結婚の條件(63年86分 原作・源氏鶏太 脚本・才賀明、斎藤武市 監督・斎藤武市)
水戸まひる(浅丘ルリ子)は丸の内のOL。姉夫婦(南田洋子&二谷英明)の家に下宿している。結婚相手の條件は月給3万円以上。その候補は会社の同僚・矢貝修治(小高雄二)、二谷の部下・三好忠義(山田吾一)、小高の同級生で二谷の部下の石井鏡一(川地民夫)。ある日、ルリ子は小高とのデートの晩に街で女連れで歩いている二谷の姿を見かける。二谷は死んだ旧友の妻・青山瑛子(桂木洋子)と不倫していた。ルリ子は山田の協力で二谷と桂木を説得、二人は円満に別れる。小高はルリ子の同僚・尾上咲子(長谷百合)に求婚されていた。しかし小高はルリ子一筋でその気はない。二谷の計らいで小高、山田、川地、ルリ子、二谷で飲み会をする。そこへ長谷が乱入。小高に求婚して泣き出してしまう。困る小高。そこへ川地が長谷を慰めて家まで送っていく。これがきっかけで川地と長谷は付き合い出す。小高と付き合うか山田と一緒になるか決めかねている時、二谷にニューヨーク転勤の話が持ち上がる。これがきっかけでルリ子はアパートを借りて自活する決意をする。桂木の紹介で桂木と同じアパートに部屋を借りる。二谷と南田を羽田で見送った日、こっそりと見送りに来ていた桂木と亡くなった桂木の夫の墓参りに行く。桂木はルリ子に「結婚相手を決められないのは心のどこかで相手の男と二谷を比較していたからだ。貴女は二谷が好きなのよ。」と言われ愕然とする。そして「二谷がいなくなった事で本当に結婚したくなる男が現れる。」とも言われる。ラストは丸の内の朝の出勤風景。雑踏の中でルリ子と長谷が並んで出勤する姿、丸の内の全景が映りエンドマーク。月給3万円という結婚の條件もあまりストーリーに生かされず、原作をなぞっただけという感じの作品。ルリ子、小高、山田の三角関係も具体性がないし、ストーリーに落ちがなくいつの間にか終わってしまったという感じでちっとも面白くないのだ。しかし浅丘ルリ子は美人だ。こんなOLがいたら仕事にならんゾ!!出演は他に二谷たちの行き着けのバーのマダムに奈良岡朋子。ルリ子や桂木のアパートの管理人に河上信夫が出ていた。
(2001年12月13日記)

        けものの眠り(60年白黒、原作・菊村到 脚本・池田一朗 監督・鈴木清順)
定年退職して勤務先の香港から帰国した芦田伸介は行方不明となる。芦田の娘、吉行和子の恋人で新聞記者の長門裕之は芦田の行方を追う過程で麻薬密輸組織の存在を知る。芦田は組織に加担していた。やがて芦田は姿を現す。長門と吉行の説得で芦田は組織の本拠地でもある新興宗教本部を爆破。本拠地ごと焼死するのであった。芦田の妻に山岡久乃、組織のボスの宗教家に下元勉、組織の幹部に
草薙幸二郎、信欣三。長門の同僚には西村晃、小沢昭一が扮した。白黒の添え物作品にしては豪華キャスト。サスペンスタッチの雰囲気は良だが、ストーリーは平板で記憶に残るものではない。
(2001年3月28日記)

