ハイテーィンやくざ(62年白黒、脚本・吉村望、奥園守 監督・鈴木清順)
 舞台は東京郊外。ここはたくさんの団地が建ち始め、道路には工事用のダンプカーが走り回り街は発展しようとしている。川地民夫と杉山俊夫は大学受験を控えた高校生だが、勉強よりもアルバイトの方が忙しい。発展する街にある日、暴力団が事務所を開き地元の商店街を圧迫、街を制圧する。川地と杉山は組のチンピラと乱闘、杉山が刺されて重傷を負う。急を聞いて駆けつけようとした杉山の父親・山田禅二は工事のダンプに轢かれて死んでしまう。杉山の家は土建屋だったが、父親の死で倒産。杉山の妹・松尾嘉代は商店街の食料品店に就職する。杉山はグレてしまい、暴力団の組員になる。川地は商店街の店主たちに請われて街の用心棒になるのだが、恐喝の濡れ衣を着せられて警察に逮捕されてしまう。やがて釈放されるのだが、街は暴力団の手中にあり、街の人々も川地に冷たい。川地の母親・初井言栄と姉・松本典子は喫茶店を営んでいたが、暴力団に睨まれては商売が出来ず、松本の婚約者・木浦祐三の田舎に引っ越してしまう。川地は商店街で唯一の理解者、ラーメン屋店主の佐野浅夫の協力を得て組員となった杉山を更生させる。杉山の証言で暴力団の内幕が暴かれ、組は街から出て行くのであった。
 佐野の娘に田代みどり、電気屋に柳瀬志郎、組の幹部に上ノ山功一、刑事に高品格、警官に榎木兵衛が出ていた。団地が建ち、街の風景が変わり始める60年代を象徴するロケーションは今観ると、非常に興味深い。テンポも速いし分かりやすく面白いのだが、普通の高校生の川地民夫が商店街の用心棒とは、和田浩治じゃあるまいしチョット無理ありすぎ・・・・やたらとケンカが強いのもおかしい。余談だがクライマックスで川地と杉山は段々畑で派手に殴りあうのだが、ちゃんと許可取ってやったのかな?
(2001年4月9日記)

        爆破3秒前(67年 脚本・永原秀一、監督・井田探、主演・小林旭)
 大藪春彦原作『破壊指令No.1』を映画化。戦時中に日本軍が某国から略奪した宝石を巡って、巨大企業と内閣調査室破壊工作員の小林旭との争奪戦を描いた作品。旭の007もどきの活躍は見ごたえがあるが、原作と違って主人公の暗い部分が描かれていないのが残念。企業の用心棒で旭のかつての同僚に高橋英樹、そのボスに神田隆が扮した。日活アクションの定石通り、最初敵対していた英樹はラストには旭に協力することになる。英樹のキャラは原作にはないもので、内容も原作と違う。
(2000年10月21日記)

        花咲く乙女たち(65年94分 脚本・堀内信男、鈴木通平 監督・柳瀬観)
 チンピラの昌次(山内賢)とその弟分・サブ(堺正章)は組長の松井(金子信雄)の命令で愛知県尾西市へやって来る。目的はスケコマシ(笑)。織りの街・尾西の工場の若い女工たちをスカウトして金子の経営する風俗店に売り飛ばすのだ。尾西には先発隊として幹部の川本(小池朝雄)がキャバレーを出していたのだが、街は健全でキャバレーでは商売が成り立たず倒産、小池は堅気になって女工をしていた上月佐知子と結婚、二人で地道にお汁粉屋をやっていたのだ。二人は女工の一人・さつき(西尾三枝子)と知り合う。西尾は定時制高校に通っていて同級生には製菓工場に勤める太一(舟木一夫)がいた。山内がやくざという事で反発する西尾と舟木だが、山内がワルではない事から仲良くなる。そんな時に西尾の父親が尾西にやってくる。仕事で父の相手が出来ない西尾に変わって山内が街を案内してやる。西尾の父は胃ガンであった。治療費がないため手術を諦めて西尾に(これが最後であろう)会いにきたのだった。父が胃ガンだと知った西尾は治療費を作るため山内に水商売の口利きを頼む。西尾に惚れた山内は悩む。山内は金子に詫びを入れ、西尾の話しは無かったものとしてもらう。その代償として指を詰める。治療費は舟木が女工の仲間や地元の人たちにカンパしてもらい10万円集め、その金で手術を受ける。手術は成功するのであった。ラストは指を詰めた事で堅気となった山内は舟木や西尾、小池、工場の女工たちに見送られて尾西の街を去って行く。
