訃報 南田洋子さん

 

 

女優の・・・いや日活女優の南田洋子さんが亡くなられました。

 最近は認知症でその様子がTVで放映されたりしていた。華やかなりし頃を知るファンには悲しい現実だ。大映の性典女優だったけど、やっぱりこの人は日活映画だ。『太陽の季節』 も良いけれど、印象に残るのは『海は狂ってる』(59年) と『やくざの詩』(60年) 

 『海は・・・』 の役はホステス。それも金を払えば一晩相手をしてくれる。自分のヨットを買おうと貯金をしている川地民夫。職場の同僚に連れられて行った店で南田と知りあう。相手をしてもらうのだが、おそらく童貞という設定の川地は今までされた事がないくらい優しくされたのだろう。すっかり夢中になってしまう。職場の連中は皆南田に相手をしてもらった経験があるらしく西村晃が「情があって良い子なんだよな」 。この情がある女性役というのはこの人のはまり役の一つだった。

 『やくざの詩』 では死んだ恋人の弟・和田浩治の面倒を見ながらクラブ歌手をしている。ピアニストとしてやってきた小林旭が陰気な主題歌(笑) を弾き語りしていると、「良い歌ね。あんたどこから来たの? 」 と優しく声をかけてくれる。おまけに右腕のない密売人の垂水悟郎とセックスまでしてしまうのだ。垂水は障害者であることから偏屈な性格。普通なら女性に相手などされないはず。しかしそんな男にも南田は優しかった。

 悪女役もやったけど、オイラにとってはこの二本で演じた天使のような女性役が心に残る。昨夜の会見で長門氏は、もうダメかもしれないという覚悟を決めていたのだろう。
「植物状態化しているので、洋子が死ぬことを見守っている状態です」

 オイラも親父を亡くした時がそうだった。深夜、病院に集まった親戚たちは親父が死ぬのを待っている。死に目を見たらさっさと家に帰ろう。連中の頭の中はそうなっていたはずだ。死ぬのを待っている時間ってのは辛かったな。思い出しちゃったよ。

オイラも南田洋子さん、好きでした。ご冥福をお祈りします。