大当たり百発百中(61年白黒、脚本・山内亮一・藤善平、監督・春原政久)
 レコード会社の文芸部員・及川太郎(小沢)の特技は競馬予想。彼の予想は百発百中なのだが、 決して馬券を買おうとはしない。買うと欲に目がくらみ予想できなくなるからだ。いつものように会社に行くと上司の川原部長(由利徹)の指示で新曲の作詞をすることになる。ある日、小沢の競馬予想が書いてある手帳を新妻の美知子(松原智恵子)に見つかってしまう。馬の名前を芸者の名前と勘違いした松原は母・竹子(武智豊子)、父・杉之助(ジョージ・ルイカー)に泣きつく。武智とルイカーに責められる小沢、疑いは晴れるが小沢に競馬予想の特技があることを知った武智とルイカーは「馬券を買えばもっといい暮らしができるだろう。」と更に小沢を責める。怒って家出する小沢。小沢は偶然立ち寄った『バー・ドドンパ』で競馬予想をしていると愚連隊・白井組組長(加藤武)に拉致されてしまう。加藤は小沢に予想させて大儲けを企んだのだ。何度か脱走を試みる小沢だが失敗、加藤の情婦・マユミ(千代侑子)の色仕掛けに気を良くした小沢は競馬予想をして加藤を儲けさせるが、最後の第十レースで予想が外れてしまう。怒る加藤、しかしレースは1着の馬が進路妨害をして着順変更となり小沢の予想が的中する。しかし外れたと早合点した子分の池田(高原駿雄)が馬券を捨ててしまい大損してしまう。自分を信じなかった加藤たちを叱責、加藤やその子分たちの頭を叩く小沢。そこへ何故か松原と由利が現れ、小沢を疑った自分たちも叩いてくれと言う。大好きな松原を叩けない小沢は代わりに加藤たちをまた叩く。すると由利に指示されていた新曲の歌詞が頭に浮かぶのであった、メデタシメデタシ。
 この映画は66分の添え物作品だが、小沢にとって好きな作品なのだそうだ。小沢に言わせるとバカバカしいところが良いらしい。実際、映画の出来はクダラナイというかアホらしいのだが小沢と加藤たちの追いかけっこはドタバタ調で面白い。しかし小沢の妻が当時、新人で16歳の松原智恵子だったり、松原の母が武智豊子、父がジョージ・ルイカーとは乱暴なキャスティング。歌手・田代みどりが顔見せ程度に出演、他には加藤の子分に野呂圭介が出ていた。この映画、最初は松原に歌を歌わせたりとミュージカル調なのだが、途中からその辺はどうでも良くなったのか歌が出なくなる。ラストで小沢の作詞した歌詞も♪夢よ希望よ、ウッフンバ!♪という訳の判らないもの。小沢はこの映画のラストシーンは裕次郎や旭のようにカッコ良く唄を唄って終わりたいと春原監督に注文を出したのだそうだ。実際の映画のラストは確かに唄って終わるのだが、浴衣を着て桜並木の道を松原と手を繋いでスキップしながら♪夢よ希望よ、ウッフンバ!♪と唄うというちっともカッコ良くないエンディングであった。
(2001年7月29日記)

          お月様には悪いけど(54年67分白黒 脚本・柳沢類寿 監督・堀池清)
 鶴田亀造(十朱久雄)はプロレス興行会社・ツルカメ興行の社長。ロサンゼルスからの飛行機上で馴染みの芸者・神楽坂小はん(神楽坂はん子)ソックリの春雨いと子(神楽坂=二役)と知り合う。いと子は自称デザイナー。十朱の浮気の虫が騒ぎ出す。秘書の桑原昭太郎(若原雅夫)はあきれ顔。十朱は恐妻家で妻のはと子(沢村貞子)は十朱の浮気を警戒していた。お目付け役を若原に頼んでいるが若原は十朱の味方で見て見ぬ振りをしている。乗っている飛行機のスチュワーデス・小山明子(東谷暎子)とは恋人同士だ。日本に帰ってきた十朱は沢村と帰国パーティに出席するが小はんに会いたい十朱は抜け出して会いに行く。しかし沢村はそれをお見透し。桑原と先回りして小はんにもう十朱とは会わないように言う。「あなた方は男を惑わすのが商売だから仕方がないでしょうが・・・」困る小はん。十朱はこの料亭で偶然、いと子と再会、翌日いと子と泊りがけで箱根へドライブに行く。若原も東谷とデート。プロポーズするのだが「姉が結婚するまでは・・・」と答える。東谷は若原に自分の事はほとんど教えていないらしくこの辺は不満な若原(会話の内容からセックスもまだしていないようだ)。いと子は洋裁学院を経営しているらしく十朱に融資を申し込んでくる。いと子に気がある十朱は了承する。いと子は独身と言っていたが実は結婚していて残田(田島義文)という亭主がいた。翌日、沢村はお手伝い3人を引き連れ銀座へ出向く。目的は昨夜帰らなかった十朱を見つけること。沢村はここで東京に戻った十朱といと子の乗る車を発見。小はんにソックリないと子を小はんと誤解してしまう。激怒した沢村は若原に小はんに手切れ金を渡して縁を切ってくるように指示。若原は料亭で小はんに渡す。いわれの無い疑いをかけられ怒る小はん。料亭には東谷がいた。驚く若原。小はんは東谷の姉だった。自分を学校にやるために芸者になった姉を貶めた若原を怒る東谷。二人の関係が気まずくなる。芸者仲間(小田切みき、島秋子、津村悠子)たちが一計を企む。