 尾西の街とタイアップした作品らしく女工さんたちが働く姿が結構出てくる。高度成長期らしくこの頃はこういう働く若者たちを取り上げた作品って結構多い。西尾の仲間の女工には田代みどり、浜川智子、岡田可愛の姿が見える。堺正章は田代みどりとイイ仲になり、地元の有力者?菅井一郎の世話で堅気となる。この映画はカワサキともタイアップだったらしくオープニングとエンディングで山内が当時発売していた小型二輪85J1に乗っていた。しかし疑問なのは山内は街を出て何処へ行くのか?惚れた西尾のために指まで詰めて西尾の前から去って行くのは映画だからカッコイイが現実にこれやってもなぁ。自分を見つめなおす等と抽象的な事を言って出て行くのだがどうするんだよ?(2002年5月8日記)

        花と果実(67年 脚本・三木克巳 監督・森永健次郎)
 石坂洋次郎原作の同名小説を映画化。女子大生・村上のぶ子(和泉雅子)とクラスメートで医者の息子・中畑五郎(杉良太郎)のお気楽な日常を描いた青春映画。和泉の親戚の娘・夫佐子(山本陽子)、その弟・英吉(松山省二)、杉の父親・勘三(大坂志郎)、和泉の兄・順一(藤竜也)、父・兵三(有島一郎)、母・富子(奈良岡朋子)が扮した。ストーリーは病弱な奈良岡が亡くなる直前に和泉は奈良岡から実は有島の実の娘ではなかった事を告白されたり、地味だった山本に体育会系のサラリーマンの恋人・黒木佑が出来た途端に活発な娘に変貌したりというエピソードが平凡だが堅実なタッチで描かれる。ある日、杉は街でファッションデザイナーをしている美しい人妻・田川光子(小山明子)に逆ナンパされホテルへ行くが、ビビって逃げ出してしまう。自己嫌悪に陥る杉を和泉は「モヤモヤを吹き飛ばせ!」と自ら裸になり海へ飛び込む所でエンド。映画の出来は前述した通り平凡なものだが、 和泉を含めて出演者全員が自分の役を手慣れた感じで演じているので面白く観られる。しかし杉の演技はわざとらしい感じ、この人の大学生役は観ていて変だ。
 ちなみに原作では杉と小山はベッドインするが杉は緊張のあまり不能になってしまい、和泉がセックスして治してやるという石坂作品にしてはショッキング? なものであった。ファッションショーのモデル役で山本リンダがチラッと出ていた。
(2001年8月14日記)

        花の運河(56年86分白黒 脚本・堀田吾郎 監督・斎藤武市)
 森暎子(高田敏江)は父親が戦死、母親も9年前に亡くなった。元々は金持ちの令嬢だったようだが現在は父の部下だった?木原家の世話になっている。木原家の息子で欧亜貿易社員・洋平(葉山良二)とは相思相愛なのだが葉山の母・のぶ(高野由美)は片桐建設令嬢・千恵子(小園容子)との結婚を望んでいる。葉山は香港へ3週間の出張へ出る。高野と羽田空港へ見送りに行った高田だが帰り道、乗り合わせた都電の車内でスリ事件が発生。マジック芳(佐野浅夫)、ペテ公(近藤宏)、チャボ金(土方弘)、見張り役?の金井健一(大坂志郎)の仕業。被害者・吉住久三(二本柳寛)が気が付いて騒ぎになる。