        けんかえれじい(66年、白黒作品、脚本・新藤兼人、監督・鈴木清順)
昭和初期、喧嘩に明け暮れる高校生、南部麒六(高橋英樹)の青春記を時にはユーモラスに、時には切なく描いた青春映画の傑作。
麒六の喧嘩の師匠スッポンに川津祐介、思いを寄せる高校生・道子に浅野順子が扮した。麒六が道子のピアノの鍵盤にペ〇スを付けて自慰行為をするシーンは有名。この映画での浅野順子は本当に魅力的であった。映画のラストで子供を産めない体に絶望した道子は修道院に入る事を決意する。そんな時、2・26事件が起こり麒六は「もっと大きな喧嘩をする。」ために上京する所で映画は終わる。この『けんかえれじい』には続編が予定されていた。続編では東京に出てきた麒六は早稲田大学に入学。『童話研究会』に入って童話を書いたり、特高警察に目をつけられたり、吉原で喧嘩したりもする。麒六は道子への思いから、吉原に行っても女を抱く事はしない。やがて学徒出陣、ここでも喧嘩に明け暮れ兵隊やくざ状態を過ごす。一度だけ修道女になった道子が面会に来てくれるのだが、やつれた姿を見て心が痛む。そして麒六は中国大陸に飛ばされてしまう。戦闘中に重傷を負った麒六は部隊とはぐれてしまい幻想的な花畑に出る。その花畑で童貞のまま、眠るように死んでしまうというストーリーだったそうである・・・・・・。映画化されなかったのは残念!!
(2000年10月25日記) 

 

        拳銃0号(59年白黒 脚本・寺田信義、米谷純一、前田満州男 監督・山崎徳次郎)
アメリカ人・エリック(岡田真澄)の持ち込んだ拳銃が誤ってホテルのゴミと一緒に捨てられてしまう。浮浪者に拾われた銃は暴力団のボス・阿部徹→阿部の情婦・南風夕子→修道女を経て幼稚園児→チンピラ・赤木圭一郎→売れない音楽家・浜村純→不良カップル→最後は川地民夫、稲垣美穂子の手に渡る。川地と稲垣は結婚を反対されて拳銃で心中を図ろうとするが弾は1発しか残っていなかった。心中を諦めた2人は強く生きていく決意をし、銃を海へ投げ捨てるところでエンド。1丁の銃が様々な人間の間を転々として行く様は面白く、53分の小品にしては凝った作り。赤木は恋人・丘野美子とデパートの屋上から試し撃ちするだけという小さな役を好演。エキストラ役を除いて、この作品が赤木のデビュー作。赤木を観るだけでも一見の価値あり。拳銃の声を最初と最後だけ小沢昭一が演じているのだが、途中1度だけ女性の声に代わってしまうのはご愛嬌。出演は他に南風と密通し阿部に殺される幹部・待田京介、待田をかばって殺される幹部・宍戸錠。阿部の部下に土方弘、野呂圭介が扮した。不良カップルたちのダンスパーティのシーンは結構長いが、当時の若者風俗が垣間見れる。
(2001年6月12日記)

        拳銃無頼帖シリーズ(60年、監督・野口博志)
城戸禮原作の小説を映画化、野口博志が監督。赤木圭一郎が主演した唯一のシリーズ。
目にも止まらぬ早撃ちで相手の肩を射抜く、殺さぬ殺し屋『抜き射ちの竜』(赤木)と一発で相手の心臓を射抜く『コルトの銀』(宍戸錠。作品によって五郎、謙、ジョーと変わる。)が敵対しながらも最後には意気投合して暴力団を壊滅させて行くストーリー。
ラインアップは下記の通り。
1 拳銃無頼帖 抜き射ちの竜(原作・『抜き撃ち三四郎』 脚本・山崎厳 共演・浅丘ルリ子、
                   高品格、草薙幸次郎、沢本忠雄、香月美奈子、菅井一朗、西村晃)
2 拳銃無頼帖 電光石火の男(脚本・松浦健郎 共演・浅丘ルリ子、二谷英明、杉山俊夫、
                    嵯峨善兵、白木マリ、吉永小百合、菅井一朗)

3 拳銃無頼帖 不敵に笑う男(脚本・山崎厳 共演・笹森礼子、吉永小百合、星ナオミ、
                    南風夕子、藤村有弘、二本柳寛)
4 拳銃無頼帖 明日なき男(脚本・松浦健郎・朝島靖之助 共演・笹森礼子、南田洋子、
                  藤村有弘、水島道太郎)
竜は拳銃使いとしての自分が嫌で足を洗って堅気の生活がしたいと思っている。しかしジョーや周囲の状況がそれを許さず最後は愛銃のコルトを握ってしまう、というのがパターン。2作目の『電光石火の男』だけ赤木の役名は、抜き射ちの竜ではなくて丈二。内容も平凡な現代やくざ物で、他の作品との関連性はない。シリーズ中では最低ランクの出来。これは映画評論家の渡辺武信氏の著書『日活アクションの華麗なる世界』によると、2作目製作の時点では抜き射ちの竜というキャラクターが確立していなかったためだそうだ。このシリーズは61年2月に赤木が事故死した為に消滅してしまったが、死亡していなければ復帰作として『拳銃無頼帖 鉄火の男』がGW公開で予定されていたそうである。62年に当時の新スター高橋英樹主演で『抜き射ちの竜 拳銃の歌』が製作されたが、これは赤木の作品とは比べようも無い凡作であった。 
(2000年9月2日記)