いと子は料亭で色仕掛けで十朱から金を巻き上げようとする。ダメなときは田島が乗り込むという美人局まがいの作戦。そこへ芸者の一人が「家の近所が火事です。」といと子を外に連れ出す。電話をかけたいいと子だが料亭の電話は芸者たちが使って時間稼ぎ。その間にいと子に化けた小はんが乗り込んで十朱に融資の件も全て無かった事にして欲しい、と芝居をうつ。そこへ小はんの恋人・ヤーさん@やくざではない(山村聡)がいと子の亭主のふりをして小はんを連れて行ってしまう。取り残される十朱。そこへ何も知らないいと子が戻ってくるのだが「今さら何の用だ。」と怒る十朱。そこへ十朱を追って若原、沢村がやって来る。これに田島が鉢合せして大騒ぎ。いと子の計略は失敗してしまう。十朱は沢村にプロレス技をかけられて叱られる。東谷と仲直りしたい若原だが東谷は許してくれない。失意の若原。山村聡は何の仕事をしているのかは描かれていないので不明だが、小はんと東谷を連れ仕事を兼ねて関西方面に飛行機で遊びに行く。その機には偶然、出張に行く若原がいた。元気の無かった東谷だったが若原と機内で和解したところでエンド。
 映画の出来はアホらしい展開で記憶に残るものではない。プロレス興行会社という設定なのでパーティシーンには来賓として力道山&遠藤幸吉が特別出演。主題歌&音楽担当が古賀政夫なので同じくパーティシーンに特別出演していた。
(2003年7月23日記)

          おしゅん捕物帖 謎の尼御殿(55年 96分 白黒 脚本・小国英雄 監督・滝沢英輔)
 江戸の町に若い娘のまげを切る通り魔が出没。犯人は編み笠で顔を隠した二人組の侍。おしゅん(月丘夢路)は病床の岡っ引き・籐兵ぇ(菅井一郎)の娘。後を継ぎたい月丘だが菅井は反対。そんな時、かずさ屋に嫁ぐ事が決まっている月丘の親友・お絹(堀恭子・新人の表記あり)が、まげ切りに襲われてしまう。ショックの堀は橋から身を投げて自殺。月丘は捜査を開始する。浪人・前田重四郎(三国連太郎)が、髪切り侍と同じ着物を着ている事から番屋で取調べを受ける。しかし三国の刀には血の痕がないため釈放される。外は雨、月丘は通りがかったフリをして傘に入れてやり三国に接近。三国は元は久留米藩の侍だったが、あだ討ちのために上京したものの体を壊して困っていたところを、奇術一座のお蝶(広岡三枝子)に拾われ用心棒をしていた。まげ切りは後を絶たなかった。手紙と仕送りがあるので届けは出されていないが、被害にあった娘たちが行方不明になっていた。まげ切り侍を目撃した月丘は尾行を開始、浅草寺で襲われるが特技の含み針を武器に応戦。撃退する。編み笠侍が着ていた着物は三国のもの。三国の着物には女の残り香があったことから犯人の一人は女と考えた月丘。残り香の主は広岡。月丘に全てを話すからと5つ時に会う約束をするが、何者かに殺されてしまう。「まげ切りの犯人は自分。」だと言い残して死ぬ広岡。月丘と三国は広岡を殺した侍が、牧野大和守の屋敷へ逃げこんだのをつきとめる。翌日、月丘は牧野家にのりこむ。なぜか牧野家では女性はみな尼僧。屋敷の主の琴姫(北原三枝)に会う。北原は犯人は弟・縫之介だという。縫之介は陰気な性格で、まげ切りに執着しているらしい。月丘は広岡は何者かをかばって殺されたと推理していた。帰り道、かごで帰る月丘は縫之介と思われる侍に襲われる。月丘の針は縫之介の右足に命中したものの逃げられてしまう。襲われた事を北原に知らせる月丘。帰る際、長崎屋(清水将夫)とすれ違う。翌日北原の使いが月丘のところへやってくる。かごに乗り屋敷に行く。北原は右足に傷を負っていた。縫之介の正体は北原であった。北原は幼少の頃に広岡のミスで火傷を負ってしまい髪の毛がなかったこの事から女の髪に執着を持つ性癖になっていた。この秘密をかぎ付けた清水は牧野家を脅迫して密貿易をしていた。行方不明の女たちは清水が誘拐。唐天竺に売り飛ばしていたのだった。北原は月丘に追い詰められ自殺を計る。広岡を殺したのは清水と言って死んでしまう。月丘、助けに来た三国は清水一派と立ち回り。多勢に無勢でピンチに陥るが、奉行所からの助けが入り、清水たちは一網打尽、メデタシメデタシ。
 月丘夢路主演の捕り物劇。口に針を含み、飛ばして相手にダメージを与えるのが特技。銭形平次の投げ銭ほどの効果もなく、トレードマークのような描き方もされていないので中途半端な設定。口に針を含むなんて危な過ぎるゾ! シリーズ物になるのかと思ったが、ラストでは全てが片付き、橋の上の月丘と三国。「ちゃんとした目明しなら皆死なずに済んだはず。目明しになるのは諦めた。」とコメント。ハッキリ言ってあまり面白くない作品だけど、続編作っても良かったと思う。まげ切りが密貿易にまで広がっていく話には無理があるような気もしたが、北原三枝のお姫さま姿は一見の価値あり。男装姿も凛々しい。月丘は相変わらずの色っぽさ。入浴シーン(歌あり)もあるが、着物の衿からのぞくうなじにムラムラ!!