とっさに大坂は二本柳の財布を高田のバッグに入れる。スリの濡れ衣を着せられ警察の取り調べを受ける高田。高田を追い出して葉山との仲を断ちたい高野は刑事・大野(天草四郎)に「(高田は)女中。」と言って高田を絶望させる。そしてこの件を口実に高田を追い出してしまう。天草の調べで疑いは晴れたものの行き場の無い高田はかつて高田の家で女中をしていた金井きん(飯田蝶子)を尋ねる。現在の飯田は駄菓子屋を営んでおり高田の両親に恩義を感じて高田に同情。高田は飯田の家に厄介になる。大坂は飯田の息子だった。飯田と高田には保険会社に勤めていると語っていたが失業してスリの仲間に加わっていた。高田は大坂と仲良くなる。高田に惹かれだした大坂はスリの仲間を抜けようとするが佐野たちは許さない。そんな時に葉山が香港から帰ってくる。葉山は新聞に尋ね人の広告を出す。広告を見た高田は葉山の会社に電話をかけるが偶然出たのが小園。小園は電話をかけてきたのが高田と知り葉山には取りつがないで切ってしまう。高田は職探しを始める。街を歩く高田は車に乗っている葉山と小園の姿を見て絶望してしまう。高田は新宿のキャバレーの女給の仕事を見つける。出張ホステスで派遣されたのが屋外で行われた片桐建設創立10周年パーティ。高田はここで葉山の姿を見る。声をかける前に高野と再会してしまう。高野は「街で会っても声はかけないように。」と高田に念を押す。高田の居所を知った葉山が飯田の駄菓子屋にやって来る。飯田と駄菓子屋を手伝い大坂と仲の良い姿を見てショックを受ける。黙って去っていく葉山。数日後、高田は山下公園で天草、二本柳と再会する。二本柳は箱根でゴルフ場・箱根カントリークラブを経営していた。二本柳は男やもめで死別した妻との間に幼い娘・由美(高木恵美子)がいた。高木は面倒を見てくれる高田になつく。新聞に葉山が片桐建設令嬢の小園と結婚した記事が掲載される。ショックを受ける高田を慰める二本柳は高田にプロポーズする。そんな時に葉山が客としてやって来る。葉山は結婚しても高田への思いは忘れていなかった。高田の写真をこっそり持ち歩いていた。小園は葉山の気持ちが自分に無い事も知っていた。夫婦仲は良くない。夜、ゴルフクラブの庭で再会する高田と葉山。そこへ小園が乱入。高田を「スリ女!」と罵りクラブに高田がスリという噂が流れる。客商売のため仕方なく二本柳は高田に辞めてもらう。高田は飯田の家に戻って来る。内心喜ぶ飯田と大坂だが高田は疲れからか高熱で倒れてしまう。飯田と大坂は献身的に看病する。そんな時、佐野は天草に逮捕される。近藤&土方は佐野の郷里の徳島に流れる。仲間を抜けたい大坂だが近藤&土方にスリをしている事を飯田や高田にバラすと脅され仕方なく付いて行く。高田は街で偶然、小園と会う。小園は改心して高田に詫びる。葉山は小園と別居していた。離婚するつもりだから高田に葉山と結婚して欲しいと言う。葉山は飯田の家に来ていた。今までの事を水に流してやり直したいと語る葉山。小園が妊娠している事を知った高田は葉山に「人間の幸福は人から与えられるものではなく自分で築き上げるもの。千代子(小園)さんを幸せにして欲しい。」。去って行く葉山。高田は飯田に「いつまでもここに置いて欲しい。」と大坂との結婚を決意する。徳島まで来たものの高田への思いから堅気になる覚悟の大坂はスリの手伝いを拒んだため近藤&土方にリンチを受けスリの罪を着せられ警察に捕まる。報せを聞いた高田は徳島にやって来る。大坂は高田に手紙を書き今までの事を全て吐露する。最初に高田にスリの罪を着せたのは自分だと書く。高田は大坂の面会に行く。「憎んだり恨んだりしていません。いつまでも待っています。」と高田。偶然、亡くなった奥さんの墓参りで徳島に来ていた天草は徳島に留まる決意の高田に仕事を世話。祭りに沸く徳島の街を歩く高田と天草。そこへ近藤&土方が高田の財布をスリ取る。気が付いた天草が追跡。二人を逮捕する。近藤&土方が捕まったためか?大坂はスリの仲間とはいえ実行犯ではなかったため判決は執行猶予が付く。釈放される大坂を高田と飯田が出迎える。葉山が大坂の仕事を世話、片桐建設に入社させてくれる事も決まり明るい未来を暗示してエンド。