        拳銃無頼帖 流れ者の群れ(65年93分 脚本・松浦健郎、佐藤道雄 監督・野口晴康)
 拳銃無頼帖という副題が付いているがトニー主演のものとは全く関係が無い。
主人公・麻島七郎(小林旭)は丸山千吉(東野英治郎)が組長の丸千組の幹部。雨の夜、丸千組は対立する水原一家と対決するが形勢が危うくなり旭は東野を逃がす。土手まで逃げた東野だが、八紘会会長・貝塚大作(二本柳寛)とその秘書・渡辺太郎(深江章喜)に射殺されてしまう。東野は死に際、自分を殺ったのは二本柳だが仇討ちはしないで組の金を皆で分けて足を洗え、と言い残して亡くなってしまう。旭は生き残った弟分・円谷昇(葉山良二)、三宅寅夫(武藤章生)と密かに温泉地で落ち合う。旭は途中知り合ったホステス・好子(楠侑子)を連れアベックにカモフラージュしてやって来るのだが、旭が大金を持っているのを知った楠は旭を恐喝しようとするが相手にされない。旭は生き残った組員一人一人を回り金を渡し足を洗わせていた。葉山と武藤にも堅気になるように説得するのだが武藤は聞き入れない。「足を洗え。」と言った旭だが単身、二本柳の首を狙っていた。丸千組が壊滅した後、水原一家も解散、八紘会の縄張りになっていた。二本柳は二つを共倒れさせその地盤を手に入れたのだった。旭、葉山、武藤の幹部3人が生き残っていると知った二本柳は『暗闇の銀次郎』(宍戸錠)をリーダーとする3人組の殺し屋グループを雇う。メンバーは錠の他、金メダル(小笠原章二郎)、青大将(
郷^治)。葉山は武藤を連れて高崎に流れる。旭にあしらわれた楠は色仕掛けで葉山に取り入る。葉山は高崎で小さなバーを買い武藤と楠と堅気になろうとするが、ムシャクシャした武藤が地元の暴力団・白虎組の六助(玉井謙介)とケンカ騒ぎを起こしてしまう。楠は葉山から店の支度金として10万円巻き上げてトンズラしようとするが心配で後を付けてきた旭に捕まる。旭は楠を脅かしただけで見逃してやる。八紘会は全国の暴力団に旭たちの顔写真を手配していた。この騒ぎを聞きつけて小笠原と郷が乗り込んでくる。危うく殺られる所だった葉山と武藤だったが旭に救われる。3人は高崎を脱出する。旭は一人、横浜に流れてくる。夜、小料理屋で独りで飲んでいると板前(雪丘恵介)が地元のやくざにカラまれているのを助ける。そこへ割り込むように入ってきたのが青田(平田大三郎)。雪丘はビビって逃げだしてしまい、旭は代わりに板前として店に潜り込む。どこか胡散臭い平田も店の常連客となる。平田は店の女将から女の子を紹介して欲しいと頼まれる。平田は喫茶店で働いていた和子(松原智恵子)を紹介。松原は店で働くようになる。仕事帰りの松原を武藤がボディガード代わりに送り始める。武藤はチンピラにカラまれた松原を救った?ことで親しくなったらしい。武藤は松原に一目惚れ。好きな女が出来て決心が鈍ったのか?武藤は松原に「仇討ちってどう思う?」。スポーツの試合だと思った松原は「男ならするべき。」と答える。旭を探して錠が店にやって来る。閉店時間まで粘る錠。錠が刺客と察した旭は松原を帰す。旭は丸腰のためプライドの高い錠は手が出せないのだが、平田は割って入ってくる。平田は自分の銃を旭に貸す。錠は旭と勝負しようとするが、武藤がオモチャの拳銃を構えて割り込む。錠は武藤の銃がオモチャと見抜くが、旭の男気に惚れた錠は引き上げる。旭も平田の貸してくれた銃を握った時に、弾が入っていないのを見抜く。