(2007年6月9日記)

          俺たちの血が許さない(64年 原作・松浦健郎 脚本・竹森竜馬、細見捷弘 伊藤美千子 監督・鈴木清順)
 58年製作の『明日は明日の風が吹く』の再映画化。ただし本作は三兄弟ではなく、小林旭と高橋英樹の兄弟の話しに代わっている。設定は『明日は・・・』と同じ。やくざとなり黒幕・難波田(小沢栄太郎)の部下として働いている兄・小林旭。サラリーマンとなったものの破天荒な性格でクビになり組の再興を目指す弟・高橋英樹。高橋の恋人に長谷百合、兄弟の父を殺した侠客に井上昭文。旭の秘書に松原智恵子が扮した。松原は小沢のスパイとして旭の秘書となったのだが、旭に惚れてしまったために小沢に殺される。旭は小沢に反旗を翻す。高橋を人質に取られた旭だが、井上と協力して小沢一派と対決。高橋を逃がす事に成功するが、小沢一派の凶弾に倒れてしまう。
 長男役が旭のため、ストーリーのウェイトは旭の方にある。組織と家の板ばさみで苦悩する姿を好演していた。秘書役の松原は従来のお嬢様風ではなく、キツイメークと衣装で大人っぽい感じを出していた。高橋の型破りなサラリーマン役は笑える。二人が嵐の中を車で走るシーンは海の中を走っているようだ。(2001年5月2日記)

          俺にさわると危ないぜ66年86分 脚本・中西隆三、都築道夫 監督・長谷部安春)
 ベトナム帰りの戦場カメラマン・本堂大介(小林旭)は2週間の休暇で日本に帰ってくる。飛行機上で知りあったスチュワーデス・沢の内ヨリ子(松原智恵子)とデートの夜、奇妙な業を使うブラックタイツの女性グループ(浜川智子、西尾三枝子、加茂こづえ)が闇ドル紙幣のバイヤー・ロペス(ペドロ・フェルナンデス)を殺害する現場を目撃する。松原智恵子も誘拐され、旭はロペス殺しの容疑者として逮捕されてしまう。遠山警部(高品格)は旭を疑うが、旧友の極東通信社記者・ビル・ソマーズ(アーツ・ヘージ)の証言で釈放される。旭は百地忍法の百地三斉(左朴全)の家に下宿していた。話を聞いた左は旭に、忍法で使う隠れ球(煙幕弾?)と米国の笑いガス弾を授ける。旭はビルから元陸軍少佐・岡田(二本柳寛)を紹介される。二本柳は自称・松原の叔父。親代わりに育てていたという。松原のアパートに行った旭はサブ・(
郷^治)に怪しげなヌードスタジオに連れて行かれる。そこでロペスの仲間のギャング団に襲われる。旭は間一髪、アキ子(北あけみ)に救われる。左から貰った隠れ玉で脱出した旭と北。行くところが無いという北を部屋に泊める旭は、北とベッドイン。ところが北はブラックタイツのメンバー。捕まってピンチの旭だったが、笑いガス弾で危機を脱する。翌日、旭は二本柳を訪ねるのだが、ブラックタイツに殺されていた。ビルの屋上で対決する旭だったが、捕まってトルコ風呂に監禁されてしまう。松原智恵子はブラックタイツに監禁されていたのだが、旭が拷問を受けている間に脱出する。浜川智子を人質に脱出する旭だが、ギャング団に襲われる。旭は脱出するものの、浜川智子は殺されてしまう。帰り道、脱出した松原と再会した旭は松原と部屋に戻る。松原の話では戦時中、二本柳は松原の父親の部下だった。松原の父親は戦時中、沖縄の陸軍参謀をしていた。終戦後、二本柳は占領軍の将校と結託して、松原の父が隠した軍用資金の金塊を探していた。二本柳は松原の父を殺し、遺品を奪って調べたのだが、金塊は見つからなかった。ブラックタイツ団も金塊を狙っていた。松原のマンションを調べて手がかりを掴もうとする旭は松原の父の日記を発見する。それには「シーザーのものはシーザーに返せ」と書かれていた。乱入してきたブラックタイツのキク江(可能かず子)と争っていた旭だが、ギャング団に捕まってしまう。可能と協力して脱出する旭だが、可能は殺されてしまう。部屋に帰るとギャング団に襲われた後、左は押入れに押し込められ、松原は拉致されていた。表に飛び出す旭だが、待ち伏せていたギャング団に捕まってしまう。そこでは下着姿の松原が鎖に吊るされ、金塊のありかを聞き出そうと拷問されていた。松原を救うために旭が隠し場所を教える。松原の父の日記の表紙に隠し場所を書いた地図が隠されていた。ブラックタイツに救われる旭だが、松原はギャング団に連れて行かれてしまう。松原を救いに行こうとする旭と一緒にいた西尾三枝子はギャングに撃たれて死んでしまう。死ぬ間際、ギャングの行き先は湖島と聞いた旭は左から授かった大砲を持って島に乗り込む。島で再会した北と協力して、捕まっていたヨシ江(加茂こづえ)を救い郷たちギャング団を倒す旭だが、金塊は既に運び出されていた。空から襲ってくるヘリコプターを大砲で撃ち落した旭だが、加茂は殺されてしまう。ブラックタイツ団の女性たちは姉妹や従兄弟同士。沖縄の人間だった。金塊は沖縄の人間たちの財産を差し押さえたものだった。生き残った北とギャングのアジトの別荘に乗り込んだ旭。ギャングの黒幕はビルであった。松原を助けている間に北はビルと相撃ち。二人とも死んでしまう。高品たち警察立会いで、金塊の入った箱を開ける旭。中には終戦直後の100円札が入っていた。「シーザーのものはシーザーに返せ」、松原の父はその金を沖縄に返すつもりだったらしい。ラストは空港、休暇が終りベイルートに飛ぶ旭とフライトに出る松原。北とセックスしたことがあると白状した旭は、松原に殴られる。そこへ主題歌・『泣くなさすらい』が被りエンド。