 メロドラマとしてソツの無い出来だが特に印象に残る作品ではない。徳島での祭りのシーンはタイアップらしくお馴染みの泡踊りのシーンが流れる。オイラの世代では高田敏江というとTVドラマ『ケンちゃんシリーズ』初期のお母さん役でお馴染みの人だが、娘時代にはこういう主演作品があったのね。
(2003年9月4日記)

        花のゆくえ(55年99分白黒 脚本・成沢昌茂 監督・森永健次郎)
 水島信子(新珠三千代@日活入社第1回作品)は会社社長をしている父・鐘太(小川虎之助)の出張の見送りで上野に来る。上野動物園で高校時代の級友・橋本和枝(津島恵子)と再会する。津島は会社の課長・白浜孝(芦田伸介)の息子・達夫(高鍋光治)の子守りをしていた。久々の再会で新珠と話し込む津川。ちょっと目を離した隙に高鍋がいなくなってしまう。あわてて探すが見つからない。芦田に連絡をすると心当たりがあるようだ。高鍋を連れて行ったのは離婚した妻・多美(坪内美子)だった。坪内は銀座のスナックのママをしていた。店に行ってみると高鍋がいた。坪内から津島との関係を問い詰められる。高鍋は眠っていたのでその夜は高鍋は坪内の所に預け酔って帰宅。心配した津島が待っていた。芦田は津島にプロポーズ、酔った勢いで迫るのだが拒否される。外に逃げ出した津島は足をくじいてしまったところを小川に救われる。会社を辞めた津島は小川の家に厄介になる。新珠は小川の秘書をしている山岡昭二(若原雅夫)が好きだった。若原は勝気なお嬢様の新珠が苦手、清楚な美人の津島に惹かれていく。芦田は坪内とよりを戻す。土曜日、新珠は若原をピアノ独奏会に誘う。しかし若原は約束をすっぽかし津島を誘いプロポーズする。新珠の母・さかえ(沢村貞子)に嫌味を言われ津島は新珠の家を出る。部屋を借りるのだが津島の美貌に目をつけた大家夫婦は悪党で渋谷の風俗に津島を売ろうとする。津島は職安で仕事を探す。珠算1級の特技を持つ津島は住み込みで東両国にあるそろばん塾の先生の仕事を見つけてくる。塾に美人先生が来た、ということで地元商店街の連中が生徒としてやって来る。洋品店・正札堂(多々良純)や八百屋の横山史郎(伊藤雄之助)などは熱心な生徒。偶然にも高校時代の同級生・細川すみ子“通称・エレちゃん(太っているからエレファントのエレが語源)”(矢吹寿子)は伊藤の婚約者だった。若原にフラれた新珠は親会社・河原産業御曹司・河原雄二(金子信雄)とお見合い、結婚する。ある日、津島は矢吹と買い物に。偶然、若原と再会する。新珠との事もあり、若原は秘書を辞めて営業の外回りをしていた。若原から新珠が結婚した事を聞く津島。夜、若原が津島を訪ねてくる。そこへ酔った商店街の連中がやって来る。津島を囲んで飲もうというのだ。困った津島は追い返そうとするが多々良たちは帰らない。若原と小競り合いとなってしまい津島は塾を辞めてしまう。津島は高校時代の同級生・浜村きぬ子(広岡三栄子)を頼って犬吠崎へ行く。広岡は浜村謙造(殿山泰司)が経営する旅館の女将をしていた。津島はここで殿山の従兄弟で燈台守をしている浩(岡田英次)と知り合う。