平田も引き上げた後、旭と武藤のところへ葉山が現れる。旭は東野を殺ったのは二本柳、3人で仇を討とうということになる。そこへ平田が乱入。自分も混ぜろ、というが平田を疑った旭は「錠を殺ったら信用してやる」。平田は波止場に錠を呼び出し、旭たちの見ている前で錠を撃ってみせる。錠は海に落ちてしまう。パトカーのサイレンが聞こえたので死体の確認が出来ずに引き上げる。葉山は楠から熱海に出来た八紘会の別荘新築パーティが開かれるという情報を仕入れる。楠はそこでダンサーとして踊る事になっていた。旭は平田に武器の調達を、武藤に熱海の会場の下見を頼む。熱海に飛んだ武藤は地元のラーメン屋に成りすまし別荘に潜入するが、捕まってしまう。別荘には死んだはずの錠がいた。錠は平田に頼まれてやられ役を務めたのだった。深江は武藤を拷問し、旭たちのアジトを聞き出そうとするが武藤は口を割らない。武藤は怪力で閉じ込められている檻を破り脱出する。錠はそれを見逃す。武藤は捕まる直前に書いた別荘の見取り図を飲み込んでいた。トイレに篭ってクソまみれの見取り図を出し、旭たちは作戦を練る。パーティ終了後、来賓で来ていた各地一流の親分衆が帰った後、会場に乱入するが会場内には罠が仕掛けられていた。毒ガスにやられ捕まってしまう旭たち。旭たちに惚れた錠は二本柳を裏切り旭たちを解放してやる。檻を出た旭たちは錠と共に二本柳に迫るが、二本柳の子分たちに囲まれピンチとなるが、錠に義理のある小笠原が電気のスイッチを切る。それをきっかけに銃撃戦。小笠原は郷に撃たれそうになった錠をかばって死ぬ。そこへ警官隊が乱入、一網打尽となる。平田の正体は刑事だったのだ。松原も婦警で平田の婚約者だった。ラストは警察に捕まった旭、錠、葉山、武藤たち。護送車に乗せられていく姿に主題歌(口笛の凍る町)が被りエンド。
 組を潰された男たちが組織に復讐する話だが、刑事の平田が手引きしたり武器を与えたりするのは、チョット無理のある話。おまけにまだ何もしていないのに婦警の松原が飲み屋で働きだすのも変。平田も松原も警官のくせに、旭たちをソソのかして復讐させて逮捕してしまうとはヒド過ぎるよ!平田が刑事だったのは良いとしても、松原がその婚約者という設定もあまり意味が無いような。楠がダンサーという設定も珍しい。ライバル役?の錠は相変わらずだからこれは良いとして、郷の台詞が殆んど無いのと錠と金メダル(小笠原)の関係が説明不足なのは残念。どういう事情でこうなったのかは知らないが、もう少し設定をキチンと消化して撮れば結構面白い作品になったと思う。観ていて非常に勿体無い気がした作品。
(2004年3月12日記)

 

        拳銃残酷物語(64年白黒作品、脚本・甲斐久尊、監督・古川卓巳)
刑務所から出所した登川(宍戸錠)は組織のボス二本柳寛の依頼を受け、競馬場の売上金強奪を企てる。小高雄二、井上昭文、草薙幸二郎らと組んで、強奪には成功したものの二本柳に裏切られてしまう。激しい争奪戦の末、金とパスポートを手に入れ高飛びをしようとする錠だが、弟分の川地民夫に誤殺されてしまうのであった。大藪春彦原作『ウィンチェスターM70』を映画化。しかし内容は原作と全然違う。白黒の小品で多少乱暴な感じの作りだが、現金強奪の計画から実行までの過程をハードなタッチで表現した佳作。錠の妹には松原智恵子が扮した。
(2000年11月11日記)