 日活ニューアクションの旗手・長谷部安春監督のデビュー作。原作は脚本を担当している都築道夫の推理小説『三重露出』なのだが、映画化されたこの作品はチョット007っぽい軽快なアクション物。ブラックタイツのオネエサマ方もタマらないが、ヒロインの松原智恵子はじょんじょろりん!!したくなるくらいメンコイ。スッチー姿も最高だし、下着姿で縛られて拷問を受けるサマは、その手の趣味の方々にはタマらないシーンでは? 長谷部監督の話では、これで松原智恵子には嫌われたらしい(笑)。映画の後半からブラックタイツのオネエサマ方が一人ずつ死んでいくのだが、その度に旭は「良い子だったのに・・・」と呟く。オイラもそう思うよ(誰でも良いから一人くれ!)。難を言えば、珍妙な味を見せる左朴全に見せ場がなかった事か。同じ都築作品の東宝『百発百中シリーズ』っぽい感じもするオススメの一本。
(2005年4月12日記)

          俺の背中に陽が当たる(63年98分 脚本・中平康 佐原靖郎 監督・中平康)
 滋(浜田光夫)の仕事はビルの窓拭き。朝子(吉永小百合)という恋人もいて真面目に暮らしている。浜田には健三(内田良平)という実兄がいた。内田はキスグレ健三の異名を持つ凄腕のヤクザ。服役中だったが、出所したら堅気になると妻・幸子(南田洋子)や息子・康夫(佐藤公明)と約束していた。出所した内田は組の幹部・小谷(山内明)の誘いを断り、浜田と一緒にビルの窓拭きの仕事を始める。山内は兄貴格の山田(安部徹)と共謀。先代の組長を殺し、跡目は安部が継ごうとしていたのだが、山内は安部を殺しその罪を内田に被せてしまう。内田は逮捕に来た刑事たちの目前で、組の鉄砲玉・学生ヤクザの透(平田重四郎)に刺殺されてしまう。人殺しの汚名を着せられた間々、殺された内田の仇を討つために、浜田は山内の組に入り証拠を探す。山内は地上げやタレント(懐かしの青山ミチ!)のリサイタルの売上3200万円を持ち逃げし海外逃亡を計る。浜田は敵対する幹部・麻生(北見治一)に情報を流し共倒れを狙う。しかし山内の子分・青島(小高雄二)に康夫が人質に取られ失敗。激しいアクションの末、浜田は小高や山内を倒す事に成功するが、山内は内田の無実を自白することなく死んでしまう。途方に暮れる浜田。しかし山内の情婦・エマ(楠侑子)の証言で内田の無実が証明される。浜田はまた元の窓拭きの仕事に戻りエンド。
 小百合&浜田の映画なのにいつもの青春物ではなくてアクション物。出演者表記の順番は小百合がトップに来ているのに、主役は浜田光夫。おまけに浜田は映画と同名の主題歌まで歌っているのだ。どうして? と言いたくなる作品。映画の出来は平凡なアクション物で大して面白くない。大体、窓拭きの浜田がやたらと喧嘩に強いのは変だヨ。オイラ的に唯一、印象に残ったのは組のチンピラ役の芳ちゃん(野呂圭介)と英ちゃん(榎木兵衛)。中盤あたりに殺されてしまうが、随所に出てきてトボケタ演技を見せてくれた。堅気になろうとする内田の姿は、凄味のある役者さんだけにカッコ良かった。何故か台詞が異常に少ない小高雄二も不気味。しかしこういう奇妙な作品は中平らしい気がするが、吉永小百合の出番も少ないので、小百合目当てで観るとガッカリするヨ。
(2002年1月12日記)

          俺の血が騒ぐ(61年86分 脚本・池田一朗、長谷部安春、加藤新二 監督・山崎徳次郎)
 殺された父親の仇を討つために大学を辞め、船乗りになった笠原邦夫(赤木圭一郎)。船長をしていた父親の死体の周りには麻薬が散乱していたため、警察から麻薬密売に係わっていた疑いをかけられてしまう。そのために船会社から退職金も貰えなかった。赤木は仇討ちに執念を燃やす。赤木には父の旧友で玄海丸の船医の宮沢(小沢栄太郎)の娘・節子(笹森礼子)という婚約者がいるのだが、復讐の鬼となった赤木に付いていけず、笹森の心は赤木の弟で商船大学生・明(沢本忠雄)に移っていた。父親を殺した銃はリボルバーの38口径。赤木はシンガポールで同じ銃を手に入れ、復讐の機会を窺っていた。赤木は恵子(南田洋子)がマダムをしているバー・エルムで健次(葉山良二)と知り合う。葉山は立岩(阿部徹)をボスとする組織の用心棒。葉山の紹介で赤木は阿部の組織に用心棒として潜り込む。阿部は赤木や葉山の他、部下の大野(高品格)、関(弘松三郎)、エリック(マイク・デリング)を連れて、船に乗り込む。その船は玄海丸だった。船には何故か店を売った南田まで乗り込んでくる。阿部は闇ドルの密輸をしていた。小沢は阿部の手引きをしていたのだが、その事が赤木の父親にバレたために口封じで殺したのだった。赤木は船長(雪岡恵介)や船員たちと協力、阿部一味を追い詰める。