岡田は無骨だが良い男で二人は恋仲になる。岡田は津島にプロポーズ。不幸続きの津島だったがようやく幸せが訪れようとしていた。その頃、新珠は不幸の影が忍び寄っていた。結婚当初は優しかった金子だったが実は新珠にあまり愛情が無く女中・のぶと浮気していた。小川の具合も悪く見舞いから帰ってくると金子はのぶとセックスをしていた。バレても平気な金子。小川の会社が脱税で摘発され心労の小川は亡くなってしまう。岡田と結婚生活を夢見る津島だがある晩、酔った岡田が訪ねてきて結婚は無かったことにして欲しいと言って来る。岡田は肺病にかかっていた。医者から結婚は諦めるように宣告されたらしい。岡田は療養所に入る事になる。駅で別れる二人。新珠が訪ねてくる。矢吹から津島が犬吠崎にいる事を聞いてやって来たのだった。金子と離婚した、父の会社も無くなった、とサバサバした調子で語る新珠。新珠は岡田の勤めていた灯台を見て津島に「船が灯台の光を港にたどり着くようにあなたは光を見つけたの。だからどんな事があっても港にたどり着かなくてはダメ。」。頷く津島。岡田を待つ事を暗示してエンド。
 阿木翁助原作の連続ラジオドラマを映画化。このドラマは森永製菓提供でラジオ東京他、全国21局で放送された帯ドラマらしく目まぐるしい展開。美しすぎる津島はどこへ行っても周囲の男から求愛される。その度に居づらくなって出て行かなくてはならない、というパターンの繰り返しは見ていて何だかなぁ。そんな作品なので出来の方は可もなく不可もなく。特に記憶に残る作品ではない。美人というのは大変だね。
(2003年8月10日記)

        遥かなる国の歌(62年83分 脚本・若尾徳平、池田一朗 監督・野村孝)
 香港からの船で神戸に密入国したトミー福田(山内賢)、山内はフィリピン人の父と日本人の母を持つ混血児だった。父が死に終戦のどさくさで生き別れになった母親を探しに来たのだ。神戸に上陸した夜、波止場で独りでトランペットを吹いている山川潤(小林旭)と出会う。旭は山内に「いつか自分のバンドを持ったら訪ねてきな。バンドボーイに使ってやるぜ。」と約束する。山内は密入国の世話をしてくれた陳(森塚敏)の口利きで高林(深江章喜)が経営するクラブでボーイとして働き始める。しかしここはクラブを隠れ蓑にした麻薬組織の売買場であった。山内が密入国出来たのも知らないうちに運び屋として使われたためだった。この事を知った山内は深江たちの追跡を逃れてクラブを逃げ出す。旭は仲間の小高雄二、沢本忠雄、武藤章生たちと楽団マッハを結成して活動を始めたものの、他のバンドリーダー・飯田(柳瀬志郎)と乱闘、せっかく契約した仕事をフイにしてしまう。旭たちの演奏を聞いた雑誌記者・須貝京子(笹森礼子)は旭たちをスカウト。東京の芸能プロダクション社長・山野(宮城千賀子)に紹介、宮城のプロダクションの専属バンドとして活動を始める。人気バンドとなった楽団マッハだがギャラが一向に上がらないのに怒った旭は宮城のプロを飛び出し独立する。しかしフリーのバンドでは仕事がない。笹森が世話した仕事も酔客と喧嘩してまたフイにしてしまう。そんな時に深江の組織を逃げ出した山内がバンドボーイに使ってくれと訪ねて来る。余裕のない旭は最初は断るが小高の取り成しでメンバーに加入する。ある日、山内が何気なく歌を口ずさむ。山内には歌の才能があった。生き別れになった母親を探しに日本に来た事を知った旭はこの事を笹森の雑誌に載せ、山内をボーカルに口ずさんでいたフィリピンの歌『ダヒルサヨ』でバンドの売り込みをかける。