴイよ長門さん。あんた男だね。

 あーしかし二人が共演した『太陽の季節』とか観ると若くて輝いている。古河卓巳監督作品って好きなんだよな。『海は狂ってる』で川地民夫が夢中になるホステスなんかハマリ役だった。舛田利雄監督の『やくざの詩』でもホステス役。これも良かった。和田浩治が慕っていた年上のオトナの女役が本当に良かった。若い頃は妖艶だったもんなぁ。オイラも一時期憧れていました(オイオイ)。

そんな人でも認知症になってしまうのか。オイラの場合は一人ぼっちの地球人。面倒を見てくれる人はいない。気をつけなければ。