阿部は船に時限爆弾を仕掛けていた。雪岡以下、船員たちはボートで脱出。高品や弘松は赤木に倒され、改心した小沢は阿部と操舵室で相撃ち。二人とも死んでしまう。赤木、葉山、南田だけが船に残る。爆弾は葉山が海に捨てていたが、漂流する玄海丸は沢本の乗る商船大学の実習船・海洋丸に発見される。海洋丸の実習生や教官が調査にやって来る。その中には沢本がいた。赤木は沢本が一人になった時を見計らって声をかける。「父親を殺したのは阿部で、小沢は自分をかばって死んだ。」と説明する。小沢と阿部の死体を船室に運び、笹森と幸せになるように諭し、沢本を調査隊の元に帰す。沢本たちが引き上げた後、赤木は玄海丸に火を点けて、葉山や南田とボートで脱出するのであった。
 オープニングは海洋丸が、漂流する玄海丸を発見するところから始まる。船内を捜索するうちに沢本だけが行方不明となる。すぐに沢本は見つかるのだが様子が変。海洋丸に戻り、燃えている玄海丸を見て「兄さん!」と叫んでからタイトルが出る。最初は?なのだが、ラストでストーリーが繋がるので謎が解けるという、ミステリーっぽい凝った構成だった。葉山と赤木の出会いや漂流する玄海丸が海洋丸と偶然出会うというのは、ご都合主義の感は否めないが、南田のバーでの赤木と葉山のやり取り、高品や弘松の脇役ぶりが楽しい。この頃の南田も色っぽいので面白く観られる。しかし沢本と笹森との関係も突っ込み不足だし、どうして南田まで玄海丸に乗り込んでくるのか?海の真ん中でボートで脱出した赤木や葉山たちはこの後どうなったのか? 疑問が残る作品。しかし毎度の事ながら赤木はイイね。素人目で観ても演技は上手いとは思えないが、雰囲気やしぐさがカッコイイ。
(2004年6月30日記)

          俺は銀座の騎兵隊(60年78分 脚本・山崎厳 監督・野口博志)
 川田良則(杉山俊夫)は表向きの職業は靴磨きだが本業はスリ。今日も相棒の黒人とのハーフでバイク屋で働くリチャード(神戸瓢介)と組んで都電の車内で子連れの主婦から財布を抜き取る。刑事の倉田(高原駿雄)に追われるが靖国神社に逃げ込む。偶然、観光に来ていた流れ者のドラマー?・千島三郎(和田浩治)に財布を銀座のクラブ・レピードに届けるように頼む。そこにはボーイの守山正一(守屋浩)がいた。杉山・神戸・守屋、そして花売りの久子(刈屋ヒデ子)の4人は川沿いに捨てられたオンボロバスの中で共同生活をしていた。みな親に捨てられて集まった連中だった。和田は杉山にスリを止めさせ兄貴分として仲間に加わる。銀座の顔役・木村(二本柳寛)はこの川にフェリーの船着場を作り船上で売春しようと計画を練る。部下の神山(近藤宏)に土地を買収させ、バスも撤去しようとして杉山たちと子競り合いを繰り返していた。ある日、腹を減らした和田と杉山はデパートの誌食品売り場で飲み食いをする。酒売り場で酒を飲んで酔っ払った杉山は水原ユミ子(清水まゆみ)のバッグから封筒を抜き取る。清水は父親の借金のかたに二本柳の下で働かされていた。二本柳は香港の組織から外人女と麻薬を仕入れ売春&麻薬の密売を企んでいた。清水からスリ取った封筒には香港からの代理人・マクレーン(岡田真澄)から預かった麻薬取引の暗号表が入っていた。清水は二本柳の命令で和田から取り返そうとする。清水は後ろからジュースのビンで和田を殴り暗号表を取り返す。清水は暗号表を二本柳には渡さず高原に、清水は和田に共鳴したと言って高原に暗号表を渡したのだった。しかしその暗号表はニセモノだった。高原から暗号表の事を聞いていた和田はニセモノを用意していたのだった。清水は取り返せなかったと嘘を言って二本柳のところに戻る。そこへ和田が「清水が持っていったのはニセモノだ。改めて取引をしろ。」と電話をかける。清水が裏切った事を知った二本柳は清水を拷問にかける。それを知った和田は本物の暗号表を警察に持って行こうとするが杉山たちの反対に会う。和田と杉山が殴り合いをしていると近藤や子分たちが現れ杉山たちを人質にとる。そして和田に暗号表の取引を迫る。和田は22時30分に常盤橋公園(常盤橋はあるけど当時は公園があった?)で取引をすることになる。岡田は時限爆弾を作り取り引きの時に和田の車に爆弾をセットしようと計画する。取り引き現場で和田は馴染みの物売りハクライお春(北林谷栄)に手引きを頼み二本柳たちを急襲、杉山や清水たちを救出するが北林が二本柳に撃たれる。逃げる二本柳たちの車に爆弾と知らない和田たちは時限爆弾を投げ込む。爆発して二本柳や岡田たちは車ごと爆死してしまう。病院に担ぎ込まれた北林は命を取り留める。巻き込んだ事を謝罪する和田に北林は死んだ息子にそっくりだから元気になったら一緒に暮らそうと言うが、和田は仲間と一緒にいたいと答える。北林は「みんな呼べば良い。孫がたくさん出来たと思えば何てことはない。」そこへ高原が現れ「君にプレゼントだ。」と言う。そのプレゼントは何と馬。ラストは和田と清水を乗せた馬が晴海通りを闊歩するのをロングで捉えたシーン。今こんなシーンは中々撮れないでは?