売り込みは成功しまた人気バンドとなったマッハだが、バンドの人気先行で山内の母親探しに協力しない旭に不信感を抱いた山内はバンドを飛び出してしまう。反省した旭は山内の母親探しを始める。笹森の調査で終戦後、帰国して都内にいる事がわかる。山内の話では額にホクロがあるらしい。しかし笹森の雑誌で取り上げられても見つからないことから整形してホクロを除去したと考えた旭は都内の整形外科病院を片っ端から周り行方を追う。山内の母親は笹森の雑誌社の社長・徳久英之進(下條正巳)の妻・夏江(奈良岡朋子)であった。旭のバンドを飛び出した山内は深江の組織に追われていたが、マッハの連中に助けられる。親子の名乗りをした奈良岡と山内。下条も山内を認め、一緒に暮らす事になる。ラストはバンドのリサイタルシーン。旭と山内が『ダヒルサヨ』を歌ってエンド。
 山内の母親が奈良岡だったとは何ともご都合主義的な感じがするし笹森の出番も少ない。音楽界の話なのに旭の歌のシーンが少ないのも不満だが、バンドの出世話に巧く絡めた展開は結構面白い。
(2002年1月22日記)

        反逆(67年93分 脚本・星川星司・松尾昭典 監督・松尾昭典)
 経済学部の大学生・深沢礼治(渡哲也)は15年前に自殺した父親の友人で実業家の時岡(曽我廼家明蝶)の援助でスナックを経営している。夢はアフリカに行く事。渡の兄・敬太(高橋昌也)は曽我廼家明蝶の下で働いていた。ある雨の夜、閉店後のスナックにびしょ濡れの女・牧村亜佐子(三田佳子)が入って来る。熱がありフラフラしている三田を介抱してやるが翌朝、店を出て行く。曽我廼家明蝶は興信所やビルやナイトクラブ等を手広く経営していた。渡は曽我廼家明蝶の部下でスナックの常連でもある小磯(佐野浅夫)の頼みで曽我廼家明蝶の経営するナイトクラブのバンドの助っ人として得意のトランペットを吹く。三田は曽我廼家明蝶の愛人でこのクラブで歌手兼ホステスとして働いていた。再会する渡と三田。三田は歌手を目指して上京したものの曽我廼家明蝶の世話になっている自分に嫌気がさしていた。お互いに惹かれだす二人。三田はクラブを飛び出し渡のスナックを手伝いだす。曽我廼家明蝶は高橋に命じて三田を連れ戻そうとするが二人の絆は固い。曽我廼家明蝶は実は企業の乗っ取り屋であった。高橋は渡を曽我廼家明蝶から遠ざけるために、その手先として汚い仕事に手を染めていた。15年前、曽我廼家明蝶は仲間の浜田(日野道夫)、渡の父親と組んで朝鮮戦争の物資の横流しをして現在の事業の土台を作ったのだが、仲間割れをして渡の父親を若い女と心中に見せかけて殺したのだった。この事を知った高橋は真相を書いた手紙を三田に託し曽我廼家明蝶に迫るが殺されてしまう。三田からの手紙を読んだ渡は日野を自白させ埋められた高橋の死体を発見する。怒りに燃えた渡は曽我廼家明蝶を倒すのであった。
 高橋と渡の兄弟愛は主役こそ弟・渡だが『俺たちの血が許さない』っぽい。渡がスナックを経営、三田との出会いは日活アクション初期の傑作『俺は待ってるぜ』そっくり。(思えば松尾昭典は『俺は・・・』の助監督をしていた。)渡が海外に行きたい夢を持っているという点も『俺は・・・』と同じ。しかしそのどれもが中途半端で平凡なアクションもので終わってしまった。渡の同級生の一人に林田珠枝(浜川智子)が出ていてセックスにオープンな女子大生役だったのは記憶に残る。同級生の男(おそらく童貞!)と愛情抜きでやらせてくれるシーンがあった。浜川智子はそういう役が多い気がするナァ。オイラもやらせてくれ!それからヒロインがこの作品だけ三田佳子なのはどうしてだろ?
(2002年9月17日記)