第1話
大暴れ鉄拳野郎!!
12月、師走である。一年で一番嫌な時期である。不景気とはいえ、毎日があわただしい。これを書いているのは12月20日、今週末にはセックスマス・・・ではないクリスマスという腹立たしいイベントがある。世間ではクリスマスは大切な人と過ごさなければイケナイらしい。妻帯者は奥さんや子供と・・・・独身者は恋人と過ごさなければならない。街のあちこちにはクリトリス・・・ではないクリスマスソングが流れ、ツリーが飾られていたりする。
「クリスマスを独りで過ごす奴は人に非ず!」こういう風潮が蔓延しているような気がしてならない。クヤシイね。孤独なオタク野郎のオイラは、ここ数年は仕事が終るとゲームセンターに直行である。ここにはイブの晩だというのに、オイラと同じように行くところの無いオタク君たちで賑わっている。
あれは90年代半ば頃のイブの晩だった。当時、バーチャファイターが全盛であった。オイラは時間があるとゲーセンに通ってはバーチャばかりやっていた。実力の方は大した事はない。KAGEやウルフで昇段審査をして5段が最高という程度である。あの日は歌舞伎町のゲーセンへ行った。時間は21時をまわっていたと思う。近所のラブホテル街では恋人達が愛の格闘をしているというのに、オイラはバーチャで見ず知らずのオタク君とゲームで格闘である。オイラは対戦で勝つ事は殆ど無い。だから乱入されるのは嫌いである。しかもこの時のオタク君は強かった。あっさり負けた。クヤシイのでリマッチをした。また負けた。何度も挑戦したのだが、まるで歯が立たなかった。 結局、13連敗したところであきらめた。
「イブの晩だというのにオタク野郎に13連敗かぁ・・・今年もまた最低のイブだな。」
オイラはまたまたミジメな気持ちになって外に出た。思わず空を見上げた・・・不夜城と言われる歌舞伎町のネオンとスモッグで汚れた夜空には巨人の星もウルトラの星も見えなかった。汚れた夜空。オイラの心と人生と、そして未来を暗示している様な気がした。風俗にでも行こうか・・・とも考えたが財布の中身はちょっと心細いし、歌舞伎町には知っている店はない。ボッタクリも怖いしなぁ。風俗は諦めて他のゲーセンに行った。
ここではバーチャコップやハウス・オブ・デッドのようなシューティングゲームをやった。どいつもこいつも皆殺しである。銃を持つと気分は小林旭か赤木圭一郎!!
「コルトを持てば冷たく燃える・・・命知らずのこの俺も芯は淋しい男だぜぃ。」
どこかで聴いたフレーズだな。しかし皆殺しにしているオイラは抜き射ちの竜でないな。竜は殺しはしないもん。
これでは『高校大パニック』(78年 脚本・神波史郎 監督・澤田幸弘、石井聡互 出演・山本茂、浅野温子、青木義郎、赤座美代子)の山本茂だよ。
「数学できんが、何で悪いとやぁ!!」
撃って撃って撃ちまくり。いっぱしのテロリスト気分である。ハァハァ・・・・でもすぐにやられてしまった。(どうせハァハァするのなら、風俗のお姉ちゃんの上でしたいよ。)
最後にUFOキャッチャーをしていこう。オイラはUFOキャッチャーも好きである。お目当ての景品はパチモンのGショックやウルトラマン、仮面ライダー、マジンガーZ等のフィギアである。オイラの部屋の本棚にはUFOキャッチャーでの戦利品がいくつか陳列してある。始めた頃は数千円つぎ込んでもまるで取れなかったが、最近はコツがつかめてきてゲット率も上がってきている。しかもこの日は今までにない位、調子が良かった。何と!500円で初代ウルトラマンとウルトラセブンの貯金箱をゲットすることが出来たのだ。いくらコツがつかめたと言っても、こんな事は初めてだ!! 電池をいれてコインを投入すると「シュワッチ!」と声がするらしい。
「こ・・・こ・・・これは自分で自分にクリスマスプレゼントだぁ!!」
久しぶりに良い気分である。しかし貯金箱なんて部屋に飾っても仕方が無いんだよね。使いもしない景品を握り締めて、イブの街で立ち尽くしてしまうオイラ。結局、子持ちの同僚のソリマチくんにやってしまった。
今年のイブはどうしよう。そして大晦日、新世紀は何をして迎えようか。
そうだ!大晦日は平成ウルトラセブンのLDを観よう。買ったのは良いけど、まだ観ていない。
ひとりぼっちのLD大会かぁ・・・・トホホ。
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