 映画の出来は子供だましとでも言う程度のものだが、皆独立を夢見てバスで共同生活という図式はトニー主演の『素ッ裸の年齢』を思い出す。和田は戦災孤児で長崎で被爆しているという設定のようだ。タイトルに騎兵隊とあるのは和田の戦死した父親は騎兵隊にいたかららしい。それだけでタイトルにして、ラストに馬で銀座を歩かせるのだから乱暴な作りとしか言いようがない(笑)。しかもクライマックスに登場する岡田の爆弾だが、和田は別に車で来るのではないのだからこの計画も無理があるし、いくら死んだ息子に似ているからって加勢する北林も変だ。変といえば銀座に船着場を作って船上売春をしようという計画自体もおかしい。こういう無茶な設定が和田浩治主演作品の面白いところか。しかし自立を目指すガキどもの姿には好感が持てる。出演は他にクラブ・レピードのマスターに雪丘恵介、近藤の子分・サダに待田京介。クラブのダンサーに筑波久子(踊っているだけ!)が出ていた。この頃の筑波は日活での活躍末期。そう考えると貴重な作品。
(2003年4月21日記)

          俺は地獄へ行く(61年87分 原作・城戸禮 脚本・星川清司 監督・野口博志)
 メキシコ帰りの壇譲次(宍戸錠)は日本への飛行機上でクラブ歌手・ジーナ森(香月美奈子)と知り合う。香月は錠の昔馴染みのギャンブラー?須永鉄(小高雄二)の恋人であった。錠は5年前に日本脱出、海外を放浪しメキシコに流れ着いた。ここで知り合った石油成金の島田(小泉郁之助)の農場で世話になっていたのだが小泉が急死。小泉には親子ほど歳の離れた妹・安江(楠侑子)がいたが兄妹の仲は悪かった。そのため小泉は遺産の30億円を25年前に生き別れになった恋人・広津あき(南美江)に譲ると遺言を残す。錠は南を捜しに帰国したのだった。日本では小泉の秘書をしていた木塚ユリ(笹森令子)と小泉の代理人?・アルメンド岡田(藤村有弘)が先に来ており、協力して南を捜す。香月は小高のボス・二本柳寛の経営するナイトクラブ・BlueSeaで歌いだす。二本柳は楠の依頼で南を殺そうとしていた。二本柳は南を捜すためにギャラ1000万円で錠を抱き込む。金に釣られたフリをして錠は笹森を裏切る。南はBlueSeaで掃除婦をしていた。貧乏だが真面目に生きてきた南は錠の話しを聞いても遺産はいらないと答える。感動した錠は小高と協力して南を逃がそうとする。香月のマンションにかくまうが香月が人質に取られ南と笹森が拉致されてしまう。小高も捕まるが錠が香月と小高を救出。笹森と南が捕らえられている愛知県の山荘へ救助に向かう。黒幕は楠と密通していた藤村だった。山道で二本柳と藤村の乗ったヘリコプターからの爆撃にあう錠と小高。車は爆破されるが無事脱出。様子を見に来た藤村を倒し二本柳を盾に山荘に乗り込む。笹森と南の救出に成功するが生きていた藤村が楠を乗せヘリコプターで爆撃してくる。小高が地上からライフルで応戦。ヘリを撃ち落す。錠は1000万円を小高と香月にやり、メキシコに帰ろうという笹森と南の誘いを断りどこかへ去って行く。その背に錠の歌う主題歌・『夜霧の口笛』がかかりエンド。
 クライマックスでヘリコプターからの爆撃シーンとは、金や手間がかかっている。印象に残るのは、錠が二本柳やその子分に銃の腕を披露するシーン。机の上に並ぶビール瓶に二丁拳銃を乱射する錠。ところが弾は瓶に一発も当たらない。失笑する子分たち。しかし弾は全てビールケースの後ろに隠れている二本柳の後ろの壁に当たっており、そこには“J”の文字が書かれているという趣向。さすがはエースのジョーと言いたいところだが、映画の出来は平凡なもので大して面白くはない。あちこち捜しても見つからない南がBlueSeaで掃除婦をしているのはご都合主義すぎるし、ヒロインが笹森令子なのか香月美奈子なのか、どっち付かずで中途半端だ。錠と小高の絡みも軽妙な台詞のやり取りがないのも不満。でも香月は色っぽいから好きだ。歌手という設定なので劇中歌うシーンが数ヶ所あるがこれは吹き替え?。錠の役名の壇譲次だが譲次はジョーから来ているのだろう。壇はおそらく竜崎三四郎と並ぶ城戸禮作品のヒーロー・壇竜四郎から来ているのだと思う。
(2003年2月4日記)

          俺は流れ星(60年51分白黒 脚本・今村文人 監督・野口博志)
