第2話  昔、暗黒街? 今、映画の街 黄金町

ヨコギン(黄金町)

『ヨコギン』、今はもうない。1980年代後半頃に廃館となったらしい。京浜急行『黄金町駅』から歩いて10分くらいのところにある、『よこはまばし商店街』の中にあった名画座である。典型的な場末の映画館といった店構えの小さな劇場であった。写真の商店街を入って50メートルくらい歩いて左側にあった。黄金町は黒澤映画『天国と地獄』の中で麻薬の巣窟として登場する街である。(麻薬中毒者の中に菅井きんの姿があった!!)

中学生の時、文芸座地下で『天国と地獄』を観たオイラは黄金町は新東宝の『地帯シリーズ』に登場するような不気味な街という印象を持っていた(地元の方、スイマセン!!)。初めて行ったのは77年頃、さすがにここまでは自転車では行かずに電車で行った。観た作品は『拳銃無頼帖・抜き射ちの竜』(60年作品 監督 野口博志、主演 赤木圭一郎)。あれは夏休みであった。学生は夏休みだが、世間は平日である。平日の昼間は商店街も人影はまばらであった。日曜日ともなればたくさんの買い物客で賑わう所だが、当時は錆びれた商店街という感じであった。こんな殺風景な商店街の中に映画館とは不釣合いなのだが、『ヨコギン』はあった。あまりキレイだとは言えないが雰囲気のある建物だったと記憶している。館内も狭い。平日の昼間だから、客席にはオイラの他に1人しか客はいなかった。その客はオイラと同じようなオタク風のイデタチ。おそらく映画マニアなのだろう。浅草と違うよな。
 この『ヨコギン』には計3回くらい行ったと思う。観た作品は前述した『抜き射ちの竜』、『霧笛が俺を呼んでいる』、そして『忘れるものか』(68年作品 監督 松尾昭典、主演 石原裕次郎)であった。当時使っていた手帳を見てみると、1979年12月19日水曜日に『忘れるものか』を観ている。これが最後であったと思う。今回写真撮影の為に黄金町に来た。実に21年ぶりである。ちょっと感慨深いな。現在の黄金町はちょっとした映画の街である。最近では林海象監督、永瀬正敏主演の『濱マイクシリーズ』の舞台でお馴染みである。

 

濱マイクの事務所があった横浜日劇。レトロな感じがよく出ている。ここの正面にも映画館、シネマジャックがある。さて黄金町に来たのは良いが、最初目指す『ヨコギン』がどこにあるのか、憶えていなかった。例によって、聞き込みである。黄金町で聞き込み、気分は濱マイクだぜ!・・・ムフフ。商店街を入ってすぐ左側に古い作りの薬屋があった。流行りのドラッグストアではない。昔ながらの薬屋さんである。ドリンク剤を買って、店主と話をしてみる。「あ〜、ヨコギンね。なくなったのはいつだったかなぁ。バブルの前くらいかなぁ。経営していた家族の人も今はどこに行ったのかわからないよ。」 店主から当時ヨコギンがあった場所を教えてもらった。ヨコギン跡地。現在は駐車場になっていた。ウ〜ム、面影はかけらもないなぁ。まぁ廃館して10年以上経っているのだから仕方がないか。せっかく来たのだから、付近を散策してみる。オイラが来た当時は殺風景な街だったような気がするのだが、現在の黄金町はおしゃれな作りのマンションと昔ながらの一軒家が混在する普通の街であった。イメージが違うな。商店街入り口近くに中古ビデオの販売店があった。中に入ってみる。バーゲン品の中に松田聖子の『カリブ 愛のシンフォニー』を発見!!1000円だったので、衝動買いしてしまった。

 

黄金町ヨコギン 詳細データ不明
1980年代後半廃館