第29話 とにかく通いました

テアトル新宿

 

テアトル新宿は新宿3丁目靖国通り沿いにある映画館。伊勢丹の真裏に位置している『テアトル新宿ビル』の地下1階にあるキレイな劇場。上の写真のビルで上には『かに道楽』があるのですぐに分かる。2001年3月から5月にかけて『鈴木清順レトロスペクティブSTYLE TO KILL』という特集上映が行われた。この時に観た作品は下記の表の通り。土曜日はオールナイト。他はPM9時20分からのレイトショーであった。 毎度の事だがオールナイトは苦手だよ。そこで眠気防止に毎回ドリンク剤を5〜6本と、メントールの入った顔にかけるスプレーをドラックストアで買い込んで臨んだ。その甲斐あってか眠ることなく鑑賞することが出来たが、一晩で3〜4本の映画を観るのは正直ツラかった。客の入りはレイトショーの時は3割くらいしかいなかったが、オールナイトの時は6〜7割はいた。清順作品とはいえ、どうしてこんな映画に人が集まるの?『殺しの烙印』とか『けんかえれじい』『野獣の青春』等の有名作なら客が集まるのは分かるけど、初期の作品はどれも自主映画レベル、良くても安手の2時間ドラマみたいでチャチなものが多い。何で人が集まるのか不思議だ。世の中、オイラのようなオタクが多いのか?オタクといえば独りで観に来ている奴を何人も見かけた。中には女が独りで来ていたのを見たよ。女の場合は彼氏と来るというパターンが普通だ。

 

実際「映画は彼氏と観に行くもの。」とキッパリ言い切る女が多いのに、どうして独りでしかも鈴木清順オールナイトを観に来るの? この女、相当な使い手だナ。しかし会場内ではカップルで来ている姿を何組か見た。こういうのはおそらく男が観たいから彼女を付き合わせたというパターンだろう。それだけに独りで来ているというのはちょっとビックリしたが、女の容姿を見て納得した。何と言うか・・・・『ウルトラマングレート』に出てきた敵キャラ「ゴーデス第1形態」のような感じだったのだ。オタク的な表現でスイマセン。もう少しわかり易く言うと『ウルトラQ』のナメゴンかなぁ。(これも分からなかったら自分で調べて!) 「土曜の夜に独りで鈴木清順とはこの女もモテナイんだな。」正直そう思いました。(もし心当たりの人がこれ読んだらゴメン!)
 しかしそう思ったのはオイラだけでは無かったようだ。オールナイト上映の時に一度だけ、高橋英樹本人が来場、上映前にステージに上がり鈴木清順の思い出話しを披露してくれた。何と!高橋英樹は開口一番「土曜の夜にこんなところで日活映画とは物好きですね。」というような台詞を口走ったのだ。オイラも含めてオタク指数高そうな連中が多いからそう思ったのだろう。オイラはJOA王者としての自分を自覚しているから別に構わないけど、他の連中はどう思ったんだろ? 青春野郎にも書いたけどオタクは自分がオタクであることを自覚していない輩が多い。高橋博士がそう言ったら観客席のあちこちからテレ笑いというか失笑が起こっていた。あのゴーデス女はどう思ったのかな? 老婆心ながらこんなところでオールナイトなんか観ていないで少しは運動して痩せる努力をした方がイイよ。
 さて高橋英樹はこの夜に語ってくれた話しで印象に残ったものをいくつか・・・清順監督とそのスタッフたちは風呂に入らないそうだ。だからスタッフ部屋に行くと臭かったらしい(笑)。また『刺青一代』の殴りこみシーンはどういう映像を撮っているのか演じていて良く分からなかったそうだ。他には清順監督とは関係ないが浜田光夫や吉永小百合、松原智恵子との思い出話しも語っていた気もするがもうよく憶えていない。ただ高橋英樹にとって日活時代というのは良い思い出なのだろう。話し出すと止まらなくなって予定時間をオーバー。スタッフに引っ張られるように退場していった。去り際、「私も皆さんとこれから上映される作品を観ていたいのですが、まだ仕事がありますので・・・・」というような事を言っていた。映画も観たいけどもっと話しを聞きたかったナ。
 鈴木清順が風呂に入らないという話しは20数年前の映画雑誌『ムービーマガジン』に掲載された浅丘ルリ子インタビューでもルリ子しゃん本人も語っている。ルリ子しゃんの話では歯も磨かなかったそうだ(爆笑)。

テアトル新宿で観た作品(全て2001年)

3月24日(土)

『裸女と拳銃』『東京騎士隊(ナイト)』『けものの眠り』

4月 7日(土)

『けんけれじい』『ハイティーンやくざ』
『「13号退避線」よりその護送車を狙え』

4月12日(木)

『すべてが狂ってる』

4月18日(水)

『勝利をわが手に 港の乾杯』

4月21日(土)

『散弾銃の男』『青い乳房』『暗黒街の美女』
『探偵事務所23・くたばれ悪党ども』

4月26日(木)

『関東無宿』

4月28日(土)

『俺たちの血が許さない』

5月 2日(水)

『踏みはずした春』

5月 4日(金)

『らぶれたあ』

5月 5日(土)

『暗黒の旅券』

5月 9日(水)

『悪太郎』

5月19日(土)

『殺しの烙印』(予告編付き)

 

土曜のオールナイトで一本しか観ていないのは何故か?同時上映は全て観た作品だから観ないで帰ってきたためだ。夜は苦手だし日曜日は仕事の時もある。未見の作品なら我慢して観るけど、そうでない作品やビデオを持っているのは無理をしてまで観る事もない。お目当てのものだけ観てバイクでさっさと帰ってきました。オイラ的にはレイトショーが良かった。仕事帰りにバイクで観に行った。一本だけだから楽だし平日は空いている。映画を観るのにピッタリである。映画館には悪いけど空いている方が良いよ。
 テアトル新宿に通った2ヶ月間はキツイというか面倒だった部分もあったけど、今から考えると良い思い出である。何よりこの上映のおかげで、20年前に文芸座オールナイトで観たものの、眠くて不鮮明になっていた作品の記憶が繋がったものが多いからだ。またこういう上映やってくれないかな。いやいや、それよりもNECOで放送して欲しいヨ。

 

 

テアトル新宿データ
東京都新宿区新宿3-14-2/TEL. 03-3352-1846
一般1800/学生 1500/シニア 1000/水曜男女 1000
座席数218