 沢健次(川地民夫)はクラブ「トーキョータウン」のサックス吹き。社長の松原(松本染升)は裏では良くない品物(麻薬?拳銃?)を扱っている。川地は度々、取り引きの手伝いをやらされていたのだが、ヤバイ仕事には嫌気がさしていた。クラブに一郎(沢井杏介)とその恋人・ミナ(香月美奈子)がやって来る。一郎はサックス吹きの売り込みに来たのだが、腕の方はイマイチ。香月はグラマーな美人で踊りも上手い。香月の体が目当ての松本は二人を採用する。沢井が取引の弾除けに使われるのを知った川地は、取り引き途中に兄貴分の神戸(長弘)を倒し、沢井を救う。更に松本に襲われそうになった香月も救い、二人を逃がして自分も逃げる。一年後、地方の港町に流れてきた川地は偶然、看板書きのバイト中にチンピラに絡まれていた三崎道子(稲垣美穂子)を助ける。更に地元の暴力団・三崎組の組員にリンチされそうになったコパ興業社員・ゲン(郷^治)を救う。郷は川地に三崎組との抗争の助っ人を頼む。成り行きで加勢して三崎組は潰れる。この時の活躍でコパ興業の客分になった川地は、コパ興業社長・酒井(河野弘)の愛人になっている香月と再会する。沢井は病死したらしい。コパには流れ者の用心棒・醍醐(上野山功一)がいるが、上手く立ち回って漁夫の利を狙っているだけ。川地は上野山から、三崎組長を殺して最初に抗争を仕掛けたのは、新興暴力団のコパ興業の方だと聞かされる。何も知らずに加勢してしまった事を後悔する川地。三崎組員は逃げてしまい、残ったのは幹部の圭三(中田博久@キャプテンウルトラ)だけ。稲垣は殺された組長の娘だった。稲垣と親しくなる川地。敵意むき出しの中田。香月は川地に自分を連れて逃げて欲しいと頼むが、稲垣が好きな川地は土地に残るつもり。そんな時に川地の噂を聞いた松本の命令で、長弘がやって来る。中田は稲垣に惚れているのを知った川地は街を離れる事を決意するが、長に殺されそうになる。危機一髪、上野山に救われる川地。しかし上野山は捕まり殺されてしまう。翌日、港で川地と会う約束をした稲垣のところに香月がやって来て「あの人は来ない。」と告げる。海岸を歩いて、どこかに流れてしまう川地にフランク永井の歌う主題歌が被りエンド。
 51分のSP映画のためか、全てが中途半端な作品。いつもの日活アクションのパターンなら、川地と稲垣の淡い恋と香月との大人の関係、これに上野山との男同士の友情を絡めて、クライマックスで上野山を殺された川地が殴りこみに行く、はずなのに、稲垣と川地の間に愛情の交換をするようなシーンもないし、香月との間も何も起こらない。男の友情シーンもないためか、川地は上野山の仇も取らずに早々に逃げてしまう。上野山はニヒルでそれなりに見せ場はあるが犬死じゃないか!。裕次郎のムードアクションっぽい内容のせいか、川地の芝居もどこか裕次郎っぽい。儲け役なのはフランク永井。コパ興業のチンピラで歌手志望という設定。随所に出てきて歌を歌い、映画の途中でスカウトされて東京に行ってしまう。ラストまでいたら銃撃戦に巻き込まれて警察に捕まり、歌手どころではなかった。ヨカッタね(笑)。
(2005年1月24日記)

          俺は犯人じゃない(56年90分白黒 脚本・青木久義、窪田篤人 監督・野口博志)
 西島政吉(大坂志郎)は“ドリルの政吉”の異名を持つチャリンコ(金庫破り)。5年の刑期を終えて出所してくる。5年前、皇居のお堀端で恋人・ゆき(左幸子)のために堅気になる事を誓い警視庁に自首した大坂。互いに手紙をやり取りして励ましあってきた。出所の朝、出迎えに来るはずの左の姿が無い。来たのは弟分の次郎(武藤章生)だけ。左の下宿に行ってみても姿はない。下宿のオバサンの話では今朝まで大坂を迎えに行く支度をしていたらしい。勤め先のキャバレー“ムーンライト”に行ってみる。左を良く知るホステス・美也子(広岡三枝子)の話では左にはサラリーマンをしている恋人が出来て大阪に行ってしまったらしい。信じられない大坂。店には偶然、昔の仲間で今は大坂に恨みを持つ森川(高品格)、小野(弘松三郎)がいた。表に出て殴り合いとなる。高品と弘松を叩きのめした大坂は再び店に戻る。ムーンライトの前で近藤(菅井一郎)に声をかけられる。ゆきの事で話があると言うのだ。誘われるままタクシーに乗せられる。行き先は東洋銀行。銃声がして駆けつけると後ろから殴られ気を失ってしまう。大坂は銀行の金庫から2000万円盗んだ罪で警察に捕まってしまう。取調べでムーンライトで高品たちと争いになった、菅井に誘われてタクシーで来たとアリバイを主張するのだが高品は証言しないし菅井は行方不明、タクシー運転手・坂本(山本禅二)も大坂など知らないと言う。大坂は検察庁に護送される途中、武藤の手引きで逃走、広岡の部屋に身を隠す。夜になり真相を究明するために大坂は動き出す。高品をヤマトホテルで見つけ絞め上げる。高品は関係ないようだった。次に山田を絞め上げる。山田は菅井に脅されたと白状する。菅井を捜して新宿にやって来た大坂はポン引き(深江章喜)の情報で菅井の隠れ家の木賃宿に乗り込む。部屋で菅井は死んでいた。大坂は広岡の部屋に戻る。広岡はこれ以上の追求は危険だからと止めるが大坂は「ゆきのためにも最後まで戦う。」と答える。大坂は東洋銀行に忍び込む。赤外線?警報機をかいくぐり大金庫を破ろうとするが破る事が出来ない。大坂の腕を持ってしても開けられない。銀行内部に共犯者がいる、と考えた大坂は金庫を諦め銀行内部を物色。金庫横に貼られた責任者氏名を確認する。支店長代理・岡田(深見泰三)、行員・川北(河合健二)。大坂は深見宅に電話、新橋のおでん屋台に呼び出すのだが共犯者ではなかった。深見は女子行員・すみえと不倫していただけだった。大坂は河合に近づく。河合は妻と娘を連れて中央スケートリンクに遊びに来ていた(スケート場のエキストラに宍戸錠がいた)。河合を締め上げようとする大坂だがそれより早く何者かに連れ去られてしまう。銀行内部の共犯者は河合だった。河合が乗せられた車のナンバー(3−56152)を陸運局で調べると車はレンタカーで借りたのは山本三郎。住所をたどるとリヴィエラという喫茶店だった。ここの地下が隠れ家になっていて河合は拷問を受けていた。新聞では2000万円盗まれた事になっていたが実際は1200万円しかなかった。河合は800万横領していたのだ。大坂は乱入、一味のボス・黒沼(植村謙二郎)、村上(長谷部健)、佐山(田島義文)と対決。河合を助けようとするが広岡がいたために失敗。広岡は植村の情婦であった。捕まりそうになるが河合を連れて脱出に成功する。大坂は植村たちの裏をかいて広岡のマンションに潜伏する。河合は大坂に語った。キャバレーで広岡と知り合った河合は広岡に入れあげ銀行の金を使い込む、植村に脅迫されて強盗の手引きをしたのだった。そこへ広岡が帰ってくる。広岡も大坂に語る。長谷部と広岡は兄妹、そして広岡は大坂に求愛する。河合が横領した800万円は中央スケートリンクのロッカーにある。深夜、大坂は河合の案内で取りに行く。植村たちも現れ撃たれそうになる。スケート場の隣が球場でそこへ逃げる大坂。何故か大坂は銃を持っていて撃ち合い。植村の口からゆきの行方が語られる。ゆきは植村たちの秘密を知ってしまったために殺されたのだった。植村に撃たれそうになった大坂だが広岡が後ろから植村を撃つ。田島と長谷部は大坂が倒す。そこへ警官隊が乱入。全員逮捕される。広岡は「ごめんなさい、こんな事になってしまって・・・」大坂は「もし俺が先に出てきたらお前の部屋で待ってるよ。」全員それぞれパトカーに乗せられて行くところでエンド。
 広岡は植村の情婦で河合を垂らしこんだ悪女のはずなのに大坂に協力したり唐突に求愛したり、大坂も危険を冒して銀行に忍び込んだりと無理な展開が目立つ。冒頭、大坂が「違う違う、俺は犯人じゃない!!」と叫んで始まるオープニングから冤罪被害の作品かと思ったらアクション物。気弱な男の役が多い大坂志郎には珍しい作品。コワモテの高品格や弘松三郎を見事な立ち回りでぶっ飛ばしてしまうのには驚いた!(笑)。
(2003年9月4日記)

          女を忘れろ(59年白黒 脚本・山崎厳、舛田利雄 監督・舛田利雄)
 試合で相手を失明させ引退したボクサー・田所修(小林旭)はドラマーをして日銭を稼ぎ年上の情婦・雪枝(南田洋子)と同棲、毎日怠惰な暮らしをしている。街で知り合った清楚な娘・三木尚子(浅丘ルリ子)に惚れた旭はルリ子とその母を苦しめる土建屋・大沢(安部徹)から救うために諜報機関のボス?吉野(金子信雄)の力を借りてルリ子を救う。旭は力を借りた代償として金子の組織に入り諜報員としてバンコクへ飛び立っていく。ラスト、雪の夜に車で空港へ向かう旭と金子。途中、旭は金子に懇願し公衆電話からルリ子へ別れの電話を入れる。(何も知らないルリ子の無邪気な声が良い。)電話を終えてタバコをくわえる旭に火をつけてやる金子。それまで薄暗かった画面がライターの火で明るくなる。ニヤリと笑い涙をぬぐう旭。究極の貢ぐクンとしてのその姿にオイラも泣いてしまった。このシーンはザッツ日活シネマ『アゲイン』でも観ることが出来る。一見の価値あり!
(2001年12月24日記)